東京・新宿に本社を構える
デジタルハーツは,ゲームやWebサイトなどのデバッグサービス提供を主幹事業とする企業だ。4Gamer読者であれば,
「デバッグ」という単語を耳にしたことはあるだろう。プログラムのバグ,つまりミスや不具合を発見して取り除くための工程のことだが,それが実際にどのような仕事なのかはあまり知られていない。
そこで今回,
デジタルハーツに勤めるスタッフ4名に集まっていただき,デバッグ業務の実態や職場の雰囲気,適する人材といったテーマについて,座談会形式で語ってもらった。
(左から)メガネさん,ゆうきさん,鈴木さん,アキさん
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入社前と入社後,デバッグのイメージはどう変わった?
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。さっそくですが,皆さんのデジタルハーツ在籍歴やお仕事の経歴から教えてもらえますか。
メガネさん
デジタルハーツ在籍歴:12年
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メガネさん:
自分はデジタルハーツに入って12年になります。専門学校を卒業した直後にアルバイトのテスターとして入社し,のちに正社員になりました。
ゆうきさん:
デジタルハーツ在籍歴は2年4か月くらいです。最初はテスターとして入社し,リーダーを経て,今はマネージャー業務を学んでいるところです。
それ以前はドラッグストアなどで接客業に就いていましたが,現在はデジタルハーツで働きつつ,舞台や声のお仕事もやっています。
アキさん:
デジタルハーツに入社したのは5年以上前になります。自分は以前,俳優をやっていたのですが,どうしても仕事のスケジュールが不規則になってしまうので,シフトを自由に調整できる,さらに髪型や服装の融通が利くということで,デジタルハーツのテスターに登録しました。単純に「ゲームが好き」という理由もありましたが。
鈴木さん:
私は2018年5月に入社したばかりです。以前は飲食店で働いていたんですが,髪型やネイルにこだわりたくて,デジタルハーツを選びました。
4Gamer:
皆さん,勤務地は新宿Lab.(ラボ)なんですね。
ゆうきさん:
基本的にはそうです。案件によっては,都内のほかのLab.に出向くこともあります。
メガネさん:
スタッフはLab.単位で登録されているのですが,ほかのLab.の人員が足りないときに手伝いに行くことがあるんです。また,依頼主のオフィスに直接行って,開発者と顔を合わせて説明をすることもあります。
4Gamer:
それでは,デジタルハーツを志望した動機を教えていただけますか。
メガネさん:
自分の場合はゲームに登場するキャラクターを作りたくて,専門学校でCGを学んでいました。でもゲームメーカーには就職できなかったんです。
そこで,ほかにもゲームに関われる仕事がないかと調べていくうちに,デジタルハーツにたどり着き,デバッグという仕事を知りました。
ゆうきさん:
私は学生のときに,演劇の道に進むか,ゲームの道に進むか,迷っていたんです。そのときは演劇を選んだのですが,ゲームの道もあきらめきれず,仕事を探していたらデジタルハーツに出会いました。デバッグは専門的な知識がなくても,未経験でも仕事が始められますから。
アキさん:
先ほど話したとおり,志望動機として大きかったのは,あらゆる面で融通が利くところですね。
鈴木さん
デジタルハーツ在籍歴:6か月
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鈴木さん:
私も同じです。ある日,唐突に将来が不安になって「就職しないと!」と思ったんですが,髪型や爪を自分の好きなようにしたいという部分だけは譲れなくて。とにかく自由な職場を探していて,デジタルハーツにたどり着きました。
4Gamer:
ゲームに関する仕事である必要はなかったと?
