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[CEDEC+KYUSHU]閃きに頼らず「面白い」を考え出す手法とは。ガンバリオンのディレクター兼プランナー芳賀 徹氏によるセッションをレポート
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印刷2021/11/29 19:47

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[CEDEC+KYUSHU]閃きに頼らず「面白い」を考え出す手法とは。ガンバリオンのディレクター兼プランナー芳賀 徹氏によるセッションをレポート

 2021年11月28日,ゲーム開発者向けオンラインカンファレンス「CEDEC+KYUSHU 2021 ONLINE」にて,セッション「PERACON殿堂入り経験者が(偉そうに)語る『ヒラメキに頼らない!!『面白い』の考え方』」が行われた。このセッションでは,ガンバリオン 開発部 ディレクター兼プランナーの芳賀 徹氏が,ゲームを作る際の最初の段階である「こんなゲームを作りたい」という目標設定をどうやったらいいかという話を通じ,「面白さとは何か」や「どう組み立てているのか」,そして「ヒラメキに頼らない『面白い』の考え方」などについて解説した。

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ゲーム開発における最初の目標をどのように設定するのか


 芳賀氏は,最初に一般的な「何かを達成する際の考え方」を解説。例えばどこかに行きたいときは,まず目的地を決めることになる。そして次に,目的地に行くための手段を考える。例えば福岡・博多を目的地に決めたなら,県外の人であれば飛行機,県内の人なら電車やバス,自家用車などを使うことが候補に挙がるだろう。
 それはゲーム開発も同じで,「これを達成したら面白いゲームになるのではないか」ということを最初の目標として設定し,それを実現するためのシステムを考えていく。

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 しかし芳賀氏によると,とくにゲーム開発の場合は目標設定がぼんやりしがちになってしまうとのこと。
 例えば「気持ちよく空飛ぶゲーム」を目標にしたとすると,目標そのものは決して間違っていないのだが,「空を飛べば何でも気持ちいいわけではない」という事態が生じる。実際,何かしらの手段で空を飛べるゲームは多数あるが,単なる移動手段に過ぎないなど,気持ちよさにフォーカスしていないケースも珍しくない。

 なぜ目標設定がぼんやりしてしまうのかについて,芳賀氏は「空を飛ぶゲームが気持ちいい,面白いというのは,目標を設定した人自身の妄想に過ぎないから」と説明し,自分自身もやりがちであると語った。

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 それでは,客観的な目標を設定するにはどうすればいいのかというと,芳賀氏は「プレイヤーに『○○を面白いと思ってもらう』ゲーム」といったように言語化することを挙げた。上記の空を飛ぶゲームであれば,「プレイヤーに『空を飛ぶことを面白いと思ってもらう』ゲーム」ということになる。
 しかしここでもう1つ,「面白い」という言葉が曖昧であるという問題が生ずる。そのため,「面白い」を明確にする必要がある。

 芳賀氏は自身がゲーム開発で目標設定するときに必要な「面白い」を,「フレッシュオモシロ」「システムオモシロ」「感触オモシロ」に分類して考えるという。
 フレッシュオモシロは「新鮮な面白さ」を指し,「ほかで得られない体験ができる」「これがあるほど,斬新と言われる」といった面白さのことである。いわゆる「見たことがない」「聞いたことがない」という面白さで,芳賀氏は「新作ゲームを作るのであれば,この面白さが幾分か含まれていてほしい」と語った。

 システムオモシロは「攻略の面白さ」を指し,具体的には「解法を導き出す楽しさ」「遊びの仕組みとしての出来の良さ」「バランスの良さ」「選択肢がどれも選びたいものになっている」「適切なリスク・リターンのバランス」が挙げられた。さらに芳賀氏は,「グラフィックスやサウンドを取り払って,仕組みだけにしても面白いゲームは,システムオモシロがよくできていると言える」と説明を加え,例としてトランプのゲームルールに言及した。

 感触オモシロは「生理的な面白さ」を指し,具体的には「得られる感触が心地いい」「手触り感の心地よさ」が挙げられた。例えば銃を撃ってガラスを割ったときの「パリーン!」という音や感触,リズムの心地よさがそれに当たる。
 またヒーローになって悪を倒したり,物語の主人公になりきって感動を得たりといった「なりきり,感動体験」も感触オモシロに含まれるとのこと。
 この面白さについて,芳賀氏は「インタラクティブな要素であり,ゲームならではの面白さ」と説明を加えた。

 芳賀氏は,上記の3つの面白さを使って,「快感メカニクス」を考えるという。ここで言う快感メカニクスとは「プレイヤーのテンションが上がる仕組み」のことで,すなわち「面白いと感じさせる機構」である。

