インタビュー
なんでロボット? 4回にわたって実装される「A.V.A」史上最大のアップデート「テトラロジー」。その企画意図を開発元と運営元に聞いてみた
そんな折り,9月4日に大阪で開催されたオフラインイベント「AVAれ祭2011 大阪―夏の陣―」(関連記事)にあわせて,開発元であるREDDUCKの開発1室長クック・ジョンジン氏が来日。この機会を逃すまいと,4部作の企画意図や今後の予定についても聞いてみた。また,運営プロデューサーであるゲームオンの井上洋一郎氏にも同席いただき,今後の運営方針などについても話してもらっている。
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。テトラロジーは今までのA.V.Aと雰囲気がかなり違うので,正直ビックリしました。まずはどういった狙いで開発したのかを教えてください。
REDDUCK 開発1室長クック・ジョンジン氏 |
はい,最初にテトラロジー第1弾である「E-BOAT」から説明します。E-BOATは,ボートに乗って脱出を試みるチームと,それを阻止するチームによって競い合う,新規ミッションです。A.V.Aは爆破ミッションの人気が一番高いのですが,初心者が参加するには少しハードルが高いという問題点があり,その解決策として実装しました。
井上洋一郎氏(以下,井上氏):
爆破ミッションは覚えることが多いので,より簡単に楽しめるものを用意したというわけです。
ジョンジン氏:
韓国のプレイヤーからはE-BOATが簡単過ぎるという意見も出ています。ですが,今までA.V.Aを遊んでいなかった人達には好評ですね。爆破ミッションのチュートリアル的なものとして,開発陣の狙い通りに機能してくれていると思います。
4Gamer:
なるほど,あくまでも初心者向けコンテンツというわけですね。
井上氏:
E-BOATはあくまでもこれからFPSを遊ぶ人達に向けたコンテンツです。決して既存プレイヤーをおざなりにしたわけでなく,新規プレイヤーを増やすための仕掛けと考えてください。
4Gamer:
長い目で見ると,新規プレイヤーの獲得は既存プレイヤーにとってもプラスに作用しますからね。
ゲームオン 運営プロデューサー 井上洋一郎氏 |
ええ,ですからいま遊んでいただいている方にも,こちらの意図をくみ取っていただければと思います。韓国でも日本でも,いかに新しい人達をゲームに呼べるかが,コンテンツの寿命に大きく関わってきますので。
4Gamer:
では,BATTLE GEAR −BEGINZ−の企画意図はどのようなところにあるのでしょう。特設サイトで公開されたムービーを見ると,「違うゲーム?」と思えるほどに,世界観が変化していますよね。
ジョンジン氏:
BATTLE GEAR −BEGINZ−は,2010年の年末ぐらいから企画し始めたのですが,当初はなかなかいいアイデアが思い浮かびませんでした。本当に楽しいもの,新しいものを用意したいと考えていたのですが,なかなか決められなかったのです。そんなとき会議の席で「ロボットを入れてみたらどうか」という意見が出ました。A.V.Aの世界観にはあいそうにないと考えたのですが,前向きにいろいろと考えるうちに,面白いものが作れそうだと思えたので,開発に踏み切りました。
4Gamer:
かなり思い切った決断ですね。既存プレイヤーからの反発は考えませんでしたか。
ジョンジン氏:
もちろん考えましたが,あくまでもイベント的なものとして実装するので,そういった面を強く打ち出せばきっと分かっていただけると思います。いや,実際には社内でもかなり批判的な意見は出ていたんです。本当にロボットでいいのかと。
4Gamer:
やっぱり(笑)。では,ロボットを登場させたことで何が変わるのでしょう。
ジョンジン氏:
これまでのAIミッションは敵の行動パターンがあまり複雑ではありませんでした。そういったところを改善する方法としてロボットはうってつけの素材でした。
4Gamer:
といいますと?
ジョンジン氏:
ロボットですと,人間やゾンビではありえない攻撃が自然に行えるので,攻撃のバリエーションを増やせ,さまざまな行動パターンを用意できるのです。また,男性はロボット,とりわけ巨大ロボというフレーズに心が躍るので,その琴線を刺激したいという狙いもありました。
4Gamer:
確かにロボットと聞くとなぜかグッときます(笑)。
井上氏:
いままでのAIミッション,つまりゾンビが相手だと,リロードのタイミングを合わせるといったことぐらいでしか,声のコミュニケーションを取る必要がありませんでした。ですがBATTLE GEAR −BEGINZ−のロボットには,ただ突っ込んでくるだけでなく,姿を消しながらプレイヤーに向かってくるものがいます。誰が狙われているのかをお互いに教えあうといったコミュニケーションも発生するので,Co-opとしてより面白くなるでしょう。
4Gamer:
ちなみにですが,“BEGINZ”という名前から察するに,続きがありそうですよね。
井上氏:
ええ,10月12日にBATTLE GEAR −BLOOD−というマップを追加し,これがテトラロジー第4弾になります。BATTLE GEAR −BEGINZ−と同様のコンセプトでロボットが登場します。
4Gamer:
では,テトラロジー第3弾もロボットものですか。
井上氏:
いいえ,第3弾はDARK CHAMBERという感染モード用の新マップです
既存の感染モード用マップは,ほかのモードで用意したもののアレンジ版でした。ですが,DARK CHAMBERは感染モード専用に開発したものです。
4Gamer:
いままでのマップと違う点を教えてください。
ジョンジン氏:
プレイヤーのストレスを軽減させることを念頭に置いて開発したことですね。実はこのマップにはゾンビ専用の武器があり,ゾンビはしばらく休憩すると体力が回復するんですよ。
4Gamer:
そうなるとゾンビが強すぎる,ということはないのでしょうか。今度は人間側のプレイヤーがストレスを感じやすくなるといいますか。
