インタビュー
SNK第2創業期の“大阪開発”が目指すのは,既存のIPを生かしてさらなる発展を遂げていくこと。キーマン2名にその様子を聞いてみる
……というのが前回のSNKインタビューの書き出しだが,それら「SNKのIP」を作ってきたのが,今回のインタビュイーであるSNK大阪の面々だ。豪華なメンバーを新たに揃えて,新しいIPの制作に注力する東京スタジオと共に,綺羅星の如く存在感を放つ,それらSNKのIPに手を入れ,色々な形で生まれ変わらせようとしているわけだ。
筆者もそうだが,古くからゲームに接している人はとくに,SNKというゲーム会社の存在感の大きさは,多かれ少なかれみな感じているはずだ。前回のインタビューでは,新設された東京スタジオをメインに据えたので新規IPの話に注力してしまったが,今回のテーマは大阪スタジオ(というか本家SNK)。
キーマン二人がちょうど大阪から東京に出てくるタイミングに時間をもらうことができたので,今回は大阪のことを根掘り葉掘り聞いてみよう。
SNK第一ソフトウェア開発事業部長
旧SNK時代は「餓狼伝説」シリーズや「龍虎の拳」シリーズを中心に開発に携わる。2000年にディンプスに移籍,2014年にふたたびSNKに戻り,コンソール開発部門を立ち上げ,「KOF」や「SAMURAI SPIRITS」をリリース。
黒木信幸(くろき のぶゆき)(左)
SNK第一ソフトウェア開発事業部 リードアーティスト
経歴は小田とほぼ同様。現SNK復帰後はアーティスト部門を統括。
黒木信幸氏(以下,黒木氏):
今日は小田がNEOGEOのジャージを着てくるかと思ってたんですが,僕だけでしたね。これが正装なのに。
(一同笑)
4Gamer:
それ正装なんですね。覚えておきます(笑)。
さて……4Gamerは編集部が東京にあるもので,前回はずっと東京拠点の話をしちゃいました。すみません。
関連記事:SNKの第2創業期が目指すのは,グローバルTop10のパブリッシャ。そのキーマンとなる3名に,新・SNKの今とこれからを聞いてみる
小田泰之氏(以下,小田氏):
いえいえ。
4Gamer:
よくよく考えましたら……というかよくよく考えるまでもなく,SNKと言ったら大阪が本家なわけです。前回の話でも「SNKのDNAは絶やさない」という感じで東京側は語ってましたし,今回は改めて大阪の話もお聞きしたいなということでお時間取っていただきました。ありがとうございます。
二人:
よろしくお願いいたします。
4Gamer:
小田さんはいまどんなお立場で?
いま大阪の第一……なんでしたっけ,役職名覚えられなくて。(ご自分の名刺を見ながら)第一ソフトウェア開発事業部の事業部長,です。
もともと私と黒木はSNKに同期で入社したんです。それが確か1993年とかなんですけど,2000年ぐらいでいったん辞めてます。で,そのあとディンプスというデベロッパーで働いてました。2014年だったかな,それくらいに当時オーナーの川崎さん(川崎英吉氏※)に呼び戻されて帰ってきたという,そんな経緯ですね。
※1973年に新日本企画(後のSNK)は,川崎英吉氏により創立され,数多くの名作を世に出してきた。2001年に経営破綻したのち,当初のSNK第一開発部の社員を中心に株式会社ディンプス(Dimps)が設立された。SNK歴史の振り返りに興味がある方は,ぜひ「こちら」を読んでみてほしい。
4Gamer:
ありがとうございます。黒木さんはどんな感じで?
黒木氏:
いやもう,30年一緒にやってるんで大体同じってことで。
4Gamer:
30年!
黒木氏:
はい,今年で30年目だと思います。旧SNKの時は,同じところで「餓狼伝説」とか「龍虎の拳」とか作ってたんですけど,会社が倒産して同じようにやめて,同じようにディンプスに行って,でそのあとまた合流して,僕は「THE KING OF FIGHTERS XIV」のアートディレクターとか,そのあとサムスピ(「SAMURAI SPIRITS」)のアートディレクター兼ディレクターとか。そのあたりをずっとやって,いまは大阪のアート部隊を全部見る人みたいな感じです。リードアーティスト的な。
「SAMURAI SPIRITS」開発者インタビュー。令和に蘇ったサムスピの進化と,SNKが目指す新しい試みを聞いた
SNKが2019年6月27日に発売する剣戟対戦格闘ゲーム「SAMURAI SPIRITS」。発売直前となる今回,開発ディレクターである黒木信幸氏,プランナーの空中海人氏,そしてキャラクターデザインを手掛けた佐治有倫氏に話を聞けたので,その模様をお届けしよう。
4Gamer:
ありがとうございます。
それだけ長い間一緒にやってきて,経歴というか職歴というか,それもほとんど同じって結構すごいですよね。
そうですねえ。まぁディンプスでは全然違う仕事してましたけど。
4Gamer:
そうなんですね。
黒木氏:
会社は一緒でしたけど,仕事は全然違ってましたね。
小田氏:
彼はどっちかというとセガさんの仕事が多かったですね。僕はバンナムとカプコンの仕事が多かったかな。
4Gamer:
おお,なるほど。じゃあソニックとストリートファイターとかそんな感じですね。
小田氏:
そうですね。はい。
パチスロのSNKから,ソフトハウスのSNKへ
4Gamer:
間にディンプスを挟んで,その前後を「SNK前期」「SNK後期」としたとして,前期から後期になって戻ったときに,カルチャーの違いはありましたか?
