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死にゲーの達成感は,死を繰り返す過程にこそある!? 「绝晓(Unending Dawn)」のプロデューサーに聞く[CJ2024]
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印刷2024/08/02 08:00

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死にゲーの達成感は,死を繰り返す過程にこそある!? 「绝晓(Unending Dawn)」のプロデューサーに聞く[CJ2024]

 中国最大のゲームイベント「ChinaJoy 2024」の開幕を翌日に控えた2024年7月25日,Sony Interactive Entertainment Shanghaiは,「China Hero Project 第3期発表会」を開催し,「绝晓(Unending Dawn)」(以下,Unending Dawn)を発表した。

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 NetEaseやTencent,ByteDanceなどで経験を積んだ開発者たちが立ち上げたPARCEA'S FATE STUDIOが手がける本作は,アニメ調の3Dグラフィックスを採用したマルチプレイオープンワールドアクションRPG。ここ数年,中国のデベロッパがヒット作を連発しているジャンルだが,本作は“死にゲー”寄りの,歯ごたえあるバトルが特徴となる。

 そんなUnending Dawnが目指すものとは何なのか。プロデューサーを務める应超(Ying Chao)氏に聞いた。

「Unending Dawn」プロデューサー应超氏
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 SIE上海が開催した「China Hero Project」タイトルのハンズオンイベントで,開発中のオープンワールドアクションRPG「绝晓(Unending Dawn)」をプレイできたので,レポートしよう。アニメ調グラフィックスを採用しながら,バトルは死にゲー寄りだ。

[2024/07/27 13:28]

4Gamer:
 お忙しい中お時間をいただき,ありがとうございます。さっそくですが,「Unending Dawn」の開発はどのようにして始まったのでしょうか。

应氏:
 もともと,自分達の経歴や経験を生かして新しいゲームを作りたいと思っていました。3Dグラフィックスでの開発経験が豊富なメンバーが多いので,3DアクションRPGのさらなる選択肢となるタイトルを提供できれば,プレイヤーにとっても市場にとってもいいことになるだろうと考えたんです。

4Gamer:
 3DアクションRPGは人気のジャンルですが,その一方でライバルも多いですよね。そのあたりは気になりませんでしたか。

应氏:
 さきほどの話にもつながるのですが,自分達の経験を活かしてより優れたゲームを作ろうとしているので,競争の激しさは関係ありません。もちろん,ほかのタイトルと異なる要素を入れて,自分たちのポジションを探そうとはしていますが。

4Gamer:
 ほかのタイトルと異なる要素というのは,具体的にどのあたりになるでしょうか。

应氏:
 やっぱりバトルの体験ですね。難度は高めですが,プレイヤーに自分の技術を繰り返し磨いていただいて,成長を楽しんでもらえるゲームを作りたいと思っています。
 私が見ている限り,最近のオープンワールドゲームは,パズルや探索など,アドベンチャー要素を前面に押し出したタイトルが多いように思うので。

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4Gamer:
 先日プレイしましたが,確かにバトルは歯ごたえがありますね。では,アニメ調のグラフィックスを採用した理由は何になるでしょうか。

应氏:
 アニメの経験が豊富なスタッフが多いことがまずありますが,もう1つ,より若い人にプレイしてほしいという狙いがあります。
 本作のゲームプレイは割とコアなものになっていますが,グローバル市場でより多くの人,特に若い人たちに興味を持ってもらえるよう,アニメ調のグラフィックスを採用しました。
 実はチームのメンバーにも,日本のものをはじめとしたアニメ作品が好きな人が多いんです。

4Gamer:
 今应さんがお話になったように,日本からはすぐれたアニメ作品が多数生まれていますが,アニメ調のアクションRPGというジャンルでは,中国のデベロッパが成功を収めています。このジャンルにおいて中国が一歩先を行っているのは,なぜだとお考えですか。

应氏:
 中国のアニメ調アクションRPGが注目されている理由としては,miHoYoの存在が大きいと思っています。miHoYoの成功には必然性も偶然性もあって,彼らを真似ればいいというわけではないと感じていますが,アニメ好きのファウンダーが先頭に立って自分が好きなものを作って成功していることが,より良い作品を作れるように周囲を引っ張っていると思っています。

4Gamer:
 身近なところで成功例が出たら,「自分たちも」と思うのは自然な流れでしょうね,

应氏:
 ゲームではない純粋なアニメ作品においても,中国はここ数年すごいスピードで進歩していると思います。1年間見ていないだけで,もう別物のようです。これにも確実に相互作用があると感じているのですが,その発端,キーとなっているのは日本のアニメだと感じています。自分たちも,必ず日本アニメを“先輩”として勉強しています。

