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VR ZONEの新アクティビティ「装甲騎兵ボトムズ バトリング野郎」「マックスボルテージ」を体験。レポート&開発者インタビューを掲載
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印刷2016/08/20 00:00

プレイレポート

VR ZONEの新アクティビティ「装甲騎兵ボトムズ バトリング野郎」「マックスボルテージ」を体験。レポート&開発者インタビューを掲載

「マックスボルテージ」

アクティビティの目的は“自分に酔う”


画像集 No.006のサムネイル画像 / VR ZONEの新アクティビティ「装甲騎兵ボトムズ バトリング野郎」「マックスボルテージ」を体験。レポート&開発者インタビューを掲載
 続いては,7月15日より稼動したもう一つの新VRアクティビティ「マックスボルテージ」である。
 マックスボルテージは,実に説明するのが難しい。というのも,ゲームとしての明確なゴールがないからだ。
 バトリング野郎には「敵プレイヤーを倒す」という目的があり,「高所恐怖SHOW」には「高所に迷い込んだ猫を救う」という目的がある。その点,マックスボルテージはVR体験自体にゴールが設定されておらず,あえて目的を言語化するならば,「自分に酔うこと」になるだろうか。VR体験において「酔い」は何を置いても排除したい要素だが,マックスボルテージでは「自分に酔う」が目指すべきゴールなのである。
 これはどういうことか。順を追って説明してみよう。



ヘッドフォンなし。大音量サラウンドサウンドの専用ブースへ


 マックスボルテージは,1人ずつ体験するタイプのVRアクティビティ。体験者のみ専用ブースに入ることが許され,同行者は外でモニターを見るという具合だ。
 専用ブースの広さは3m×4mといったところ。このサイズは,マックスボルテージにも採用されているHTCのViveが想定するルームスケールVRの大きさに合わせているのだろう。四方の壁には防音素材が組み込まれており,外界からの音はほぼ遮断される。逆にブース内の音も外に漏れない設計となっている。

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 なぜ防音設備なのか。
 実は,マックスボルテージの体験者はVR HMDを被るが,ヘッドフォンは装着しない。防音ルームには実体物としてのスピーカーが設置されており,体験中は大音量で5.1chサラウンドサウンドが再生されるのだ。

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 体験者が扮するのはロックミュージシャン。しかも,ライブに出演しているという設定である。
 だから,VR HMDを被った状態で周囲を見回せば,背後には楽器を持ったバックバンドの面々がいて,前方にはパノラマビュー状態で大勢のファン達が詰めかけ,熱い声援と視線を送ってきている。体験者は,5.1chサラウンドサウンドのバンド演奏に乗せて,心ゆくまで歌うことになる。

 体験者にはVR HMDのほか,2つのViveコントローラが与えられる。片方はマイクと一体になったものだ。すべての準備が終わると,スタッフは退出し,防音ルームのドアは閉じられる。
 バックバンドの演奏は後ろから聞こえるが,ファンの大歓声は自分を取り込むかのように前や左右から聞こえてくる。この「音に浸かる」ような臨場感は,ヘッドフォンで再現するのは難しいはずだ。バスドラムやベースの重低音が腹に来る感覚も,スピーカーサウンドならではといったところ。

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 現在,選択できる楽曲は2曲だ。なぜかイカ天全盛期(1980代終盤から1990年代前半あたりの第二次バンドブームとも呼ばれる時代)を代表するTHE BLUE HEARTS(ザ・ブルーハーツ)の「リンダリンダ」,JITTERIN'JINNの「夏祭り」となっている。開発者の思い入れの強い2曲が選ばれたのかもしれない。
 若い読者の中には,この2曲を知らない人もいるだろうが,カラオケのように歌詞は表示されるので安心してほしい。そして,どんなヘタな歌声でも外には聞こえない。ブースの外には室内モニターが設置されているが,音声は聞こえないようになっている。