小田氏:
カルチャーどころか……僕らが戻るときにはスロットの会社だったので,カルチャーどころか業界が違うという感じでしたね。
4Gamer:
やってたことがまるっきり違う?
小田氏:
はい。
4Gamer:
なるほど。そこになんかこう……不安じゃないですけど「これどうしろっていうんだろう」みたいなものはなかったですか。
小田氏:
いやまあ,その時のオーナーがゲーム作る気満々だったので,そこはまぁ大丈夫でしたね。
4Gamer:
わざわざ呼び戻したくらいですもんね。
さてSNKというのは,これ前回もお話したんですけど,昔からのプレイヤーからすると「格ゲー」のメーカーであり,ゲーム機まで作っていた超有名ブランドなわけです。でもスロットの話も含め,ゲーム業界的にはしばらく静かにしてましたよね。
小田氏:
そうですね。
4Gamer:
会社としてゲーム業界にあまりコミットしていなかった時期があって,そこからいままたずいぶん変わり始めてますけれども,社内的にはどんな感じで動いてたんでしょうか。かなりの方向転換だと思うんですけど……。
小田氏:
そうですね。そりゃもう,大変でしたね。
もうとにかく人が……。今の東京スタジオは人を採用している最中だけど,まさにそういう状態で人を入れるところからで……。
4Gamer:
いまも足りない?
小田氏:
うん,そうですね。
4Gamer:
私はゲーム会社側にいたことはないので素人感想でしかないんですが,しばらくゲームを作っていなかったわけですし。
小田氏:
いやホントそうですよ。
4Gamer:
ゲームを作れる人がいなかったんじゃないかな……とか。
小田氏:
当時って,ギリギリでフィーチャーフォンからスマートフォンに移行するかどうかくらいの時だったんですけど,アプリをやってた人とか,ずっとSNKを辞めずにいた人も何人かいたとか,そういうのがあったのでなんとか。
でもほとんど外から,こうブァーッと(笑)。もういろんなところから,いろんな会社の人に恨まれながら奪い取ってきたというか(笑)。
黒木氏:
それは言うな(笑)。
4Gamer:
お二人のコネクションを中心に?
黒木氏:
取っ掛かりは確かにそうですね。
小田氏:
んー,まず,辞めて散り散りになってた元SNKのメンバーを,いろんなゲーム会社から戻してきて……。
4Gamer:
なんか映画っぽいですね。
小田氏:
で,それぞれのパイプを使って,さらにそこから声かけてみたりという感じですかね。
4Gamer:
そうやって一生懸命スタッフを集めるようなことをしてもなお,当時のオーナーにはゲームを作ろうという強い意思があったわけですよね。
小田氏:
うん,そうですね。
4Gamer:
若干似てるとは言え全然違うもの作るわけですから,やっぱりすごい方向転換です。
小田氏:
そうですね,スロットは工場も持ってやってたわけじゃないですか。
4Gamer:
はい。
小田氏:
でもゲームだとソフトハウスになっちゃうわけです。しかもパブリッシング部門もないですし。だからものすごい方向転換といえばそのとおりですね。
4Gamer:
でもその感じだと,このあともこのままいく感じなんですよね。最近ではサムスピなんかもそうですけど,段々と“SNKの香り”が戻り始めているので。
小田氏:
そうですね。とはいえ,会社の規模自体を大きくするという経営方針ではないのでそこは……。旧SNKの時って,大体内部で5チームぐらいの開発ラインがあって,年間に何本も複数出せる体制でもあったわけじゃないですか。
4Gamer:
はい,そうですね。
今はまだそういう体制ではないので,ポツポツと,KOF出しました,SAMURAI SPIRITS出しました,みたいな展開です。そういう規模からの脱却はなかなか難しかったですね。
4Gamer:
いま何人ぐらいいらっしゃるんですか。
小田氏:
いま大阪は125人ぐらいですね,開発で。
4Gamer:
何ラインぐらいですか。
小田氏:
えーっと……コンソールは運用が1本,アプリも運用は1本,新規で立ち上げた開発が……4本くらいですかね。
4Gamer:
あれ,結構ありますね。
小田氏:
外部も使っての本数ですけど。
4Gamer:
じゃあ東京と大阪合わせたら結構なラインの本数になるわけですね。
小田氏:
いやでも1本作るのに,昨今はどんな規模でも3年くらいはかかるじゃないですか。
4Gamer:
確かにそうですね。
小田氏:
って考えたら,んーまだまだ足りないなという感じはしますけどね。
4Gamer:
大阪もまだまだ増やしていく感じ?
黒木氏:
はい。
小田氏:
うん,今の計画に乗っけてるやつをすべて走らせようと思ったら,もう全然足らないと思います。でもあまり増えたところで……ね。
4Gamer:
管理ですか?