 快感メカニクスを成立させるには,まず「プレイヤーの行動や判断の結果でないとダメ」という条件がある。
 実際のゲーム進行を分解すると,最初に「選択肢の提示」があり,プレイヤーがどれを選ぶか「判断」して「行動」し,その「結果」によって「報酬」が得られるという流れになる。
 例えば「銃を撃つ」「パンチする」「ジャンプする」という選択肢の中から,状況を判断していずれかの行動を取り,「敵を倒した」「障害物を避けた」という結果になったので,「先に進める」という報酬を得られるというわけである。

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 仮に「宝箱を1つだけ開けられる」という状況下で,目の前に宝箱が1つだけあるとしたら,選択や判断の余地なく,それを開けて中の財宝を報酬としてもらうということになる。これはただの作業に過ぎない。
 しかし宝箱が2つあり,かつ一方の前には金貨が1枚落ちているとなると,プレイヤーは「財宝が入っているのはこちらかもしれない」と判断することができる。そして実際にそちらの宝箱を開けたら財宝が入っており,もう1つは罠だったとなれば,「自分の推測が当たったから嬉しい」となり,快感メカニクスが成立する。

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 また勘違いしやすいこととして,芳賀氏は「結果が出て報酬を得られる瞬間が,プレイヤーのテンションがもっとも上がる瞬間だが,ここだけでは快感は生まれない」と改めて指摘。例えば一撃で倒せるボスを倒したり,平坦な1本道を走ってゴールしたりしても気持ちよくないというわけで,「テンションが上がるのは結果と報酬の瞬間だが,そのテンションを作り出すのは選択肢の提示から報酬までの一連の流れ全体である」と説明した。

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 続いて,格闘ゲームの「攻撃」と「必殺技」にフォーカスして,新しい快感メカニクスを考える例が示された。
 格闘ゲームの快感メカニクスは,「複数の技を使い分ける」という選択肢の提示,「相手が隙を見せた」というような判断,「コマンドを入力して必殺技を出す」という行動,「出した技がヒットする」という結果,「派手な演出が入り相手のHPゲージが減る」という報酬で構成されている。

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 ここに新しい快感メカニクスを生み出すべく,入力部分にパンチングマシーンを採用し,パンチの強さで技が変化するというシステムにしたとする。そうなると,「パンチの強さで技が変化」という今までにない選択肢の部分にフレッシュオモシロと,「実際にプレイヤーがパンチする」という感触オモシロが発生する。また,実際にプレイヤーが身体を動かすということで,報酬の部分にも「ダイエット効果」というフレッシュオモシロが付与される。

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 芳賀氏は「これをブラッシュアップしていくと,ダイエット・筋トレ効果が得られる『フィットファイター』という企画にできる」と説明し,「プレイヤーに『画面上のキャラクターとパンチを通じて一体化することを面白いと思ってもらう』ゲーム」と言語化した。
 ただご存じの人も少なからずいると思うが,プレイヤーのパンチ力が反映される格闘ゲームと言えば,すでに初代「ストリートファイター」が存在しており,本当にフレッシュオモシロと言えるかどうかは難しいところだとも話していた。

※アーケード版のアップライト筐体では気圧式ボタンが搭載され,叩く強さに応じて弱・中・強の入力が行われる。

 もう1つ,上記のダイエット効果にヒントを得て,太ることに着目して格闘ゲームの新しい快感メカニクスを生み出す例も示された。こちらは「コマンド入力すると,お菓子が発射される」という行動の部分と,「お菓子がヒットしたら,相手が食べてしまって太る」という結果の部分,「相手が太ったことでヒット判定が拡大され,かつ行動速度も落ちる」という報酬の部分にアレンジを加えている。結果として,「相手が太る」という部分にフレッシュオモシロと感触オモシロ,「判定拡大,速度減」という部分にシステムオモシロが生ずることになる。

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 芳賀氏は,「お菓子を食べることなくバトルを続けていると,次第に痩せてくる」という要素を入れたら,「相手が隙を見せたので,連続でしゃがんで痩せる」といったようなプレイの幅を持たせる発想につながっていくとし,「キャラクターも格闘家ではなくパティシエにして,『相手より美味しいお菓子を作って屈服させる』という少年漫画のグルメバトルのようなストーリーを作ることができる」と説明。さらにこのゲームを「プレイヤーに『太ったり痩せたりを面白いと思ってもらう』ゲーム」と言語化した。

 以上をまとめて芳賀氏は,「フレッシュ,システム,感触のオモシロを踏まえると,大枠で格闘ゲームをベースにしていても,新しい快感メカニクスが生まれて,ぼんやりしない,よい目標を設定できる」と語った。
 またパンチングマシーンや太る痩せるといった要素は,ゲームにおいて決して目新しいものではないが,組み合わせによって見たことがない,聞いたことがないという新しいものにすることができるとも指摘していた。

