イベント
「ゲームマーケット2023春」レポート。約2万2000人が来場し,コロナ禍前の活気を取り戻した会場には,「FFVII」ボドゲなどの新情報も
前々回の2022春と同様に西館で実施されたが,今回はブースの形に変更あり。コの字型に広がる西館1ホールと西館2ホールの中央にあたるアトリウム部分にも通路とブースが作られ,来場者が自由に通行できるようになっていた。
イベントを主催するアークライトのボードゲーム事業部 販売チームの鈴木健右氏によると,「なるべく(出展社の)落選を出さないようにするために,可能な限りエリアを有効活用できる形を目指した」ことが理由のようだ。
なお2日間の来場者数は,前回の2022秋(関連記事)を超える約2万2000人とのこと。会場内は賑やかで移動の制限などもなく,コロナ禍前の活気を取り戻したと言えそうだ。
イベントステージや事務局などがアトリウムに設置されたこともあり,移動中に覗けるようになった。どのブースからも大きく移動せずアクセスできるのはありがたいところ。
前置きが長くなったが,本稿では「ゲームマーケット2023春」の会場全体で,気になったブースをピックアップして紹介していく。扱っているブースについては,下の目次を参考にしてほしい。
なお,いくつかのブースは後日,詳細記事を掲載する予定なので,そちらも楽しみにしておいてほしい。
・アークライト
・ホビージャパン
・オインクゲームズ
・すごろくや
・カドアナ
・オーガスト/ARIA
・ウィットワン
・ジーピー
・アソビション(Asobition)
・スタジオムンディ
・ジャイアントホビー
・GEO GAMES
・Light N Games
・Engames
・まとめ
・Kickstarterインタビュー
ゲームマーケット 公式サイト
アークライト
「ゲームマーケット」を主催しているアークライトは,アトリウムスペースに出展。新作タイトルの試遊台や,豪華なコンポーネント(内容物)を持つ作品の展示,手にとって遊べるアトラクションなど,大きなスペースを活用したブースになっていた。
展示されていた作品の中でも特に目をひいたのが,創造主となって緑あふれる惑星を作り上げるボードゲーム「エバーグリーン」だ。
プレイ時間は45〜60分程度とやや重めの部類に入る作品なのだが,飾られていたコマやコンポーネントのデザインから,初めてゲームに触れた人でも“なんとなく何をするゲームかわかる”ように工夫されていたのが印象的であった。
「アークライト」公式サイト
ホビージャパン
カードゲーム「ドミニオン」をはじめとして,ややコアよりな海外ボードゲームの日本語版を多く出版しているホビージャパンでは,お馴染みの商品の物販のほか,2023年内に発売が予定されている新作タイトルも発表された。
新情報が公開されたのは,1 More Time Gamesの「チャレンジャーズ!」と,Bombyxの「シーソルト&ペーパー」,そして“新作発表パズル”を介して発表された国産タイトルのリメイク「サン・ドニ」の3タイトル。
ボードゲーム制作サークル“四等星”が2019年秋に発表した「サン・ドニ」は,プレイヤー各自が持つ労働者コマを職場に配置することで資源を獲得していくワーカープレイスメント系の作品だ。ワーカーの配置にはコストがかかるが,同じ職場が使われるほどコストが下がっていくシステムが採用されている。
また,過去に発表されている「エスペライゼーション」や「天下鳴動」のリメイクに関するポスターも掲示されていた。発表タイトルを含むホビージャパンの製品発売スケジュールは公式サイトでまとめられているので,気になる人はチェックしておくといいだろう。
ホビージャパン 公式サイト
製品発売スケジュール
ホビージャパンはスクウェア・エニックスと提携しており,同社のIPを使ったボードゲームも制作・販売を行っている。
2022年のEssen SPIELでは,「FINAL FANTASY VII REMAKE」のボードゲームが発表されているが,今のところ詳細は明かされていない。ただ本ブースのショーケースには,制作状況を伝えるボードが設置されていた。
