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[OGC2008#06]SGラボの前田徹哉氏に聞く,シリアスゲームの定義
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印刷2008/03/07 15:26

インタビュー

[OGC2008#06]SGラボの前田徹哉氏に聞く,シリアスゲームの定義

「Game Developers Conference」で開かれた「シリアスゲーム・サミット」の様子
 近年,欧米を中心にしてゲームという新しいメディアを娯楽以外の用途にも活用しようという活動,いわゆる「シリアスゲーム」についての研究/議論が活発になっている。耳にしたことがある人も多いかもしれないが,シリアスゲームとは,教育や啓蒙といった用途を目的とした,言葉どおり“まじめなゲーム”のこと。そうした定義自体曖昧さを含んでいるのだが,いわゆるE-ラーニングなどとは違って,面白さや快適性といった要素を重視している点が大きな特徴だ。

 今回4Gamerでは,日本で唯一ともいえるシリアスゲーム専門会社,SGラボ代表取締役の前田徹哉氏にインタビューを行った。シリアスゲームとは? という根本部分の話から,今後の可能性の話など,いろいろな論点についての話題が飛び出したので,ぜひご確認いただきたい。



SGラボ代表取締役の前田徹哉氏
4Gamer:
 本日はよろしくお願いします。
 まずは,講演で予定されているお話の概要についてお聞かせ願えますか。

前田徹哉氏(以下,前田氏):
 よろしくお願いします。
 そうですね。まず,我々SGラボという会社について簡単にご説明しますと,教育系の分野でいろいろなノウハウを持っている学研と,大手ゲームソフトメーカーであるスクウェア・エニックス,この2社をバックボーンとして持つのが大きな特徴です。それぞれの得意分野を活かして,ゲームというメディアを「学びのメディア」として活用していこう,という形ですね。

4Gamer:
 業務としては,いわゆる「シリアスゲーム」の開発を中心に行っているという形ですよね?

前田氏:
 そうです。アドバゲームも含みます。基本的には受注型のビジネスを行っておりまして,企業や公共団体などといったお客様からの要望をヒアリングし,それをゲームという形でアウトプットする,というようなことをさせて頂いています。

4Gamer:
 顧客……というか,シリアスゲームの市場としては,現状はどういった分野がメインになっているのでしょうか?

前田氏:
 個人的な感触で言わせていただくと,お客様サイドにはあまりシリアスゲームという認識はないと思っています。お客様はシリアスゲームを作ってほしいと頼まれるわけではなく,例えば消費者の方々に何かを理解していただきたい,伝えたいといったご要望がまずあって,それを実現させるための方法論の一つとして,ゲームというものがあるという認識です。

4Gamer:
 例えば,英語を学ぶためのものとして,テキストもあれば音声や映像を使った教材もあるのと同じで,その一つとしてゲームもある,という感覚ですか?

前田氏:
 そのとおりです。「○○の教材を作るのに,ゲームも用意しようよ」と,普通に受け入れられるべきものなのかなと。

4Gamer:
 そういう意味ですと,教育市場そのものがそのままシリアスゲームの狙うべき市場だということになるのでしょうか?

前田氏:
 教育もそうですし,何かを誰かに理解していただく,伝えるためのメディアやツール,ソリューションなどの市場ですね。ゲームの特性を活かすことで,テキストベースの教育とは違った効果を持つ,面白いソリューションを提案できるのではないか,と考えています。

4Gamer:
 これは今更のお話になってしまうとは思うのですが,シリアスゲームっていうのは,結局なんなのでしょうか。例えば,同じコンピュータ処理を使った教材であるE-ラーニングとは,“具体的に”何が違うのでしょうか。面白い面白くないで分けるみたいな話もありますけど,いま一つ曖昧ですよね。

前田氏:
 全部が全部そうだとはいえないのですが,個人的には,一般的なE-ラーニングは,結局のところ「テキスト教材」の流れを組んだものでしかないのではないか? という印象が強くあります。面白くない云々というのはもちろんあるのですが,それがなぜなのか? あるいはどういうことなのかというと,テキスト教材の手法をそのまま持ちこんでしまっているものが多いからではないかと感じるのです。

