インタビュー
「Stove Indie」は,創作者とユーザーが共に成長するインディーゲームプラットフォーム。開発支援に対する思いなどを聞いた[G-STAR 2024]
Stove Indieは,日本ではあまり知られていないプラットフォームだが,BIC(Busan Indie Connect Festival)2024のプラチナスポンサーおよびG-STAR 2023 Indie Showcaseのタイトルスポンサーを務めるなど,韓国のインディーゲームシーンで存在感を高めている。
今回のインタビューでは,Stove Indieの概要やSmilegateのインディーゲーム支援に対する思いなどを聞いているので,Stove Indieについて知らないという人もこの機会に学んでみよう。
韓国のインディーゲームイベント「BIC」と,韓国のゲームプラットフォーム「Stove」が共同で行った記者会見をレポート[BIC2024]
韓国のインディーゲームイベント「BIC2024」の初日,BICの事務局長であるソ・ジョンスク氏と,SmilegateのStove事業総括代表であるペク・ヨンフン氏による共同記者会見が行われた。Smilegateが展開するゲームプラットフォーム「Stove Indie」が,BIC2024のプラチナスポンサーという関係性になっている。本稿では,記者会見の内容をお伝えしよう。
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4Gamer:
本日はよろしくお願いします。ヨさんはSmilegateに20年以上勤めていると聞きました。まずは,Smilegateについて簡単に紹介してもらえますか。
ヨ・スンファン氏(以下,ヨ氏):
Smilegateは2002年に設立された会社で,代表作はオンラインFPS「クロスファイア」とMMORPG「LOST ARK」です。ゲームスタジオとしてスタートしましたが,現在はプラットフォーム事業やパブリッシング事業など,事業を広げています。
4Gamer:
その中で,Stove Indieはどういった立ち位置でしょうか。
ヨ氏:
プラットフォーム事業の中に,Stove Storeの事業があり,その中のブランドがStove Indieとなっています。
4Gamer:
ヨさんは具体的にどんな業務に携わっているのかを教えてください。
ヨ氏:
Stove Indie全体の統括として,インディーゲームのエコシステムをStove Indieの中で作り出すことを目指しています。これまでのゲームビジネスは,開発・販売したものをユーザーがプレイして終わりでしたが,Stove Indieではユーザーのプレイが次の開発につながっていきます。
4Gamer:
Stove Indieはどこからアクセスできるのでしょうか。
ヨ氏:
Stove Store(外部リンク)のStove Indieタブからアクセスできます。ここではコミュニティ活動や,実際のユーザーが参加する形で,発売前のゲームのプレイテストなどが行われています。
4Gamer:
見たところ韓国の人が多そうですが,国別の割合が気になります。
ヨ氏:
Stove Store全体では韓国のユーザーが約9割ですが,Stove Indieに限定して集計したことはありません。
4Gamer:
BICの記者会見(関連記事)で,インディーゲームを支援していると聞きましたが,開発会社のほうも韓国の会社が多いですか。
ヨ氏:
支援プログラムへの申込みも,ほとんどが韓国の会社からです。まだ,グローバル進出できておらず,今後のグローバル化を模索している段階です。
4Gamer:
日本の開発会社を集めるのと,日本のユーザーを集めるのは,どちらが先になりそうですか。
ヨ氏:
Stove Indieのプレイテストを経て,Stove Storeで販売する仕組みとなっているので,開発会社とユーザーを分けて考えることはできません。日本の開発会社と,テストに参加してくれる日本のユーザーの両方を集めて,韓国と同様のエコシステムを作っていくことになると思います。
4Gamer:
プレイテストにかなり主眼が置かれているんですね。続いて,SmilegateがStove Indieで実現したいことを教えてください。
ヨ氏:
