KONAMIは本日(2024年6月18日),スマートフォン向けブラウザゲーム
「レベル上げにすごくちょうどいい島」(iOS / Android)をリリースした。
本作は,自作ゲーム投稿コミュニティサービス「ゲームアツマール」(旧RPGアツマール,現在はサービス終了)にて配信されていた
「レベル上げにちょうどいい島」を原作とするダンジョンビルドタイプのゲームだ。
プレイヤーは,魔王討伐に向かう勇者達が適切にレベル上げをできるよう,島に「モンスター」「フロア」「島民」を配置していくこととなる。
今回,「レベル上げにすごくちょうどいい島」のプロデューサーを務めるKONAMIの
大竹健太氏と,原作の「レベル上げにちょうどいい島」を手がけた個人ゲーム制作者の
kagaya氏に両タイトルについて話を聞く機会を得たので,オンラインインタビューの模様をお届けする。
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大竹健太氏
「レベル上げにすごくちょうどいい島」プロデューサー。「レベル上げにすごくちょうどいい島」は,プロデューサーとして初めて手掛けるタイトル。
kagaya氏
個人クリエイター。原作となった「レベル上げにちょうどいい島」をはじめとして,「RPGツクール」で制作したユニークなタイトルで知られる。
中毒性の高いゲームを目指して開発された,原作「レベル上げにちょうどいい島」
4Gamer:
本日はよろしくお願いいたします。「レベル上げにすごくちょうどいい島」の開発が始まった経緯などを教えてください。
大竹氏:
2019年ごろにゲーム実況動画でKagayaさんの原作を知ったことがきっかけです。
動画で説明されるゲーム内容が非常に面白かったので,実際にプレイをしてみたらハマってしまい「めちゃくちゃ面白いぞ……!」と思ったんです。
ただ短期間の企画かつ,kagayaさんがおひとりで作ったゲームということもあり,チュートリアルの内容や,ゲーム内に登場するモンスターなどコンテンツのボリュームが物足りなくて,課題感みたいなものが少しありました。
そこで,うち(KONAMI)なら私が覚えた課題感を解決して,もっと面白くできるかもしれないと思って,kagayaさんに「うちで作らせてもらえませんか」と連絡しました。
4Gamer:
KONAMIからいきなり連絡が来て,kagayaさんはどう思いましたか。
kagaya氏:
大変申し訳ないのですが,最初は「騙されてるんじゃないか」と少し疑っていました(笑)。大手のKONAMIさんから直々にそんな話が来るとは思ってませんでしたし,そういったお話に何度か騙されかけた経験もありましたから。
大竹氏:
最初の打ち合わせでも身分を証明するためにKONAMIの社員証を見せましたね(笑)
kagaya氏:
なので,大竹さんが本物のKONAMIの社員だと分かったときには,すごく感激しましたね。
4Gamer:
kagayaさんは,いつごろからゲーム制作を行っていたのでしょうか。
kagaya氏:
大学生のころですね。「RPGツクール」を使ったゲーム制作にハマったのをきっかけに何本かゲームを作りました。
その中で「ぶきあつめ 〜なんでも武器になるRPG〜」というタイトルが,2018年の「第2回 えんため大賞×RPGアツマール 自作ゲームコンテスト」にて優秀賞を受賞しました。「レベル上げにちょうどいい島」は,その後に作ったタイトルで個人的にも思い入れが深いですね。
その後は2020年に大学を卒業して薬剤師になり,忙しくてなかなかゲームを作れなかったのですが,最近はまたUnityでゲームを作り始めています。
4Gamer:
「レベル上げにちょうどいい島」を作ろうと思ったきっかけを聞かせてもらえますか。
kagaya氏:
RPGアツマールにあった「ゲームクリエイターズキャンプ」という企画がきっかけです。ゲームクリエイターズキャンプは,ゲーム開発者たちがSlackなどで交流しながら,それぞれのゲームを完成させるという内容で,「レベル上げにちょうどいい島」もそこで生まれたものです。
「レベル上げにちょうどいい島」はちょうど2019年ごろに配信が始まった「ダンジョンメーカー」の影響を受けています。初めてプレイしたとき,その中毒性の高さにかなりの衝撃を受けて,「これを自分で再現してみたい!」という衝動に駆られたんです。
