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[TGS 2016]シューティングから日本のゲームにインスパイアされたアドベンチャーまで。注目のインディーズゲーム3作品のクリエイターにインタビュー
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印刷2016/09/21 20:39

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[TGS 2016]シューティングから日本のゲームにインスパイアされたアドベンチャーまで。注目のインディーズゲーム3作品のクリエイターにインタビュー

 東京ゲームショウ2016のインディーゲームコーナーに出展されていた,「Starr Mazer: DSP」「WILL」「Read Only Memories」。日本ではアクティブゲーミングメディアがパブリッシングを行う,これら3作品のクリエイターに話を聞かせてもらった。

PLAYISM公式サイト



シューティングの間口を広げる

ローグライク弾幕シューティング「Starr Mazer: DSP」


 まずは,“ローグライク弾幕シューティング”である「Starr Mazer: DSP」を手がける,Imagos SoftworksのDon Thacker氏。ポイント&クリック型のアドベンチャーゲームとシューティングゲームを融合させた,現在開発中の「Starr Mazer」のシューティングゲームパートを,独立したゲームとして分離させたのが本作だ。ランダム生成される,能力や武器が異なるパイロット達を,スコアを使って雇い,敵を撃ち倒していく。

Imagos SoftworksのDon Thacker氏
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4Gamer:
 よろしくお願いします。東京ゲームショウを見ての感想は?

Don Thacker氏(以下,Thacker氏):
 20年ほど前に日本に来たことがあるけど,東京ゲームショウは初めて。ただ一言,素晴らしいね。

4Gamer:
 実際にゲームをプレイした人の反応はどんなものがありましたか?

Thacker氏:
 みんな楽しんでくれてるよ。ビジネスデイからずっと誰かがプレイしてくれていて,試遊台が空くことが無かったほどなんだ。

4Gamer:
 どんな人がプレイしていましたか?

Thacker氏:
 だいたい30代前後の男性が多かったけど,グラフィックスや音楽に引かれて足を止めてくれる女性も結構いたね。一般公開日の初日なんかは,「東方Project」のZUNさんが来てくれて,「人を引き付けるゲームだね」という感想をくれたよ。
 シューティングゲームのプレイヤーは男性ばかりだと思いがちだけど,そうした思い込みは正しくないと分かったね。シューティングを遊ぶということに関しては男性も女性も関係ない。

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4Gamer:
 そう聞くと心強いですね。

Thacker氏:
 昔のシューティングを思い出すようなことも大事だけど,それと同じくらいに大切なのが,新しい人々を呼び込むということだね。
 だから僕達は,「Starr Mazer: DSP」で昔懐かしいドット絵を使っている。同時に,被弾しても運が良ければミスにならない「生存率」システムや,手持ちのスコアをお金のように使っていろいろなパイロットを雇うという,新たな戦略性を持つシステムも実装した。それもこれも,新しいユーザーを取り込むためなんだ。
 僕らのチームは3分の1が女性だから,女性的な視点からのアイデアも出してもらってるよ。どんな人にも受けるゲームにしたかったんだ。

4Gamer:
 そうした取り組みは,現在のシューティング界にとても大事なことだと思います。
 ところで,パイロットがランダム生成されるのは,どういった理由からでしょうか。シューティングと言えば,ランダム性があまり喜ばれず,一定の条件下で何度もプレイすることでスコアを突き詰めていくものである……というイメージを抱きがちですが。

Thacker氏:
 理由は2つあるんだ。
 まず,何度でも遊べるリプレイ性を考えると,ランダム要素を取り入れることが大事になる。また,ゲームを遊ぶたびに未知との出会いがあるようにしたかったんだ。
 僕は子供の頃にPCエンジンのゲームを遊んでいたんだけど,一定のパターンで敵が出てくるなんて思ったことはなかった。毎回新しい経験があるように思えたし,ゲームのあらゆる出来事がランダムで起こっているように感じられたんだ。……まあ,実際にはあらかじめ定められたパターンに基づいてゲームが展開していたんだけどね。

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4Gamer:
 なるほど。では,現在開発中の「Starr Mazer」について教えてください。ポイント&クリック型のアドベンチャーゲームとシューティングゲームを組み合わせるというアイデアは,どこから出てきたんでしょうか。

