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[TGS 2021]基調講演「それでも、僕らにはゲームがある。」聴講レポート。国内3社のクリエイターが見据える“ゲームの進化と未来”とは
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印刷2021/09/30 17:55

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[TGS 2021]基調講演「それでも、僕らにはゲームがある。」聴講レポート。国内3社のクリエイターが見据える“ゲームの進化と未来”とは

 2021年9月30日,東京ゲームショウ2021 オンラインの基調講演「それでも、僕らにはゲームがある。」の配信が行われた。この番組では,これからのゲームの進化と未来について,国内3社のクリエイターがそれぞれの見解を語った。

画像集#001のサムネイル/[TGS 2021]基調講演「それでも、僕らにはゲームがある。」聴講レポート。国内3社のクリエイターが見据える“ゲームの進化と未来”とは

■出演者:
佐藤盛正氏
カプコン
CS第1開発統括 第1開発部 ディレクター

原田勝弘氏
バンダイナムコエンターテインメント
チーフプロデューサー / ゲームディレクター

木村征太郎氏
コナミデジタルエンタテインメント
「eFootball」シリーズ プロデューサー

林 克彦氏(モデレーター)
KADOKAWA Game Linkage
ファミ通グループ代表

※掲載画像は配信映像をキャプチャしたものです。


ゲームはどこに行くのか? 何がどう変わっていくのか?


 第1のテーマは「デジタル革命に伴う『体験装置』としてのゲームの進化」だ。カプコンの佐藤盛正氏は,「バイオハザード ヴィレッジ」の開発において「いかにリアルで生々しい,インパクトのある体験をプレイヤーに提供できるか」を重視したと語る。痛い,怖い,気持ち悪いといった感覚を,ゲームを通じてプレイヤー自身が現実に味わっているかのように遊んでもらうことを目指したという。

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 佐藤氏は近年のゲームについて,ビジュアルやサウンドの進化が目覚ましく,現実とほぼ見分けがつかないようなレベルの表現に近づいていると評する。これまでのゲームの進化は「現実そのもののような体験をいかに提供できるか」,つまりリアリティの追求が目標だったとすると,ゴールが見えつつあると思っているそうだ。
 一方で,ゲームはプレイヤー自身が関われる,インタラクティブ性を持つメディアである。そこにはまだ,進化の余地が多く残されていると述べる。プレイヤー自身が関わることで,「見るだけではない,聞くだけではない,ゲームならではのリアル」があり,その進化に伴って,体験のリアリティや生々しさ,インパクトも向上していくという見解を示した。

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 また,リアリティを追求し,現実そのものを再現する。それはそれで素晴らしい成果であるが,現実の世界にいる我々には想像できるものでもある。佐藤氏は「妄想の域」「贅沢な話」と前置きしたうえで,想像もできない体験を期待していると語り,人間の感覚や知覚をゲームを通じて拡張できないかと考えているという。

 たとえば犬の嗅覚は人間の数千倍から1億倍以上も優れていると言われており,当然,犬が見ている世界は人間とは違うものであるはず。これはゲームのインタラクティブ性によって,擬似的にでも人間が味わえるものではないか。また,一部の人が持っていると言われる「共感覚」(通常の感覚だけでなく,異なる感覚も生じる現象)についても,そうした人には世界がどう見えているのか。通常は知り得ないものを,ゲームを通じて表現できるのではないか,というわけだ。

 佐藤氏は「現実そのもの」の先にある,自分達の常識を覆すような体験がゲームの進化にはあり得るのではないかと述べる。現在,具体的な根拠が存在するわけではないとしたうえで,「そうした体験を目指しているかどうか」「イメージを持っていること」が大事であり,それによって技術やゲームデザインが進化を遂げていくと語った。

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 第2のテーマである「デジタル革命で拡張する、ゲームコミュニケーションの未来」では,バンダイナムコエンターテインメントの原田勝弘氏が,開発者とプレイヤーとのコミュニケーションについて語った。