4Gamer:
「ダンジョンメーカー」は勇者を迎え撃つゲームですが,「レベル上げにちょうどいい島」は,逆に勇者のレベル上げをサポートするという内容ですよね。
kagaya氏:
「ダンジョンメーカー」リスペクトのゲームを作るにあたり,まずオリジナリティをしっかり出したいと考えました。
そこで「ダンジョンメーカー」の勇者を倒す部分をスコア制にして,「これを配置したらスコアが増えた」といったように,成果を分かりやすくしたらいいのではないかというアイデアが出てきたんです。
それなら,島に来た勇者のレベル上げをサポートするという設定やファンタジーの世界を使おう――といったようにシステムから先に考えて,あとから設定ができあがっていきました。
4Gamer:
「レベル上げにちょうどいい島」を作るにあたって,心がけていた部分などはありますか。
kagaya氏:
「ダンジョンメーカー」に負けないくらい,中毒性の高いゲームを目指しました。また,自分は難解なものを分かりやすく表現することがわりと得意なので,スコア制もそうですが,カジュアルな表現を使うことを心がけました。
おかげさまで,「時間が溶ける」といったような評価をもらえたので,目指したところに到達できたのかなと思います。
ただ,忙しいのとゲームクリエイターズキャンプの締め切りが迫っていたのもあって,急ピッチで仕上げたので,ゲームバランスの細かいところまで詰められませんでした。そういった点を今回KONAMIさんに見直してもらっています。
kagaya氏も太鼓判。原作を尊重して作られた新生版
4Gamer:
「レベル上げにすごくちょうどいい島」を開発するにあたりこだわった点を教えてください。
大竹氏:
とにかくkagayaさんの作った原作のイメージを壊さないよう配慮しました。ドット絵にこだわり,ゲーム面もkagayaさんが作ったシステムからあまり変更を加えていません。
原作を遊んだことのある人が「これじゃない」とならないように細心の注意を払って開発を進めましたね。
4Gamer:
逆に原作から変更点した点はあるのでしょうか。
大竹氏:
先ほど少し触れましたが,原作を遊んだときに課題だと思ったこと,もっと面白くなると思ったところに変更や追加を行っています。
たとえば原作では,モンスターやアイテムの種類が少ないので,遊びの幅があまり広がっていかない部分があったんですが,そこを本作ではかなり増やして,いろいろな攻略方法で島作りが行えるような設計にしています。
また,原作はプラットフォームの都合もあり,PCで遊ぶことが推奨されるゲームでしたが,私自身はモバイル端末とものすごく相性がいいと感じたため,本作ではモバイル端末で気軽に遊べるようにすることにも注力しました。
4Gamer:
今回プラットフォームをブラウザにした理由を教えてもらえますか。スマートフォン向けゲームであれば,App StoreやGoogle Playにてアプリとして配信するという手もあるかと思うのですが。
大竹氏:
原作がブラウザゲームだったことを尊重したことが要因としては大きいです。
アプリと違い,ダウンロードなしでゲームが開始できることからも,ブラウザゲームは最も気軽にさわりやすい提供方法だと思っています。また原作の「レベル上げにちょうどいい島」に寄せられたプレイヤーの感想には,「アプリのゲームが親から禁止されていた自分でも,ブラウザゲームだからこそプレイできた思い出のゲームです」という声もありました。
もしかしたら私たちが作るタイトルも,ブラウザゲームというプレイのハードルが低い提供方法だからこそ,誰かの思い出に残るようなことがあるかもしれません。そういう意味で,前向きにブラウザゲームを作ることに取り組みました。
4Gamer:
kagayaさんは「レベル上げにすごくちょうどいい島」に制作協力という形で携わっていますが,原作者としてどのような意見を出していたのでしょうか。
kagaya氏:
基本的には温かく見守っていただけなんですよね。アルゴリズムやゲームシステムなどの資料は提供したのですが。
4Gamer:
意見の食い違いなども一切なかったのでしょうか。