また試遊スペースには,「チョコボのクリスタルハント」「チョコボのパーティーアップ」に続く,“チョコボ”をテーマにした作品「チョコボの不思議なダンジョン ボードゲーム」が用意されており,多くのファンがプレイを楽しんでいた。本作の試遊レポートは後日の掲載予定だ。
オインクゲームズ
スタイリッシュな小箱ゲームで知られるオインクゲームズの新作は,ホエールウォッチングをテーマにした「クジラオルカ」と,人気シリーズの最新作「ナインタイル エクストリーム」だ。
本ブースで目を引いたのは,「クジラオルカ」の試遊卓だ。テーブルはゴムボートの上に配置され,スタッフはライフセーバーのような装いでゲームに参加していた。
会場の担当者によると,新作の雰囲気をより味わってもらうために工夫をこらしたとのことで,売上もかなり好調だった様子。2日間とも人が途絶えることがなく,ゲームマーケット全体を見渡しても特に人気の高いブースだったといえるだろう。
会場では,同社が5月26日に発売を予定している「チェンソーマン ナインタイル」の先行販売も行われていた。その名の通り,アニメ「チェンソーマン」と「ナインタイル」のコラボ商品で,タイルにはチェンソーマンやポチタ,アキ,パワー,マキマたちが描かれている。
「ナインタイル」はこれまでにも,サンリオやポケモンといった外部IPとのコラボが行われており,本作はコラボ第3弾にあたる。
現場で対応してくれた担当者によると,「ナインタイル ポケモンドコダ!」の売上が特に良好とのことで,こうしたコラボを今後も積極的に行っていきたい,と話していた。
ボードゲーム「チェンソーマン ナインタイル」,一般販売を5月26日に開始。アニメ“チェンソーマン”の世界観を楽しめる
オインクゲームズは本日(2023年5月15日),ボードゲーム「チェンソーマン ナインタイル」の一般販売を5月26日に開始することを発表した。価格は3300円(税込)。本作は,アニメ「チェンソーマン」の第3話エンディングのデザインが,タイルに施されたボードゲームで,チェンソーマンの世界観を楽しみながらプレイできるという。
オインクゲームズ 公式サイト
「クジラオルカ」紹介ページ
すごろくや
毎回遊び心あふれる展示が用意されるすごろくやのブースでは,ゲームデザイナーであるロベルト・フラガ氏をフィーチャーした“すごろくやのロベルト・フラガ祭”が実施されていた。
ロベルト・フラガ氏は,ダイスをカタパルトで射出して積み上げた建物を破壊する「Ka-Boom(ドッカーン!)」や,フラスコを使って中のボールを移し替える物理パズルゲーム「ドクターエウレカ」など,シンプルかつ奇抜なゲームを手掛けていることで有名だ。
今回はそんなフラガ氏のサイン会やスペシャルステージのほか,同氏の新作タイトル「忍者バナナ」の実況つき体験会も行われ,会場はおおいに盛り上がっていた。
カドアナ
KADOKAWAが展開するアナログゲームレーベル“カドアナ”からは,新作マーダーミステリーと新作カードゲームが計4作品も出展された。
マーダーミステリーの新作は,KADOKAWAとグループSNEのタッグによるマーダーミステリーシリーズ第3弾「MYSTERY&ADVENTURE BOX 03 鬼面都市捜査File」と,“新作マーダーミステリー大賞”の受賞作を手掛けたアーキテクトによる「アストリアの表徴 ─名探偵アルフィー最後の事件─」の2作品だ。
なお,2021年に募集が行われた“第2回 新作マーダーミステリー大賞”については,4月6日に一次選考通過作品が発表されている。今後の製品にも関わってくる可能性があるので,動きが気になる人はそちらもチェックしてみよう。
シリーズで初めて“剣と魔法の世界”を舞台にした作品だ。悪魔事件対策局の捜査員となり,局内の裏切者を追う物語が描かれる |
殺された女当主の謎に迫る本格謎解きマダミス。プレイヤーは5人のキャラクターを演じつつ,推理小説のように謎を紐解いていくことになる |
カードゲームの新作は,動物カードをお題に合わせて“YES”と“NO”に分ける「これどっち?【どうぶつ】」と,プレイヤー同士でキャラクターの人間関係を作っていく「出雲学園書紀」が出展された。
「出雲学園書紀」は対象年齢がやや高めのタイトルで,カドアナ発のマーダーミステリーを楽しんでいる人も,その延長線上で遊べそうな作品になっている感じだ。
