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[TGS 2016]アメリカ,中国,欧州,東南アジア,そして日本のゲーム市場はどうなっていくのか。「グローバル・ゲーム・ビジネス・サミット 2016」聴講レポート
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印刷2016/09/20 15:24

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[TGS 2016]アメリカ,中国,欧州,東南アジア,そして日本のゲーム市場はどうなっていくのか。「グローバル・ゲーム・ビジネス・サミット 2016」聴講レポート

 2016年9月16日,東京ゲームショウ 2016にて,TGSフォーラム2016の一環として「グローバル・ゲーム・ビジネス・サミット 2016」が開催された。前回まで6回にわたり行われていたアジア・ゲーム・ビジネス・サミットの規模を拡大した本セッションでは,「グローバル・ゲーム市場の行方」をテーマに,世界のゲーム企業のトップがパネルディスカッション形式でゲーム市場のトレンドについて話し合った。

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パネリスト:
Electronic Arts VP & GM Mobile Japan 牧田和也氏(米国)
Abylight CEO Eva Gaspar氏(スペイン)
Asiasoft Online CEO Pramoth Sudjitporn氏(タイ)
Tencent Japan Japan Duputyy Director Julian Vig氏(中国)
バンダイナムコエンターテインメント 取締役 CS事業部担当 冷泉弘隆氏(日本)

コメンテーター:
SMBC日興証券 株式調査部 エンタテインメント・メディアチーム シニアアナリスト 前田栄二氏

モデレーター:
日経BPヒット総合研究所 上級研究員 品田英雄氏

牧田和也氏
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 ディスカッションの最初のテーマは,「ゲーム産業は全世界で拡大しているのか」というものだった。
 牧田氏は,先日発表された新型PlayStation 4のような最新コンシューマ機の低価格版がゲーム市場の規模拡大に貢献するとした。というのも,南米や東欧などの市場では今なおPS2が現役で稼働しているからだ。そうした地域に低価格で最新プラットフォームを投入すれば,さらに市場の拡大が見込めるというわけである。また,モバイルゲーム市場についても,スマートフォンが普及すればするほどゲーム企業にもチャンスが生まれるとした。

 Gaspar氏は,2015年のヨーロッパにおいてデベロッパ400社が新作をリリースしたことを例に挙げ,求められるゲームのジャンルやテイストが多様化していると指摘。その理由を,ゲーム市場が拡大しているからではないかと語った。

 Pramoth氏は,東南アジアではコンシューマ機が高価なためになかなか普及せず,多くの人たちはネットカフェでPCゲームを楽しんでいることを紹介した。またスマートフォンやタブレットでゲームを遊ぶ人も多く,モバイルゲーム市場は対前年比で200%,300%で成長している。

 Vig氏は,中国市場は東南アジアの状況に似ているとする。これは中国で長らくコンシューマ機の販売に規制がかかっていたことに起因しており,結果として中国のゲーム市場はPCゲームとモバイルゲームに偏っている。
 また,世界的に拡大傾向にあるゲーム産業に対し,中国企業のトップは大きな関心と期待を寄せているとのことだ。

 冷泉氏は,日本国内限定で言えばコンシューマゲームは厳しくなっており,その代わりにスマートフォンゲームが大きく伸びている状態と表現し,一方でアジア市場にはまだ開拓の余地があるとした。

Eva Gaspar氏
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 そうした各国や各地域の状況を受けて提示された次のテーマは,「収益の柱はスマートデバイスかコンソールか」というもの。
 Gaspar氏は,各企業の戦略次第でベストなポートフォリオが異なるとし,Abylightでは今後新しいテクノロジーが登場しても対応できるよう備えていると語った。
 Pramoth氏は,上記のとおり東南アジアでは価格の面でスマートデバイスが有利だとする。 また,Vig氏は,Tencentでは当面コンシューマゲームに進出する予定はなく,引き続きPCゲームとスマホゲームに注力するとした(編注:今年5月にコンシューマ機のTGP Boxを発表しているのだが)。

 冷泉氏は,ここ数年の日本におけるバンダイナムコの業績を見ると,スマホゲームが急成長しているが,海外ではコンシューマゲームで大ヒットしているタイトルもあり,当面はどちらにも注力していくと語る。戦略的には収益性と成長性の両者を踏まえ,各地域に最適なものを投入していくとのことである。

 牧田氏は,Electronic Artsではプラットフォームを人々にゲームを届ける手段と考えているとし,コンシューマ機かスマートフォンかといった部分にとらわれることなくゲームの開発やパブリッシングを行っていると語った。

Pramoth Sudjitporn氏
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 3つめのテーマは,「ゲームタイトルに偏りはないか(多様性は維持できているか)」だ。
 Pramoth氏は,東南アジアでは優れた内容であればどんなゲームでも受け入れられるだろうとする一方,たくさんの国や地域があるため,どのようにローカライズするかが課題であるとする。