Thacker氏:
 小さい頃に僕が好きだったジャンルを組み合わせたんだよ。アドベンチャーゲームはストーリーが面白いけどアクション性はないし,シューティングゲームはその逆だった。だから,ストーリーを楽しみたいときはアドベンチャーゲームを,アクションがやりたい場合はシューティングゲームを遊んでいたんだ。

4Gamer:
 ストーリー性のあるゲームと,アクション性のあるゲームの両方が好きだったけれど,2つの欲求を同時に満たしてくれるものがなかったと。

Thacker氏:
 そうだね。その頃,僕が考えていた最高のゲームというのが,アドベンチャーゲームとシューティングゲームの要素を掛け合わせたものだった。将来ゲーム開発者になったら,そんなゲームを作ってみたいと思っていたんだよ。

4Gamer:
 まさに「僕が考えた最強のゲーム」ですね。

Thacker氏:
 例えば,アドベンチャーパートで仲間ができたら,シューティングパートで実際にNPCとして登場して,一緒に戦ってくれたりといった具合に,2つのジャンルが融合しているんだ。

4Gamer:
 現在の完成度は何%くらいですか?

Thacker氏:
 だいたい60%ぐらいじゃないかな。逆に僕から質問したいんだけど,今の日本でシューティングってどんな感じなの?

4Gamer:
 マーケット自体は大きくありませんが,熱意あるクリエイターとプレイヤーがいるといったところでしょうか。日本では一時期シューティングゲームの高難度化が進み,一部のコアプレイヤーが遊ぶジャンルになっていましたが,近年は2つの液晶画面をつないだ「ダライアスバースト アナザークロニクル」のような意欲作も発売され,シーンは盛り上がっています。

Thacker氏:
 なるほど。「Starr Mazer: DSP」を開発するうえでのゴールは,どんなユーザーにも届くゲームを作るというものなんだ。プレイ自体はオーソドックスな横スクロールシューティングだけど,ゲームを進めていくと,パイロットの雇用など,新しいシステムがいろいろと出てくる。新規プレイヤーも,ハードコアなゲーマーも楽しめるものになっていると思うよ。

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4Gamer:
 確かに,シンプルで奥深いものになっていると感じられました。では,これまでにプレイしたアドベンチャーゲームとシューティングゲームのベスト3を挙げていただけますか?

Thacker氏:
 アドベンチャーゲームは1位が「Monkey Islands 2」,2位が「Beneath a Steel Sky」,3位が「Gabriel Knight: Sins of the Fathers」
 シューティングゲームは1位が「ウィンズ オブ サンダー」,2位が「ゲート オブ サンダー」,3位が「ガンヘッド」。全部PCエンジンだね。チャッチャーラーラーラーチャラチャチャッチャッチャッチャッチャラーン!

4Gamer:
 PCエンジンへの愛が溢れていますね(笑)。最後に,読者へのメッセージをお願いします。

Thacker氏:
 「Starr Mazer: DSP」は今のところアーリーアクセス版なんだけど,2017年3月の正式リリースに向けて,スコアアタックやタイムアタック,ボスラッシュといった,いろいろなコンテストをやっていくよ。優勝者の顔をパイロットとしてゲームに取り入れたりもするから,ぜひアーリーアクセス版を楽しんでほしいね。

4Gamer:
 ありがとうございました。

PLAYISM「Starr Mazer: DSP」紹介ページ



文章を入れ換えて運命を変える群像劇

「WILL」


 続いては,「WILL」を開発中の,4D Door GamesのCEO,王 妙一氏。同作は一風変わったシステムを持つアドベンチャーゲームで,ノベル部分の文章を入れ換えることで人々の運命を変化させていく。その過程では多くのキャラクターが登場し,それぞれの運命が複雑に絡み合っていくという。

4D Door Games CEO,王 妙一氏
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4Gamer:
 まずは,どんなゲームなのか教えていただけますか。

王 妙一氏(以下,王氏):
 プレイヤーは神の少女になり,文章を入れ換えることで人々の願いを叶えていきます。バタフライ効果のように,誰かが起こした行動がほかの人に影響を与えていくんです。

4Gamer:
 少し不思議な雰囲気を持つ作品ですが,制作に至ったきっかけは?

