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「ゲームアプリにおける今後のマネタイズ戦略」レポート。動画広告は意外と受け入れられている?
●登壇者
・ポノス株式会社
村山 章氏
・LINE株式会社
LINEゲーム事業本部 ゲームアドマネタイズチーム/マネージャー
田中章裕氏
・株式会社MOTTO
代表取締役
佐藤 基氏
本セッションで議題となったのは,ゲームアプリのマネタイズ手法の現状と今後の展望について。日本ではガチャによるマネタイズが主流とされている中,海外ではどういった手法が用いられているのか。
動画広告などを早い段階で取り入れた「にゃんこ大戦争」を配信するポノス株式会社の村山氏や,多くのカジュアルゲームを手掛けるLINE株式会社の田中氏より,マネタイズ戦略への見解が語られた。
広告とゲームの親和性が今後の多様性を生み出す
まずはモデレーターを務める佐藤氏が,ゲームアプリのマネタイズがどのように進められているのか,日本や中国,北米をケースに解説した。
日本,北米,中国のセールストップ20のマネタイズモデルをまとめた表が公開され,それぞれのモデルの採用率などを明かした。日本と中国では,セールストップ20のゲームは必ずガチャシステムが搭載されている。一方の北米はガチャの使用は55%程度だが,日本,中国と比べると広告の利用率は30%と高い。
中国ではガチャだけでなく,アイテムのパック販売や,一定の課金額により便利な機能が使えるVIPシステムなど,多くのモデルを採用しているのが特徴的だ。佐藤氏は,日本はガチャ以外は主流ではないとし,海外ではいくつかのモデルを採用してマネタイズしているのが現状と示した。
ガチャが主流の現状についてや,自社での取り組みについて問われると,村山氏はマネタイズの強化がゲームの寿命を縮める可能性に言及した。
広告やガチャを過度に入れるよりも,一度人気の出たIPを幅広く展開することでマネタイズにつなげているという,自社の取り組みを明かした。「にゃんこ大戦争」のIPを長生きさせることで,結果的にマネタイズの幅を広げているという。
田中氏も,ガチャだけのモデルではゲームの長期運営は難しいと,村山氏に同意した。LINE株式会社でも新しい取り組みを模索し,カジュアルゲーム以外でも広告を入れ始めている段階にあるという。
広告マネタイズを導入した背景として,田中氏はLINE株式会社の“ホワイトスペースを見つける”取り組みの一環と説明した。日本では広告マネタイズが主流ではないことから,導入を検討したという。広告モデルはすでにビジネスとして成立しており,ゲームによっては想像以上の結果を出している。
「にゃんこ大戦争」は配信後,早い段階から広告を導入していたが,これは戦略的なものではなかったと村山氏は明かす。リリース当初はガチャもなく,マネタイズ自体が整っていなかったところで,動画広告を検討したそうだ。模索した中で動いた結果,海外に近いマネタイズモデルになっていたという,レアケースのゲームだ。
続いて,実際に広告マネタイズを導入したことによる,ユーザーの反応についてに議題が移った。予想外にもマイナスな反応はなかったことが登壇者たちから語られた。広告を見ることでアイテムがもらえるという,好意的な意見も多いそうだ。
田中氏によると,広告視聴をしているユーザーと未視聴のユーザーで比較すると,ゲームの継続率にも1.5倍近く差が出ているという。ほとんどのプレイヤーは広告を視聴しており,見ていない人のほうが少ないのが現状だそうだ。
動画広告について村山氏は,リワードがあることで広告に対する嫌悪感を緩和できると分析する。ユーザーに動画を視聴する価値を提供することで,反発されることはなくなるという。また,課金の邪魔をしないことも意識していると村山氏は語った。
「にゃんこ大戦争」の例では,動画広告を見る/見ないの選択によって画面上の演出が変わるなど,ユーザーが違和感なく,自然な形で楽しめるように調整されている。“体験”が1つのキーワードになるのではと考えているそうだ。田中氏もこれに同意し,広告の入れ方をゲーム体験として落とし込めれば,マイナスになることがなく,新しいコンテンツとして提供できると分析している。
動画広告による収益性と,ユーザーへの配慮などのバランスでは,課金への影響を重要視しているという。
広告の報酬としてもらえるアイテムは,課金では得られないもの,かつユーザーにとって利益になるものが選択された。バナーなどはゲーム体験を阻害するため,広告は動画だけに決めたとLINEとしての取り組みを田中氏は語る。広告を出すタイミング,回数なども意識しつつ,実装したそうだ。
最後の議題は,ゲームに広告を掲載することの特徴や,ほかのメディアとの違いについてだ。
田中氏は,ゲームではコラボとして広告を掲載できることが強みだと語る。飲料メーカーであれば,新商品をゲーム内アイテムとして登場させ,動画広告としてCMを流す。そこから購入先まで遷移させるなど,クライアントとの親和性の高さを特徴として挙げる。
村山氏も,コンテンツとして取り組めることはほかのメディアとの大きな違いであると同意見を示した。ゲームは没入して遊べるため,その状態で広告を出すことによる効果は利点になるという。版権タイトルや飲料とのコラボでも,ゲームに馴染む形で展開しているケースは実際に多く存在している。
今後のマネタイズ手法は,動画やバナーだけでなく,企業とのコラボで収益を上げる手法も広がっていくのではないかと田中氏は語る。
枠に当てはめるのではなく,ゲームの特徴に合わせたマネタイズをする多様性が生まれていくと予想した。ゲームジャンルやプレイスタイルの多様化が進む現在,マネタイズモデルも多様化されることに村山氏も期待を寄せ,セッションは終了となった。
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(C)PONOS Corp.
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