4Gamer:
 さきほど,「miHoYoの成功には必然性も偶然性もある」というお話がありましたが,そのあたりについて,詳しい話を聞かせてください。

应氏:
 成功率が決して高くないゲーム業界において,リリースするゲームをことごとくヒットさせるには,やはり偶然の要素が絡んでくるのではないかと感じます。もともとのmiHoYoは,すべてのリソースを1タイトルの開発につぎ込んでいるような会社でしたし。

4Gamer:
 当たるかどうか分からないものに全力を傾けるのは,ビジネスとしてはかなりのリスクですよね。

应氏:
 ただ,そういったビジネス面のことなどを考えず,自分の好きなものにすべてのリソースを投入してゲームを開発したからこそ成功したのだろう,と感じる部分もあるんです。これが「必然」の部分ですね。

4Gamer:
 なるほど。確かに,簡単に真似できそうなやり方ではないですね。
 では少し話題を変えまして,「China Hero Project」(以下,CHP)に参加することになった経緯を聞かせてください。

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 SIE上海は2024年7月25日,「China Hero Project 第3期発表会」を中国・上海で開催した。今回新たに,クトゥルフ風のマルチプレイヤーオープンワールドアクション「Unending Dawn」,失われた西域を描くシングルアドベンチャー「楼蘭 Kroraina」,武侠ARPGの「Brocade-Clad Guard」の3作を発表した。

[2024/07/26 07:00]

应氏:
 最初にSIEへ連絡した目的は,コンシューマゲームをどう作ればいいかを知ることだったんです。中国ではコンシューマゲームを開発するメーカーがとても少ないので,距離や壁みたいなものがあったというか。私も最初はコンシューマ版の開発チームを別に作らないといけないのかと思っていたぐらいです。
 それで包さん(CHPを主導する包波氏)と会って,いろいろと話をするうちに,双方が「提携した方がいいんじゃないの?」ということになって,CHPに参加しました。
 さまざまな技術的指導をいただいたおかげで,PlayStation版の開発もスムーズに進められています。

4Gamer:
 参加したメリットはありましたか。

应氏:
 はい。PlayStationが移植作業を簡単にしてくれていることが分かりましたし,最初に感じていた壁が壊されたんじゃないかなと思っています。
 CHPは海外の開発者を招待して講座も開いてくれるので,自分たちの知見が深まったと思います。例えば「Marvel’s Spider-Man」シリーズのプロデューサーさんは,コントローラ振動の重要性や,その作り方を説明してくれました。

4Gamer:
 自分たちだけでやっていたら,海外の開発者からじっくりアドバイスを受ける機会はめったにないでしょうね。

应氏:
 ほかにも,こちらがデモを作ったら長い時間をかけてプレイしたうえで意見を返してくれますし。それが結構細かくて,例えば「エフェクトはこうやって変えたほうがいいですよ」とか「ステージはこうやって改善した方がいいでしょう」といった感じです。
 CHPに参加してよかったのは,やっぱり視野が広がったことですね。

4Gamer:
 では,Unending Dawnの特徴となるバトルについてお聞きします。実際にプレイさせてもらって,いわゆる“死にゲー”の要素がありつつも,ちょうどいい難度というか,一般的な“死にゲー”ほどはシビアではないという印象を受けました。そういう設定にした狙いは何でしょうか。

应氏:
 メディア向けのハンズオンではそこまでプレイできていないと思いますが,実を言うと,後半に出てくる敵は強くて,倒すのが難しくなっています。

4Gamer:
 最終的には“死にゲー”のような難度になるんですね。では序盤の敵が倒しやすくなっているということですか。

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应氏:
 はい。最初の段階では挫折せずにゲームやアクションに慣れることができて,最終的には本当に難しいボス戦に挑めるものを考えています。死にゲーのプレイヤーの中で結構な割合の人が,難しさに負けて本当の面白さを体験できないまま止めてしまっていると感じるので。

4Gamer:
 自分もそうなりがちなので,よく分かります。

应氏:
 「ELDEN RING」は大ヒットして本当に多くの人がプレイしましたが,やっぱり難度というか,ハードルを下げるようなことをしていると感じます。例えばオープンワールドを採用したり,武器の種類を増やしたりして,プレイヤーにより多くの選択肢を提供しているのではないかと。自分たちもその理念を追っていて,序盤の難度を下げています。

4Gamer:
 死にゲー風の要素としては,相手の体勢や体幹といったようなものを表す黄色いゲージがありますよね。敵の攻撃をガードしたり避けたりしてゲージを削りきると,敵が無防備になって,攻撃を入れ放題になるという。あれはどのような意図で採用しているのですか。

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应氏:
 中国でよく見かけるアクションゲームとは異なる体験,バトルを楽しんでもらいたいと思ったからです。プレイした人はすぐに分かると思いますが,あれは「SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE」を参考しています。
 中国のアクションゲームは,プレイヤーキャラが華麗に技を繰り出すような演出を第一に求められることが多いのですが,戦いというものは,自分の都合だけで進められるものではありませんよね。

