レビュー
サーキットレースに重点の置かれたシリーズ最新作
ニード・フォー・スピード プロストリート
熱いストリートレースが楽しめる
ニード・フォー・スピードシリーズの最新作登場
日本で簡単に手に入る車から逆立ちしても手に入らないような車まで,片っ端からド派手なスポコン仕様にしてかっ飛ばせるニード・フォー・スピードシリーズ最新作「ニード・フォー・スピード プロストリート」。熱いストリートレースの世界を味わおう |
本作もストリートレースがテーマとなっているが,以前のように街中を走り回るのではなく,サーキットレースがメインとなっている。公道を利用するレースはあるものの,一般車やパトカーなどは一切登場せず,ストリートレーサーが集うバトルイベント(つまりレース)に参加してドライビングの腕を競うことに強くフォーカスした,純粋なレースゲームに方向転換したのである。
舞台となるのは,エビスサーキット,インフィニオン・レースウェイ,モンデロパーク,テキサス・ワールド・スピードウェイ,ウィロースプリングスといった実在するサーキットのほか,シカゴ郊外にある空港を利用したコースや,首都高速道路をモチーフにしたトウキョウコースなど実にワールド・ワイド。お気づきのように日本が舞台となるステージが豊富に用意されており,日本語の看板や東京タワーなど,なんとなく見たことのある風景を眺めながらレースができるのが嬉しい。
もちろん,スポコン(スポーツコンパクト)の世界で人気の日本車も数多く登場するし,現実では手に入れるのが難しい高級車を好きなようにチューンしたり,レースカーのようなエアロパーツを装備して,ド派手なカラーリングやバイナルで着飾ってレースができる。ぶつけてもへのカッパで走り回れるどこかのゲームとは異なり,「あ〜ベコベコになっちゃった」と自分の腕のなさを痛感してしまうほど細かく壊れるダメージ再現など,ゲーム性は大きく異なってしまったものの,ニード・フォー・スピードらしさはあちこちに健在だ。
ストリートレーサーの頂点
“ショウダウンキング”を目指すキャリアモード
こいつがショウダウンキング「リョウ・ワタナベ」。ゲーム中に頻繁に登場し,ライアン・クーパーの走りを批判したり,悔しそうにしてみたりと性格は悪いが小心なキングである。本当にキングらしい走りをするのかどうかは,プレイしてのお楽しみだ |
前述のとおり,街中を走り回るという要素はばっさりカットされており,ライアンは参加したいバトルイベントを選んで次々に挑戦していくことになる。メニュー画面でもあるバトルイベント会場は,会場を盛り上げるMCが終始しゃべりまくっており,展示された出走車両の周りをファンが囲んでいたり,キャンギャルがいたりキャンギャルを撮影している人がいたりと,本当にイベント会場にいるかのような臨場感がある。いい感じだ。
ちなみに,レーサーの集まりであるバトルイベントは複数のレースモードで構成されており,「グリップ」「スピードチャレンジ」「ドラッグ」,そして「ドリフト」と,異なるルールの競技が組み合わされている。
バトルイベントごとにレース数は異なるが,どのレースから挑戦するかは自由だ。得意なものから挑戦していくといいだろう |
さて,次のレベルに進むためにはショウダウンイベントへの参加権が必要になるが,それを得るには規定数のバトルイベントをクリアもしくは圧勝しなくてはらない。ショウダウンイベントは全部で三つ用意されており,すべてのショウダウンイベントを終わらせて初めてレースジャンルごとに存在する「エリート・キング」およびショウダウンキング「リョウ・ワタナベ」に挑戦できるのだ。というわけで,まずはすべてのバトルイベントで圧勝するくらいの意気込みで挑戦しよう。いや,きわどく勝っても誰も文句は言わないので安心だが。
もちろん,レースやバトルイベントをクリア/圧勝するたびに賞金が入るので,それで新たな車を購入したり,チューンナップをしていくわけだ。序盤は余裕で優勝できても,徐々にライバル達も速くなり,フルチューンなのにあっさりと抜かれたりする。こうなると別の車に乗り換えてのチューンナップが必要になるが,“勝てる車を入手するまで”は資金不足で苦労するだろう。幸い,一度クリアしたバトルイベントには何度でも挑戦できるので,賞金がおいしいバトルイベントを繰り返し挑戦して資金稼ぎなんて,ちょっぴり地味なことも必要になる。
キャリアモードのほかには,あらかじめ用意されたバトルイベントや自分でレースモードを組み合わせて作成したバトルイベントで,PC相手にレースをしたり,オンライン対戦ができる「フリーバトル」が用意されている。
レースモードを自由に組み合わせられるので,すべてのレースモードの入ったバトルイベントや,一つのレースモードのみで構成されたバトルイベントなどを作成し,マルチプレイでドライビングの腕を競い合うことも可能だ。また,すぐに参加できるオンラインバトルを自動検索して参加できる,「クイックバトル」もあるので,世界中の凄腕ドライバーを相手にレースを挑んでみてはいかがだろうか。
少々分かりにくいイベントマップ。白くはっきりしたところがプレイ可能なイベントで,緑色がクリア済み。キングに挑戦するには,もう少し勝利しなければ…… |
フリーバトルでマルチプレイを楽しむ。赤色のバーが対戦者がいるイベントだが,まだまだマルチプレイ人口は少ない。さあ,みんなやろう! |
愛車をカスタマイズしてイカした車でレースに挑む!