ジョンジン氏:
感染モードは,人間側にいいポジションにつかれてしまうと,そこからひたすら狙い撃たれてしまい,ゾンビ側のプレイヤーはストレスが溜まりがちでした。そのための打開策ですので問題はありません。
井上氏:
ゾンビ側のプレイヤーができることを増やしたといった感じですね。そして,より“鬼ごっこ”が続けられる状況を発生させるためのマップです。
4Gamer:
なるほど。では,4部作を実装したあとの予定についても教えてください。
ジョンジン氏:
はい。2012年2月までに6つのミッションを実装する予定です。
4Gamer:
6つの内訳はどうなるのでしょう。
ジョンジン氏:
3〜4つが爆破ミッションを含めたラウンド制で,残りが殲滅,護衛,もしくは新規ミッションになる予定です。
4Gamer:
おお,新規ミッションですか。それはどのようなものになるのでしょうか。
ジョンジン氏:
これはまだ検討中ですので,ちょっとお答えできないんですよ。また,開発状況によっては別のものを実装する可能性もあるので,確定した時点で発表させていただきます。
そうそう,護衛モードは,2011年末の実装を目標として制作しているマップがあります。このマップではいままでの護衛モードになかったもの,例えば戦車を2台登場させ,両方をくっつければ勝ちといったルールなどを企画しています。
井上氏:
護衛モードはA.V.Aならではの要素ですので,ほかのFPSとの違いを出すためにも盛り上げてほしいという意見が多いんです。そういった意見にも応えていきたいですね。
ジョンジン氏:
以前来日したときに,日本のプレイヤーに新しい護衛ミッションを追加すると約束していますので,その約束は必ず守ります。
4Gamer:
分かりました。楽しみにしています。
あくまでも対戦ゲームとして面白く。データを分析しつつバランスを調整
では,現状のA.V.Aについて聞かせていただきます。まず兵種のバランスですが,ポイントマンがちょっと使いづらいですよね。
ジョンジン氏:
ええ,それは開発チームもかなり悩んでいる問題です。ポイントマンはチーム全体の状況を把握するために重要な兵種なんですが,実際のところ能力が機能しておらず,ライフルマンのほうが強いので,使っている人も少ないです。
これに対しては,ポイントマンのスキルの上方修正と銃器の強化をしようと考えています。
4Gamer:
どういった強化かを聞かせてもらえますか。
ジョンジン氏:
まだ具体的に決まっていないので,これ以上は詳しくお話できないんですが,2011年内になんらかの対応をとりたいと考えています。もう少しお待ち下さい。
4Gamer:
分かりました。では,銃器のバランスもあまりよくないという意見を耳にしますが,それはどのようにとらえているのでしょうか。
ジョンジン氏:
韓国人と日本人プレイヤーはおおむね似ているのですが,違う点が一つあります。それは武器に対する考え方です。韓国人プレイヤーは操作が簡単で強い武器を嫌う方が多いですが,日本人プレイヤーは,そういった武器を好んで使います。
4Gamer:
完全に逆ですね。
ジョンジン氏:
例えば,韓国でSSG556という武器を入れたときは,操作が簡単なうえにあまりにも強いということで人気が出なかったのですが,日本では大ヒットしました。
井上氏:
SSG556は狙いがぶれないうえに連射力が高いので,支持した日本人プレイヤーは多かったです。
ジョンジン氏:
といったように同じ武器でもまったく逆の反応が見られます。もちろん日本人プレイヤーの意見を無視するつもりはまったくありません。各銃器のキル/デス数を分析して,全体のバランスを調整していこうと思います。
井上氏:
国によるプレイスタイルの違いにあわせてゲームバランスを調整するというのは,MMORPGなどではよくあります。ですがFPSの場合は,すべての地域で同じバランスにしておかないと面白くありません。ですので,日本と韓国,両プレイヤーの状況を見つつ調整していくことになるので,かなり難しいです。
4Gamer:
日本でも一部の武器が強すぎるという声をよく聞きますので,それを問題視する人は韓国と同じように多いのではないでしょうか。
井上氏:
ええ,運営元に届く意見としてはそうなんですが,実際にゲーム内でプレイヤーが使っているのは操作が簡単で強い武器です。日本ではFPS初心者の比率が高いために起きている現象だと思いますので,日本もいずれは韓国人プレイヤーと同じような意見を持つ人が増えるではないかと予想しています。ですので,簡単操作の強い武器ではなく,扱いは難しいけれど使いこなせれば威力を発揮できる,といった武器を実装していけるようにしたいですね。
ジョンジン氏:
これはとても難しい問題ですが,意見をいただければきちんと検証して,必要であれば改善していきます。ただし,ゲームの根幹を成す部分ですので,対応は慎重になることをご理解ください。
井上氏:
いままで以上に日本の状況,プレイヤーからの意見を開発元に伝えるようにしていきます。
4Gamer:
では最後に日本のプレイヤーに向けてメッセージをお願いします。
ジョンジン氏:
ロボットが実装されることを心配している人もいるかもしれません。また,バランスの問題も気に懸けている人が多いでしょう。そういったことはきちんと修正しながら,面白いゲームを作り上げられるようにがんばっていきます。
また,クラン戦をもっと面白くするようなアップデートも行いたいと思いますので,そこにも期待してください。
井上氏:
運営側としては,日本のFPS市場を広げていき,国際大会などがしっかりと行われるようにしたいと常々思っています。そのためにもネットカフェキャラバンのようなイベントを日本各地で開き,いろいろな人達の意見を吸い上げ,A.V.Aが対戦ゲームとして面白くなるように,開発会社にその意見を届けていきます。
4Gamer:
ありがとうございました。
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