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 しかし「こうすれば面白い」というアイデア──芳賀氏の表現によると「オモシロパーツ」を思いつくのは困難である。
 芳賀氏は「オモシロパーツは普段の生活に溢れている」とし,庭のアリを見ているうちに「ピクミン」のアイデアが生まれたという任天堂の宮本 茂氏のエピソードなどを披露。それではなぜ多くの人が同じように思いつけないのかと言うと,「オモシロパーツを『発見』すること」「オモシロパーツを『引用』すること」の2点が難しいからであると見解を示した。

 芳賀氏はオモシロパーツを発見しにくい理由として,「面白さは繊細なのでスルーしがち」と「面白いと思った瞬間は,冷静でいられないので気づかない」,そして「エモーショナルに引っ張られやすい」を挙げた。とくに3つめに関しては,「映画などで,登場人物が身を犠牲にして地球を救った場合,身を犠牲にする部分に感動するので,そこがポイントだと勘違いしやすい」とし,実際に重要なのは,身を犠牲にした人のそれまでの積み重ねというケースが多い。そこに目が行かなくて,とりあえず犠牲にしておけばいいと思いがちと説明を加えた。

 その上で芳賀氏は,オモシロパーツを発見するコツとして「心が動いたらオモシロパーツの予兆」「あらゆる娯楽は良いお手本。『面白い』に流されず,冷静に観察・分析」の2点を挙げた。とくに後者に関しては,「仕事でゲームを作っていると,純粋にゲームを楽しめなくなるということにつながっていくが,新しい視点からゲームを見る楽しさがあるのであながち損ばかりではない」とも話していた。

 一方,オモシロパーツの引用が難しい理由としては,「人は必要なときに適切なオモシロパーツを思い出せない」「自分の持っているオモシロパーツを,アレコレ試さない」の2点が挙げられた。とくに後者は,無意識のうちに「あのオモシロが,このアイデアに当てはまるわけがない」と思っていたり,実際当てはめてみても大半が徒労に終わったりするからとのこと。

 それらを回避するコツとしては,「オモシロパーツの何が面白いのか仕組みを理解し,言語化する」ことが挙げられた。これによりオモシロパーツが脳内でタグ付けされ,必要なときに引用しやすくなるそうだ。
 ただ,最後には「諦めずにいろいろ試すガッツ」が必要になるかもしれないとのことである。

ゲーム開発における目標設定のまとめ
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CEDEC 2021のPERACONに応募した企画は,どのように考えていったのか


 PERACONは,CEDEC 2011にてスタートした企画コンセプトを競うコンテストである。応募者は,提示されたテーマに沿ってゲームの企画をA4用紙1枚にまとめて提出。その内容を,審査員の現役開発者や研究者,教育者が審査して順位を決定し,優秀作品は表彰される。
 芳賀氏は,CEDEC 2021のPERACONにて3回めとなる10位以内の入賞を果たし,見事殿堂入りとなった。

 これまで4回PERACONに参加している芳賀氏だが,10位以内に入賞できなかった2回めは,全応募作品約300のうち250位くらいという散々な成績だったという。「1回めで10位以内に入ったので,PERACONをナメていた」という芳賀氏は,ダメな例としてその作品を紹介し,具体的にどこがダメなのかを指摘した。

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 CEDEC 2021で行われたPERACONのテーマは「キュン」。芳賀氏は応募するにあたって2回めに参加したときの反省を活かし,5つの対策を講じたという。
 1つめは「瞬発力のある内容に」。これは,審査員は応募された300以上の書類を見るので,短時間で内容が伝わるほうが有利だからであり,芳賀氏は「テキストより,絵や図を使うほうが望ましい」と語った。
 2つめは「新規性&実現性が大事」。これは企画のコンテストなので,当然新規性が問われるのと,また現役開発者も審査するので,実現できるかどうかも考慮されるからである。

 3つめは「快感メカニクスで『キュン』が起こるように」。これは,プレイヤーのテンションが上がる快感メカニクスの結果と報酬の部分で「キュン」が起きるようにできれば,テーマを最大限に活かしたことになるというのが理由だ。
 4つめは「明るく楽しい内容に」。これはテーマが「キュン」なので,明るく楽しい内容が求められているだろうという判断からである。
 最後は「企画書もエンタメ」。これは相手に「面白そう」という印象を与えるにあたり,書類自体も面白いほうが有利であり,さらにそれがゲームの面白さともマッチしていればなお良しという判断をしたからだという。