 今回,筆者はバンド演奏に乗せて,サザエさんやドラえもんのテーマなどの歌詞を適当に歌ってみたが,結構楽しかった(笑)。片手に持たされるマイクは,歌声を検出するために利用されるが,音程さえ外さなければ歌詞は適当でもいいらしい。
 もう一方の手で持つことになる「素のViveコントローラ」は,手の動きを検出するためのものだ。歌いながら腕を上げたり下げたりすると,観客のテンションが上がるのだという。

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 体験者の視線はVR HMDで検出している。お気に入りの観客に目線を送りつつ,大声で歌いながら腕を振りまわせば,特定の観客を興奮させることができるのだ。
 最前列付近でかわいいお姉さんが身を乗り出し,こちらに手を伸ばしてくるので,派手なパフォーマンスで応えると,熱の入った表情で激しく身体をくねらせる。
 そう,マックスボルテージは「大勢の観客が自分に夢中」という仮想体験を味わえるVRアクティビティなのである。

 マックスボルテージを体験する機会があれば,向かって右側にいるサラリーマン風の観客に注目してほしい。周囲の観客が興奮状態で跳ね回っているというのに,彼はシラーっとした表情で棒立ちのまま……。
 冒頭,マックスボルテージには「ゲームとしての明確なゴールがない」と述べたわけだが,「何かしらの目的が欲しい」という人は,とりあえず彼を興奮させることに挑戦してみよう。なかなかノッてこないが,一度スイッチが入るととんでもないダンスを披露してくれるはずだ。


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開発者インタビュー


 マックスボルテージにおいても,アクティビティの開発を手がけた高橋徹雄氏大石勇気氏に話をうかがうことができた。バラエティに富んだVR ZONEのラインナップの中でも,際立って個性的なアクティビティはどのようにして誕生したのだろうか。

左:高橋徹雄氏(バンダイナムコスタジオ),右:大石勇気氏(バンダイナムコエンターテインメント)
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4Gamer:
 本日はよろしくお願いします。
 マックスボルテージについて,公式サイトの説明に目を通しても,どんな体験なのか想像ができなかったのですが,とてもユニークなVRアクティビティですね。

高橋氏:
 ありがとうございます(笑)。
 自分は以前,バンドマンをやっていまして,大石のほうは1人カラオケが好きということで,「音楽をテーマにしたVR体験を作れないか」と。そこから立ち上がった企画なんです。

大石氏:
 最初は「カラオケVR」という案もありました。カラオケルームに女性キャラクターと一緒に来ているという設定で,自分が歌うとそれに合わせて手拍子で盛り上げたりしてくれるといったような。

4Gamer:
 「サマーレッスン」のカラオケルーム版といったところですね。

画像集 No.042のサムネイル画像 / VR ZONEの新アクティビティ「装甲騎兵ボトムズ バトリング野郎」「マックスボルテージ」を体験。レポート&開発者インタビューを掲載
高橋氏:
 ただ,それではちょっと物足りないかなと。実際に体験できるなら,ほんの一握りの人に限られる「貴重な体験」のほうがいいだろうという意見があり,最終的に「スーパーロックミュージシャンになって,ライブに出演するVR体験」という方向性が定まりました。

4Gamer:
 既存のゲームを参考にした部分はありますか。

大石氏:
 最初は,プレイヤーと観客とのインタラクティブな関係性の表現の参考として,「Rock Band」のような音楽ゲームを参考にしたりもしましたが,結局,大部分は手探りでの検証の繰り返しでしたね。

高橋氏:
 直接参考にしたものはないのですが,VRコンテンツを制作するうえで参考……というか勉強させてもらったのは,弊社の原田が開発している「サマーレッスン」でしょうね。

4Gamer:
 なるほど。
 楽曲は2曲から選べますが,どちらもライブ会場や観客の顔ぶれは同じですか。

大石氏:
 楽曲によって動き方は異なりますが,今回のバージョンでは同じ観客です。曲数はまだ2曲ですが,将来的に音楽のジャンルや曲に合わせて,観客の風貌や特有のアクションなどのバリエーションを増やしていきたいです。

