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「ゆんゆん電波シンドローム」を遊んで“電波ソング”の魅力を再認識。1990年代から2000年代の成人向けゲームと電波ソングという熱狂に思いを馳せる
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印刷2026/05/02 10:00

プレイレポート

「ゆんゆん電波シンドローム」を遊んで“電波ソング”の魅力を再認識。1990年代から2000年代の成人向けゲームと電波ソングという熱狂に思いを馳せる

 アライアンス・アーツは2026年4月24日,「ゆんゆん電波シンドローム」をSteamで発売した。本作は,ヒキコモリの少女が綴った怪文書をばらまくというリズムアクションゲームだ。

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 「電波ソング」が大きくフィーチャーされているのも大きな特徴で,「巫女みこナース・愛のテーマ」「さくらんぼキッス 〜爆発だも〜ん〜」といった平成のインターネットで流行した楽曲が多数収録されている。

 当時電波ソングに触れていた人たちにとっては,その魅力を再認識させてくれるタイトルでもあり,オタク界隈や,彼らの生きづらさを描いているタイトルだった。本稿では,そのプレイレポートをお届けするとともに,テーマとなっている電波ソングについて,筆者の主観を交えつつ紐解いていこう。


電波ソングで怪文書を発信し,陰謀論で世界をメチャクチャにせよ


 本作の主人公は,ヒキコモリの少女「Qちゃん」だ。現実の辛さと,ビジュアルノベルの二次元キャラ「ゆんゆん」への愛から「電波」を送受信できるようになった彼女は,電波ソングでアタマをハイにした状態で「怪文書」をネットに発信していく。

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 怪文書は,ネットの住民から世界の謎を暴く「陰謀論」として解釈されるばかりか,陰謀論で書かれた出来事が現実に発生し,Qちゃんは一躍ネットの有名人になってしまう。そこに「怪文書を本当に書いているのは自分だ」と主張する「Pちゃん」が現れ,カオスはより拡大していくのだった――。

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 ゲームの流れは,電波ソングのリズムゲームをプレイすることでシナリオを開放し,物語を読み進めていくというものだ。シナリオの重要性が高く,アドベンチャーのように探索や謎解きで物語が進むわけでもない。なんとも不思議な“シナリオドリブンの音ゲー”といったところだろうか。

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 プレイヤーが音ゲーを遊ぶ行為は,Qちゃんがゆんゆんへの思いを綴る行動として表現されている。そして,プレイ中に発生する「ドキドキ怪文書」「ゆんゆん怪文書」「カリスマ怪文書」を組み合わせることでネットに陰謀論が出現する。

 どんな陰謀論が出現するかは基本的にランダムで,使用したカードに応じたQちゃんのパラメータ「ドキドキ度」「ゆんゆん度」「カリスマ度」がアップする。そして,陰謀論が増えていくたびに世界の「電波度」も上昇し,100%になることで何かが起こる……という仕組みだ。

画像のように怪文書のカードにはレアリティがあり,高いほど「ドキドキ度」「ゆんゆん度」「カリスマ度」がアップする。出現する陰謀論はランダムだが,「カリスマ度」を消費して指定することも可能だ
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 本作の物語はQちゃんのPC上で展開するのだが,本作には,2000年代初頭のネットシーンにちなんだ,さまざまな仕掛けが施されているのがポイントだ。

 ゆんゆんの立ち位置は「陰謀論のネットニュースに反応するデスクトップ上の美少女」というもので,2000年に発表されたデスクトップマスコット「伺か」を思い出させる。

Qちゃんがゆんゆんへの思いの丈を綴ると,ネット上ではそれが怪文書扱いされて陰謀論が発生する。陰謀論はやがて現実になってしまう
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 また,デスクトップに置かれた謎のzipファイルは,ヒントから推測したパスワードを入れると解凍できるし,ゲームをしているところを親に見つかりそうになったら,[TAB]キーを押すことで,猫やボートなど無害な動画を流してごまかす「ママキタモード」が起動できる。このように本作には,かつてのインターネット/オタク文化を思い起こさせる要素が散りばめられている。

