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「eスポーツを活用した地域活性化セミナー」で行われたパネルディスカッション「教育分野での可能性について」レポート
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印刷2020/02/07 12:00

イベント

「eスポーツを活用した地域活性化セミナー」で行われたパネルディスカッション「教育分野での可能性について」レポート

 こちらの記事でもお伝えした通り,2020年2月3日,東日本電信電話株式会社(以下NTT東日本)神奈川事業部は,横浜情報文化センターにて「eスポーツを活用した地域活性化セミナー」を開催した。

 セミナーではNTT東日本とNTTe-Sportsによる基調講演,有識者によるパネルディスカッション,実際のeスポーツの様子を伝えるデモンストレーションなどが行われ,来場者にeスポーツの基礎知識,地域活性化への可能性,そして抱えている問題などについて率直なところを伝えていた。

画像集#001のサムネイル/「eスポーツを活用した地域活性化セミナー」で行われたパネルディスカッション「教育分野での可能性について」レポート

 本記事では,「教育分野での可能性について」と題され本セミナーにて行われた,有識者によるパネルディスカッションについてお伝えしていく。

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 2020年2月3日,東日本電信電話株式会社(以下,NTT東日本)神奈川事業部は,横浜情報文化センターにて「eスポーツを活用した地域活性化セミナー」を開催した。本稿では,その基調講演の内容についてお伝えしていこう。

[2020/02/05 17:59]


パネリスト


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横須賀市 文化スポーツ観光部 観光課 サブカルチャー担当係長 大道 裕氏
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神奈川県教育委員会 教育局総務室 ICT推進担当課長 柴田 功氏
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神戸大学大学院 医学研究科 精神医学分野 教授 曽良一郎氏
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eスポーツコミュニケーションズ合同会社 代表執行役社長 筧 誠一郎氏
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NTT東日本 営業戦略推進室 担当課長 影澤潤一氏

 まずは十年以上前からeスポーツの普及に携わってきた筧氏が,eスポーツという概念について改めて話した。
 「私は16年前に韓国の方からeスポーツというものを教わり,以来日本でも盛り上げようと活動してきました。eスポーツとはコンピュータ上で行う競技のことです。じつはスポーツという言葉には元来,肉体活動だけではなく,遊戯や競争という意味が入っています。囲碁,将棋,ビリヤードなどをマインドスポーツと呼ぶことがありますが,eスポーツもその仲間だと考えることができます」。

 筧氏は,スウェーデンのヨンショーピングで開催されている「ドリームハック」を例に挙げ,eスポーツの持つ潜在的可能性を伝えた。「1994年には20人規模だったイベントが2003年には1万人規模になり,現在では年2回,2万人以上が集まるまでに成長しました。ヨンショーピング市の人口は12万人ほどですから,その経済効果は絶大です」。
 そして日本でもすでに,富山県の高岡市でそれに近い事例が生まれつつあり,"富山モデル"と呼ばれていることを紹介。「イベントは徐々に大きくなりはじめていて,サテライト会場を含めて3800人もの参加者が集まるようになりました。それをきっかけに,複数の企業がお金を出してeスポーツのチームができたり,駅前から撤退した百貨店の跡地にeスポーツ練習場を作るなど,新しい動きが始まっています」。

 続いて,横須賀市の観光課でサブカルチャー関連を担当する大道氏が,横須賀市の取り組みと意図について説明した。
 「いろいろなゲームやアニメが横須賀を舞台にしており,それが縁となって,市では多くのイベントを行ってきました。eスポーツにもそうした活動の一環として取り組んでいて,eスポーツへ理解のある町のイメージ作りと,eスポーツを地域に根付いた文化にするために推進しています」。