小田氏:
そう,スタジオの管理もできないし。まあそうなったら別の新しいスタジオになるのかなと思いつつ,もう限界までは増やそうかなと思ってます。
4Gamer:
まぁ人が増えたら増えたでバックオフィスも増えなきゃいけませんしね。
小田氏:
そうなんですよね。
4Gamer:
大阪を増やす過程もまだままならない状況で,東京にわざわざ拠点を作って,また人を増やして……とするんですね。
小田氏:
開発の規模を大きくするには,人が多いところに事務所を作るのが自然な流れかなと。
4Gamer:
なるほど,人の数的に。
小田氏:
そうですね。このあとは名古屋なのか,福岡なのか……みたいな話になるのかと勝手に思ってます(笑)。
4Gamer:
おお,そこまでの。
小田氏:
いや,増やすとしたらですよ。おそらく外国においても,どこかにスタジオを作る流れになるとは思いますけど。
4Gamer:
中国にはありましたよね。
小田氏:
はい,北京にありますね。
4Gamer:
中国の次はどこかな……。
小田氏:
そう,どこがいいですかね(笑)。人口で言うとブラジルとか?
SNKの過去のIPを復活させるという方向性
4Gamer:
でも,そうやって人を増やしていかなきゃと思うぐらいに,やろうとしていることがたくさんあるわけですね。
そうですね。オーナーが川崎さんから中国に変わって,今度はサウジに変わって,僕らはなんかこう,5,6年に1回オーナー変わるなーっていう話をしてたんですけど,そのたびに進化していくというか。
黒木氏:
大きなイベントが数年に1回。
4Gamer:
オリンピック的に。
黒木氏:
もうスタッフも慣れた感じですね。
4Gamer:
社内的に何かが大きくがらりと変わることはありますか?
小田氏:
そういうのはないですけど,でも規模は大きくなってるんですよ。とくに,確実に今回の変化によって。規模を大きくする理由はモノを増やすという目標があるから。なもんで,そこは大きく変わるでしょうね。
4Gamer:
前回お聞きした。世界で名高いパブリッシャーになるというものですね。
小田氏:
そうですね。
4Gamer:
以前のSNKって,1年に1本ぐらいありましたよね新作が。
小田氏:
そうですね,1年でしたね。まあ自社ハードでやってるし,アーケードだけだったんで,ボリュームも今と比べたら小さいというのもありますが。
4Gamer:
あのころはよくタイトルに西暦のナンバーが付いてました。97とか99とか。
小田氏:
工場でROMを生産する2時間前にマスターアップしてればいい,みたいな作り方でしたね(笑)。いまはちょっとそんなことできないんで……。
4Gamer:
2時間前ってすごいですね……。
まぁそれにしてもこの方針転換で,大阪の社内では,例えばなんらかの混乱があったりしたんですか。人が足りないという話とは別として,会社そのものが何か変貌したみたいな。
小田氏:
……なんかあった?
黒木氏:
特に。開発側はずっと変わらずです。
4Gamer:
粛々と。
黒木氏:
ええもう粛々と。オーナーが変わっても特に何も(笑)。小田レベルになるとたぶん,いろいろな話があるんだとは思いますけど,現場はもう昔から同じ感じでずっとやってますね。
4Gamer:
いままでのSNKの血筋というか,そういったものもずっと継続で同じように?
小田氏:
ええと……テクニックで言うならば,昔のSNKと今のSNKとは同じものを作っても,作り方が全然違うんですよ。そういう変化はありますけど,SNKの過去のIPに関しての話はだいぶ風向きが変わってる感じはしますね。
4Gamer:
といいますと。
小田氏:
僕らもそうなんですけど,今のMiSK財団のようなオーナーレベルの人たちは,SNKの過去のIPについても非常に強い関心を持っておられて,そのあたり復活させるというのは,やろうとは思ってますよ。格闘ゲームだけじゃなくて。
4Gamer:
でも格ゲーだけ見てもたくさんありますよ。
小田氏:
そうですね。でも最近はKOFだけになっちゃってるんで,ほかのも当然やらないといけないね,という話を……。
黒木氏:
(笑)
4Gamer:
なんでそこで笑うんですか(笑)。
黒木氏:
いや,思いのほかいろいろ言うんだなと思って(笑)。
例えば「怒」とか「メタルスラッグ」,あとは「アテナ」「サイコソルジャー」※とか,有名なタイトルがいっぱいあるじゃないですか。その辺も何とかしたいなと思ってますけど。
※これらのタイトルはすべて「アーケードアーカイブス」と「アケアカNEOGEO」にラインナップされているので,懐かしい人も気になる人も,ぜひ。
4Gamer:
そっちまで手が伸びるんですね。ちょっとうれしい。
小田氏:
そうですね。伸ばせるところはちゃんと伸ばそうと思ってます。
じゃあぜひ「サスケvsコマンダ」も……。
小田氏:
そこまで行くんですか。
黒木氏:
なかなか(笑)。
4Gamer:
倒した敵が武器になるって斬新でしたよね。子供のころ結構好きでした。
でもよかったです。やっぱり外資にほぼ全部買われてしまって,SNKは変わっちゃうんじゃないのかっていう心配はちょっとあると思うんですよね。
小田氏:
それはどういう意味で?