「毒を持ってる動物は?」や「特定外来生物は?」といった問いかけに対して,動物を仕分けていくカードゲーム。遊び感覚で新しい知識を身につけられる |
ルールに沿ってキャラクターを登場させつつ,自由に物語を作り上げていく“ナラティブ・カードゲーム”を謳う作品だ。1人でもプレイ可能で,作った物語を二次創作として公開することもできる |
カドアナ 公式サイト
オーガスト/ARIA
カタログをチェックしていた一部のゲームファンが二度見したであろうブースがこちら。「大図書館の羊飼い -Library Party-」などで知られる,PCゲームブランド“オーガスト”と,コンシューマ向けゲームブランド“ARIA”のブースだ。
ゲームマーケットで名前を見るとは思っていなかった企業の登場に,驚いた人もいたのではなかろうか。
ブース内では,2022年4月にBOOTHなどで発売されたカードゲーム「ユーの理性はもうダメです」と,「大図書館の羊飼い」の作中イベントをモチーフにした,新作謎解きゲーム「エマと記憶の扉」が販売されていた。
会場で担当者に話を聞いてみたところ,社内にアナログゲームや謎解きを“好きな人たち”がおり,そのメンバーが中心となって出展を実現させたという。スタッフの中には,個人としてゲームマーケットの出展経験を持つメンバーもいるとのことだ。
オーガストは,“タテスクコミック”(縦スクロール形式を前提としたスマホ向け漫画)をはじめとした,ゲーム以外の展開を積極的に行っており,アナログゲーム関連の展開もそうした施策のひとつだという。
なお,新作「エマと記憶の扉」は,イベント終了後にBOOTHで販売を予定しているそうだ。興味がある人は,同社のゲームマーケット2023春特設ページをチェックしておくといい。
オーガスト 公式サイト
ゲームマーケット2023春 特設ページ
ウィットワン
こちらのブース名(社名)を見て,ピンと来る人は相当なゲーム事情通だろう。ウィットワンは,ゲームの運営や開発の支援,および翻訳,レビュー,コンサルタントなどを行う企業だ。
ゲームマーケットへの初出展は2022年春で,その際にリリースしたボードゲーム「推しごと!」が,同社としては初の自社販売タイトルとなる。今回の出展で,新作「推しカツ キラキライブ!」がラインナップに加わった。
担当者によると,ウィットワンのゲームマーケットの進出も,社内の“好きな人たち”の動きによるところが大きいという。ゲームマーケット公式ブログでは,かなり細かく制作状況が報告されており,楽しんで作っている雰囲気ががありありと感じられる。
映像やイラストのクオリティは,デジタルゲームの開発に関わってきたデベロッパらしく非常に高く,ブースも非常に丁寧に作られていた。今後は,ウィットワンやオーガスト/ARIAのように,デジタル分野でのノウハウを活かした出展が増えてくるかもしれない。
ジーピー
「カタン」をはじめとする人気タイトルを取り扱うジーピーでは,2022年のEssen SPIELで人気を集めたカードゲーム「Inside Job」(スパイジョブ)と,人気タイトルのリメイク「Belratti」(ベルラッティ)の試遊と販売が行われていた。
正体隠匿要素とトリックテイキングを融合したカードゲーム「Inside Job」。協力してミッションの達成を目指しつつ,妨害してくるスパイを見抜く必要がある |
美術館員と画家になり,美術品に紛れ込んだ贋作を探し出すイラスト連想系の協力型カードゲーム「Belratti」。双方が選んだカードを正しく推察する,審美眼が問われるゲームだ |
最近のゲームマーケットにおけるジーピーブースでは,恒例になりつつある“ゲームマーケット限定1000円ガチャ”も登場。特賞の「3Dカタン」はもちろん,A賞以下にも1000円以上の商品が多数含まれているということで,今年も長い列ができていた。
アソビション(Asobition)
大阪・梅田にプレイスペースを持つアソビションのブースでは,5月19日に一般発売を予定している,日本語版「Dead by Daylight: The Board Game」の先行販売が行われた。
