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[E3 2006#179]「Alliance:The Silent War」で,90年間の現代戦争史を駆け抜ける
開発元のWindward Mark Interactiveは,ハーバード大学の学友達で構成される新興のソフトウェア開発会社。設立以来3年ほどは,同社がサードパーティへのライセンスをも考慮した「Windlight Technology」というレンダリング技術を擁した,Allianceゲームエンジンの開発に重点が置かれていたらしい。
このAllianceは,そのテクノロジーデモとして制作されているものだ。まだ,販売会社との交渉はおろか,完成予定の具体的なスケジュールも決まっていないというが,今回のE3では,相当なプレゼンスを示せていたのではないだろうか。
さて,このAllianceは,これまでになかった壮大なストーリーを持つFPSになる模様だ。なんと,第一次世界大戦(1914年)から現代までの,90年にも及ぶ血に塗られた歴史を,時代の流れに翻弄されていく一家族を描いている。つまり,4〜5世代分の話が一つの物語になっているというわけだ。史実かどうかはともかく,プレイヤーは戦争を陰で動かす秘密組織の存在に気づき,その陰謀を,どの政府に属することもなく,親子数世代にわたって暴き出していくという展開になる模様だ。
会場で流されていたムービーでは,1974年のエジプトというテロップが流れており,スエズ運河を境にエジプトとイスラエルがにらみ合った第4次中東戦争を描いていると思われる。仲間と共謀してスナイパーが陣取るモスクの塔を建物ごと破壊したり,死体を盾にして目的地に接近したりと,Allianceで何ができるのかがよく分かるデモだった。
もちろん,ランプや外灯,銃器の閃光といった要因も含まれるが,これによってどんよりした東欧と,その対象として描かれる灼熱のエジプトやキューバ,そして工業地帯のベルリンといった質感がユニークに表現されることになりそうだ。天候もダイナミックに変化していくとのことで,突然スコールに襲われて視界が悪くなったり,雲の割れ目から太陽光が差し込んできたりというような場面も想像される。
また,同社は銃器の物理的な挙動にも重点を置いている模様で,弾丸の重さや飛距離,命中率なども精巧に再現しているという。90年という長いスパンを扱ったゲームであるため,なんとゲームに登場する銃器だけで200種類に及ぶのである。
興味深いのが,マルチプレイヤーモードで,各国の軍隊が時代を超えた戦闘を楽しめるということ。第一次世界戦争期のチェコ師団とアメリカの海兵隊でチームデスマッチを行ったり,第二次世界大戦時のソ連機関銃兵と,キューバやエジプトなどを戦わせたりできるのである。銃器の性能を考えると,ゲームバランスのほうが心配になってくるが,ブースにいた開発者によると「心配ない」の一言。「WarStudio」というエディタによって武器性能やチーム構成のバランスを取ることもできるし,時代の違う武器を持たせることも可能なのだという。
Alliance: The Silent Warは,FPSには珍しい壮大な時代を扱ったエピックものであるため,まだまだ謎の部分も多く,開発にも相当な時間が必要になるはず。まだ販売元も決まっていないので,2007年,2008年のE3にも出展される可能性は十分あるが,すでに定員オーバー状態の戦争系FPSに,どれだけの新風を巻き起こせることができるだろうか? (ライター:奥谷海人)
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