「ママキタモード」を起動すると,PC上に猫やボートといった無害な動画が表示される。かつて一部のPCゲームでは,職場や親のPCでゲームをプレイしていることがバレないよう,上司/親が来た際にワープロやビジネスソフト風の偽画面を表示する機能が搭載されていた。ネーミングは「アルトネリコ2」の「ママキタボタン」が元ネタか
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ボートはもちろん成人向けゲームを原作とするアニメ「School Days」の最終回が地上波で放送中止になった際,ボートの映像が流れたという逸話にちなんだものである。本作には,2000年代初頭のネット文化に関するネタが無数にある
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 本作には,数多くのエンディングが存在しており,発生条件が陰謀論やパラメータだけではないのが面白いところだ。ゲームを放置しておいたり,ゆんゆんをデスクトップのごみ箱に放り込んだりするなど,普段やらないようなことで特殊エンディングが発生する。こうした要素もイースターエッグ満載だった昔のゲームを思い出させる。


成人向けゲームと電波ソングという熱狂


 本作における最大の特徴は,音ゲーの収録曲が電波ソングであることだ。電波ソングとは中毒性の高いフレーズや独自性の高い世界を描く歌詞を持つ曲のことで,2000年代の大流行が印象に残っている人も多いだろう。

 このころは電気街の店先でも電波ソングが流れ,ある種の非日常的な空間が作り出されていた。
 また,「ゆんゆん電波シンドローム」の許諾楽曲25曲中18曲が2000年代初頭の成人向けゲーム関連であることから見ても分かるように,かつての電波ソングは成人向けゲームの主題歌であることが少なくなかった。

 当時はゲームをプレイしないオタクでも「どんな作品の主題歌かは知らないが,サビだけは歌える」という例も当たり前で,その浸透力がいかに高かったかがうかがえる。

Qちゃんの部屋は「汚部屋」と化しており,中には電波ソングのCDが転がっていることがある。シナリオの進行と連動し,Qちゃんの心境を表す電波ソングが増えることも
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 では,なぜ成人向けゲームの世界から電波ソングが輩出されていたのだろうか。ここからは当時を西の電気街・日本橋で過ごした筆者の完全な主観を交えつつ,時代背景と共にその要因を紐解いていきたい。

 まず結論を言うと,そこには「より独自化した世界をアピールしたい」という作り手側の思いと,それを布教する受け手の情熱があったのではないかと思う。

 成人向けゲームの世界は,16ビットパソコンであるNECのPC-9801シリーズが登場した1980年代から1990年代にかけて多様化が進行し,“アダルトシーンがあればなんでもアリ”という創作の自由度の高さが魅力だった。

 1990年代の作品をざっと挙げるだけでも,自由に行動できる夏休みを舞台に多様なヒロインたちとの恋物語を描いた「同級生」,プロレス団体運営シミュレーションに発展した「レッスルエンジェルス」,高いプレイアビリティを持つSLG「鬼畜王ランス」,鬱屈した主人公が“電波”にまつわる狂気の世界に踏み込む「雫」,メイドロボや超能力少女,格闘少女などオタクが好きなものをてんこ盛りにした「To Heart」,多くのプレイヤーを感動させた「ONE 〜輝く季節へ〜」「Kanon」など,ジャンルや方向性が実に多彩であることが分かる。

 アドベンチャーはもちろん,シミュレーションや格闘ゲームまで,さまざまなジャンルのゲームが作られ,後にアニメ化や一般向けゲームとして移植された作品も多い。自由度の高さとムーブメントの大きさがうかがえるだろう。

初回起動時の設定画面だが,画像左の楽曲一覧には,有名な電波ソングがズラリと並んでいる。リズムゲームとして細かい設定をすることも可能だ
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 こうした方向性がさらに進んだのが2000年代だ。
 例えば,西の電気街・日本橋だと,成人向けゲームを扱うPCショップが軒を連ね,大作の発売日ともなると,午前0時から深夜販売が行われ,多くの人々が今か今かと発売のゼロアワーを待つ光景が見られた。
 このころは,Windowsの新バージョンも深夜販売が行われており「成人向けゲームの影響力もついにOSに並んだか」と感動したことを覚えている。