Smilegateは,約15年前にインディーゲームの支援事業を始めました。当時は,物質的な支援をしていたのですが,どうすれば開発会社が成長できるのか考えた結果,Stove Indieの構想が生まれました。
インディーゲームの場合,プレイテストを実施するのが難しいので,それを可能とする場を提供することが完成度の高いゲームにつながります。Smilegateも小さいスタジオから大きな会社へと成長したので,そうした会社をたくさん作っていきたいです。
4Gamer:
15年前というと,「クロスファイア」のヒットで,すでにスタジオは大きくなっていましたか。
ヨ氏:
「クロスファイア」は,2007年のローンチ後すぐにヒットして,会社が急成長しました。そのあとすぐに,支援事業を始めることにしました。
4Gamer:
支援を始めたときの思いを覚えていますか。
ヨ氏:
今でもはっきりと覚えています。Smilegateの現会長が初めてゲームを作った際には,大学の後輩やサークルの仲間の助けがありました。そして,みんなが情熱的にゲームを作っていました。私たちは2作目の「クロスファイア」で大きく成長しましたが,こうした情熱を持っている開発者は,ほかにもたくさんいます。Smilegateが初めて支援したのはゲームのサークルで,それからも創作の多様性に支援し続けています。
4Gamer:
15年間支援を続けるなかで,印象に残っているエピソードはありますか。
私はほぼ毎年,作品を直接審査しています。ほとんどの会社が審査に落ちますが,すべての会社に成長してほしいので,審査会場に大きなホワイトボードを設置して,プロジェクトの管理や制作進行について熱心に教育しています。審査で落とした会社が,2年後にまたやってきて合格した際は,とても嬉しかったです。
4Gamer:
Stove Storeを設立した際に,Stove Indieの構想はすでにあったのでしょうか。
ヨ氏:
はい。Stove Indieをやりたかったので,Stove Storeを作ったとも言えます。
事業として行うからにはマネタイズが必要になってきます。いろいろなマネタイズ方法のなかで,Stove Indieに最もフィットしたのがStove Storeでした。インディーゲームを無料でプレイすることに慣れてしまっているユーザーもいますが,お金を払ってプレイするという文化は必要だと思います。
4Gamer:
Stove Indieを始めたのは何年前ですか。
ヨ氏:
5年前です。
4Gamer:
実際に始めてみて感触はどうですか。何もなかったところにコミュニティを作るのは大変そうですが。
ヨ氏:
ものすごく大変です(笑)。Steamのような独占的なプラットフォームではなく,PlayStationのようにハードウェアがあるわけでもないので,よく分からないものと思われているかもしれません。
しかし,インディーゲーム支援をやり続けたことで,集まってくれる開発会社が増え,Stove Storeに載せるゲームが増え,プレイテストに参加してくれるユーザーも増えるという好循環が生まれ始めています。開発会社,マーケット,プレイテストという,3つの軸を同時にやるのは大変ですが,毎年成長できていることを嬉しく思います。そして,次のステップはグローバル展開だと考えています。
4Gamer:
3つの軸で最も大変なのはどれですか。
ヨ氏:
マーケットであるStove Storeの拡大に最も苦労しています。
Stove Storeの拡大に向けたプランはありますか。
ヨ氏:
有名なゲームをローカライズして,Stove Storeの目玉商品とすることは有力な施策です。
また,ユーザーが自発的に制作するコンテンツを活用してプロモーションを展開することで,創作者とユーザーが共に成長するゲームプラットフォームを目指し,Steamと差別化する計画があります。
4Gamer:
最後に日本のユーザーに向けて,メッセージをお願いします。
ヨ氏:
まだ正式に日本に進出しているわけではありませんが,日本のゲーム開発者ともお付き合いしていきたいと考えているので,ぜひStove Indieのことを知っていただきたいです。
また,韓国にはユーザーが自主的にコンテンツをおすすめする文化があります。大好きなインディーゲームがある人は,Stove Indieと一緒にそれを広めていきましょう。
「Stove Store」公式サイト
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