4Gamer:
俺たちのSNKどこへ行っちゃうの,みたいな。
小田氏:
あー,はいはい。でもそういう意図で買収した感じではないですからねえ。どっちかというと,より元々のSNKチックに戻すというか(笑)。
4Gamer:
そうなんですよね。そもそもあっちでは相当なハイブランドなわけですし。
小田氏:
NEOGEOの時ですね。
なので,むしろ彼らはコアのSNKファンに近い感じの感覚を持ってますね。
4Gamer:
さっき,IPで新しいビジネスをとおっしゃってたんですけど,たぶんそっちも相当ワールドワイドですよね,日本でもIPを使って結構いろんなチャレンジしてますけどね。乙女ゲーっぽいやつとか。……KOFの何かだったような……。
黒木氏:
「SNK GALS' FIGHTERS」※かも。
※SNKのゲーム(格ゲーに限らない)に登場するさまざまな女性キャラクターが集まって格闘大会を開く……という設定。ネオジオポケットカラー(懐かしい!)専用タイトルだったが,近年Nintendo Switchにも移植された
4Gamer:
いやもっと乙女ゲーっぽい感じでした。
小田氏:
あ,分かった。「THE KING OF FIGHTERS for GIRLS」※だ。
※「SNKの格闘ゲーム「THE KING OF FIGHTERS」に登場する男性キャラクターと,オリジナルヒロインとの友情や恋が楽しめるイケメン格闘家育成アプリゲーム」……と4Gamerに書いてあった。当時は「えっ?」と思ったけど,目のつけどころは結構いいような?
4Gamer:
すごいもの出てきたなぁ,と思いました,見たとき。
黒木氏:
僕らからはそういうのは出てこないかもね。面白いと思うんですけど,たぶん僕らが作っても面白くできない気がする(笑)。
4Gamer:
でもきっと,そういうのじゃない王道のことを望んで呼び戻したわけですから。
大勢の中に埋もれて力が出せない人こそSNKに来てほしい
4Gamer:
IPについては,何か方針は決まってるんですか?
そう,ざっくり3パターンくらいで考えてるんですけどね。
例えばKOFとかに代表されるウチのタイトルは,そのものとして作っていくと思うんですよね,今後も。それと真逆にあるのが,新しいIPです。これはもうゼロベースで起こすと思うんですけど。
その中間の……なんていうんですかね,ジャンルとか,ゲームシステムとか遊び方を変えた形で過去のIPを料理する……みたいなものもあると思うんです。
4Gamer:
IPを生かして違うものを作る。
小田氏:
そうですね。例えば昔「サムライスピリッツ」のRPGがあったじゃないですか。
4Gamer:
はい,ありましたね。
小田氏:
ああいう考え方はあるかなと思ってて。やれるとこからちょっとずつみたいな感じですけど。
4Gamer:
今まさに「サムスピのバトルロワイヤルとかかな」と思ったんですけど,まさにそんな感じなんですね。もしかしてその「IPを生かす」のはゲームに限らなかったりします……?
小田氏:
いや,我々がやる範囲では基本的にゲームですね。ほかの事業部ではまた別のことをやるとは思いますけど。
4Gamer:
例えばアニメとか。
小田氏:
なるほど。昔,新作の賑やかしでアニメを特番で流すみたいなパターンがあったじゃないですか。ああいうのは,またできたら面白いなと思うんですけど。
4Gamer:
そういったあれこれのことを進めていくにあたって,東京との連携ってどんな感じで考えているんでしょうか。
小田氏:
開発のコアはそれぞれで動くと思うんですけど,共有できるとこは今からでも共有してますね。
黒木氏:
そうですね。現場レベルでも情報共有とかもしてます。あとさっきも言ったように,大阪も我々が来たときは誰も人がいなかった状態なわけですよ。
4Gamer:
はい。
黒木氏:
なので,今の東京スタジオの皆さんの気持ちがすごい分かります。
まぁとはいえ,あんまり社内では東京とか大阪とか意識してないと思いますけどね。
そうですね。今もうほとんどみんなリモートなんで,大阪も人いないですから(笑)。
4Gamer:
リモートで場所を占有しないようになると気付きづらいですけど,大阪もまだまだ人は足りないわけですよね。
小田氏:
そうですねえ。100人規模だと,走れても2本が限界かなと思うんで。
4Gamer:
どれぐらいを目指す感じですか?
小田氏:
限界まで増やしたいんですけど,迎える側のキャパもあるじゃないですか。そのあたりをちょっと様子見ながら……2割ずつぐらい?
4Gamer:
結構増やしてますね。
小田氏:
MAX400くらいまで増やせたらいいなと思ってるんです,はい。人を増やすのを前倒しできれば,着手できることもその分前倒しできますしね。
4Gamer:
でも最近は人材いないですよね。
小田氏:
いやもうホントに……。
黒木氏:
でも,いい人が受けにきてくれるようになりましたよ,現場は。
4Gamer:
お? 比較的若い方ですか?
小田氏:
そうですね。新卒で受けに来てくれる人が一気に増えました。
黒木氏:
ものすごく増えましたよ本当に。たぶんいろんな方が頑張ったからだと思うんですけど,去年はそこまでじゃなかったんで。今年は明らかに人数とか増えてますから,どこかで何かが起こってるんだろうなと(笑)。
4Gamer:
何が起こったのかご存じなんですか?