画像集#007のサムネイル/「eスポーツを活用した地域活性化セミナー」で行われたパネルディスカッション「教育分野での可能性について」レポート

 筧氏はこの発言を受けて,「eスポーツを盛り上げるためには,野球やJリーグのように,市民も含めたピラミッドを作っていく取り組みが必要です。また,(住宅事情や文化により)日本では人が集まって活動するにはどうしても施設がいるので,それらを地域が援助することも必要だと思います。eスポーツを新しいものとして考えると戸惑いがちですが,スポーツに置き換えて考えてみると,既存の枠組みの中でも方策を考えやすいはず」と付け加えた。

 たとえばプロ野球を観戦して楽しむ文化は,プロ野球の試合だけで成り立っているわけではない。地域の野球チームや,企業の持つチーム,学校の野球部などで野球に取り組んでいる選手や指導者,その家族や周囲の人々によって支えられている。そして,ピラミッドの最高峰であるプロ野球選手となる道がある。
 また各地にある市民球場や運動場,グラウンドなどが存在しなければ,地域の野球チームの活動も成り立たない。eスポーツを振興するにあたっても,環境やインフラの整備は不可欠というわけだ。


振興に取り組むだけでなく,問題に備えることも必要


 では,神奈川県の学校ではどのような取り組みをしているのだろうか。神奈川県教育委員会の柴田氏によれば,「神奈川県は,各学校のネットワークのインフラが全国の中でも進んでいる方で,国が神奈川のモデルを参考に全国の学校のネットワークの整備を進めるような状況になっています。」

 神奈川県の学校ではネットワークのフィルタリング制限を最低限にとどめ,eスポーツなどにも活用できるほか,生徒が持つスマートフォンもLANに接続できるようにしているという。授業中にスマートフォンを利用して,アンケートを取ったり,コンテンツ視聴に利用することもあるそうだ。
 一方で,そうした取り組みは職員の中でも温度差が激しく,必ずしも理解を得られているわけではないようだ。それはeスポーツに関しても同様で,理解を広めていくには時間がかかるという。
 「遊んでいるように見えるかもしれないが,プログラム技術などと同じように,生徒たちの将来につながったり,人間性を育てる要素もある」ことから,現状では部活動として行うといいのではないかと考えていると,県教育委員会としての立場を述べた。

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 そうした神奈川県の取り組みの一例として,大道氏は横須賀市の「Yokosuka e-Sports Project」を紹介する。
 「このプロジェクトでは,九十九電機さんや,MSIさん,インテルさんなどのご協力で,市内の高等学校等にゲーミングPCを無償貸与していただいています。またNTT東日本さんにもネットワークや活動の支援で協力していただきました。これを行う意義としては,生徒の将来の選択肢を増やしたいという思いがあります」。
 ゲームに限った話ではないが,生徒には早いうちから各分野に興味を持ってもらい,自分の将来の展望を描いてほしいのだそうだ。ゲーム依存といった問題もあるが,そうした問題が起こらないように見守り,指導することも大人たちの務めとの見解を示していた。

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 このような「eスポーツ推進派」のパネリストの発言に対して,曽良氏は精神医学の専門家としての意見を述べていく。

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 「これはゲームに限った話ではないのですが,『依存症は病気』という認識が医師たちにすら一般化していないのが現状です。たとえばお酒なども,個人の意思の力でやめられると思われがちだが,実際はそうではない。昨年,WHOによってゲーム依存も病気と位置づけられ,薬物依存やギャンブル依存などと対比して考えられるようになりました。ゲームをしている人のうち,男性で約3%,女性で約1%,日本だけでも100万人規模でゲーム依存者はいるだろうと考えられています。
 それは決して多い割合ではなく,恐れすぎる必要はありません。ですが,暴力や,家のお金を持ち出すとか,家庭内での問題に対する相談が多く寄せられていることも事実。病気とは患者のなんらかの脆弱性(もろさ)が原因でおこるもので,そこへの対処は必要です」

