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Access Accepted第693回:州政府機関から告訴されたActivision Blizzard
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印刷2021/08/02 10:30

業界動向

Access Accepted第693回:州政府機関から告訴されたActivision Blizzard

画像集#006のサムネイル/Access Accepted第693回:州政府機関から告訴されたActivision Blizzard

 2020年にはゲーム業界における#MeTooムーブメントが注目され,以来“インクルーシブ”(多様な人を迎え入れる)という方針が各企業で打ち出されたり,ゲーム開発者会議での大きなテーマになったりしているが,Activision Blizzardが,セクシャルハラスメントや女性に対する不均等な雇用条件などで,カリフォルニア州政府機関から告訴されるという前代未聞の事態になっている。現在,ゲーム業界で大きな話題になっている一件を,現時点で分かる限りまとめてみた。


セクシャルハラスメントが常態化した企業文化


 アメリカ現地時間の7月22日,カリフォルニア州の政府機関である公正雇用住宅局(California Department of Fair Employment and Housing,以下DFEH)が,Activision Blizzardを相手取ってセクシャルハラスメントに関する訴訟を起こすというニュースが駆け巡り,ゲーム業界が騒然としている。ロサンゼルス郡上級裁判所に7月20日付けで提出された告訴状(外部リンク)によると,当局に寄せられていた被雇用者からの複数の訴えをもとに,過去2年半にわたって調査を重ねてきた結果として訴訟に踏み込んだものであると言う。

 #MeTooムーブメントの世界的な高まりが,欧米のゲーム業界にも伝わり,1つの潮流となっていた件については,2020年6月に掲載した「第651回:欧米ゲーム業界に起きる#MeTooムーブメント」記事リンク)でもお伝えしたとおり。一方で,当局による調査が始まったのは,それ以前の2018年の10月ということなので,Activision Blizzardにとっては非常に根深い問題であると思われる。今後は経営面での深刻な影響と,企業イメージの悪化をもたらすことも十分にあり得るだろう。

今回の告訴で取り上げられているのはActivision Blizzardの中でもカリフォルニア州アーバインにあるBlizzard Entertainment本社の出来事が多いようで,必ずしもActivision Blizzardの支社や他の開発チームが共有する企業文化というわけではない
画像集#001のサムネイル/Access Accepted第693回:州政府機関から告訴されたActivision Blizzard

 告訴状によると,Activision Blizzardにおいては「大学サークル(フラタニティ)的な企業文化がある」とし,社内イベントがあると男性が必要以上の飲酒をし,女性従業員の座るキュービクルを歩き回って,その女性に対して卑猥な言動を行う「Cube Crawls」なる伝統まであったという。キュービクルとはオフィススペースの一角で2方もしくは3方をパーテションで区切った専用スペースだが,その名称は「飲み屋をはしごする」を意味する“Bar Crawls”を連想させる。つまり,男性従業員たちが次々と女性の同僚のもとに押しかけてセクハラを繰り返すという行為が繰り返し行われてきたということだ。
 時期は明確にされていないものの,男性幹部のビジネス旅行中に,引率した女性従業員が,上司が持参したアナルセックスの道具を見せられてショックを受け,自殺してしまったことがこの告訴状には記載されており,我々の知らないショッキングな事件も起きていたようだ。この女性従業員が以前からかなり悪質なセクシャルハラスメントを受けていたという記述もあり,今後の裁判では詳しい事実関係が明らかにされていくだろう。

 告訴状には,こうしたセクシャルハラスメントの加害者として,「World of Warcraft」で長年クリエイティブ・ディレクターなどの要職を務めていたアレックス・アフラシアビ(Alex Afrasiabi)氏の名前が唯一挙げられており,自社イベントのBlizzConでは女性従業員に触ったり,後述する取り巻きたちの前で「結婚するからキスをしよう」などと強要したりしたという。被害に遭った女性従業員たちは人事部に何度も解決を求めたが,すべてが内部機密として処理され,抜本的な解決は行われなかったとも記述されている。
 渦中の人物となったアフラシアビ氏は2020年6月に退職している。すでに調査を受けている時期であり,やはりセクシャルハラスメント疑惑を受けての退職,という見方が強いようだ。

 この問題はセクシャルハラスメントだけでなく,「女性は産休に入るからリーダーシップを求められない」として十分なプロモーションの機会を与えられなかったなどの労働格差の問題も,告訴文の中のかなりの条項にわたって記述されており,雇用時点で同じキャリアのある男性とのポジションや月収が不平等に扱われてきたという。労働環境という枠組みで,政府機関が介入することになった重要な理由でもあるだろう。
 ちなみに,2019年度にDFEHが受けた2万2584件の訴えの中で,同機関が自ら告訴したのは4件に過ぎない。今回の告訴状においても告発者たちの保護が目的なのか,DFEHが代理人として訴訟を進めていくことになるようだ。

実態解明に向けて,#ActiBlizzWalkoutというハッシュタグを使って抗議活動を始めているBlizzard Entertainment本社従業員たち。現在,ゲーム開発はほぼ停止状態になっているという (同社Jon Peltz氏のTwitterアカウントより)
画像集#007のサムネイル/Access Accepted第693回:州政府機関から告訴されたActivision Blizzard