黒木氏:
いや全然(笑)。きっと人事の方とかいろんな方が,各方面で頑張っていただいてるんだろうな,と。
小田氏:
泣きそうになりながら面接してますよ。
4Gamer:
言い方アレだったらすみません,でも若い子とSNKの強い接点がちょっとピンとこないんですよ……。何か思い付きます?
小田氏:
あんまないですね(笑)。
黒木氏:
ただ,学校の先生とかにはすごく受けがいいんですよ。
4Gamer:
あー,世代的に。
黒木氏:
学校に行ったりすると,生徒よりもテンション高いですね。いやもうびっくりするぐらいです。
4Gamer:
いまの新卒あたりの子だと,親世代なんかもそうかもしれないですね。
黒木氏:
そうですね確かに。
4Gamer:
どんな人が欲しい,とかあるんですか?
小田氏:
SNKに興味を持って,働きに来てくれる方ならどなたでもって感じではあります。
黒木氏:
いやもうちょっと何か言おうよ(笑)。
小田氏:
全職種来ていただきたいですね。もし転職を考えている中途の人とかいたら,能力を発揮する場はどんどん用意できますから。
4Gamer:
バックオフィス系でも全然ウェルカムですか。
小田氏:
そうですね。
4Gamer:
中途の人っていうのは?
小田氏:
いろんな会社があると思うんですけど,なんていうかな……今ちょっと悶々としてる人は,もう絶対SNKがうってつけ。
4Gamer:
いろんなチャレンジができるということですか。
黒木氏:
そうです。大勢の中に埋もれて力が出せない人とか,たぶんですけどSNKに来ればその能力を遺憾なく発揮できるんじゃないかな,と思います。
4Gamer:
それはどんな理由で?
黒木氏:
結構重要なところをどんどん任せていっちゃうんですよ。中堅であろうが若い子であろうが。
4Gamer:
縦割りのかっちりした組織ではない……ということですか?
小田氏:
会社によくある上下の構造とかがすごく薄いんですよ。いや……薄いっていうかあんまりない(笑)。
黒木氏:
役職なんかもあんまりたくさんないんですよね。僕の上になると,小田とか安部※になってくるし,僕の下には一つか二つの役職しかない。
※安部直人氏は,SNKの古参デザイナー。小田氏や黒木氏より古い……はず
4Gamer:
なるほど。それは……もうちょっと強くプッシュしてもいいんじゃないでしょうか。結構な魅力になると思うんですが。
小田氏:
まあ最近は結構スタッフもグローバルになってきてるので,そういう話で言うならもう先輩後輩の概念みたいなものもあんまりないじゃないですか。
黒木氏:
確かにないような気がする。
4Gamer:
端的に言うと,割と若い子にもバンバンいろんなことやらせる,みたいな感じなんですね。
黒木氏:
そうですね。私達も結構いろんな会社を見てきたんですけど,たぶんSNKみたいな会社のやり方は,ちょっと珍しいんじゃないかなと。入ってきてこの年齢で,もうこんなことさせんの? みたいなのはあるかもしれないです。
4Gamer:
何か記事に書いてもいい実例ってありますか?
黒木氏:
例えば,餓狼とかKOFに人気キャラがたくさんいるんですけども,普通はそういう人気キャラはベテランが作ったりするんですよ。
4Gamer:
はい,そうでしょうね。
黒木氏:
でもSNKでは,例えばKOFのロック・ハワードなんかは3年目とか4年目の子に作らせて,それを先輩がケアしたりとか。
4Gamer:
一種のOJTですね。
黒木氏:
まぁそうですね(笑)。でもそういうのを一つ経験すると,次からさらに上の仕事ができるようになるし,僕は少なくともあんまりそういう常識にはこだわりがないので。やりたい人とかできる人には,どんどん仕事を回していく形ですね。
4Gamer:
すごいけど,最終的にまとめる人がちょっとだけ大変そうですね。
黒木氏:
まあでも,それはやっていかないといけないことなので。
4Gamer:
でもそういうのをやらせてあげるわけですね。
黒木氏:
外部の会社とのやりとりとかも,僕の経験である程度ベテランにならないとやらないパターンが多いんですけど,弊社の場合は割と早めからそういうのを経験させてあげたりとか,っていうのもありますね。
4Gamer:
たぶん一生懸命フォローする人がいるわけですよね。
黒木氏:
もちろんです(笑)。そこはもうお互い様というか。
4Gamer:
いえ,分かります。フォローする人がいないと絶対に回らないけど,それをあえてやってるのはいいですね。
小田氏:
うん,そう。やっぱり開発って,ディレクターという肩書きがトップになるわけじゃないですか。現場ならば,そのディレクターというところまでは,できるだけ若いうちになってほしいというのがあるんです。「ディレクター期間」が長い方がいいかなと思ってて。
4Gamer:
まぁ前回のインタビューでも,SNKの社内体制は珍しいって東京組の人達がみんな口を揃えて。
小田氏:
(東京組に向かって)そうなんですか?
(東京組一斉に頷く)
4Gamer:
ああいうのはなかなかないです,とみんな口を揃えて言ってました。
二人:
そんなにですか(笑)。
自分達のときと比べると,最近の若い子はホント頭がいい
まぁそういう会社のカラーがあってこそ今のSNKがあるわけで,それを大事にしてほしいです。
黒木氏:
まぁ僕らも先輩からそういうふうにされてきたので。
4Gamer:
昔のSNKですか?