 また,最近話題になったばかりの香川県議会のネット・ゲーム依存症対策条例案(関連記事)についても言及する。
 「ゲームやネットの利用を平日1時間,休日は90分に規制すべき根拠は特にありません。ちなみに海外では,平日で4時間以上だとか,自由時間のすべてをゲームに費やすようになると依存の問題が出てくると言われています。香川県議会の条例案では,『医療や福祉分野だけでなく,ゲームに関連する産業が協力して予防治療を行う』とうたったことが画期的だと感じました。
 私自身は,デジタル機器やゲームがマイナスなものだとは考えてはいません。応用すれば病気の治療にも使えるのではないかとすら考えています。しかし効果が大きい薬は,副作用もまた大きいということ。ビデオゲームが脳にどんな影響を与えるのか,まだ正確なところはわかっていないのです。『ゲームを定期的にプレイした人は,脳の皮質が増え,活性化している』という論文も発表されていますが,まだまだ詳しい検証が必要な段階。今後しっかり検証を進めていけば,スポーツ医学のようなものを,eスポーツの分野でも確立できるのではないでしょうか」

 このように,氏はeスポーツ推進する以上は,負の面にもしっかりと目を向けていくべきという見方を示した。

 1時間近くに及んだディスカッションの最後は,パネリストたちが今回の話を踏まえたうえで,eスポーツの今後の展望について述べていった。

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 まず筧氏は,「曽良氏先生のお話には反論したい部分もあるが,もちろんリスクもちゃんと見ていかなくてはいけないと思います。そして各地で少しずつイベントの成功例が生まれてきていますが,やり方を間違えてしまうと一過性になりかねません。ゲームを本当に好きな人のコミュニティを周りが応援することで,初めてeスポーツが根付いていくと思います。皆さんにはぜひ若者を応援していただきたいです」と,改めてコミュニティへの支援の大切さを強調した。


 大道氏は,「行政がeスポーツを支援する以上,地域の活性化が目的となりますが,医学的には未知数な部分もあり,そこに対応していく必要もあります。でも私たちはいい面にも目を向けていきたい。運動が不得意な生徒や,障害がある人でも同じ土俵で勝負しやすいのがeスポーツの良さ。集中力や分析力,判断力がつくなどのメリットもあります」と,教育現場での活用への期待を語った。

 柴田氏はeスポーツと同時に,ネットワーク教育を推進していく大切さを説く。「どんなものでも,新しいものが入ってくるときには抵抗があります。そしていまだ学校はデジタル的なものへの指導が充分ではありません。そこにしっかり向き合っていくような教育ができればと思います」

 曽良氏は,「ゲーム依存は,ギャンブル依存と同じような性質があります。そして,その患者を受け入れられる医療機関が極めて少ないことが問題です。明らかにマンパワーが足りていない。一方で,特に海外では優秀な研究者が,あの手この手で面白いゲームの作り方を研究している現状があります。医療側としてはその落差にどうしたらいいのか戸惑っているところがあります」と訴えた。

 最後に影澤氏は,「かつて曽良先生とお話をさせていただいたとき,自分はゲーム依存症だったのだろうかと考えたこともありました。でもしっかり自制していたし,こうして社会人として働き続けています。また,多くのゲームファンが私と同じようにゲームに接しているわけで,この問題に関しては彼らの知見を活かすことができないかと考えています。
 今10歳の私の娘の夢は,動画クリエイターになることです。今後,彼女のような子供たちが希望をもって生きていける社会を作るためには,健全な文化の醸成が必要になりますので,皆さんと一緒に取り組んでいければと思います」と,パネルディスカッションの最後を締めくくった。

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 決して明るい見通しばかりではなく,多くの課題を抱えるという地域活性化とeスポーツの振興。だがNTTやNTTe-Sportsは今回のセミナーで,負の面からも目をそらざず,真摯に取り組んでいく姿勢を見せた形になる。
 ディスカッション後にはeスポーツのデモンストレーションとして,「実況パワフルプロ野球」と「ぷよぷよeスポーツ」の試合が行われ,会場は大きな盛り上がりを見せていた。この熱狂の持つ力を社会の活性化に生かすだけでなく,リスクをいかに小さく抑えていくのか。現実を見据え,しっかりと考えていく必要があるだろう。
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