kagaya氏:
そうですね。さすがプロの開発で、プレイヤーへの配慮とかそのほか諸々が完璧で,何も言うことがありませんでした。
原作を作った当時「余力があったら,作りたかったな」と思っていた要素をすべて実現してくださってますし,さらにそれを上回る機能もつけてもらって,開発データを見せてもらうときは毎回,はしゃぎっぱなしでした(笑)。
そんな感じだったので,自分から何か指摘することもとくになく,KONAMIさんを信頼して見守っていました。
4Gamer:
kagayaさんの大絶賛を受けて,大竹さんはいかがですか。
大竹氏:
ちょっと照れくさいですね(笑)。実際のところ,成果物をチェックしてもらったり,コメントをいただいたりする機会がたくさんあったのですが,そのたびにkagayaさんに「すごい! すごい!」と言っていただいていたんです。
そんな,kagayaさんを裏切るようなものを作るわけにはいかないとプレッシャーはありましたが,私達が面白いと思うものを,責任を持ってしっかり作ろうというマインドで開発を進めました。
モンスター取引のNFT要素はあくまでゲーム体験を深めるための一要素,まったく触れなくとも楽しめる
4Gamer:
今回の「レベル上げにすごくちょうどいい島」は,手に入れたモンスターを売買するというNFT要素が導入されていますが,こちらを入れようと思った理由を聞かせてください。
大竹氏:
本作では,島に配置するモンスターを獲得したり,育成したりできるのですが,同じ種類のモンスターでも,攻撃力に差があったり,倒すと勇者が入手するお金の額が違ったりと,パラメータに個性をつけようという構想がありました。出会えるモンスターは姿は同じでも一期一会って感じで能力に個性を持たせたかったんです。
そうして企画を進めていくうちに,KONAMIの社内でNFTを簡単に取引できるマーケット「リセラ」を開発しているという話を耳にして,「これは今の企画と相性がよさそうだな」と。
当初は,モンスターの個性付けや愛着を持ってもらうために設定したパラメータの差だったんですが,NFTを活用したプレイヤー間の取引をゲームに組み込めば,新しい体験を提供できるのではないかと考えたんです。
4Gamer:
kagayaさんは,「レベル上げにすごくちょうどいい島」がNFTゲームになると聞いたときはどう思われましたか。
kagaya氏:
正直なところ,最初はNFTのことはよく知りませんでした。ただ,プレイヤー間での取引システムについて事前に大竹さんに説明してもらって,素直に面白そうだと思いましたし,新しい分野に挑戦するのも良いなと思いました。NFTを組み込むことで,皆さんが少しでも興味を持ってくださるきっかけになればいいかなと,前向きに捉えています。
4Gamer:
NFT要素を利用することはゲームを遊ぶうえで必須でしょうか。
大竹氏:
本作はkagayaさんの作った面白いゲームが主であり,NFT要素はオマケにとどめていますので,一切NFT要素を利用しなくても楽しく遊ぶことができます。
ただ,お友達が持っているモンスターが欲しいというときに,そのモンスターを取引できるのは既存のゲーム体験に少しの変化を与えられると思います。
4Gamer:
それでは最後に,「レベル上げにすごくちょうどいい島」に興味を持った読者にメッセージをお願いします。
kagaya氏:
KONAMIさんには,本当に原作を尊重してこのタイトルを作っていただきました。原作を遊んだ方には満足していただける内容になっていますし,そうでない皆さんにもぜひ遊んでいただきたいです。
ゲームそのものがかなり面白いので,とにかく少しでも興味があったら触っていただきたいです。
大竹氏:
私自身,初めて触ったときから「レベル上げにちょうどいい島」のファンで,できるだけ原作のイメージを崩さないことを大切に作ってきました。原作を触ったことがある人や,実況動画で見たことがある人も多くいらっしゃるかと思います。ぜひ,そういった方に触っていただきたいです。
また,とにかく取っ付きやすいゲームに仕上がったと思います。原作に触ったことがないという方も,ぜひ一度触ってみて,このゲーム特有の中毒性を味わっていただきたいです。
※画像は開発中のものです。