鈴木さん:
そうですね。それからアキさんと同じく,時間の融通が利くことも大事でした。副業で1週間以上,海外に行くこともあるので。
4Gamer:
副業ですか。
鈴木さん:
ザックリ言ってしまうとタレント業です。先日も急に生放送の仕事が入ったので,デジタルハーツの仕事を休むことになりました。
やっぱり,タレント業は自分の好きな見た目で主張することも重要ですから,いろいろと自由なのはいいですね。普通の会社だと,身なりやメイクをきちんとしなければいけないと思いますが,ここは気を遣わなくてもいいんです。
4Gamer:
「時間の融通」というのは,どの程度まで利くのでしょうか。
アキさん:
シフトは登録制なので,自分でスケジュールを細かく決められます。「この日は出社できる」「できない」というのを2か月先まで申告できますし,もちろん,その後の変更も可能です。それこそ,2〜3日前でも大丈夫ですね。
メガネさん:
「デジタルハーツで働く」というときに,自分の身一つで大丈夫というのもいいですね。やる気さえあれば,やっていけます。
ゆうきさん:
実際,バッグを持ってこない人も多いですよね。
メガネさん:
登録説明会に判子と財布しか持って来なかった人もいたよ(笑)。
4Gamer:
各タイトルのデバッグはどれくらいの期間で行なわれるのでしょうか。
メガネさん:
モバイルゲームの場合,1タイトルあたりのデバッグ期間は実質1〜2日というのがほとんどです。だから,テスターは1週間に2〜3タイトルを担当します。もちろん,1か月程度の期間をとる案件もあり,依頼の内容に応じて,さまざまなケースがあるので一概には言えない部分ですけれど。
アキさん:
ある種のデバッグが得意なテスターは,それが必要なタイトルをいくつか並行して担当することもありますね。また,人気作品は希望者が多いですから,ローテーションによって多くのスタッフが関われるようにしたりとか。
4Gamer:
各スタッフが自分のスケジュールを申告するということですが,それらをもとにシフトや配属を決める役割もありますよね。「この日,ちょっと手薄だから出社してもらえないか」といった打診もあるのでしょうか。
メガネさん:
それはあります。強制ではないのですが,休暇の前日に「明日,出社できない?」という連絡が来たことも(苦笑)。
4Gamer:
なるほど。
皆さん,入社前は「デバッグ」にどのようなイメージを持っていましたか。
メガネさん:
漠然と「ただゲームに触ってればいいんでしょ」みたいな感じで,デバッグという名前は知っていても,実態はピンと来ていなかったですね。
また,入社前はコンシューマゲームを担当したかったんですが,実際はモバイルゲームの仕事を振られて「これじゃないんだけど……」と思いました(笑)。
アキさん:
すごく分かる(笑)。
4Gamer:
12年前というと,まだスマートフォンが主流というわけではないですね。
メガネさん:
ええ,フィーチャーフォンのゲームを担当していました。二つ折りの端末をひたすら開けたり閉めたりして,「スリープ時にバグで落ちないかどうか」をチェックしました。
ゆうきさん
デジタルハーツ在籍歴:2年4か月
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ゆうきさん:
今ならボタン一つでスリープするので,楽になったんですよ。
メガネさん:
そうそう(笑)。
4Gamer:
それでは,ゆうきさんはいかがでしょうか。
ゆうきさん:
入社前は,暗くて地味なイメージを持っていました。例えば「コントローラをずっと握って,ゲームの中で壁にぶつかり続ける」みたいな感じです。
でも,実際にやってみるとデバッグ対象はコンシューマゲームだけではなく,モバイルゲームや通販サイトなどもあって,結構幅があることを知りました。
4Gamer:
あまりいいイメージがなかったんですね。
ゆうきさん:
ええ。思い切って飛び込んでみたら,かなり印象が変わりました。
デバッグはテスター各々が勝手に作業をしているわけではないんです。デジタルハーツにはゲームに特化した人だけでなく,いろいろな分野で活躍する人達が集まっているので,その強みを活かすためには各自の個性が連携することが必要だと思います。
アキさん
デジタルハーツ在籍歴:5年
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アキさん:
自分は入社後も,そんなにイメージは変わりませんでしたね。変化したのは,昔からずっとゲームを遊んできて,いくつものバグに遭遇して「これ,どうなってるんだろう?」と思っていたのが,仕事になったことで明確に理解できるようになったことくらいです。
ゆうきさん:
それまで「裏技だ」と思っていたのが,バグや不具合だったと気づけるようになりましたね。
4Gamer:
鈴木さんはどうですか。
鈴木さん:
デバッグというと,アニメ「NEW GAME!」に登場するねねっち(桜ねね)のイメージを持っていたんです。「NEW GAME!」のほのぼのとした雰囲気を想像していたので,ずっとゲームを触っている状況はつらいですね(苦笑)。
でも,それより大変なのがコミュニケーションです。今,私は副リーダーという立場なんですが,スタッフに話しかけても反応がなかったり,やってほしいことがうまく伝わらなかったりすると……。「どんな言葉を使えばいいのか」というところまで考えなければならなくて,デバッグの難しさを実感しているところです。
アキさん:
壁にぶち当たってるね……。
ゆうきさん:
でも,そういう時期はあります。私もそうだったし。
鈴木さん:
4人に話しかけて,誰からも返事がない。もう,どうしようって(笑)。
4Gamer:
鈴木さんは「ずっとゲームに触っているのがつらい」ということですが,ほかの皆さんはいかがですか。
アキさん:
案件やタイトルによりますが,仕事として割り切って捉えているので,
「どうせなら徹底的にやって,何か見つけてやろう」と考えています。どんな大変な作業も,いかにして効率的に処理していくのか,そのうえでデバッグすべき部分をどうやって回収していくのかを考えていけば,モチベーションが上がります。
そうは言っても,バグが多すぎると頭を抱えることになりますが……。
鈴木さん:
バグを報告するためにレポートを書くのに時間がかかって,作業が進まないんですよね。
ゆうきさん:
レポートを書いているときは,完全にデバッグが止まりますから。やるべき作業量に対して,使える時間が極端に足りないときは一番つらいかもしれません。
4Gamer:
同じ作業を延々と繰り返すこともありますよね。
ゆうきさん:
ええ。例えば,「ガチャから排出されるキャラクターを全部出す」という案件では,1日中,ガチャを引き続けました。
鈴木さん:
私もやった(笑)。無限ガチャ……。
メガネさん:
排出チェックですね。「そのキャラ,本当にガチャから出るの?」っていう。
アキさん:
プレイヤーの立場からすると,「欲しいキャラが出ないのなら,ガチャを引く必要がない」わけですから,きちんとチェックしなければいけない要素です。
メガネさん:
「火属性ガチャから,ほかの属性キャラが出ないことを確認する」みたいなケースもありますね。
アキさん:
「全部出ること」を確認するケースは目標があるからいいのですが,「出ないこと」を確認するのはどこまでやればいいのか分からないので大変です(苦笑)。
メガネさん:
ツラかったと言えば,最初に任された仕事ですね。フィーチャーフォン向けのパチスロアプリで,4つの端末をそれぞれ3500回転させるという内容でした。「演出が正常か」も確認する必要があるので,ずっと画面を見続けましたよ。
アキさん:
自分も最初の仕事がそれでした。スマホ向けでしたけど,やることはほぼ同じ(笑)。
4Gamer:
それは大変そうですね……。そのときに辞めようとは思いませんでしたか。
メガネさん:
全然,思いませんでした。仕事を続けていくと,自分がやっているデバッグの重要性が理解できてくるんですよ。これをきちんとやらないと,
ゲームの品質が落ちた状態で世に出てしまうと。
今は「なぜ,このデバッグが必要なのか」をまだ理解していない新人に対して,「火属性ガチャで水属性キャラが出てきたらおかしいよね。だから確認してもらえるかな」といったように,「なぜ,これをやらなければいけないのか」を伝えることを意識しています。
一人で黙々と作業するより,チームでデバッグする案件が増えている
4Gamer:
それでは,デバッグ作業の楽しいところ,やりがいを感じるところを教えてください。
ゆうきさん:
この座談会みたいに,
みんなで話しながら作業できるところが楽しいですね。チームで協力してデバッグを進めていくことが多いんです。
4Gamer:
デバッグというと,「一人で黙々とディスプレイや端末に向き合っている」イメージがあるのですが,実際はそうでもない?