王氏:
 私達は,「街」「ダンガンロンパ」「逆転裁判」「ゴースト トリック」といったゲームや,「深夜食堂」などのコミックが大好きで,そうしたエッセンスを持つゲームを作ってみたいと思ったんです。

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4Gamer:
 オーソドックスな選択肢式ではなく,文章を入れ換える方式にした理由は何でしょうか。

王氏:
 予算が足りなくてグラフィックスにあまりお金をかけられないので,文章がたくさんあるゲームにしようと思ったんです。とは言え,ただ文章を読むだけではゲームになりませんから,文章自体を入れ換えることで展開が変わるゲームを考えつきました。

4Gamer:
 このゲームにはどんなキャラクターが出てくるんでしょうか?

王氏:
 片想いをしているオタクや自殺願望のある貧乏芸術家,絶望の中で夢を追い続ける女性や暗殺者など,さまざまです。韓国や中国,メキシコなど,いろいろな国の人々ですね。人間ばかりでなく,猫もいますよ! キャラクターのバリエーションが豊かなのは,「街」からの影響でしょうね。

4Gamer:
 現在発表されているキャラクターは7人と1匹ですが,彼らの運命を入れ換えていくと,その組み合わせはかなりの数になりそうです。制作に苦労した点はありますか。

王氏:
 プログラム的にと言うよりは,レベルデザイン的な難しさはありましたね。あまり難しすぎてもプレイしてもらえませんし,難度を調整するのは簡単ではないです。最初のうちは簡単に物語が進みますが,後半になると少しひねった仕掛けも用意してあります。
 一見するとベストエンディングのようで,実はそうではない,物語を先へ進めるためには,あえて不幸なルートへ進まなければならない……といった場合もあります。

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4Gamer:
 それは攻略のしがいがありそうですね。
 ところで,東京ゲームショウの印象はいかがですか?

王氏:
 今年の東京ゲームショウはVRもあって賑やかでいいですね。個人的にはエレメカっぽい「ラインウォブラー」が楽しかったです(関連記事)。

4Gamer:
 中国のインディーズゲーム事情について教えてください。

王氏:
 中国でもゲーム産業に関わる人は多いですが,インディーズゲームだけで生きていくのは難しいですね。ゲーム会社に勤めていれば高い給料をもらって安定した生活ができますが,残業やら何やらで自分のクリエイティビティを発揮する時間がありません。
 一方,インディーの人々は,お金こそありませんが,好きなものを作ることができます。何千というインディーズデベロッパが存在していて,学生もいますし,私達のようにゲーム会社からインディーへ転身した人たちもいます。

4Gamer:
 そのあたりは日本とよく似ていますね。中国というと,オンラインゲームが盛んな国という印象がありますが。

王氏:
 やはりオンラインゲームやモバイルゲームのユーザーが多いですが,“タダだから遊んでいる”という側面が強いですね。インディーズゲームのプレイ人口は40万人くらいで,中国製の良作は10万本くらいを売り上げます。

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4Gamer:
 なるほど。インディーズゲームを好む人も一定数いるわけですね。今回は日本語版が用意されていますが,翻訳はどのように行われたんでしょうか。

王氏:
 翻訳はこちらで行い,リファインをアクティブゲーミングメディアさんにお願いした形になります。

4Gamer:
 では,最後に読者にメッセージをお願いできますか?

王氏:
 神になって人々の運命を変えていくという,ちょっと変わった体験ができるので,気になった人はぜひ遊んでみてください。

4Gamer:
 ありがとうございました。


日本産ゲームのDNAがディープなテーマを問いかける

「Read Only Memories」


 最後は「Read Only Memories」を開発したMidBossのJohn James氏。同作はサイバーパンクがテーマのアドベンチャーゲームで,昔懐かしいドット絵風の画面が特徴になっている。

4Gamer:
 まずはゲームの概要を教えていただけますか?

John James氏(以下,James氏):
 「Read Only Memories」は2064年のネオサンフランシスコを舞台としたサイバーパンクアドベンチャーです。主人公のジャーナリストは,ある日押しかけてきた自律型AIの「チューリング」と共に,親友が行方不明となった謎に挑みます。

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4Gamer:
 セールスポイントはどういった部分でしょうか。

James氏:
 会話に次ぐ会話,パズル形式のミニゲームやマルチエンディングといったところですね。このゲームには基本的にゲームオーバーというものがありません。例えば,ミニゲームを失敗したとしても,失敗したなりの分岐で物語が進んでいくんです。

4Gamer:
 物語のテーマはどういったものですか?

James氏:
 人間とアンドロイドの融合であったり,AIとは何かというディープなものになります。

4Gamer:
 そうした奥深い物語を作るにあたり,インスパイアされたものはありますか?

