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印刷2008/09/05 18:50

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「進化」は娯楽? EA,「SPORE」発売記念イベントを開催

画像集#007のサムネイル/「進化」は娯楽? EA,「SPORE」発売記念イベントを開催
 エレクトロニック・アーツは本日(9月5日),天才ゲームデザイナーWill Wright氏が手がけたシミュレーションゲーム,「SPORE」が発売されたことを記念したプレス発表会を,東京神田のデジタルハリウッド東京本校で開催した。生物進化の数十億年(ぐらいかな?)を追いかけ,さらに進化した自分の種族が銀河系に植民惑星を広げていく様子を描くSPOREだが,話が大きすぎてどうもピンとこないという筆者のようなゲーマーでもピンとくることを目指した発表会なのである,たぶん。


画像集#018のサムネイル/「進化」は娯楽? EA,「SPORE」発売記念イベントを開催
EAでSPOREのプロダクトマネージャーを務める籠谷多恵子氏が開会の挨拶を述べた
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EAのローカライズプロデューサー,安次嶺(あしみね)クリス氏
 「生命誕生と進化の過程を謎解く! by SPORE」と,それだけ聞くとおよそゲーム発表会とは思えないテーマが設けられたこのイベントでは,まずSPOREのローカライズプロデューサーである安次嶺(あしみね)クリス氏によって本作の概要が紹介された。

 開発に長い年月を要した本作は,単細胞生物から宇宙進出に至る生物の姿が五つのステージで描かれており,それぞれが別のゲームといっていいくらい異なっているが,それでも過去から未来へ連綿として続く一本の芯があり,トータルとしてさまざまな進化や文明の実験が楽しめる。そのため,プレイするたびに新鮮な驚きを体験でき,銀河のありようはプレイヤーの数だけ存在するのである。
 「スポアペディア」など,ゲームの外に作られた各種のインターネットサービスともシームレスに連動し,ゲームの広がりは無限だという。……こうしたゲームの詳しい内容をお伝えするレビュー記事については,なる早での掲載を予定しているので,しばしお待ちいただきたい所存。

生命の歴史は闘争の歴史……なのかな?
画像集#013のサムネイル/「進化」は娯楽? EA,「SPORE」発売記念イベントを開催 画像集#010のサムネイル/「進化」は娯楽? EA,「SPORE」発売記念イベントを開催

 さて,続いてサブカルチャーや科学などに詳しい評論家の唐沢俊一さんと,現役東大大学院生でインテリタレントとして活躍する木村美紀さんによるトークショーが行われた。テーマは,「エンタテイメントとしての進化」。トークショーというより,唐沢さんが話をして,木村さんが「へー」とか「ほー」とかいう係であるようだったが,ともあれ,“娯楽”と“進化”という一見するとおよそ相容れないような二つの概念を,意外なことに人は昔から一緒にして楽しんできたのだと唐沢さんは語る。
ゲストの唐沢俊一さん(右)と木村美紀さん(左)
画像集#003のサムネイル/「進化」は娯楽? EA,「SPORE」発売記念イベントを開催
 古い例としては,H.G.ウェルズが1898年に発表した「宇宙戦争」が挙げられるが,これには,我々にとってすっかり「宇宙人の姿」としておなじみになったタコ型火星人が登場する。ウェルズが火星人をタコのような姿に描いたのは,ダーウィンの進化論に基づいたもので,重力の弱い火星では身長が伸び,科学の発達によって脳の容量が増大,そして食事をしなくなったことで消化器官を失えば,必然的にあのように進化するというわけだ。
 同時にウェルズは「タイムマシン」で退化も描いていると唐沢さんは言う。主人公が訪れた80万年後の世界では,人類は知能も体格も退化しており,獰猛な地下種族の脅威にさらされながら何もできずにいるのである。

 アメリカで放送されていたSFテレビドラマ「The Outer Limits」には,生物を強制的に進化/退化させる機械をテーマにした挿話があるし,ディズニーが1960年に放送した「火星とその彼方」では,違う環境下で独自に進化した異星生物のさまざまな姿が想像力豊かに描かれている。

画像集#004のサムネイル/「進化」は娯楽? EA,「SPORE」発売記念イベントを開催
 さらに,1960年代の少年マンガ誌には「これが人類の未来の姿だ」といった内容の記事が数多く掲載されており,そこには平均身長4mで手足が細長くなり,肉食のせいで胴が短く,また柔らかい食事のために顎が小さくなった未来人の姿などが描かれていた。これには,当時欧米人に憧れていた高度経済成長期の日本人の姿が重ねられるというものの,(身長4mはともかく)として,手足が長く小顔になり,平均身長は伸びたものの,運動をあまりしない最近の子供達のことを考えると,あながち間違った予測ではないのかもしれない。

 いずれにせよ,進化に対して我々が知的興味を持つ一つの理由として唐沢さんは,地球の生き物以外,我々は「進化の果ての姿」を見たことがないことを挙げた。環境に適応してこうして生き残ってきたのだから,これ以外の形態はあり得ないのかもしれないが,もしかしたら別の道もあったのではないかという好奇心だ。
 そして,こうした興味から生まれる「エンタテイメントとしての進化」もまた進化を続け,ついにSPOREに到達したのではないかと唐沢さんは言う。SPOREでは,これまでの進化エンタテイメントと異なり,プレイヤー自身が生物の進化をさまざまに実験でき,それは,物理的な生物の姿にとどまらず,文化や文明についても行えるからだ。

生命はやがて母なる星を飛び立ち,銀河を目指す
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 「寝るのを忘れてSPOREに熱中している」と語る木村さんは,なんと,一度も戦うことなくゲームをクリアしたとのこと。すべてのステージで他種族との友好的な関係を築くことで進化を重ね,それは宇宙へ進出してからも同じ。かくして,きわめて平和裡に銀河を統一したのである。
 唐沢さんが紹介してきた進化エンタテイメントでは,例外なく「競争」や「闘争」が進化に欠かせない要素として無批判に扱われていた。だが,人の歴史において戦争に特化した国家が滅びた例は枚挙にいとまがなく,SPOREがそれ以外の進み方を許容しているのは非常に示唆的だと唐沢さんは引き取った。つまり,どこかの遠い銀河では,まったく戦争することなく,融和と友好だけで進化してきた生物がいるのかもしれないというわけだ。

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画像集#006のサムネイル/「進化」は娯楽? EA,「SPORE」発売記念イベントを開催
 と,紙幅の関係でいろいろ割愛してしまったが,以上のような雰囲気でトークセッションは終了した。SPOREだけでなく,唐沢さんの該博な知識と実例によって裏付けられた,興味深い話が盛りだくさんだったのだ。エンタテイメントとしての進化というアイデアは言われてみれば納得だけど,新鮮だなあ。
 開発発表以来,ずいぶん長く待ってしまったが,ついに本日からプレイ可能になったSPORE。Will Wright氏が作り上げたまったく新しい“進化エンタテイメント”がどのようなゲームとして完成したのか,ぜひ自分の目で確かめてほしい。
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