4Gamer:
 確かにそういった雰囲気はあるかもしれません。

前田氏:
 極端な例ですが,例えば,歴史を勉強するためのテキスト教材があったとして,それじゃ分かりにくいから映像の教材も用意しよう,と考えますよね。そのときに,ただテキストの朗読を映像にしたら面白いか? より分かりやすいのか? というと,絶対そうではないと思います。映像ならではの,より面白く,分かりやすく見せるための手法というものがある。
 自動車の教習所で流れるビデオなども同じで,事故の場面やタイヤがスリップする様子などを映像として見せることで,テキストでただ「滑るから注意しましょう」って書くより格段に分かりやすくなるわけです。

4Gamer:
 テキストと映像の関係がそうであるように,ゲームにはゲーム独特の手法があると。

前田氏:
 ゲームというメディアの大きな利点は,物事を構造的に理解しやすい見せ方ができることです。また状況をシミュレートすることで,当事者の立場になって考えられるとか,「仮想体験できる」といった性質もあるわけですから,これらの部分はものすごい強みなのではないかと思いますね。

4Gamer:
 一人称的な視点での見せ方っていうのは,ゲームならではの手法かもしれませんね。

前田氏:
 ええ。

4Gamer:
 あと,これは話題が重複してしまうかもしれないのですが,最近,シリアスゲームという言葉が乱用されすぎている印象があるんですよ。「あれもこれもシリアスゲームだった」みたいな話が多いといいますか。端的に言えば,「信長の野望」はシリアスゲームなのか?といった議論です。これについてはどう思われますか?

前田氏:
 あくまで私達が考えるシリアスゲームというお話になってしまうのですが,我々としては,「何か(教育的な)目的があって作成されたゲーム」をシリアスゲームと呼ぶべきではないか,と考えています。例えば,「信長の野望」をプレイする目的は,あくまでも娯楽であって,日本史を学ぶための作品ではありませんよね。だから,シリアスゲームではない。「信長の野望」をプレイしていると,戦国武将の名前などを憶えるかもしれませんが,それは「副次的な効果」なのです。ゲームをすると集中力が増すだとか,逆に低下するだとか,いわゆる「ゲームの効能」と同列の話であって,シリアスゲームとはちょっと別の話なのかなと思います。

4Gamer:
 つまり,シリアスゲームであるかどうかは,作った側の意図次第だということですか?

前田氏:
 そう思います。


ゲームというメディアの有効性が社会的に認められるために


4Gamer:
 シリアスゲームというと,どちらかといえば欧米に端を発したムーブメントで,北米などでは,陸軍や各種公共機関による活用事例があるわけですけど,日本における認知度という意味では,現状どうなのでしょうか?

前田氏:
 正直なところ,日本は妙にゲームにネガティブイメージを持つ人が多いというか,偏見を持っていらっしゃる方が多いというのは事実だと思います。海外では,もっとフランクというか,普通に「ゲームも使えばいいんじゃない?」といった捉え方をする方々が多いのですが,日本だと「ゲームなんて!」という方がまだまだいるように思います。

4Gamer:
 ただ日本って,ニンテンドーDSの「脳を鍛える大人のDSトレーニング」など,商業ベースでシリアスゲーム的な物が大ヒットしたという流れがありますよね。翻って,海外だと公共機関での活用が主流で,商業的な成功という事例はあまり聞きません。日本と海外のシリアスゲームに対する認識の差,みたいなものってあるんでしょうか?

前田氏:
 カンファレンスなどに参加している限りでは,開発者というか,作る側の意識の差はあまりないように感じますね。たださっきもお話ししたように,ゲーム業界以外の方の認識には,ちょっと開きがあるかもしれません。
 とはいえ,いわゆる知育系のソフトの流行で,日本でも徐々に偏見が薄れつつあるというのも事実だと思います。我々もいろいろな企業や団体の方とお話しするわけですが,若い担当者の方の中には,いわゆるゲームが普通に生活の中にあった世代の方もいて,好意的に捉えてくださる方も少なくありません。

4Gamer:
 知育ゲームも,もうブームが終息するんじゃないか? みたいな見方がありますよね。買ったはいいけれど,やっぱりつまらなかっただとか,「教育ゲーム」に対する失望感が広がってしまっているんじゃないか,という。この点についてはどうでしょうか?