従業員やゲーマーたちから突き放される経営陣


 Activision Blizzardは当初,この告訴に対決する姿勢を見せており,NPRなど一部の海外ニュースメディアに宛てたメッセージ(外部リンク)では,「DFEHの告発は捻じ曲げられ,Blizzard Entertainmentの過去について多くの場合に間違ったものであります。DFEHがBlizzard Entertainmentの労働環境について色を塗りつけようとしている絵は,今日のものではありません」と非難した。
 また,今年3月にチーフ・コンプライアンス・オフィサーという肩書で最高幹部12人の1人に入ったフランシス・F・タウンセンド(Francis F. Townsend)氏は,直接こうした疑惑や企業体質に関与していたわけではないにせよ,従業員全員に向けた内部メールで「告訴状には嘘が多い」と書いていたことが暴露されている。

 もちろん,この案件はActivision Blizzardの小手先の火消し対策で収まるようなものではなかったということだろう。アメリカのゲームメディアの中には,この問題が解決するまで,Activisionの「Call of Duty」新作を含む同社のゲームの情報は報じないという声明を出し,同じセクシャルハラスメント問題で2020年に揺れたUbisoft Entertainmentに対して取ったのと同様の対応をしているところもある。
 さらに,Blizzard Entertainmentの設立者の1人であり,2019年に退社した前CEOのマイク・モーヘイム(Mike Morhaime)氏が自身のTwitter(外部リンク)で,「私は皆さんを失望させてしまいました」と,実際にセクシャルハラスメントの常態化を見抜けていなかったことを謝罪している。

 それまで静かだったActivision BlizzardのCEO,ボビー・コティック(Bobby Kotick)氏は,ようやく27日になって全従業員にあてたメッセージを同社公式サイト(外部リンク)で公開した。雇用問題専門の法律事務所と契約したことを明らかにし,「もし社内ルールに違反する行動を受けたのであれば,報告してほしい」とその改善策を発表している。

現在大きな問題となっているのはBlizzCon 2013だが,BlizzCon 2010では「下着メーカーのモデルのようなキャラクターしかいないのはなぜ」と女性ファンから聞かれたQ&A(外部リンク)で,壇上のアフラシアビ氏らWoWチームが下品な受け答えをしていた。その中には,現CEOのJ.アレン・ブラック(J. Allen Brack)氏も混じっている
画像集#003のサムネイル/Access Accepted第693回:州政府機関から告訴されたActivision Blizzard
 しかし,問題はこれだけでは沈静化せず,2000人というActivision Blizzardの従業員・元従業員のサインが入った請願書が提出された7月28日には,ゲームメディアのKotaku(外部リンク)が内部情報として,告訴状でも取り上げられていたBlizzCon 2013の顛末の詳細を伝えている。それによると,アフラシアビ氏の取り巻きたちからなる“コスビー・クルー”のメンバーたちが「女の子(従業員と思われる)を集めているところ」「みんなと結婚はできないよ」「できるよ,俺は(多重婚が認められている)中東の血があるから」「(結婚じゃなくて)ファックする,のミススペルだよね」と,書き起こすのもおぞましいメッセージをグループチャットで交換していたことも明らかにされており,すでに同社を去った人物を含めゲーム業界内外から集中砲火を浴びている。
 メッセージ文を送ったのは,「World of Warcraft」チームのジェシー・マクリー(Jesse McRee)氏であるが,その名前からも分かるように,「オーバーウォッチ」のキャラクターの1人である“マクリー”に名前貸しをしたという人物である。これに怒ったファンの中には,「マクリーの名前を変えろ」という抗議を行っている人たちもいるほどだ。

Kotaku誌がスクープした写真では,アフラシアビ氏たちの「大学サークル的文化」の一端が暴露されている。コメディアンのビル・コスビーさんが着ていた派手なセーター柄とホテルのカーペットが極似していたために,「コスビー・スイートルーム」(Cosby Suits)と呼ばれていたという (画像: Kotaku(外部リンク)より転載)
画像集#004のサムネイル/Access Accepted第693回:州政府機関から告訴されたActivision Blizzard

 もちろん,「World of Warcraft」などの長年のファンたちも抗議運動を展開し始めているが,これまでコアゲームを提供するメーカーの中では女性支持者も多かったと言われるBlizzard Entertainmentだけに,ファンの支持率低下と企業イメージの悪化というダメージはあまりに大きく,長期にわたって尾を引いていくことになるだろう。執筆している現在(2021年7月29日)も事態は進行している最中だ。

 告訴状はアフラシアビ氏とその取り巻き以外でも常態化していたセクシャルハラスメントのほか,女性の労働条件が良くなかったことを含めた包括的な内容になっているが,やはり何年にもわたってこうした状況を見過ごしてきた経営者の責任は追及されていくことになるだろう。被害にあった女性従業員らはもちろんだが,そうした疑惑と全く関わりのないActivision Blizzardの開発者たちの間でも不満は募っており,現在のActivision Blizzard経営陣は四面楚歌の状況だ。

著者紹介:奥谷海人
 4Gamer海外特派員。サンフランシスコ在住のゲームジャーナリストで,本連載「奥谷海人のAccess Accepted」は,2004年の開始以来,4Gamerで最も長く続く連載記事。欧米ゲーム業界に知り合いも多く,またゲームイベントの取材などを通じて,欧米ゲーム業界の“今”をウォッチし続けている。
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