 Vig氏は,中国では2013年にカジュアルなスマホゲームがヒットし,競合他社が次々にそれをまねたときは偏りが生じたかのように見えたが,主流ジャンルの転換が非常に早いため,結果として偏りがなくなりつつあることを説明した。転換の流れを見ると,2014年にはアクションRPG,2015年にはMMORPG,現在ではMOBAやFPSとなっており,近い将来にはスマートフォンでほとんどのジャンルのゲームを遊べるようになると展望を語った。
 また,Gaspar氏は,プラットフォームの特性や,そのときのトレンドによってジャンルが決まることもあるとした。

 冷泉氏は,バンダイナムコが向き合っている課題として,どうしてもリスクの少ないシリーズものに頼ってしまう傾向にあることを挙げた。
 また,牧田氏は,確かにビジネス面においてシリーズものは有利だが,ゲームとして面白いことが大前提であるとする。そのためElectronic Artsでは,タイトルの数を絞り込んで優れたタイトルを提供しようとしているという。
 その一方では,両社とも常に新しいチャレンジに取り組むよう意識しているとのことである。

Julian Vig氏
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 4つめのテーマは「VR,ARの可能性」だ。
 Vig氏は,TencentでもVRやARには大きな関心を寄せているが,進出するかどうかについては慎重になっていると語る。
 バンダイナムコでは,周知のとおりVRタイトルを大きく展開しているが,冷泉氏は長年研究開発してきたものが今になって花開いたと表現していた。一過性の流行に留めることなく,引き続き優れたコンテンツを作り続けていきたいと意気込みを見せた。
 一方,Abylightでは,ニンテンドー3DS向けにARタイトルをリリースしたことがあり,ビジネス的にも好調だったとGaspar氏。その経験からARには可能性があると考えているという。

 牧田氏は,ゲーム産業全体でVRやARをもっと盛り上げる取り組みが必要ではないかという持論を披露した。さらに,ほかの産業が参入を検討するくらいの盛り上がりを作れたら,大きなビジネスチャンスになるだろうと展望を語っていた。
 その発言を受けてGaspar氏は,たとえば不動産業界には,VRを使って物件の間取りを確認できるようなシステムの需要があるのではないかとのアイデアを示した。
 また,Pramoth氏は,東南アジアでは楽しいもの,優れたものであれば世界の流行に追従するとし,VRやARも例外ではないとする。

 関連して話題は,AIにも及んだ。
 Vig氏は,ストーリー展開にAIを組み込むことで,プレイヤーごとに異なるエンディングを用意するシステムがさらに発展することで,より感動的な体験がもたらされるのではないかと期待を語った。
 また,ゲームにおけるAIは,完璧すぎるよりも,少し隙のあるほうが面白いと冷泉氏。そうしたAIを作るには,より高度な技術が必要であるだろうとした。

 牧田氏は,今やゲーム開発時にテスターの代わりにAIを使ってゲームのバランス調整を自動で行う時代が到来しつつあるとした。
 一方,Gaspar氏とPramoth氏は,まだAIという言葉だけが先行している感があるとする。さらにPramoth氏はゲーム産業におけるAIは,主に分析の分野で活用されるのではないかと予想していた。

冷泉弘隆氏
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 最後のテーマは「ゲームビジネスで注目している国や地域」だ。
 牧田氏は上記の南米や東欧のほかにアフリカを挙げた。Gaspar氏はノルディック諸国と中国,中南米を挙げた。いずれも今後プラットフォームが普及していく余地のある国や地域とのことである。
 Pramoth氏は,東南アジアのモバイルゲーム市場もまだ成長する余地があるとする。その一方で価格をどう設定するかという課題もあるとのこと。

 Vig氏は,Tencentが注目しているのは市場の大きさと,その国や地域のゲーム企業とどれだけ密接な関係を築けるかの2点であると説明し,現在だと中国はもちろん,アメリカ,日本,韓国に注目しているという。
 また,冷泉氏はバンダイナムコでは,ゲームの開発時にはとくに国や地域を意識しておらず,上記のように販売戦略によってどのタイトルをどこで売るか決めていると話す。

品田英雄氏(左)と前田栄二氏(右)
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 ディスカッションの最後には,コメンテーターの前田氏が,今やゲームに限らず世界的にさまざまな産業や分野がボーダーレスになりつつあることに言及し,今後はよりさまざまな形でビジネス的なつながりが広がっていくだろうとの予想を述べた。
 また,2016年は「Pokemon GO」が世界的にヒットしたことを例に,日本が1980〜1990年代から培ってきたIPが今なお強い影響力を持っているとし,昨今元気がないと言われがちな日本のゲーム産業もボーダーレスの中心的な存在になれるのではないかと展望を語ってディスカッションを締めくくった。

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