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印刷2012/08/21 21:57

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[CEDEC 2012]“ゲーム会社だから,CC2だからできること”とは。セッション「『ドットハック セカイの向こうに』 ゲーム会社が作る3D立体映像」レポート

 2012年8月20日から22日にかけて,神奈川県内のパシフィコ横浜にてCEDEC 2012が開催されている。本稿では,開催2日めとなる8月21日に行われたショートセッション「劇場用3Dアニメーション『ドットハック セカイの向こうに』 ゲーム会社が作る3D立体映像」の模様をレポートしよう。

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 本セッションでは,サイバーコネクトツーが2012年1月21日より公開した劇場版アニメ「ドットハック セカイの向こうに」の3D立体視技術およびプロデュースについて,同作のプロジェクトリーダーを務めた二塚万佳氏から解説がなされた。

サイバーコネクトツー プロジェクトリーダー 二塚万佳氏
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 まず二塚氏は,同作品の特徴を,「現実世界(リアル)とゲーム内の世界『The World』(ザ・ワールド)を行き来する物語」と紹介。作品内では双方の世界を区別するために,それぞれ異なるビジュアルを採用している。具体的には,リアルは「2.5D,淡い質感,近未来感,抑えた立体感」を,ザ・ワールドでは「3D,CG質感,ゲーム世界観,強めな立体感」を意識した演出表現になっているのだ。
 こうした,見た目にもはっきり分かる極端な違いを本作が採用した理由は,視聴者が二つの世界それぞれに進行するストーリーをゴッチャにしてしまわないようにするためであり,二塚氏は「最も重要なポイントの一つ」と説明した。

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 企画から3D立体視の本制作に至る流れとしては,まずフル3DCGのパイロット版1.0,続いてアニメと3DCGをハイブリッドにしたパイロット版2.0を,それぞれ6か月程度の期間で作成。その結果,アニメの作画は,背景が書き割りっぽく見えてしまうなどの理由で,3D立体視に向かないことが判明したという。そのため,本制作ではパイロット版1.0と2.0を組み合わせたうえで,フル3DCG化することになった。

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 プロジェクトの延べ参加人数は450名で,制作期間は約4年。最も時間がかかったのは制作の最終段階で,主に3D立体視のエラーを軽減するべく試行錯誤していたそうだ。サイバーコネクトツーでは,その過程を「バグフィックス」と呼称し,一般の視聴者にとって観やすい映像になるまで繰り返し作業したとのことである。

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 さて,サイバーコネクトツーでは,同作品を制作するにあたり,3D立体視に関する独自のセオリーを持って臨んだという。二塚氏は「何を目指すのか,作品性によって,セオリーは変わります」と前置きし,同社では“視聴者に長時間ストレスなく観てもらう”ことを最重要ポイントにしたと説明。これは,3D立体視を使った初期作品では,目が疲れるなどのストレスにより,上映の途中で劇場を抜け出してしまう視聴者が多かったことが理由であるという。

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 視聴者のストレス軽減を前提とした具体的なセオリーの一つめは,「奥行きを作れ!!」というもので,つまりスクリーンから奥のほうに向かって世界が広がるように映像を作ることである。二塚氏は「3D立体視というと“飛び出す”ことを期待すると思いますが,驚くのは最初だけ。短いプロモーション映像ならいいのですが,連続すると飽きます」と断言し,「長時間の劇場作品では,奥行きを作って視聴者に没入感を与えることが重要」と説明した。

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 奥行きを作るための具体的な方法としては,3つのカメラを並べ,まず中央のカメラでレイアウトを決める。左右のカメラそれぞれで映像を作っていき,そしてレンダリングした二つの映像を専用ソフトで出力,コンバージェンス(注視点)を決め,さらにスクリーン面での立体感を調整していく。なお立体感の調整では,片目が赤,もう片目が青のメガネを使うという,アナログな手法も採用したそうだ。

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 二つめのセオリーは「飛び出しNG!!」。二塚氏は,飛び出し表現について,しっかりとした目的があり,実際に必要であると判断できる場合にのみ使うべきと述べ,それ以外でむやみに使っても効果がないとあらためて強調する。
 とくにキャラクターに注視点を当ててしまうと,そのキャラクターより前にある地面などが飛び出しの対象となってしまうため,注視点は基本的にスクリーン面に置くことが説明された。

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 そのほか,飛び出し表現で気をつけなければならない例として,画面から見切れているオブジェクトが挙げられた。見切れた飛び出しは非常に見苦しい映像になるとのことで,二塚氏は「本当に目を背けたくなる画になってしまう」と表現。
 逆に,キャラクターがスクリーンに向かってナイフを投げるシーンなどで,ナイフ全体がフレーム内に収まっているような飛び出し演出なら効果的であると二塚氏は話す。また,上空から塵が降ってきたり,雪が降ってきたりするなどの粒子系エフェクトとして飛び出し表現を使うのも効果的とのことである。

 二塚氏は,以上をまとめて,“立体視=飛び出し”というのは先入観であり,「3D立体視の効果的な使い方と,やってはいけないことを知っていれば,限定された飛び出しだけでも立体感を出すことはできる」と説明する。

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 三つめのセオリーは「見やすさ優先!!」である。カットが細かく分かれていたり,目の前をさまざまなものが横切ったり,あるいはカットが引いたり寄ったりといったような演出は,3D立体視を使った映像表現において見苦しくなってしまいがちだと二塚氏は前置きし,現場ではあまりにも細かすぎるカットを削除したり,引きと寄りの繰り返しについては見やすくなるよう調整していたと話す。

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 さらに二塚氏は「最も重要なことは物語に没入してもらうこと」であるとし,それを3D立体視にこだわることで阻害してはならないと述べる。そのために,10人以上のスタッフに映像を視聴させ,目が痛いなどの症状が出る場合には3D立体視の視差間を極端に弱めるケースもあったそうだ。

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 また本作品では,サイバーコネクトツーならではのこだわりもふんだんに詰め込んでいると二塚氏。例えば本作品は,同社の「.hack//」シリーズの1作として,ゲームやコミックと同様にシリーズ全体の年表にも加えられている。さらに3D立体視にもシリーズのコンテンツ力を生かしていたり,あるいはゲーム内アイテムを実際に現物として制作したりといったことも紹介された。

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 もちろんザ・ワールドの世界観の詳細な設定にも,サイバーコネクトツーならではのこだわりがふんだんに盛り込まれている。その一方では,リアルの舞台となる福岡を再現するために,現地企業など各方面からの協力を仰いだりもしている。

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 最後に二塚氏は,ゲーム会社だからできる映像制作の大きなポイントを挙げる。氏は,今のご時勢では映像だけで勝負するのは難しいと述べ,今回の取り組みではゲーム会社の強みを生かし,映像とゲームを組み合わせたハイブリッドな商品展開を目指したと話す。
 また映像制作で培った3D立体視などのノウハウは,そのまま開発中のゲームにも流用しているので,ぜひそれらのゲームタイトルに触れた際に実感してほしいとのことである。

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商品に設定資料や画コンテなど豊富な特典を付けられるのも,詳細な設定を作り込むサイバーコネクトツーの作品ならでは
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 二塚氏はセッションを総括し,「今,ゲーム会社に必要とされているのは,既存の枠組みに捉われないアイデアと発明力で,新しい商品を生み出すこと」と述べる。今回の取り組みでは,映像とゲームの組み合わせが一つの発明だったが,氏は今後もゲームを作ることだけではなく,アイデア勝負のゲーム会社だからこそできることは何かを考え,さまざまなチャレンジをしていくとの意気込みを述べ,セッションを締めくくった。

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