黒木氏:
はい。
4Gamer:
そうだったんですね。
黒木氏:
どんどん大きい仕事を任されていったので,そういうのが普通になってるんだと思います。
小田氏:
あ,でも……僕いま50歳なんですよ。でも昔のSNKに僕らが20歳そこそこで入ったとき,開発の中に50歳の人なんていなかったですからね。
黒木氏:
そういえばいなかったですね(笑)。
小田氏:
一番上が30ちょいとかだったんで,もう本当に全員で部活のノリでやってたんだと思います。
黒木氏:
確かにそうだ……。正直あの時,30の人にはもうね……。
小田氏:
そう。おじさんってやつは……。
黒木氏:
……と思ってたんですよね。あのときの上司を遥かにいま超えてるわけで,新人の子たちにどういうふうに見られてるんだろうと思う(笑)。
小田氏:
今で30歳とかだとまだ若手ですからねえ。
4Gamer:
私ずっとメディアなんですけど,新卒で雑誌の編集になったとき,当時の編集長は34歳でした。当時は「うわあオトナだなぁ……」って思ってましたそういえば。
小田氏:
そうそう(笑)。そんでみんな若かったから,全員オラついてるの。常に何かが一触即発みたいな(笑)。
黒木氏:
それみんなじゃなくてあなただけだから(笑)。
小田氏:
いやいやいや違うでしょう?
4Gamer:
この間ウチに載ってた小田さんのインタビュー読んだら,5年ぐらい食えればいいかなと思って入ったって言ってましたけど,その割にはオラついてたんですね(笑)。
ビデオゲームの語り部たち 第16部:伝統に新たな力を加えて再び飛躍するSNK。未来は今作られている
メディアコンテンツ研究家の黒川文雄氏が,ビデオゲームの歴史で記録・記憶しておくべき人々や場所などを振り返る連載「ビデオゲームの語り部たち」。今回は,前回に続いてSNKの関係者に,「KOF」復活の裏側や,同社が目指す未来を語っていただきました。
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- ライター:黒川文雄
- ビデオゲームの語り部たち
黒木氏:
一番とんがってましたね,僕の同期で。
4Gamer:
それが今やこうなってるわけですよ。
黒木氏:
信じられないっすね。
4Gamer:
まぁ昔は情報も少なかったしノリと勢いだけで会社を選んでたような節もありますけど,最近ではどんな情報も分かるわけですし,自分で面接してるので分かりますが,福利厚生とか安定を気にする若い子もいるわけです。
いままでの話を聞いてる限りでは,前者みたいな子が多く飛び込んできそうな雰囲気がありますね。
小田氏:
いや,両方来ていただきたいですけどね。
4Gamer:
しかしこの特徴の裏を返すと,やりたいことがない人はツラそうです。
黒木氏:
やりたいことない人はそもそも来ないと思うからたぶん大丈夫です!
4Gamer:
もしかしてお二人も面接とかもやるんですか?
小田氏:
やってますよもう,頑張って。藤重※さんとも毎日「俺らの給料は面接で出てるんだ!」とか言いながら。
※前回のインタビューでも登場した,SNK第二ソフトウェア開発事業部長の藤重和博氏。このインタビュー中,カメラに映らないところに陣取ってニヤニヤしながら話を聴いていた
(一同笑)
小田氏:
ほぼ面接しかしてない日とかあるし。
4Gamer:
そんなにやってるんですね。
小田氏:
多いときは,もう今日は誰とも会いたくないっていうくらいしゃべってます。
黒木氏:
最近多いですね。
4Gamer:
最近面接に来る人はなんか特徴あったりします?
小田氏:
うーん,やっぱり自分が若手の頃と比べちゃうんで,みんな頭いいなと思います(笑)。
黒木氏:
それはすごく思う(笑)。 すごいしっかりしてるよね。
4Gamer:
なんか分かります。
小田氏:
彼らが面接でしゃべってるような言葉を喋れるようになったのは,僕30歳くらいからなんですけど。すごく難しいことしゃべるよね。
黒木氏:
質問されたらどうしようってドキドキしてますもん。
4Gamer:
まだ若いのにそんなことを考えて生きてるの? って思いますね。
小田氏:
僕小学校の時に,ガンプラが流行ったんですよ。当時真剣にガンダムのプラモデルを作ってたんですけど,いまでも同じ事やってるんですよ。それに気づいたとき「まじか」って思うことはあります。50になってまだ同じことやってる,って。
4Gamer:
いやいやそれ仕事ですから(笑)。でもホント,今の若い子って頭いいですよね……。
小田氏:
イメージですけど,僕ら当時ひらがなでしか喋れなかったんですけど。今の新卒で受けに来る子ってみんな漢字でしゃべるんですよ。しかも文章が長いの。
黒木氏:
仕事を覚えるのも早いですし。
小田氏:
なんかたまに,この人上司になってくれたらいいのに,みたいな。
面接で「なるほどそういうふうに考えるんだ」ってメモしたりして(笑)。
4Gamer:
ちなみにどういうところを重視しますか?
