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「進化」は娯楽? EA,「SPORE」発売記念イベントを開催
EAでSPOREのプロダクトマネージャーを務める籠谷多恵子氏が開会の挨拶を述べた |
EAのローカライズプロデューサー,安次嶺(あしみね)クリス氏 |
開発に長い年月を要した本作は,単細胞生物から宇宙進出に至る生物の姿が五つのステージで描かれており,それぞれが別のゲームといっていいくらい異なっているが,それでも過去から未来へ連綿として続く一本の芯があり,トータルとしてさまざまな進化や文明の実験が楽しめる。そのため,プレイするたびに新鮮な驚きを体験でき,銀河のありようはプレイヤーの数だけ存在するのである。
「スポアペディア」など,ゲームの外に作られた各種のインターネットサービスともシームレスに連動し,ゲームの広がりは無限だという。……こうしたゲームの詳しい内容をお伝えするレビュー記事については,なる早での掲載を予定しているので,しばしお待ちいただきたい所存。
さて,続いてサブカルチャーや科学などに詳しい評論家の唐沢俊一さんと,現役東大大学院生でインテリタレントとして活躍する木村美紀さんによるトークショーが行われた。テーマは,「エンタテイメントとしての進化」。トークショーというより,唐沢さんが話をして,木村さんが「へー」とか「ほー」とかいう係であるようだったが,ともあれ,“娯楽”と“進化”という一見するとおよそ相容れないような二つの概念を,意外なことに人は昔から一緒にして楽しんできたのだと唐沢さんは語る。
同時にウェルズは「タイムマシン」で退化も描いていると唐沢さんは言う。主人公が訪れた80万年後の世界では,人類は知能も体格も退化しており,獰猛な地下種族の脅威にさらされながら何もできずにいるのである。
アメリカで放送されていたSFテレビドラマ「The Outer Limits」には,生物を強制的に進化/退化させる機械をテーマにした挿話があるし,ディズニーが1960年に放送した「火星とその彼方」では,違う環境下で独自に進化した異星生物のさまざまな姿が想像力豊かに描かれている。
いずれにせよ,進化に対して我々が知的興味を持つ一つの理由として唐沢さんは,地球の生き物以外,我々は「進化の果ての姿」を見たことがないことを挙げた。環境に適応してこうして生き残ってきたのだから,これ以外の形態はあり得ないのかもしれないが,もしかしたら別の道もあったのではないかという好奇心だ。
そして,こうした興味から生まれる「エンタテイメントとしての進化」もまた進化を続け,ついにSPOREに到達したのではないかと唐沢さんは言う。SPOREでは,これまでの進化エンタテイメントと異なり,プレイヤー自身が生物の進化をさまざまに実験でき,それは,物理的な生物の姿にとどまらず,文化や文明についても行えるからだ。
「寝るのを忘れてSPOREに熱中している」と語る木村さんは,なんと,一度も戦うことなくゲームをクリアしたとのこと。すべてのステージで他種族との友好的な関係を築くことで進化を重ね,それは宇宙へ進出してからも同じ。かくして,きわめて平和裡に銀河を統一したのである。
唐沢さんが紹介してきた進化エンタテイメントでは,例外なく「競争」や「闘争」が進化に欠かせない要素として無批判に扱われていた。だが,人の歴史において戦争に特化した国家が滅びた例は枚挙にいとまがなく,SPOREがそれ以外の進み方を許容しているのは非常に示唆的だと唐沢さんは引き取った。つまり,どこかの遠い銀河では,まったく戦争することなく,融和と友好だけで進化してきた生物がいるのかもしれないというわけだ。
開発発表以来,ずいぶん長く待ってしまったが,ついに本日からプレイ可能になったSPORE。Will Wright氏が作り上げたまったく新しい“進化エンタテイメント”がどのようなゲームとして完成したのか,ぜひ自分の目で確かめてほしい。
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