タイトルからも分かる通り,Behaviour Interactiveによる非対称型対戦サバイバルホラーゲーム「Dead by Daylight」(PC / PS5 / Xbox Series X|S / Xbox One)のボードゲーム版だ。
Level 99 Gamesが2022年に実施したクラウドファンディングでは,1万1546人から106万7395ドル(約1億4500万円)もの出資を受けるなど,大きな話題になった。
アソビションは,「ミレニアム・ブレード」や「Bullet♡」「EMPYREAL」など,Level 99 Games作品の日本語版を積極的に手がけている。Level 99 Gamesは「Exceed Fighting System」をはじめとして,デジタルゲームとのコラボ作品を多数手がけているゲーム出版社なので,今後も注目していきたい。
「Dead by Daylightボードゲーム」日本語版が5月19日に全国の家電量販店やホビーショップなどで発売決定
アソビションは本日,「Dead by Daylightボードゲーム」の日本語版を5月19日に全国の家電量販店やホビーショップ,ボードゲームショップで販売開始すると発表した。価格は8250円(税込)。ホラーゲーム「Dead by Daylight」を原作とするボードゲームで,プレイヤーはボード上でも,キラーとサバイバーに別れて争うことになる。
スタジオムンディ
猫カフェ風ブースを設置したスタジオムンディの新作は「ねこカフェ KASANEKO」(かさねこ)。いわゆるリアルタイムゲームで,お題カードの中から指示された猫を探し出す速度を競うというものだ。
お題カードの表面には,5匹の猫が“重なって”いる姿が描かれており,裏面には1〜5までの数字が書かれている。ゲームが始まったら山札からお題カードを1枚めくり,お題カードデッキの上に書かれた数字を確認。その後,絵柄の中で下からその数字番目の猫を探し出す。
お題カードの中から指定された猫を見つけたら,次は回答用に用意された5枚の「取り札」から,正しいものを選ばなければならない。5匹の猫はそれぞれ独特な“ポーズ”と“色”を持ち,まずはポーズが合っているものを探し,それがなければ色が合っているものを宣言する。
やることは5枚の取札から正しい猫を選ぶだけなのだが,情報を正しく分析・比較する必要があり,遊んでみるとなかなか難しい。簡単なルールで盛り上がれる作品なので,手軽に遊べる作品を探している人にオススメしたい。
スタジオムンディ 公式サイト
ジャイアントホビー
「Warhammer」系の作品をはじめ,ミニチュアゲームを中心に販売するジャイアントホビーのブースでは,同社が展開するオリジナル「DORASURE」(ドラスレ)の最新拡張セット「ストレンジャーズ」が出展されていた。
2014年に基本セットが発売された「DORASURE」は,仲間たちと力を合わせて世界を冒険し,ドラゴンの討伐を目指す協力型ゲームだ。ギリギリまで切り詰められたゲームバランスと,メタルフィギュアを含む豪華なコンポーネントで話題を集め,多数の拡張セットやスピンオフ作品がリリースされている。
拡張セット第13弾の「ストレンジャーズ」は,“人外の民”がテーマとなっており,人間の国家である帝国の外側には住む3種族「オニ」「マーマン」「ドライアド」が収録されている。いずれも癖の強い能力を持ち,既存キャラクターとの相性を考えるのが楽しそうな冒険者たちだ。
ジャイアントホビー 公式サイト
GEO GAMES
知育玩具×ボードゲームをコンセプトに商品を展開するジオジャパンのゲームブランド“GEO GAMES”では,新商品の「ゆびスゴロク」と「MICRONIMO」が出展されていた。
いずれも非常にシンプルなルールで楽しめる作品で,子供が遊ぶことを想定してか,コンポーネントには大きく分かりやすいイラストが採用されているのが特徴だ。
サイコロを使わないすごろくゲーム「ゆびスゴロク」。手を“パー”にした状態で,指を折ることで先のマスへと進むことができる。進んだ先でじゃんけんに勝てば,指の本数をチャージして連続手番を行える |
昆虫を捕獲してコレクションを増やしていくカードゲーム「MICRONIMO」。ゲームごとにコレクションのルールを決めるカードがランダムに出現するので,毎回違った感覚で楽しめる |