メガネさん:
結構,ワイワイガヤガヤとやっています。とくに最近のモバイルゲームは協力プレイや対戦プレイが当たり前ですから,「一緒にやろうか」といったケースが増えています。
それから,「今,バグを見つけたんだけど,そっちの端末はどう?」といった情報の共有も欠かせません。昔は一つの端末でゲームが完結していたので,一人で黙々と作業することもありましたが,今はチームを組んで連携しないとデバッグができないという状況です。
アキさん:
ゲームの規模も大きくなっているので,一人ではカバーしきれないという事情もありますね。チーム内で作業や範囲を分担し,状況や進捗の報告をしながら進める形になっています。
メガネさん:
ただ,それはチーム仕事の楽しさだから,デバッグならではとなると……。
アキさん:
「これ,普通だったら見つからない」というバグを発見したときは嬉しいですね。きちんと原因の究明ができて,依頼主から修正されたデータが来たら,そこでもやりがいを感じます。
ゆうきさん:
バグを見つけて,依頼主から褒められたときは
「やったぜ!」と思います(笑)。
メガネさん:
自分は「この構造だったら,ここにバグがありそう」と当たりをつけて,狙いどおりに見つけたときが楽しい。「してやったり!」という感覚を得られるし,とくに重大なバグだったときは達成感があります。
鈴木さん:
私は初めてラインを任されて,依頼を完遂できたときが嬉しかったですね。
漫画アプリを担当したときは,
「そんな仕事もあるんだ」とワクワクしました。それはもう,いろいろなアプリで漫画を読みまくって(笑)。そのうえで「これは読みやすい」「ここは良くない」といった評価を付けました。
4Gamer:
世に出る前のゲームに,誰よりも早く触れられるという点はいかがでしょう。
ゆうきさん:
確かに「遊んでみたい」と思っていたタイトルの担当になれたら嬉しいんですけど,意外と巡りあわないんですよ……。
アキさん:
本当に好きなタイトルだったら,やっぱりモチベーションが上がります。自分も品質向上に貢献したいし,
皆さんに「いいゲームだ」と言ってほしいので,何が何でもバグを取り切ってやろうと思います。
4Gamer:
「このタイトルを担当したい」という希望は考慮されるのでしょうか。
メガネさん:
「このジャンルが好き」「このシリーズに詳しい」といったことを担当者に伝えておけば,ある程度は考慮されます。
ゆうきさん:
希望と合致する案件があれば,という感じですね。
アキさん:
得意なジャンルや詳しいシリーズであれば,それだけ作業が捗りますから。
メガネさん:
原作を知っていれば,「このキャラクターはこうじゃない」といった指摘ができます。例えば「原作より服の色が淡い」と指摘して,修正してもらったケースもあります。
4Gamer:
そういう部分もデバッグの範疇なんですね。
メガネさん:
個人的には,そのように考えています。ゲームの品質向上につながるのであれば,キャラクターの見た目や一人称のセリフ回しなどで気づいたことも報告していますね。
4Gamer:
デバッグを担当したタイトルがリリースされたら遊んでいますか。
ゆうきさん:
私は結構やります。配信されたら嬉しくなっちゃうんですよ(笑)。
アキさん:
そうそう。
鈴木さん:
まったくやらないですね。自分がデバッグしたタイトルを友達が遊んでいるときも,情報漏洩になるとマズいので何も言えません。生暖かい目で見守るだけです(笑)。
メガネさん:
自分もやらないほうですね。自分が担当した部分を確認して,「うん,ちゃんと動いてる」で終わりかな。
アキさん:
でも,それはモバイルゲームならではの傾向かもしれませんね。自分はとあるコンシューマゲームを担当したとき,隅々までデバッグをし尽くしたのに,製品版も買いましたし,しっかりプレイして号泣しましたから(笑)。
仕事と趣味で,完全に頭が切り替わりました。
4Gamer:
「ここにバグがあったなあ……」と思い出すことは?