小田氏:
今は本当に多様な人材を取ろうとしてるんで,まずはみんなと一緒に働けそうかなっていうところは重視します。あとはもうホントにいろんなタイプの人に入ってもらった方がいいかなと思って。
黒木氏:
何か強みがあればいいと思うんですよね。尖った人ばっかりだったら,開発がぐちゃぐちゃなってしまうので……。
小田氏:
それこそ僕らがいたころみたいな。
黒木氏:
そう(笑)。今はいろんなカラーがあった方がいいと思います。
4Gamer:
尖った人って,何人かはいてくれないと小さくまとまっちゃいがちなんですけど,一定のパーセントを超えると組織がどんどんこう……。
黒木氏:
そうですね(笑)。
小田氏:
まぁさっきも言ったんですけど,経験者の方は,どんだけ控えめに見ても今来るのがチャンスですよ。自己表現したい人は本当にぜひ。
黒木氏:
僕今聞いたら行きますもん。
小田氏:
最近って大作が多くなっちゃって,開発に4年とか5年とか使って一つの作品を……ってなってます。じゃあそれが終わって次も同じような座組でやろうとして,そのときのディレクターAさんが次も同じディレクターAさんだとしたら,俺の方がうまくできるのにと思ってる人にチャンスが巡らないわけじゃないですか。そのチャンスを,SNKは用意できるんです。
4Gamer:
業界の方と話すときいつも思うんですけど,例えば1本あたりの開発に3年かかるとして,10年きっちり仕事しても3本しか関与できないわけです。下手すると2本とか,途中で中止になっちゃったりしたら0本とか。キャリアを積み上げていくことが昔よりはるかに難しいのかもしれないなと思ってて。
小田氏:
そうですね。
4Gamer:
なので,今みたいなお話はいいですね。
黒木氏:
早く育ってくれないと我々も定年になっちゃいますから。
4Gamer:
あと10年として,3本は作れますね。
小田氏:
うん? ……うんそう……ですね。
4Gamer:
あれ? もしかして並行してたり?
小田氏:
今って,リリースした後の運用があるじゃないですか。昔より手離れが悪いんですよ(笑)。
4Gamer:
確かに売って終わりじゃないですもんね。
小田氏:
だからマスターアップの打ち上げとかも,きっかけがない。昔は毎回あったんですけど。
黒木氏:
そうですねえ。
小田氏:
いまはもう,いつが終る日なのかも分からないですね。
黒木氏:
次のプロジェクトが始まるときに,ポツポツと何人か抜けていくじゃないですか。いつの間にか人が減ってるみたいな感じなんで,いつ終わりみたいな印がない。
小田氏:
いつまでこのゲームを練習し続ければいいのかっていうのをしないと,「もうこのゲームを遊んでても,先がないよね」ってなるとそこで終わっちゃうんです。
4Gamer:
昔はそうじゃなかったわけですしねえ。
小田氏:
昔はね。まあ我々はアーケードだったんで,MVS筐体の中のROMを次々と出さないといけないじゃないですか。今だから言えるんですけど,あんまり息が長いと困るって営業からは言われてました(笑)。
4Gamer:
言いたいことは分かります(笑)。
小田氏:
もちろんお店の人は,息の長いソフトを作れば喜んでくださるんですけど。
4Gamer:
うちのスタッフにも,例えばポケモンとかFF7とか,何周も何周もするのがいるんですけど,全然業界に金銭的貢献をしてないというか……そんな感じですかね(笑)。
私昔は紙の雑誌をやってましたけど,紙の雑誌は地獄の校了日さえ終われば1週間ぐらい何もしないでプラプラしたりしてましたけど,Webになってそれがまったくなくて,ノンストップでずーーーっとやってる気がします。
黒木氏:
終わりは欲しいですよねえ。開発もそうです。
4Gamer:
ここで終わりだよ,っていうラインが欲しいです。
しかしそうか,当たり前ですけど,発売後もチームが急になくなったりはしないわけですね。
黒木氏:
そうなんですよ。
4Gamer:
それはつまり,出すものを増やせば増やすほど,人が増えていく?
小田氏:
そうですね。あと開発環境なんかも常に残しておかないといけないので,そういう物理的な大変さもあります。
黒木氏:
これ地味な話ですけど,本当に大変なんです(笑)。
4Gamer:
そりゃそうですよね……。昔なら,マスターアップしたらぱーっとみんなで飲みに行ってたようなのも?
小田氏:
そうですね。まあそういうことも,世代も世代なんであんまり……ね,飲みに誘うとかもあんまりよくないのかなあとか思って,こちらからは特に飲み会を用意しないようにしたら,意外と行きたい人が多いことが最近判明しまして。
4Gamer:
判明って(笑)。
小田氏:
でも声かけていいのかなあ……ハラスメントになったりしないかなぁ……とかもじもじしたり。
4Gamer:
こっちも気にしちゃいますよね,ハラスメントは。
黒木氏:
完全にもうおじさんの悩み。
4Gamer:
これは言っていいことだろうかダメだろうか,って躊躇することはよくありますね。
「綺麗な丸」を目指さない大阪は,既存IPの活用に注力する
4Gamer:
しかし話を戻すんですが,新しい大きなIPと,既存のIPの活用と,その両軸で今後は進んでいくわけですよね。
小田氏:
大阪はどっちかいうと既存のIPに比重をかける感じですね。その上でどういう展開ができるかとか。
4Gamer:
それが主たるミッションで400人目指すって結構ですよね。
小田氏:
そうね。持ってる資産がやたらにね。
4Gamer:
結構ありますもんね。でもそれ,ほぼ全部手を入れようと思ってるんですか?
