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NFTゲームの世界:第6回は「Phantom Galaxies」を紹介。広大な銀河で戦闘機やメカを操り,宇宙海賊と戦っていくSFアクションアドベンチャー
CEOのBen Lee氏へのメールインタビュー(2023年12月8日の回答)
4Gamer:
「Phantom Galaxies」開発の道のりを教えてください。開発期間やチームのサイズ,最初のコンセプト,2021年にスタジオがAnimoca Brandsに買収された影響などを聞きたいです。
Blowfish Studios CEO Ben Lee氏(以下,Lee氏)
本作の開発は,2019年に始まりました。最初はシングルプレイヤーのアドベンチャーゲームとして構想していて,今よりも機能を絞った,伝統的なWeb2体験を提供するゲームとなる予定でした。
Animoca Brandsに買収される前から,私たちはブロックチェーンのユニークな可能性に関心を持っていましたが,この分野を牽引する企業の後ろ盾を得たことで,本格的にゲーム業界の新たなフロンティアに進出できるようになり,私たちの野心と,チームの規模を拡大しました。
Web3分野のパイオニアであるAnimoca Brandsは,経済的なサポートだけでなく,本作の軸としてブロックチェーンをどのように統合するのがベストなのか,アドバイスやアイデアを提供してくれています。
現在,私たちのチームは90人を超えていて,プロジェクト開始時の小さな数字を考えると,長きにわたる道のりでした。そして,プロジェクトのビジョンは,Web3ゲーム体験として私たちが目指すところである,コミュニティ主導のより良いゲームを提供することへと変化しました。
Phantom Galaxiesは,プレイヤーが常に宇宙ですれ違ったり,協力したり,対立したりする,ライブサービスのマルチプレイヤーゲームです。私たちは,アーリーアクセスとその先を通して,ゲームのそうした要素を強化し,深めていきたいと思っています。
4Gamer:
ゲーム内のカットシーンは素晴らしかったです。どうやってあれを制作したのですか。
Lee氏
現実と見紛うばかりの,映画のようなビジュアルは,Phantom Galaxiesが提供するSF体験の重要な一部であり,カットシーンには多くの労力を費やしました。コンセプトアートでアイデアを練り,3Dチームが命を吹きこんだビジュアル。水面下での膨大なプログラミング作業と,ナラティブチームによる脚本。プレイヤーが体験する最終的なシーンは,チーム全体にわたる数え切れないほどの作業時間の賜物です。
アニメーションチームは,モーションキャプチャの撮影を行い,「Motive」でクリーンアップしたデータを,「Maya」でキャラクターに適用します。そして,洗練と同期を行ったあと,「Unreal Engine」でカットシーンを組み立てて,開発チームに渡すのです。
サウンドは重要な役割を担っており,声優の演技と作曲家の音楽が,本作の舞台である「Canis Major Galaxy(おおいぬ座銀河)」へと没頭させます。ビデオゲームというメディアでは,あらゆる瞬間がさまざまな分野の作業の集大成であり,私たちのカットシーンも例外ではありません。
4Gamer:
私はスターシップ形態ばかり使ってしまうのですが,どんなときにメカ形態に切り替えればいいですか。
Lee氏
戦略的にスターシップ形態とメカ形態を切り替えることは,Phantom Galaxiesでスターファイターの能力を最大限に活かすために重要な戦術スキルです。メカ形態は新たな戦闘の可能性を広げ,敵に接近して強力な近接攻撃を繰り出せます。スターシップ形態は,よりスピーディーで機敏ですが,TPSのようにメカ形態の静止したポジショニングで戦いたい場面もあるでしょう。
4Gamer:
正式ローンチはいつ頃ですか。それまでに何を改善していきたいですか。
Lee氏
いまの私たちはアーリーアクセスに集中していて,この段階を通じて大小さまざまな改善を行っています。対応言語の拡大,動きの洗練,UIのアップグレードなど,QoLのアップデートを優先しています。
また,パトロールやPvPバウンティなど,新たな協力プレイモードを実装する予定で,メカのカスタマイズやアップグレード,新武器や新装備も追加します。このほか,ゲーム内チャットやギルドのサポートを含む,コミュニティオプションも充実させていきます。
アーリーアクセスの体験が進化し,深まるにつれて,毎月アップデートを実施することを目指しており,それが当面の間,最もエネルギーを注ぐポイントとなります。将来のロードマップに関する更新は,かなり近いうちに公開される予定です。
4Gamer:
個人的にはプレイしていて3D酔いに苦しみました。この問題について何かコメントはありますか。
