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[SPIEL’19]ボードゲームになった「Cities: Skylines」は,歯ごたえのある協力型シティビルダー
だがその一方,これまでのPDXCONで試遊できた「Cities Skylines: The Boardgame」(以下CS:BG)はいささか本家とはプレイテイストもビジュアルも異なっており,「これは,『Cities: Skylines』とはちょっと違うのではないか?」という感想が挙がっていた。2018年に初のEssen Spiel出展を果たしたParadox Interactiveのアナログゲーム部門担当者に,その件について話を聞いたところ,「CS:BGは,プレイした人が『これはCities: Skylinesだ』と感じる協力型のゲームになる」と宣言してくれた(関連記事)。
KOSMOSをパブリッシャとして発売されたCS:BGは,確かに「Cities: Skylines」らしさを感じる協力型のシティビルダーになっていた。以下,作品の概要と魅力をざっくりとお伝えしたい。
[SPIEL’19]今年も世界最大のアナログゲームの祭典がスタート。現地から開幕前日の模様をレポート
アナログゲーマーなら一生に一度は訪れてみたい「Essen Spiel」。8.6万平方メートルの広大な会場を,1500を超える新作が埋め尽くすこのイベントは,まさに「世界最大のアナログゲームの祭典」と呼ぶべき存在感を今年も示している。まずは開幕前日に開催されたプレスカンファレンスと内覧会の模様をレポートしよう。
しっかり再現された都市の内政
本作は大きく,「都市の内政」と「都市の構築」に分かれている。
前者に対しては,都市に対する資源の供給や市民が抱く不満を管理するボードが用意されており,後者に対しては一般的なシティビルダーと同様の地図が用意されている。
一般論としては,シティビルダーは地図から見たほうが理解が早いのだが,本作では内政から見たほうが分かりやすい。そこで,まずは本作の内政がどうなっているのかを紹介しよう。
まずは写真を見てほしい。これがCS:BGの内政を管理するボードとなる。
ボードの構造はシンプルで,一番上の枠は「電力」「水資源」「ゴミ処理」を示している。これらは中央をゼロとして,右に行くほど余裕があり,左に行けくほど逼迫していることになる。
その下は都市の幸福度で,この幸福度を高めていくことがゲームの大きな目的の1つになる。
3番めは就労ゲージで,都市の人口と仕事の数のバランスを示す。ゼロがベストの状態で,マイナスにもプラスにもできるだけ振れていないのが望ましい(マイナスは仕事に対して人手不足,プラスは失業者が出ている状態)。
一番下は市民からの不満(ないし都市が抱える社会的問題)を示し,上から順に「公害」「交通渋滞」「犯罪」を示している。これらは言うまでもなくゼロが望ましく,またゲージが右に行けば行くほど状況が悪化していることを示す(つまり良くなった状態はない)。
これらのバーが示す値によって,行動に制限がかけられる。つまり,いずれのバーも「赤方向に振り切った」段階で,それよりさらにマイナスになるような行動が取れなくなる(例えば,電力のゲージが左端に行き着いた状態で,さらに電力ゲージがマイナスになるような行動は取れない)。
市民からの不満についても同様で,例えば公害がゲージの右端に到達したら,それ以上,公害を増やすような行動は取れなくなる。
幸福度の場合はさらにシビアで,幸福度が-6以下になった場合は,そこで即座にゲームオーバー(都市開発の途中でゲームがそれ以上進行できなくなり,終了するというバッドエンド)になる。
また,都市の人口と仕事の数のバランスは,左右どちら側に対しても「ゲージを振り切った」らそこより先にカウンターが進むような行動は取れない。
なお内政ボードの一番下の左側にある紙幣が書かれた枠は,予算トークンの置き場になっている。本作の予算管理はかなりシビアで,ゲームオーバーに至る大きな要素になっているので,注意が必要である。
ゲームの目標としては,5回の「マイルストーン」を達成し(これによって,自動的にゲームは終了する),累積幸福度を一定以上に高めることにある。幸福度は最低でも「累計31以上」が目標で,もちろんその数値は高ければ高いほどよい。
マップの上に実際に広がっていく都市
続いて,マップを見てみよう。
シナリオにもよるが,最も基本的なマップは4枚のボードでできている。表面を向いているのは最初1枚だけで,ゲームが進むにつれてボードを表向きにしていく。また,各プレイヤーはゲーム開始時に3枚の建設カードを手札とする。
手番が来たプレイヤーは,建設カードを使用することになる。建設カードは「住宅地区」「商業地区」「工業地区」に色分けされており,それに対応した建物チット(駒)を実際にマップ上に配置していく。
この際,新しく配置する建物チットは「道路を跨ぐようにして配置してはならない」のだが,「道路に隣接していなくてはならない」というルールはない。
建物を配置したら,カードの指示に従ってゲージを上下させる。
また,公共の施設には「小規模な建物」と「大規模な建物」があり,小規模な建物の場合,効果が発揮されるためにはその「小規模な建物」と「住宅地区」「商業地区」「工業地区」が隣接していなくてはならない。