4Gamer:
 それはそうです。

应氏:
 対戦する双方のことを考える必要があって,自分の技と同じくらい,敵の技も重要です。攻撃だけではなく,ガードだったりパリィだったりといった防御面のアクションを含めた駆け引きを実現するために,あのゲージを入れました。削りきれば,華麗なアクション満載の,プレイヤーのパフォーマンスの時間になります。

4Gamer:
 耐えに耐えてから一気に攻勢に出る,というメリハリがありますよね。
 本作はマルチプレイに対応するとのことですが,先日の試遊の際,そこにいた担当の方から「詳細は決まっていない」とうかがいました。
 現時点でお話できる範囲で,どんなものになるか教えていただけますか。

应氏:
 ゲームのデザインとしては,マルチプレイでもシングルプレイでも問題なく楽しめるものを作りたいと思っています。マルチプレイのほうは,ある程度ゲームを進めればフレンドと一緒にプレイできるようになって,ソーシャルの場になるようなイメージです。人数は3〜4人くらいを考えています。

4Gamer:
 その場合,プレイヤーキャラや敵のステータスに変更が入るのでしょうか。

应氏:
 例えば4人チームでボスに挑戦するときに,ボスが4倍強くなる……といった仕様は考えていません。さきほど話したように,挫折感を少なくするのが目標の1つなので。
 プレイ人数を増やすと,負けたときに「自分のせいじゃない,あいつのせいだ」という考え方ができるようになることもあって,その面からもハードルが下がる効果があります。

4Gamer:
 なるほど(笑)。
 
应氏:
 人数を増やすことでプレイしやすくなった例は,過去にもあります。RTSという1vs.1のジャンルから,5vs.5のMOBAが生まれて,プレイヤー人口が一気に増えました。中国で人気のMOBA「王者栄耀」(邦題は「アリーナ・オブ・ヴァラー」)では,10vs.10のモードが追加されています。

4Gamer:
 プレイヤーの性格によるところはあると思いますが,人数が多ければ「自分はミスしたけど,それだけが敗因じゃないよね」と思うことは増えそうですね。
 さきほど,死にゲーをプレイする人の多くが,その面白さを分かる前に諦めてしまうといった話がありましたが,应さんが考える死にゲーの面白さとはどんなところでしょうか。

画像集 No.006のサムネイル画像 / 死にゲーの達成感は,死を繰り返す過程にこそある!? 「绝晓(Unending Dawn)」のプロデューサーに聞く[CJ2024]

应氏:
 私の体験談で説明しましょう。あまりアクションゲームが得意なほうではないので,「SEKIRO」をプレイしたとき,最初のボスを倒すのに8時間もかかったんです。
 その間,妻が何度も「ご飯食べなさい」と私の部屋に来るのですが,毎回画面に大きな「死」の文字が表示されていて……。

4Gamer:
 (笑)。8時間もよく続きましたね。

应氏:
 挫折を感じる暇もなかったというか,止まることができなかったですね。
 ただ,最終的にそのボスを倒して,すごい達成感を感じたんですが,よく考えてみると,それはボスを倒したことではなく,その過程,8時間の間に少しずつ操作がスムーズになったり,より長く戦えるようになったりしたことによる達成感なのではないかと感じたんです。

4Gamer:
 その過程が死にゲーの面白さとお考えなんですね。

应氏:
 ただ,8時間は普通のプレイヤーには長すぎるので,Unending Dawnは,最初に数分間や30分ぐらいでの達成感をまず味わってもらって,慣れてきたら数時間の無我夢中の体験をできるように作っています。

4Gamer:
 期待しています。そろそろ時間のようなので,今後のお話をうかがいたいのですが,リリース時期はいつごろを予定していますか。

应氏: 
 外部の方に試遊してもらうのは今回が初で,開発はまだまだ続きますが,いずれはプレイヤーのみなさんを対象にしたオフラインテストの場を設けて,フィードバックをもらえるようにしたいです。
 できれば来年に“一歩先”へと進みたいとは思っていますが,それまでにパブリッシャがついてくれることになったら,そちらとも相談のうえでスケジュールを決めることになると思います。

4Gamer:
 最後に,本作のリリースを待っている読者にメッセージをお願いします。

应氏:
 Unending Dawnは,アニメ調のソウルライクで,かつ長期的に運営するという,新しいゲームです。新しいものに市場がどう反応するのか,成功できるのかをしっかりと検証する必要がありますので,プレイヤーのみなさんからの声を聞いて,期待に応えられるゲームを作りたいです。

4Gamer:
 ありがとうございました。

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