小田氏:
いや,さすがに優先順位をつけて。言うても,マイナーなタイトルも結構多いですから。メジャータイトルから順番にやっていきます。
4Gamer:
メジャータイトルから。なるほど。どこかにメジャーか否かのボーダーラインがあるわけですね。
小田氏:
ボーダーっていうか,当落線上に位置するタイトルがやたら多いんですよね(笑)。
4Gamer:
ちなみにどのあたりがそれにあたるのか,すごく気になります(笑)。
んー,これ人によって違うんですけど……。
4Gamer:
はい。
小田氏:
例えば「月華の剣士」。
4Gamer:
はい。
小田氏:
あれは僕の中では当落線上のタイトルなんですけど,人によってはこれは異常に優先度が高いんですよ。KOFよりも高い。
4Gamer:
僕もちょっと好きだったんで分かります。
小田氏:
そういう,特定の思い入れが強い人がいるタイトルが結構あるんで,そのあたりは慎重に扱わないと,本当にもう危険だなと思います。
4Gamer:
ちなみにそれ,最後はどうやって決めるんですか?
小田氏:
いやもう,最後は独断で(笑)。まあいろんな人の意見聞きながらですけど。
4Gamer:
こういうのは多数決っていうわけにもいかないですよね。もちろんビジネスなので数字は大事ですけど,多数決で決めると良いことなさそうな気がします。
小田氏:
そうなんですよね。
元々の作り方が本当に,勘と気合と……みたいな感じだったじゃないですか。
4Gamer:
そうでしょうね(笑)。
小田氏:
そういうところがね……。
そうだ。「BURIKI ONE」ってご存知ですか。
4Gamer:
「BURIKI ONE」? すみません知らないかも……。
小田氏:
左のボタンで移動して,右のレバーで攻撃するっていう,謎の格闘ゲームだったんですけど。
4Gamer:
あ! それで分かりました。
小田氏:
これとか,作ってるときみんな酒飲んでるんじゃないかと(笑)。
4Gamer:
誰が考えたんだろうっていう(笑)。
黒木氏:
あんまり言うと怒られるで(笑)。
4Gamer:
商品化されちゃったのがすごいと思います,あれ。
黒木氏:
いろんな意味で伝説のゲームですからね。
小田氏:
最近はちゃんといろいろなデータが取れるので,ある程度はちゃんとできますね。「餓狼3」の話していいですか?
4Gamer:
ぜひ。
小田氏:
「餓狼伝説」シリーズの中に「餓狼3」というのがあります。まぁ僕らも携わったんですけど,ビジネス的には失敗したかな当時。そんで餓狼にはライン移動っていうのがあって,奥のラインと手前のラインみたいな。ちょっと立体感を表現しながら,みたいな?
4Gamer:
はい。2D格闘の立体感はそれで表現されてましたよね。
で,餓狼2はその奥と手前の2ラインで遊んでたので,餓狼3は3ラインだって言って,3本に増やしたんですよね。アホちゃうかと思いながらやってたんですけどね。
黒木氏:
もうそのへんでやめときって(笑)。
(一同笑)
小田氏:
どうやって操作するやろって思ったら,本当に操作できなかった。いや面白かったですよ? 面白かったんですけど……。まぁその時みんなそれがいいと思ってやってたことなんで。
黒木氏:
ましてやそのころって3Dゲームが出だしたころで。それへの憧れもあったと思いますね,きっと。
4Gamer:
まぁでもライン移動は王道ですよね。
黒木氏:
作るの面倒くさいんですよ,あれ。
4Gamer:
主にどのあたりが?
小田氏:
ちょうど,絵的にかっこ悪くなる角度なんですよ。
4Gamer:
あー,なるほど。
小田氏:
ドット絵を描くのがすごく難しかったですね。もう半分喧嘩しながら作ってましたもん。
4Gamer:
でも先の「月華の剣士」の話もそうですけど,昔の熱狂の時代だったころのIPは,何かこうKPIとかで測ってたわけではないので,同じように数値では決めないほうがいいような気もしますね。
小田氏:
取れてなかったから,それが使えなかったというのもありますよね。良い面も,悪い面もあります。
4Gamer:
もちろんです。でも何でも数字で決めちゃうと,そういう変なものとか,味のあるものがどんどん落ちていく気がしています。
小田氏:
確かに。どんどん「綺麗な丸」になっていくだけなんですよね。
4Gamer:
データも痛し痒しなんですよね。ですのでSNKには,ぜひ両方重視していただきたいです。
黒木氏:
だからいろんな人が欲しいんですよ。変なこと言う人も。
4Gamer:
じゃあそういう部分も含めて採用活動をしていきながら,この後は今まで以上に大阪の活動も活発になっていくということで!
小田氏:
そうですね。
黒木氏:
何かを作りたくて仕方ない人達は,ぜひ待ってます。
4Gamer:
ありがとうございました。
SNK採用サイト
――2022年6月3日
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