4Gamer:
 観客の動きが非常にリアルだと思えました。この制御や挙動には相当なノウハウが詰め込まれているのではないか,と感じましたが。

高橋氏:
 観客の基本的な動きは,実際のライブ客と同様,楽曲のビート(リズム)に支配されています。
 ただし,それだけでは不自然になります。ライブ会場の観客というのは,お気に入りのミュージシャンの楽曲を聞きに来ているので,盛り上がる箇所を知っているわけです。そのあたりを再現するために,たとえばサビの入り部分で一斉にジャンプしたりとか,楽曲ごとでアニメーションをアレンジしています。
 さらに「ライブ感」を生むために,体験者のさまざまなパフォーマンスに対してリニアにレスポンスする仕組みが入っています。

4Gamer:
 確かに自分もライブ会場のステージに立っている気分になりました。

高橋氏:
 でも,それだけだとまだ違和感が強くて機械的な反応に感じられてしまう。

画像集 No.041のサムネイル画像 / VR ZONEの新アクティビティ「装甲騎兵ボトムズ バトリング野郎」「マックスボルテージ」を体験。レポート&開発者インタビューを掲載

大石氏:
 そこで,音楽ライブの映像を見たり,実際にライブ会場に足を運んだりと研究していくうちに,いくつか分かったことがありました。

4Gamer:
 それは何ですか。

高橋氏:
 観客は「あなたの音楽が好きで,わざわざ会場に足を運んで,曲を聞きに来たのよ」という期待の表情でミュージシャンに歓声を送ります。その表情に対して,ミュージシャンは「こうすれば気持ち良いだろう」というパフォーマンスで応えるんです。
 すると,観客は期待に応えてくれた「喜びのリアクション」を返す。この往復でさらに盛り上がっていくわけです。
 こうした「感情と情念のコミュニケーション」が成立して,初めて「ミュージシャンと観客との関係性」が生まれるんです。

大石氏:
 このことに気がついてからは,それまでの制作方針をあらためて,その一点の作り込みと再現に注力しました。

4Gamer:
 それでは,体験者の歌に対して採点は行われているのでしょうか。

高橋氏:
 歌声の音程(音高)や音量,リズムなどの評価は行っています。また,先ほどお話した観客とのやりとりでライブを盛り上げることができたか,といった部分の評価もしていますが,これを数値化して体験者に伝えることはしていません。

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大石氏:
 当初はカラオケの採点システムのように提示するという案もあったのですが,観客をいかに盛り上げることができたか,つまり気持ちよさを評価する方針へ切り替えたので,カラオケ的な歌唱への評価は当初よりもだいぶ比重を下げています。

4Gamer:
 稼働開始から約1か月ですが,マックスボルテージの人気はいかがでしょう。

高橋氏:
 体験していただいた方の評判はかなりいいですね。ただ,カラオケ的なアクティビティと思われる人もいるようで,そこで遠慮されてしまうケースもあります。

大石氏:
 普段カラオケとかで歌う機会が少ない方には,ちょっとハードルが高いかなと思われがちですが,実は全然そんなことはないんです(笑)。歌自体を評価するアクティビティではないので,歌が苦手な人でも大丈夫です。歌声も外には漏れませんのでご安心下さい。
 ホラーや戦闘の要素がない「気持ちのいいアクティビティ」なので,ぜひ多くの人に体験してもらいたいですね。

4Gamer:
 今後の展開はいかがでしょう。楽曲の追加も期待したいところです。

大石氏:
 将来の展開については,VR ZONEでのフィードバックを見ながら探っていきたいと考えていますので,現時点で決定していることはまだありません。

高橋氏:
 楽曲の追加は前向きに検討したいですが,音楽のジャンルが変わると観客も変えなくてはいけないので,まずは人気が出てもらわないと。
 基本的にはどんな楽曲であれ,気持ちいい体験ができるでしょう。もちろん,ノリの良い曲のほうが向いてますが,アニソンだろうが演歌だろうが楽しいと思います。
 個人的には,ぜひメタルを追加したいと思っていますが(笑)。

4Gamer:
 続報を楽しみにしています。どうもありがとうございました。

「VR ZONE Project i Can」公式サイト



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