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[GDC 2009#33]広大で美しいアルビオン大陸を作り上げる,「Fable II」のマップデザインを紹介
そのFable IIのグラフィックスの秘密に迫ろうというのが,GDCのレクチャー「The World of Fable II」(Fable IIの世界)である。スピーカーは,Lionhead StudiosのLead Environment ArtistであるMark Smart氏と,Franchise Art DirectorのIan Lovett氏だ。
本作は広大なアルビオン大陸を自由に旅して,正義に生きるのも,悪の道に走るのもプレイヤー次第という自由度の高いRPGであり,背景となる世界のトーンや構造が,ゲームの中で大きな位置を占めている。今回のレクチャーでは,そんなマップ作りについて説明された。
Smart氏によると,前作Fableのマップ制作では作業上の制約は少なかったものの,多くの無駄が生じる結果になってしまったという。これは,グラフィックス関連のデータとゲームエンジンの制作を同時に進めていたためで,結果として,当初考えていたことが実現できなかったり,せっかく作ったアセット(建物やアイテムなどのオブジェクト)が無駄になったりするケースが多かったそうだ。
管理体制も不十分で,デザイナーが好き勝手にいろいろなものをマップ上に置いたため,あとで修正しようとしたとき,それをどこに置いたのか分からないなどということも起きたそうである。
というわけで,今回のFable IIの制作にあたってはまず,「すべて計画的に行う」ことが重視されたという。なんとなくウソみたいな話だが,前作では結局,せっかく作られたアセットのうちの40%近くが破棄されたというから,事態は深刻だったようだ。
マップはまず,レベルデザイナーがデザインするという。そこで使われたのが「White-Box」と呼ばれるシステムだ。これは,マップ上に低ポリゴン数のオブジェクトを作成するもので,これにより,位置や大きさなどを決めることになる。テクスチャも貼られていないごくシンプルなものだが,これを元にコンセプトアートが描かれるのだ。
続いて,コンセプトアートに沿って,必要なアセットの洗い出しが行われる。広大な世界が舞台となるだけに,その数は膨大だ。また,すべてのアセットについて,リードデザイナーとプロデューサーが最終的なゴーサインを出すため,アセットに関するデータはプロデューサーチームが管理することになる。ここで,ピーター・モリニュー氏の話が出る。
Smart氏によると,モリニュー氏はもちろんきわめて優秀なプロデューサーだが,前作ではミーティングの時間が少なく,十分な意思の疎通が図れなかったとのこと。まあ忙しそうな人ではあるので仕方ないのかも知れない。
またモリニュー氏は,自分自身でマップ上を歩き回らなければ判断を下さないため,前作では,制作がかなり進んだ状態でダメが出ることもあったそうだ。Fable IIではそういう事態を避けるため,連絡をより密に取ったという。カリスマの下で働くのは名誉なことだが,やはりそれなりに大変なのだろう。
このように書くと,すべてがスムースに進んだように思えるが,実際は,こうなるまでやはり試行錯誤の繰り返しだったそうだ。ゲームの規模がずっと大きくなっているだけに,大変なことも数々あったという。だが,「良いものを生み出すときには痛みを伴うものです」とSmart氏は述べていた。
十分にプランニングを行い,じっくり計画を練ったおかげで,「みんなは末永く幸せに暮らしました。めでたしめでたし」と相成ったそうである。
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