アキさん:
あります。でも,むしろプラスに働きますね。「ちゃんと直ってる。良かった」と。
仕事の場合は「おかしなところがないか。一つも見逃さないぞ」と画面を見るわけですが,趣味で遊ぶときはストーリーに集中できますし,琴線に触れるところがあれば感動します。同じゲームでも見ている部分が全然違うんですよ。
メガネさん:
コンシューマゲームの場合,デバッグが終わってから製品版のリリースまでにタイムラグがあるからかな。モバイルゲームはデバッグの翌日に配信されることも珍しくなく,思い出に浸る時間がないというか,仕事のことを明確に覚えていますね。
「コアゲーマー=デバッグに向いている」というわけでもない
4Gamer:
皆さんはモバイルゲームやアプリを担当することが多いようですが,コンシューマゲームやアーケードゲームなどのデバッグを手がけたことはありますか。
ゆうきさん:
私はないです。
メガネさん:
あるにはあるんですが,これまでの12年間のうち,累計で1年に満たないくらいですね。
アキさん:
自分は少しだけ,コンシューマゲームのデバッグをやったことがあります。
鈴木さん:
スマホ以外,触ったことがない……。
アキさん:
自分も入社して1年以上,ずっとモバイルゲームでした。最初にコンシューマゲームを担当したときは,たまたま人が足りないという理由だったから(笑)。
4Gamer:
モバイルゲームやアプリの案件が多いのでしょうか。
アキさん:
新宿Lab.ではそうですね。自分は5年前(2013年)の入社で,スマホゲームがボチボチはやり始めた頃でしたけど,「え,こんなに多いの……」と思いました。
4Gamer:
一口にスマホと言っても端末の種類が多いですし,同じ端末でも載っているOSのバージョンが異なるケースもあります。デバッグをする端末はどのように選んでいるのでしょうか。
メガネさん:
基本的には依頼主が選出しますが,デジタルハーツ側から提案することもあります。そのタイトルをどんな層に遊んでほしいのかによって,「Galaxy多めで」「Xperia多めで」といった依頼が来ます。
ゆうきさん:
端末の種類が多い案件の場合,とくに昔の端末だとダウンロードに時間がかかって,昼過ぎになってもゲームのインストールが終わらないなんてこともあります。
アキさん:
それでも新しいガジェットが好きな人なら,最新のスマホに触れられるので嬉しいかもしれませんね。機械に詳しいからこその視点もあるでしょうし。
4Gamer:
デバッグの対象にはローンチを控える新作だけでなく,アップデートなども含まれるのでしょうか。
メガネさん:
そうです。だから同じタイトルを1か月に1回,半月に1回と担当することもあります。とくにモバイルゲームの場合はサーバー上のデータを書き換えるだけでバグの修正ができるので,短いスパンで次々に案件が来ます。
4Gamer:
それでは,デバッグにはどんな人が向いていると思いますか。例えばコアゲーマーのほうが向いているのでしょうか。
ゆうきさん:
デジタルハーツにはゲームを普段やらない人も多いので,必ずしもコアゲーマーじゃなくても大丈夫だと思います。
メガネさん:
確かにシリーズ作品や原作を知っていれば,作業を進めやすいという面はあります。でも,それはあくまでもスタート地点が一歩先というだけで,
バグを探す努力や直感的な閃きなどのほうが重要ですね。
アキさん:
ゲームをやらない人だからこその視点も必要なんですよ。
メガネさん:
そういう人が「これ,なんですか?」と聞いてきたときは,高確率でバグです。コアゲーマーは見慣れているからか,ちょっとした部分を見過ごしてしまうことがあるんです。
アキさん:
ゲームにはコアゲーマーに向けたものばかりではなく,カジュアルなものやファミリー向けのものもあります。タイトルによってターゲットがさまざまですから,ゲームに詳しくない人の意見が求められるケースは少なくありません。デバッグのような作業では,
異なる視点がたくさんあったほうが多角的にデバッグができるんです。
メガネさん:
ゲームだけでなく通販サイトや知育アプリ,漫画アプリといった案件もあるので,必ずしもゲームに詳しいことだけが適性ではなくなっています。
……でも,幼稚園児向けのアプリは難しいよね(笑)。
アキさん:
急に童心に帰れといわれても(笑)。
ゆうきさん:
ひらがなばかりで,読みやすいのか読みにくいのか分からなくなるんですよ。
アキさん:
幼稚園に通うお子さんをお持ちの親御さんのほうが,いい意見が出るかもしれませんね。
4Gamer:
先ほどのお話を聞いて,デバッグにはコミュニケーション能力も重要になると思ったのですが。
鈴木さん:
そうですね。優れたテスターは,どんどんコミュニケーションを取って情報をチームに共有し,デバッグの精度を高めていくんです。一人で黙々と作業をするテスターの中にも優れた人はいますが,
コミュニケーションを取り合う集団のほうが,いい成果をあげる傾向はあります。
アキさん:
コミュニケーションに長けた人が,チームに一人いるだけでも全然違いますね。とくに新人は能力を持っていても,勝手が分からなくてうまくできないことがありますから。そういうときにチームのコミュニケーションが円滑であれば,持っている能力が活かせるようになり,意見も出しやすくなる。職場の雰囲気が良ければ,仕事の能率が上がるのは当然ですよね。
メガネさん:
自分も入社前は,デバッグには特殊なスキルが必要だと思っていました。「ゲームに詳しくないとできないのかな」と。でも,そんなことはなく,デジタルハーツはどこにでもある普通の会社ですよ。
4Gamer:
なるほど。皆さんのお話を聞いたことで,デバッグという仕事に対するイメージがだいぶ変わりました。
それでは,あらためてデジタルハーツという会社について教えていただけますか。
アキさん:
働く人によって,見え方が変わる会社だと思います。それは勤務形態もそうですし,髪型や服装もそう。本当にさまざまな人が働いていて,兼業でほかの仕事をしている人もいるし,キャリアアップのために入ってくる人もいます。
ゆうきさん:
満員電車の乗客が,そのままオフィスに来てゲームに触っているというイメージですね。それくらい,いろんな人達が集まっています。
メガネさん:
会社のインターン制度を使って,入ってくる学生もいますね。
鈴木さん:
……人種のるつぼ?