James氏:
 一番強くインスパイアされたのは,昔サンフランシスコで行われたゲームジャムのテーマが「Diversity(多様性)」であったことです。1つの場所にたくさんの人種や意見が集まって,るつぼのようになっている,というくらいの意味ですね。このDiversityを最もうまく表現できるのは,物語が絡み合ったシステムだと考え,アドベンチャーゲームとしての「Read Only Memories」が生まれました。
 どういったスタイルの物語にするかという点では,チームの全員が好きだった「スナッチャー」「ポリスノーツ」,そして僕が好きな「ジーザス 恐怖のバイオモンスター」を融合させ,アートワークは西洋風のものとしました。

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4Gamer:
 昔の日本のアドベンチャーゲームを意識したと。

James氏:
 そうですね。制作当時にアドベンチャーゲームのリバイバルブームがあったんですが,「Monkey Islands」や「Gabriel Knight: Sins of the Fathers」,そしてTelltale Gamesの作品群に注目が集まっていました。そこで僕らは日本スタイルのアドベンチャーゲームを意識して作品作りをしていったんです。結果として日本のユーザーに好まれるスタイルになったんじゃないでしょうか。

4Gamer:
 ドットグラフィックスを使った理由は何でしょうか。

James氏:
 理由は2つあります。懐かしさを追求するためと,チームが小規模なので3Dグラフィックスのために人を雇うわけにはいかないからです。僕自身も2Dグラフィックスを扱った経験がありますし,制限はあるけれどいろいろな表現ができ,アニメーションさせるのが3Dグラフィックスより楽なんです。

4Gamer:
 東京ゲームショウで実際にプレイした人の反応はいかがですか。

James氏:
 ポジティブな反応をいただきました。海外のイベントだと,最初の数分くらいを遊んで「だいたい分かったよ」と止めてしまう人が多いんです。でも,日本のプレイヤーはずっと真面目に遊び続けてくれますね。今回出展したバージョンは日本語訳が途中までしか入っていないんですが,日本語部分の最後までキッチリとプレイしてくれる。驚きましたし,すごく嬉しいと思いました。

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4Gamer:
 日本語訳はどこが手がけたのでしょうか。

James氏:
 アクティブゲーミングメディアさんです。翻訳者の方と直接やり取りができますし,元々のテイストを保った翻訳をしていただいて,出来栄えにもとても満足しています。

4Gamer:
 インディーゲームコーナーで印象に残ったものはありましたか?

James氏:
 あまりゆっくりと会場を回れなかったんですが,昔のメガドライブゲームを思わせる「Momodora -月下のレクイエム-」,そして,HMDを付けて頭突きをする「ヘディング工場」が面白かったです。後者はVRなのにリラックスして遊べたのが面白かったですね。あとはセガグッズを探していました(笑)。

4Gamer:
 これまでに,どんな日本製アドベンチャーゲームをプレイしましたか?

James氏:
 初めて遊んだのが「スナッチャー」で,次は「ジーザス 恐怖のバイオモンスター」ですね。「ファミコン探偵倶楽部」「バブルガム・クラッシュ!」などもプレイしました。翻訳されたら,ぜひ遊びたいのが「メタルスレイダーグローリー」ですね。
 最近だと「シルバー事件」に注目しています。これまで翻訳されなかったタイトルですし,続編である「花と太陽と雨と」の英語版をプレイしたことがありますから,とても興味があります。

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4Gamer:
 「バブルガム・クラッシュ!」は「Read Only Memories」と雰囲気がよく似ていますね。

James氏:
 開発中はアニメ版をよく見返していましたよ。

4Gamer:
 「Read Only Memories」は,私自身も気になっていたタイトルなので,日本語で遊べることになって嬉しいです。同じように作品を楽しみにしている日本のファンにメッセージをお願いできますか?

James氏:
 ゲームを楽しんでいただければ幸いです。物語に秘められたテーマについて深く考えてもらったり,ユーザーさんどうしで話し合ったりしてくれればと思います。僕らに直接,感想を届けていただくのも嬉しいですね。好きになったとか,嫌いなゲームだとか,ポジティブでもネガティブでも,そのすべてが将来作る作品への糧になります。二次創作も大好物なので,お待ちしています!

4Gamer:
 ありがとうございました。

PLAYISM公式サイト

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