GEO GAMES 公式サイト
Light N Games
今回が初出展となるLight N Gamesは,韓国に拠点を置くボードゲーム出版社だ。ブースには,テーマパークの運営を題材にした「Unfair(アンフェア)」,昆虫の収集と展示を行う「Pins & Beetles」,ファンタジー世界の冒険を描く「KINGSWOOD」の3作品が展示されていた。
「Unfair」は7月に日本語版が発売される予定で,さらに「Pins & Beetles」と「KINGSWOOD」は今夏の発売に向けて準備を進めているそうだ。「Unfair」は日本語版の紹介ページが公開されているので,気になる人はチェックしておこう。
Engames
ボードゲームカフェ兼出版社のEngamesは,「It's a Wonderful World」シリーズのほか,少しマニアックな海外ボードゲームの日本語版を積極的に展開している企業だ。
今回は,「It's a Wonderful World」を手掛けたLa Boite de Jeuの新作「Tribes of the Wind」と,Aleaが手掛けた名作ボードゲームのリメイク版「The Princes of Florence(フィレンツェの匠)」が出展されていた。
Engames Shop
まとめ
ゲームマーケットには毎年足を運んでいるが,今年は特にクオリティの安定を感じた年だった。オリジナル作品は全体的にビジュアルとルール両面の質が上がっており,さらに海外で生まれた人気作品の日本語版を出版する企業も増えているため,クオリティの高い作品に出会いやすい環境になっている。
それを考えると,今回の“エリア出展で小型ブースの島を囲む”配置は正解だったように思う。確実に良いものが欲しいだけであればエリア出展を回れば良いのだが,今回の形式であれば,小型ブースも同時に見て回る形になるからだ。
想定していなかった面白そうな作品に出会い,話を聞いて悩むのはゲームマーケットならではの楽しみなのだが,今回はそうした悩ましさが帰ってきたように感じられた。アトリウム部分が通路になったことで渋滞も緩和され,より余裕をもって周囲を見渡せる状況になったのも,そう感じた理由のひとつかもしれない。
横浜中華街のボドゲショップ“リゴレ”のブースでは,5月26日発売の新作「アース」が先行販売された。原語版はクラウドファンディングで約7100万円を集めた話題作だ |
サニーバードでは,新作「リッチ&グッド〜大勝負〜」の先行販売も。隣のプレイヤーと手札を共有した状態で遊ぶ取引ゲームという,特殊なメカニズムが特徴となっている |
Kickstarter
最後に,2019年のゲームマーケットから約3年ぶりの出展を果たしたKickstarterブースで,コミュニティディレクターのAlex Hudson氏に実施したインタビューを掲載し,ゲームマーケット2023春“まとめ”の締めくくりとしたい。
Kickstarterは,世界最大のクラウドファンディングプラットフォームだ。ボードゲーム界隈においては,クラウドファンディングで支援することを,Kickstarterにちなんで“蹴る”と呼ぶスラングが定着しているほど馴染み深い存在となっている。
今回のインタビューでは,Kickstarterが久々にゲームマーケットに出展した理由を聞いてみた。
4Gamer:
お時間をいただき,ありがとうございます。今回,Kickstarterとしてはかなり久々の出展になりますね。
Alex Hudson氏(以下,Hudson氏):
新型コロナの影響で,3年間も参加できず残念でした。2019年,まさに国内での窓口を開いた直後に動けなくなり,非常に歯がゆい思いをしていました。やっと,本当にやっと日本に来れるようになったので,これからようやく本格的な活動を始められます。
4Gamer:
以前にインタビューを受けて頂いた際には,Luke Craneさんがかなり熱意を持って話されていたので,さぞ無念であったろうと思っていました。
Hudson氏:
これから市場調査などを行い,日本の皆さんに対する適切なサービスのあり方を探っていく必要がありますが,我々は日本市場に対して変わらず強い興味を持ち続けていますよ!