アキさん:
確かにいろいろな人がいるけど,そこまで言う?(笑)
鈴木さん:
「どこから連れてきたんだろう?」って人がいますよね。ほとんどの会社には採用される人の傾向があると思いますが,デジタルハーツにはそういうものがないのかも(笑)。本当にいろいろな経歴の人が集まっています。
メガネさん:
以前は金属系の営業をやっていたとか,バーテンダーだったとか。そこから「何か面白そうだから」という理由でデジタルハーツに入ってくるんですよね。
服装が自由,シフトも自由に決められて,やってることは主にゲームに関わることだから,「面白そう」「やってみようかな」と思われるのかもしれません。
アキさん:
ゲーム系ではありますが,フタを開けたらいろいろなことをやっている会社なんです。だから前職がゲームと関係なくても,ゲームがそれほど好きじゃなくても,適性のある仕事がたくさんあります。
メガネさん:
何かを目指しているけれども,生活のために働かなければいけない人にもいい環境ですよね。コンビニのアルバイトより,幾分か時間の融通が利くし,身なりもそこまでちゃんとしなくていい(笑)。
4Gamer:
最後に皆さんの今後の目標を教えていただけますか。
アキさん:
これから先もゲームに関わる仕事を続けたいので,デバッグを通じて技術を身に付けたり,見識を広めたりしたいです。せっかくいい環境にいるのですから,いろいろな人とコミュニケーションを図り,吸収できるものをどんどん吸収して,偏りのない人間だからこそできる仕事をしたいと思います。
鈴木さん:
デジタルハーツはデバッグだけでなく,さまざまな業務を手がけているので,いずれはイベントの運営に携わりたいです。例えばeスポーツ。海外と比較すると,日本は出遅れていますが,もっと日本でeスポーツが盛り上がるようなイベントに関わってみたいです。
ゆうきさん:
業務の面では,マネージャーとして独り立ちできるように頑張っていきます。また,最近では海外の方と一緒に働く機会も増えましたが,デバッグという仕事をもっと多くの人に知ってもらいたいと思っています。
メガネさん:
デジタルハーツは「デバッグの会社」としてゲーム業界に知られています。その立場を維持できるように,自分の仕事のクオリティを上げていきたいです。
そのためにも,個人的にはいかにして格好よくあるかを考えています。「服装が自由」であることをデジタルハーツの長所として挙げましたが,身なりは人の信頼度を上げる要素ですから。業務とは直接関係なくても,服装然り,言葉遣い然り,少しでもプラスになるように務めていこうと思います。
4Gamer:
皆さんの今後の活躍に期待しています。本日はありがとうございました。
デジタルハーツではテスター/デバッガーを募集しています!
本稿の提供元であるデジタルハーツでは,最新ゲームやスマホアプリ,Webサイトなどのバグ(不具合)チェックに携わるテスター/デバッガーを募集中。デバッグ未経験の人には研修やトレーニングが用意されています。ゲームが好きで,ゲームの仕事に興味を持っている人は,以下のリンクをチェックしてみてください。