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[GDC 2011]ストラテジーゲームに未来はあるのか? ストラテジーゲーム市場を牽引する4人の開発者が,ジャンルの問題点を晒し出す
「StarCraft II: Wings of Liberty」や「Hearts of Iron III」のようなゲームが大ヒットする一方で,低バジェットのインディ系デベロッパによる小粒な作品が出るなどしているが,その中間を埋めるタイトルがまったくないという状況が続いている。
古参のゲームジャーナリストであるトム・チック(Tom Chick)氏がモデレーターを務める「Strategy Games: The Next Move」(ストラテジーゲームの次の一手)というパネルディスカッションは,そんな現状に危機感を募らせる名うての開発者たちが集まり,ストラテジーゲームの問題点と未来について語り合うという内容。
Blizzard Entertainmentのダスティン・ブラウダー(Dustin Browder)氏,Robot Entertainmentのイアン・フィッシャー(Ian Fisher)氏,Electronic Artsのソーレン・ジョンソン(Soren Johnson)氏,そしてStardock Entertainmentのジョン・シェーファー(Jon Shafer)氏という,ストラテジーゲームに造詣の深い4人が一堂に会するという,なんとも興味深いセッションである。
ダスティン・ブラウダー氏 |
ソーレン・ジョンソン氏 |
ジョン・シェーファー氏 |
イアン・フィッシャー氏 |
まず口火を切ったのは,元々Electronic Artsで「Command & Conquers: Red Alert 2」(2001年)のリードデザイナーを務め,2005年にBlizzardに移ってからは,Starcraft IIのゲームデザインの中核的な存在となったブラウダー氏だ。
彼は,「これから言うことを全部やっている我々が言うのもなんだが」と前置きした上で,「シネマティックスだとかキャラクターのセリフだとか奥深いストーリーだとか,本当にストラテジーゲームに必要なのだろうか? 我々は,ストラテジーゲームを遊びたいゲーマーたちの心を台無しにしてしまっているかも知れない」と話す。
これに続いたジョンソン氏は,Firaxis Gamesで「Civilization IV」のリードデザイナーとなり,その後はElectronic Artsで「Spore」に関わり,現在は同社のソーシャルゲーム部門であるEA2Dのリーダーを務める人物。
氏は,「大手パブリッシャーは,100万本売れないゲームに興味を示さなくなっている。それは,ストラテジーゲームはルールが複雑な,完全にコアゲーマー向けのジャンルだからで,パブリッシャーだけでなくゲーマー達からも興味が失われているのが現状だろう」と語った。
このジョンソン氏の意見に異議を唱えたのがシャーファー氏だ。現在Stardockに在籍するシャーファー氏だが,彼はFiraxis時代に20代にして「Civilization V」のリードデザイナーに抜擢された人物として知られる。
ジョンソン氏には,「元々Firaxisで雇ってやったのはオレだぞ。言い方に気をつけろよ」とジョークで脅されていたが,「どんなに頑張っても40万本しか売れないニッチ市場でも,十分に成功することは可能。ストラテジーゲームに改革なんて必要ないのではないか? 私は面白いと思うゲームを作るだけです」と反論した。
この意見に対しては,元々「Age of Empires」シリーズの開発に参加していた,現Robot Entertainmentのフィッシャー氏も,「すべてのプレイヤーにアピールする必要はない。ストラテジージャンルはターゲットを絞ったままの状態でも存続する力はある」と続く。
いくつかの示唆深いやりとりがなされた後,本格的なストラテジーゲームにFree-to-Play型のビジネスモデルを活用し,現在大きな話題となっている「League of Legends」について話題が移った。
なかでもジョンソン氏は,「このゲームの成功は,ストラテジーゲームにソーシャルという新たな面白さを加えているからだろう。古いままでじっとしているだけではなく,新しいものも取り込んでいくのが我々作り手の責任だ」と語り,それについては皆も賛同している様子。
さらに「Starcraft II」が三部作に分けてリリースされるというビジネスモデルにも触れられたが,ここでは「これはシングルプレイヤーキャンペーンのみを意識した選択であり,マルチプレイヤーモードは今は人気があるとは言え,シリアスな問題を抱えているのは事実」とブラウダー氏が内情を告白する。
ブラウダー氏は,さらに「今後作品がリリースされるごとに,マルチプレイヤーモードでは変更もなく同じユニットばかりを使うというのは批判されることになるかも知れない。かと言って無理にユニットや機能を追加すれば我々のトレードマークでもあるバランスに支障をきたすことがあるだろう」と語るなど,大ヒットの上に胡坐をかけるわけではない,Blizzard内部の心境が素直に語られていたのは印象的であった。
ともあれ,通常,この手のパネルディスカッションは,参加者の間で激しい口論になったりすることはほとんどなく,具体的な改善案などを含めた“濃い話”になかなかならないものなのだが,今回のセッションもそれに倣う形に。
ただそれでも,ストラテジーゲームを開発する人々が,ある種の危機感を持っているというのが理解できただけでも,ファンにとっては救いがあったと考えておくべきだろうか。
- 関連タイトル:
StarCraft II: Wings of Liberty
- 関連タイトル:
シドマイヤーズ シヴィライゼーションV 日本語版
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SPORE
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