大規模な建物の場合,その効果は「街区」(道路のよって囲まれた1つの地域)全体に発揮される。
ちなみに公共の施設についてはもう少し建設に関する制限があるのだが,煩瑣になりすぎるので,ここでは省略させてもらう。
建物カードを使ったら山札から1枚ドローすることになるが,このドローは,なかなか面白いシステムになっている。
本作ではドローパイルがI,II,IIIと3つ存在し,順に「より発展した都市向け」(あるいはより面倒なことが起こりやすい)建物カードが含まれている。このドローパイルのどこからドローするかは,プレイヤーの自由だ。
なお,手番のプレイヤーは手札の建物カードを使う以外にも,予算トークン2を払って手札を交換する,あるいはマイルストーンを達成するという選択肢がある。プレイ人数にも依存するとは思うが,本作の予算管理はとにかくシビアなため,あまり積極的にカード交換をすることはできない。
だが選択肢として存在することは覚えておいたほうが無難だ――戦術として有用であるだけでなく,本作では,予算不足や各種ゲージの振り切りによって手番プレイヤーが行動できなかった場合は即ゲームオーバーになるからだ。
「マイルストーン」をいかに達成するか
手番が来たプレイヤーは建物カードを配置,または交換する以外に「マイルストーンを達成する」ことができる。上に書いたように,マイルストーンを5回達成するとゲーム終了なので,これはゲームを大きく進展させる選択と理解できる。そして実際,このタイミングで累積幸福度などの中間計算も行われる。
実際のボードから,マイルストーンを達成すると何が起こるかを見てみよう。
まず資源ゲージだが,これは3本のバーをすべて合計する。写真の場合,電力が0,水資源が+3,ごみ処理が-2なので,幸福度は+1となる。
資源ゲージによる修正が入る前の段階ですでに幸福度は+1なので,このマイルストーンでの獲得幸福度は+2になる。
なお,当然ながらこの操作によって幸福度がマイナスになることもある。幸福度が-5未満になったらゲームオーバーなので,資源ゲージを軽んじると「マイルストーンを越えようとしてゲームオーバー」という展開が起こり得る。
一方,就労ゲージは-3となっており,このため予算トークンが3減る。ただし,就労ゲージはプラス方向でも予算トークンを減らす要因となる。つまり,就労ゲージが+3なら予算トークンは3減り,人手不足問題を解消するにしても,失業問題を解決するにしても,予算が必要というわけだ。
最後に市民からの不満ゲージだが,これは第5マイルストーン達成時にのみ累積幸福度に対するペナルティとなる。
なおマイルストーンを達成しても,それによってゲージが上下したりリセットされることはない。
その後,裏になっているマップボードを1つ選んで表にする。なおこの際,マップボードごとに「表にするために必要な予算トークン」が示されているので,これを支払う必要がある。
このように,ルール上「マイルストーン」はプレイヤーの自発的な選択によって越えることができるが,実際には制限が多く,この点には注意したい。
歯ごたえのあるシティビルダー
実際にプレイした感想としては,「みんなですごい都市を作ろう」というよりは,「まずはこの都市を生き延びさせねばならない」という風情が感じられる,なかなかシビアなバランスのゲームとなっていた。
ただし,これはプレイ人数に依存すると思われる。筆者は2人でプレイしたが,仮に4人でプレイすれば,使える建設カードは実質12枚になる(2人なら実質6枚)わけで,より安定した都市の発展が目指せると思われる。
とはいえ,プレイフィールは確かに「Cities: Skylines」のもので,ファンであれば思わず何度もプレイしたくなるゲームに仕上がっているようにも感じた。シナリオが複数用意されているので,リプレイアビリティも高い。
「Cities Skylines: The Boardgame」公式サイト
弱点を挙げるとしたら,ある程度までセオリーが分かっていないと簡単にゲームオーバーになることだろう。これは「CS:BG会を開いて初対面のプレイヤーが本作を一緒に遊ぶ」といったときには,いわゆる指揮官問題との合わせ技で大きな問題になり得る。
また,最初の1プレイはゲームオーバーになりやすいと思われるので,「同じゲームを複数回遊ぶ」ことを前提としたゲーム会のほうがフィットするだろう。逆に言えば,1日で多数のゲームを1回ずつ遊ぶことを目的としたゲーム会の場合,いささか消化不良のまま次のゲームを遊ぶことになり得る。
いずれにしても,ルールは簡単だが,やりこみ要素が強く,ある程度までやりこまないとゲームオーバーになっても不思議ではない,というバランスのゲームである。このため,ある程度までボードゲームに慣れているグループ向けのゲームと言えるし,そういうグループにとっては「掴んだ,もう1回だ!」となりやすい作品とも言える。
たとえ原作となる「Cities: Skylines」を知らなくても,「ちょっと歯ごたえのあるシティビルダー」を求めるのであれば,本作は間違いなくオススメだ。
- 関連タイトル:
Cities: Skylines
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