前田氏:
 率直に意見を申し上げると,そうした知育ゲームの中には,ブームに乗っかっただけではないかと思われるようなゲームも少なくないと思います。本の内容をそのままソフトにしただけだとか,そういうタイトルも散見されます。シリアスゲームはゲーム部分をしっかり作ってこその物だと思いますし,ゲーム的な手法,ゲーム的なノウハウを盛り込んだものを提示していかないと,おっしゃるとおりの流れになってしまうのではないかと思います。

4Gamer:
 あと,これはちょっとシリアスゲームとは話がずれるかもしれないのですが,ゲームがネガティブイメージを持たれているのと同様に,「ゲームがうまい」ことに対するネガティブイメージって,世間的にはありますよね。

前田氏:
 そんなにゲームばかりやって! みたいな話ですか?(笑)

4Gamer:
 そんな話です(笑)。
 でも,例えばこれが将棋とかだったらどうでしょうか。「将棋アマ初段」とかだと,ゲームでスコア○○点ですっていうよりも,「おお!」みたいなイメージがあるわけですよ。

前田氏:
 それは確かに。

4Gamer:
 なんでこういう現象が起きるのか?と考えてみると,これって要するにゲームのハイスコア(編注:便宜上,ここではこう呼ぶ)に対する評価が,世間的な評価とずれている結果なんじゃないかなぁといいますか。
 シリアスゲームっていうのは,プレイした成果,もっといえばクリアした結果が,社会的な評価につながっていくようなものだとも捉えることもできると思うんです。英語検定のソフトをクリアしたら,○級が取れますだとか,そういう可能性といいますか。これについてはいかがでしょうか。

前田氏:
 なるほど。確かに通常の娯楽ゲームだと,長時間プレイした後に「後ろめたさ」みたいなものを感じる方がいらっしゃるかもしれません。ゲームに抵抗感を抱いている人であれば,それはなおさらでしょう。
 そういう意味だと,シリアスゲームの持つ方向性というのは,おっしゃるようなゲーム自体の課題に対する,一つの解決案だともいえるのかもしれません。もちろん,ゲーム屋の私としては,ゲーム自身が人生を豊かにするとも確信しておりますが(笑)。

4Gamer:
 娯楽もまた人生を豊かにするものだということですよね。

前田氏:
 そうですね。そして,社会的評価という意味であれば,公的資格以外にもたくさんあると思いますし,さまざまな可能性はあると考えていますよ。

4Gamer:
 これは余談になるのですが,アーケードにある「クイズマジックアカデミー」とかってプレイされたことありますか?

前田氏:
 ええ,あります。私はどちらかというと「Answer×Answer」派なんですけどね(笑)。いずれにせよ,こうした形も十分ありだと思います。オンライン上で対戦するというのは,すごく面白い。

4Gamer:
 発想が貧弱で申し訳ないんですけど,ああいった形のシリアスゲームを作る予定はありませんか? 「学研オンライン」とかそのままの名前で。個人的にああいうのが分かりやすくていいんじゃないかなぁといいますか,純粋にやりたいって思ってるだけなんですけど(苦笑)。

前田氏:
 現状では予定はありませんが、検討してみてもいいかもしれませんね。
 実はいろいろと動いているプロジェクトもあるのですが,まだ公開できないものも多くあります。

4Gamer:
 それは教育系ですか?