 かつてプレイヤーの意見や感想は,はがきや電話,ファックスによって「一方通行」で開発現場に届けられていたが,現在はインターネットやSNSを通じて,両者の距離は密接なものになった。膨大なフィードバック,定量的なデータによって,プレイヤーの声をキャッチアップしやくなったことで,ゲームそのものを変えることも少なくない。
 とくにベータテストから得られる意見は,開発現場に相当影響を与えているという。もちろん,こうした意見はゲームの改善やブラッシュアップに活用される。そして,コミュニケーションが密になることで,コアなファンから信頼を得るという点も重要な時代になっていると原田氏は述べた。

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 一方で,プレイヤーのログデータだけでは分からない部分もあるという。たとえば「特定の箇所を繰り返し遊んでいる」というデータでは,難しくて詰まっているのかもしれないが,リトライすることが楽しいのかもしれない。ログデータだけでは,プレイヤーのリアクションや感情までは分からないというわけだ。

 そこで,ゲーム実況やSNS上の感想といったものから定性的なデータをどう拾い上げるのか,メーカー各社が工夫しているところだという。膨大な定量的なデータがあればコミュニケーションとして十分というわけではなく,定性的なデータを拾い上げて組み合わせなくては意味を持たないと実感しているそうだ。
 そのため,今後もSNSやファンイベントを通じて,プレイヤーとのコミュニケーションを図ることは重要であり,「生の声」を聞くことが必要であるという見解を示した。

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 今でこそ,原田氏はプレイヤーに対して積極的に発信するクリエイターとして知られているが,以前は取材を拒否していたこともあるという。その考えは海外の事例を見ることで変わっていったそうだ。
 それは海外のメーカーがプレイヤーに対し,さまざま情報を開示することで,信頼関係を構築していたこと。マス向けの広告戦略によって,流行を生み出すだけでなく,ターゲット層の信用を得て,自分達の商品を選んでもらえる状況を作り出せるのか。その重要性が大きいと思ったことで,積極的に情報を発信したり,コミュニティとの交流を増やしたりするようになったと語った。

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 第3のテーマは「デジタル革命で変化する、ゲームエクスペリエンスの未来」である。コナミデジタルエンタテインメントの木村征太郎氏「eFootball」シリーズの大胆なリブランディングに触れつつ,同作が見据える未来のビジョンを明かした。
 1995年に誕生した「ウイニングイレブン」シリーズは,最新作から「eFootball」というブランド名に改められた。新たなゲームエンジンを導入し,さらにビジネスモデルはF2P(基本プレイ無料)となり,PCや家庭用ゲーム機,モバイルの全デバイスでのクロスプラットフォーム対応が将来的に予定されている。

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 木村氏はクロスプラットフォーム対応の意図として,「これまでより大きなデジタルプラットフォームを作るため」と述べた。また,テレビを見ない/持たない人が増えている背景を踏まえ,スマホでしかゲームを遊ばない若い世代も取り込むために必要な決断だったという。
 さらに,F2Pに踏み切った要因にはF2Pモデルの成長が目立つ「市場環境の変化」を挙げ,グローバルに統一されたデジタルプラットフォームを確立するためにも,価格の障壁を取り払い,より多くのプレイヤーにアピールすることが欠かせなかったと語る。

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 今後,「eFootball」シリーズは1年ごとに新作がリリースされるのではなく,定期的にアップデートを実施し,デジタルプラットフォームとして運営されていくという。木村氏は,サッカーゲーム/スポーツジャンルにフィットしている「未来のゲーム体験」の形として,「eFootball」のプラットフォームをサッカーゲームに限らず,プレイヤー同士のコミュニケーションの場,情報交換の機会,そしてeスポーツの体験や視聴ができたりする「メタバースに近いサービスに広げていければ」という展望を語っていた。

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