 この時代の代表作を列挙していくとページがいくらあっても足りないので,2000年代前半に絞って一部のタイトルを挙げると,現在もシリーズの展開が続く「Fate/stay night」,夏を舞台に時を越えた感動の物語が描かれる「AIR」,新選組の隊士を美少女化し,鉄の隊規を歌う主題歌が電波ソングと話題になった「行殺・新選組」,ワケありの他人同士が集って疑似家族となる「家族計画」,鬼畜の主人公が女性を追い込んでいく「鬼作」,ロボをアセンブルしてコンボを繰り出す「BALDR BULLET」などなど,紹介するだけで本を数冊は書けるほどの個性派が揃っている。

 発売されるタイトル数が増えたのはもちろんのこと,一般ゲームとして移植できる作品から,成人向けゲームならではのダークな物語性を持つ作品まで,さまざまなゲームが入り乱れていた。
 多様化したなか,自分の勘を頼りに尖ったタイトルを探していくのは,現在のインディーゲーム探しに近い雰囲気があったと記憶している。

 そして,こうした成人向けゲームが多数発売される状況のなか,“より独自化した世界をアピールする”べく作られた主題歌が“電波ソング”だったのではないかと筆者は考える。

 このころになると,ゲームにボイスが付くことは珍しくなくなっており,主題歌も作られるようになった。「声」という表現を手に入れ,移植によって一般ゲームとのボーダーレス化が進んだことで,歌が作られるようになったのは自然な流れと思える。

 作品の設定やテーマが複雑になっていったことで,それを表現する主題歌の歌詞や曲調も先鋭化していった。多数の作品が発売されるなかで,「このゲームはこんな世界設定を持っているんだ!」と印象づける手段でもあったのかもしれない。
 先述の通り,この時代は電気街の店先で,成人向けゲームの主題歌が流れていたこともあり,重要度が高まっていたのだろう。

 そして,ゲームの作り手だけでなく,受け手にも新たな物事が始まるとき特有の熱気があった。
 作り手は高い自由度のなかで尖った作品を作り,成人向けゲームが盛り上がってきた“物語”をリアルタイムで知る受け手は,「今の成人向けゲームには,こんなにすごい作品があるんだぞ」と周囲に布教していった(Flashブームや「ニコニコ動画」が助けとなったことはいうまでもないだろう)。

 当時のオタク界隈は周囲からの風当たりも強く,ヒットしたコンテンツがどうなるか,今ほどはっきりとした道は引かれていなかった。新たに興った成人向けゲームやその主題歌を応援することには,未知へ向かって突き進むような特別な意味があったようにも感じられる。
 ゲームの作り手たちが生んだ耳に残る主題歌たちが受け手の情熱によって広まり,それが電波ソングとして認識されるようになったのだ。

公式動画より「true my heart」のサビ部分。本来の歌詞は「素直な気持ち抱きしめ」だが,「抱きしめ」の部分が「きしめん」に聞こえるということでも有名な楽曲である(画面左でゆんゆんが振っているのもきしめんだろう)。当時は電波ソングが電気街の店先や動画サイトで広く親しまれており,「きしめんの曲」と呼ばれることも多かった
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 本作に収録された電波ソングは,「巫女みこナース・愛のテーマ」「魔理沙は大変なものを盗んでいきました」「チルノのパーフェクトさんすう教室」「患部で止まってすぐ溶ける〜狂気の優曇華院」「つるぺったん」といった2000年代初期の定番から,「INTERNET OVERDOSE」「粛聖!! ロリ神レクイエム☆」など2020年代のナンバーまで多岐にわたっている。