 それらの対策を踏まえて芳賀氏が考えたのは,3つの企画だった。
 1つめの「ハートクニクニ」は,最初に「画面の真ん中に女の子がいて,その心臓部分にハートを置く」という絵を思いついたという。そしてそのハートを何かしらの手段でキュンとさせることを考えたそうだ。この企画はパッと見て分かりやすくなりそうだったので,実際に企画書にまとめ始めていたとのこと。

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 ゲームのシステムを考えるにあたっては,まずハート型のグミがあることに思い至り,さらにオモシロパーツとしてグミをつまんでクニクニするテレビCMを思い出した。
 そこでタッチ操作でハートをクニクニし,女の子をキュンとさせるゲームにすれば,感触オモシロとフレッシュオモシロを実現できると考えたという。

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 しかし,クニクニをうまくゲーム落とし込めず,システムオモシロを実現できないという課題が発生。そこで「『好き』や『かわいい』といった言葉をぶつけてキュンとさせる」というゲーム性を思いつくのだが,それでは今度はもともと考えていたクニクニの感触オモシロが死んでしまうため,この企画はお蔵入りとなってしまう。

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 2つめの「ドライブデート」は,「クルマをバックさせるときの男性の所作が,女性をキュンとさせる」という話をもとに,「パートナーとドライブし,キュンとさせる」というオモシロパーツを組み込んだ企画を思いついた。

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 芳賀氏は,クルマを題材とするゲームは一般的に「速く走ることが正解」なので,それとは違うゲーム性に仕上げればフレッシュオモシロを実現できるし,またパートナーの好みや性格を踏まえて「安全運転をする」「景色の綺麗なコースを走る」といった攻略要素を入れることでシステムオモシロも実現できそうだと考えたという。

 しかしいろいろ考えていくうちに,快感メカニクスのテーマとなる「ドライブ中にキュン」が表現できないという課題が持ち上がってきたとのこと。すなわち,プレイヤーが何かをしたときにパートナーがキュンとする姿を描きたいのに,ドライブゲームなので画面にはどうしてもクルマと道路が映ってしまうのである。だからといって,画面端にワイプでパートナーの姿を見せるのも,あまりスマートではない……。
 そんなことを考えているうちに,芳賀氏は似たようなゲームがあることを思いだし,さらにそのゲームではクルマをオープンカーにすることにより,「ドライブデート」で発生した課題を解決していることに気づいたという。そんなこんなで,この企画もお蔵入りとなった。

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 応募作品となった「おばけ屋敷」の企画は,「カップルが危機的状況に陥ると,吊り橋効果により絆が深まる。だから皆,お化け屋敷に行きたがる」という逸話を,オモシロパーツとして採用した企画だ。またドッキリで怖がらせることと,カップル成立でキュンとなることはどちらも心臓に起きる変化なので,ゲームとしてつながりそうだと考えたという。

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 芳賀氏は以前聞いた,「お化け屋敷を作るにあたっては,適度に怖がらせることが大事。怖がらせすぎはダメ」という話に,システムオモシロの可能性を感じたとのこと。
 そこで「お化け屋敷を設計し,カップルを成立させるゲーム」を作れば,フレッシュオモシロも実現できると考えたそうだ。

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 それらをベースに快感メカニクスを作り,最低限のアイデアを加えて完成させた企画が「ドキ?キュン おばけ屋敷メーカー」である。
 これはプレイヤーがお化け屋敷の経営者となって,屋敷にお化けを配置し,来場した男女のペアを適度にドキドキさせてカップルを成立させるというゲーム。男女ペアを怖がらせすぎると途中で帰ってしまうので,ときどき休憩や癒やしを与えて恐怖を緩和する必要がある。そして,これ以上怖がらせると帰ってしまうというギリギリのところで男女ペアをゴールさせれば,カップル成立となる。

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 結果,この企画はPERACONの4位に入賞したが,振り返ると必ずしも100点の内容ではなかったと芳賀氏。具体的には,まず書類の問題として「お化け屋敷の俯瞰図が地味」「文字が多い」「キュンへの流れが強引」が挙げられた。
 またゲーム的な問題としては,「プレイヤーが男女ペアをもてなす側になってしまい,プレイヤー自身がキュンしたり,相手をキュンさせたりできないので,プレイしていてキュンとの距離が遠い」こと,すなわち感触オモシロが弱いことが挙げられた。
 芳賀氏は「4位はいただけたが,1位になれなかったのにはそれなりの理由があった。また製品化するのかと言われたら,まだまだ詰めなければならない部分がたくさんある」と話していた。

 セッションの最後,芳賀氏は「これまで運任せで閃いていた『面白い』をうまく見つけ出し,それを育てて,目標にしていく。その方法として,今回披露した考え方が参考になれば幸いです」とまとめていた。

「ガンバリオン」公式サイト

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