Kickstarterは日本のサブカルチャーに注力する――ゲームマーケット出展を果たした同社に,クラウドファンディングのコツを聞いてみた
2017年に日本進出を果たした世界最大級のクラウドファンディングプラットフォーム,Kickstarter。ゲーマーにはお馴染みと言える同社だが,ゲームマーケット2019春に同社のブースがあるのは,これまでに見られない光景でもあった。この出展はどんな意味を持つのか。同社のHead of GamesであるLuke Crane氏に話を聞いた。
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- インタビュー
- ライター:徳岡正肇
- カメラマン:佐々木秀二
- ANALOG
4Gamer:
Kickstarterが最もメジャーなプラットフォームの1つであることは変わりありませんが,この数年間で国内外含め,非常に多くのクラウドファンディングプラットフォームが登場しました。現状,Kickstarterを選ぶ意味というのはどこにあるのでしょうか。
Hudson氏:
第一の利点は,我々が擁する強く大きいコミュニティの存在です。プロジェクトへの情報に敏感なユーザーが多く,そうしたユーザーがKickstarter上で築き上げたコミュニティが,クリエイティブなプロジェクトを実現する力になってくれるでしょう。
競争相手の存在については,我々としては嬉しく思っています。それを見ることで,我々の改善点を見つけ,よりよいサービスを提供できるようになるのですから。これに関しては,2022年にEverette TaylorがCEOに就任したことで方針が転換された部分でもあります。
大前提として,Kickstarterが「クリエイティブなプロジェクトのためだけのものである」という理念は変わっていません。既に存在する大きな商品の事前予約のようなプロジェクトを展開する場であったり,単なる寄付を募るための場にするつもりはありませんので,そこは安心してください。
4Gamer:
特典の設定や,外部サービスとの連携などに関しても,柔軟な印象がありますよね。ボードゲームではありませんが「Armed Fantasia & Penny Blood」では,2作品同時のクラウドファンディングを行い,“そんなことやっていいんだ”と驚いた記憶があります。
Hudson氏:
そうですね。我々は可能な限り発案者の提案を実現したいと考えています。特定のプランを提示して,それに沿った形ですべてを決めるような形ではなく,可能な限り要望を受け止め,各プロジェクトに合った提案ができればと考えています。
4Gamer:
日本のボードゲームを海外に進出させるプラットフォームとしても,Kickstarterは活躍していますよね。「ハートオブクラウン」などはその代表格だと思いますが。
Hudson氏:
それに関しては,商品の担当者が説明しましょう。
担当者:
「ハトクラ」の話ですね。それは私が担当した作品です。国内でも人気のある作品ということで,とても多くの支援が集まりました。ちょうど10周年を迎えた作品で,2nd Editionの発売に合わせて海外向けのクラウドファンディングも実施される予定です。
そのほか,同様に日本発のデッキ構築ゲームとして「たんとくおーれ」の英語版も同様に海外で受け入れられ,その流れで英語対応のデジタル版まで登場しました。
また,これから海外に出る作品としては「HacKCaD」も見逃せません。国内向けクラウドファンディングでは,1000万円以上の支援を集めた「HacKCaD」ですが,この成功を受けて海外向けクラウドファンディングが実施される予定です。
4Gamer:
そうしたサポートを受けるにあたり,やはりハードルになるのは言語の部分ですよね。これから日本語の対応窓口が拡張されるものと思いますが,日本ではどの程度のサポートが受けられるのでしょうか。
Hudson氏:
まさに,これからの課題ですね。現状,日本国内でフルタイムで稼働している人員は1人だけです。私がここにいるのは,これから何を日本に向けて提供すべきであるかを見極めるためでもあるのです。そうした情報を提供してくれるパートナーも見つけなければいけません。
これから検討しなければいけない事柄が非常に多いので,日本からKickstarterでクラウドファンディングの実施を検討している人は,ぜひ色々な場所でフィードバックをいただけると嬉しいです。
4Gamer:
ありがとうございました。
Kickstarter 公式サイト
ゲームマーケット 公式サイト
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