 音ゲー初心者に対しての配慮があるのも嬉しいポイントだ。オートモードを使ってもシナリオが進んでいくし,難しい譜面でハイスコアを取ってネットランキングに登録するといった楽しみ方もある。
 一定のゆんゆん度を消費することで,15分間ランダムな曲が流れ続けるモードもあり,電波ソングのプレイリストのようにも使える。

ゆんゆんをQちゃんにドラッグアンドドロップする(左)と,15分間いろいろな電波ソングが流れ続けるモードになる(右)。デスクトップの美少女キャラクターをドラッグして動かすのは,デスクトップマスコットのようでもある
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 本作をプレイして再確認したのが,それぞれの電波ソングが内包する世界の独自性と強さだ。
 楽曲の中には20年近く前のものもあり,通常なら「懐かしの」といった表現がされるところだが,2026年に聞いても古さを感じさせない(このあたりは,筆者が独自の世界を持つ楽曲を好むところもあるのかもしれないが)。

 やはり電波ソングのアッパーな曲調は楽しいし,サビのフレーズが脳内で回るのは気持ちがいい。当時を知らない人であっても,ネットのどこかでサビを聞いたことがあるという曲があるはずで,幅広いオタクに刺さる音ゲーといえるだろう。

オートモードを使えば,すべてのノーツをパーフェクトでプレイしてくれる。画面下にはQちゃんが書いた文章が表示されており,そこには演出上の意味がある。ゲーム前半の文章は,いうまでもなくライトノベル「ゼロの使い魔」のヒロインへの思いを綴る,通称「ルイズコピペ」が元ネタだろう。無名の文豪がネットに投下した文章が人々の心を捉えるという事件そのものも「ルイズコピペ」を下敷きにしているようだ
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 ネットで発生する陰謀論も,いわゆる「ガチ」なものではなく,「打ち切りになった漫画は,謎のパトロンの力で密かに連載が続いている」「現世にはデバッグメニューが潜んでいる」「ゲームのエンドロールに出てくる『AND YOU』は秘密結社の名前だ」など,ちょっとしたワンダーや皆の願望が入っており,悪意は感じられない。
 こうした陰謀論について,Qちゃんとゆんゆんという美少女2人が雑談する光景には,なんとも微笑ましいものがある。

「VTuberは,新たに始まる『VTube』という動画サービスの宣伝」という陰謀論。目を惹きつけるワンダーはあるが,悪意は感じられない
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陰謀論により,現世にもデバッグメニューがあることが判明した。隠しコマンドを入力すると,謎のテストモードが起動し……
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 一方,明るい音ゲーの合間には,Qちゃんが抱える深い闇が漏れ出してくる。特にある人物とのメッセンジャーアプリを通しての会話はゾッとさせられるものがあり,人によってはトラウマを刺激されてしまうこともあるかもしれない。可愛らしいビジュアルに惹かれてプレイしてみたら,ダークな側面もあったというわけで,このあたりも2000年代のビジュアルノベル的だ。

Qちゃんは闇を抱えており,容赦なく現実を突き付けられることも
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 電波ソングは1つのジャンルとして皆に親しまれており,有名曲ともなればアレンジされたり,新作の音ゲーに収録されたりするなど,世代を超越したものとなっている。2000年代初頭にこうした未来を予想できた人はいないのではないだろうか。
 電波でアタマをくるくるにして怪文書をまき散らし,世界の電波度を100%にしたとき,2人に何が待ち受けているのか。それは自分の目で確かめてほしい。

Qちゃんの活動でゆんゆんが話題となり,原作者が当時を振り返るインタビューも公開された(左)。久々の供給だが,Qちゃんは今さら出てきて何をいっているんだ,と手厳しい(右)。原作者の言動や作品愛もチェックする様子は今どきのオタクっぽい
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オープニングムービーから,「電波的妄想美少女Q」の語りの部分。「自分が発信した電波が解釈違いの人もいるかもしれないが,これをきっかけに皆も電波を発信してほしい」と呼び掛けている。互いのゾーニングが進んだ現代のオタクではなく,2000年代のオタクの雰囲気を色濃く伝えている
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