前田氏:
 いろいろですね。最近スタートしたものでいえば,三井住友銀行さんのホームページで遊べるミニゲーム「わくわく!『銀行たんけん隊』〜みどりさんと学ぶ銀行体験ゲーム」を開発いたしました。

4Gamer:
 金融系ですか。確かにあまり「ゲーム」なんて言わなそうなイメージですもんね。

前田氏:
 ええ。三井住友銀行さんなどと一緒にお仕事をさせて頂くと,ゲームが受け入れられつつある,という実感が湧きますね。創業当初は,それこそ事例がまったくなかったので,営業に行って説明するのにも苦労したのですが,最近は「あそこがやってるなら,ウチもやってみようか」などと言って頂けることもあります。成功事例を積み上げていく大切さを実感していますね。

4Gamer:
 なるほど。

「わくわく!『銀行たんけん隊』〜みどりさんと学ぶ銀行体験ゲーム」は,三井住友銀行のホームページ上で公開されているコンテンツだ
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前田氏:
 冒頭でも申し上げましたが,私はお客様サイドにはあまりシリアスゲームという認識はないと思っています。だからこそ,ゲームが「学びという分野」で普通に使えるメディアなんだということを,もっとアピールしていかなければならないと感じています。

4Gamer:
 単純にシリアスゲームを売り込んで行くわけではないと。

前田氏:
 ええ。単純にゲームっていうだけですと,現状,娯楽というイメージに固定化されていますので。「まじめなことにも使えるんだ」ということを伝えるために,ゲームの効能を丁寧にお伝えして行く必要があると考えています。

4Gamer:
 なるほど。シリアスゲームの活動って,まさにゲームのイメージそのものを変えていく活動でもあるんでしょうね。
 本日はありがとうございました。



 さて,どちらかといえば,シリアスゲームとはなんぞや?という,おさらいに近かった今回のインタビューだが,話を聞いてあらためて思ったのが,やはりシリアスゲームというものの定義が,未だに曖昧だということだろうか。
 ただ,そもそもシリアスゲームという言葉が現在のように使われるようになったのは,2002年のシリアスゲームイニシアチブ(Serious Games Initiative)の設立以降であり,聞くところによると,「ゲームは真面目なことにも使える」という共通項以外はあえて明確に定義しなかった,という経緯があるのだという。さまざまな可能性を持つシリアスゲーム……その発展を考えれば,確かに「これがシリアスゲーム!」と杓子定規で決めつけてしまうのも,あまり賢明だとは言えないのだろう。
 とはいえ,コンピュータ処理を使った教育学習分野という話であれば,それこそ20年以上前からさまざまな研究がなされてきた一大ジャンルなわけで,そこに「ゲーム」というフレーズが入るだけで,喧々諤々(けんけんがくがく)の議論に発展してしまうあたり,それ自体が「ゲーム」というメディアの特殊性,あるいは社会的な注目度の高さを表しているのかもしれない。

 いずれにせよ,「脳を鍛える大人のDSトレーニング」に代表される知育系ソフトの大ヒットを背景に,日本でも活発な動きを見せつつあるシリアスゲーム事情なわけだが,日本では,知育ゲーム(シリアスゲーム)=お手軽,娯楽感覚といった,軽いイメージのみが先行している感も否めない。
 ただ,シミュレーション/シミュレータの分野ですでに数多くの成果があるように,学ぶ手段として「ゲーム(プログラミングされたメディア)の文法」が最適であろうジャンルも,おそらくは間違いなく存在するだろうし,娯楽性や快適性だけがゲームというメディアの可能性ではないというのも,なるほど,納得である。

 日本ではこれから,どんなシリアスゲームが出てくるのか。SGラボ,およびシリアスゲーム界の今後の動向に期待したい。

■関連サイト:
「SGラボ」の公式サイト


■SGラボの直近の開発タイトル一覧:
「わくわく!『銀行たんけん隊』〜みどりさんと学ぶ銀行体験ゲーム」
「見つけて防ごう!子どもにとっての身近な危険〜乳幼児期の事故防止学習ソフト〜」
「ウーロン茶物語〜美味しいお茶を求めて〜」



これまでにSGラボが手掛けた作品事例。ジャンルや業種を問わず,シリアスゲームにはさまざまなニーズがありそうだ
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  • 関連タイトル:

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    わくわく!『銀行たんけん隊』〜みどりさんと学ぶ銀行体験ゲーム

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