Lee氏
α版,β版,そして今回のアーリーアクセス版を通じて,プレイヤーの皆様にテストしていただいたことは,粗い部分を修正し,新しいオプションを追加するうえで貴重な経験となりました。
喜ばしいことに,3D酔いはコミュニティからの一般的な苦情とはなっていませんが,もし問題がある場合は,オプションメニューからCamera ShakeとMotion Blurをオフにしてみてください。
4Gamer:
ブロックチェーン要素を含むEpic Games Store版と,ブロックチェーン要素を含まないSteam版は具体的にどう違うのですか。最大限に楽しみたいプレイヤーは,Epic Games Store版をプレイすべきでしょうか。
Lee氏
Steamのルールに従い,Steam版のPhantom Galaxiesにはブロックチェーン要素が一切ありません。私たちは当初から,NFTとの統合によって強化された,深く,魅力的で,何よりも楽しいゲームを作ることを目標としてきました。つまり,Steam版はWeb3要素と関わることなく,それ自体が完全で豊かでスリリングな体験となっているのです。
Epic Games Storeや公式サイト,そのほかのランチャーから入手できるWeb3対応版のPhantom Galaxiesでは,ユニークなアバター,スターファイター,惑星のNFTによって,新たなコスチューム,ステータス,ゲームプレイの機会がもたらされます。また,ゲーム内のアクティビティを通じて,プレイヤーはガバナンスおよびユーティリティトークンであるASTRAFERを獲得できます。
4Gamer:
ブロックチェーンゲームの制作には,どのような困難がありましたか。
Lee氏
Phantom Galaxiesでは未知の領域に踏み込んでおり,その過程ではユニークな挑戦と機会が常に生じています。NFTをバランスよくコアメカニクスに統合し,有意義なユーティリティを提供するとともに,成長し続けるゲーム内経済とのバランスを取ることは,現在進行中の設計プロセスであり,慎重な作業を続けています。
また,Web3要素と関わるには,あらゆる段階で法的なチェックを受ける必要があります。規制の変化とともに私たちは継続的に再評価を行い,特定の分野でのアプローチを調整しており,ゲームとプレイヤーにとって常にベストな実装となるようにしています。
4Gamer:
日本でブロックチェーンゲームは一般的とは言えませんが,オーストラリアではどうですか。また,日本市場についてどう思っていますか。
Lee氏
オーストラリアには大規模なクリプトコミュニティとブロックチェーン開発産業があります。GameFiプレイヤーもそれなりにはいますが,ヨーロッパや東南アジアの規模には遠く及びません。
日本市場は始まったばかりですが,NFTを取り巻く環境がとてもフレンドリーなので,私たちは日本市場に強い関心を持っています。私たちのプロジェクトが「マクロス」のような人気ロボットアニメシリーズにインスパイアされたメカADVであることを踏まえると,日本のゲーマーとの相性は完璧だと思っています。
4Gamer:
2023年,ブロックチェーンゲーム業界で注目したニュースやプロジェクトはありましたか。
Lee氏
伝統的な大手AAAゲームスタジオのいくつかが,2023年にWeb3とNFTを全面的に採用したのは嬉しいことでした。潮の満ち引きはすべての船を持ち上げるものであり,ほかのデベロッパが私たちと一緒にこの分野をどのように推進していくのか楽しみです。2023年に展開された新しいブリッジとチェーンの技術も,業界全体にとって素晴らしいです。Web3の使用を合理化するために役立つものは何でも,メインストリームで使われるには必要不可欠です。
もちろん,私たちを最も興奮させたニュースは,Phantom Galaxiesのアーリーアクセス開始となりますが。この勢いを維持し,2024年に新たなマイルストーンを達成することが待ちきれません。
4Gamer:
最後にPhantom Galaxiesに興味を持っている人に向けて,メッセージをお願いします。
Lee氏
アーリーアクセスはPhantom Galaxiesにとって大きな一歩であり,できるだけ多くのプレイヤーとゲームの進化・発展版を共有し,ゲーム体験に磨きをかけ,洗練するための時間です。これは,私たちのメカADVを実際に体験し,ゲームデザインのプロセスを直接見て,その未来を形作ることに参加できるまたとないチャンスです。
Co-opゲームプレイの拡張,コミュニティとガバナンス機能の拡大,そしてプレイヤーが所有・支配し,自由にカスタマイズできるゲーム内惑星などの革新的なNFTユーティリティが,すべてビジョンに入っています。
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