リアルなダメージ再現は必見
ヒロイン的なお姉さんが出ないのにはガッカリだが,キャンギャル兼スターターの二人のお姉さんが登場する。腰を振りながら歩くセクシーな姿に見とれたり,スタート時に一瞬だけチラッとこちらを見る視線にドキッ! としないようにしよう。してもいいが |
ポルシェ,ランボルギーニ,BMWなどに乗れるのは嬉しいけど,やはり日本人として気になるのは日本車のラインナップ。スポコンで日本車(輸出車)の人気があるせいか,240SX(日本では180SX),S15シルビア,シビック,RX-8,フェアレディZなど多くの日本車が登場する。その中でも注目したいのが,日産自動車が昨年発売したマルチパフォーマンス・スーパーカー NISSAN GT-Rだろう。嬉しいことにNISSAN GT-R プロトタイプまで収録されており,あれこれとチューンして思う存分に乗り回せるのだから,GT-Rファンであれば筆者のように家族に気味悪がられるほどニンマリできるはず。
登場するすべての車にチューンナップやカスタマイズを施せるのはもちろんだ。強化パーツを組み込んで性能をアップさせたり,ディープリムのホイールに極太タイヤを履かせ,エアロパーツを組んでド派手なバイナルやステッカーで着飾るのも思いのまま。エンジン,足回り,エアロなどのセッティングは,相変わらずスライドバーでの調整となるが,前作以上に細かい調整が可能で,エンジンのカムタイミングやブーストのかかり具合,ニトロ(N2O)の噴射設定など多くの項目が用意されている。あれこれと調整したい人はじっくりセッティングを詰めてみるといいし,どんなパーツを組んでいいのか分からない人は「クイックアップグレード」を利用して,レースモードに合わせた最適なパーツを勝手に選んでもらえば安心だ。
これらのチューンナップ,カスタマイズデータを“ブループリント”(仕様書)として車種ごとに三つまで用意しておけるのも新機能。例えば同じ車種で異なるセッティングにしたい場合や,現在のエアロパーツやバイナルを残したまま,別のデザインに変更したい場合など,ブループリントを選択するだけでワンタッチで切り替えられるのだ。
ちょっとした小競り合いも頻繁に起きるので,ノーダメージのままレースを終わらせるのは大変だ。とはいえ,レースを勝つには多少強引な走りも必要 |
さて,注目すべきはダメージの再現度である。今までのニード・フォー・スピードシリーズを含めて多くの“壊れるドライブゲーム”をプレイしてきたが,ダメージ再現度はピカイチといってもいい。最先端3D技術を動員して,「この壊れ方はリアルさが足りない。やり直し!」なんてやっているんだろうなあと思うと,いやあ,ゲーム作りは大変だ。
実際,レース中の小競り合いで大小さまざまなダメージを受けるし,単独走行でもミスをしてコース脇の障害物に当たった,ドリフトでフロントやリアを壁にぶつけたなんてことは普通に起きる。したがって,細かい傷から大きな破損まで見事に再現されており,必要以上にリアルなダメージをイヤというほど見られて微妙。大きなクラッシュになれば当然,走りにも影響が出てくるし,修理できないクラッシュならば,そこでレース終了になるからドキドキものである。
もっとも,すべて実車をベースにしているからか,シャシーに及ぶ大クラッシュで車体がつぶれて中の人は助からなそう,といった表現はない(さすがに自動車メーカーが嫌うため)ので,ちょっと物足りないが,そういうのを見たくない人は安心していただきたい。
本作では,ダメージは修理しないかぎり蓄積され,次のバトルイベントにも影響が出る。キャッシュで修理することも可能だが,バトルイベントのクリア時に獲得できるリペアマーカー(購入も可能)を使って修理することも可。廃車コースのダメージでもトータルリペアマーカーを使えばオッケーなのだ。マーカーがあれば気軽に修理できるが,切れたときにキャッシュで支払う修理代は意外とバカにならないので,できるだけクラッシュをしないようなレース運びも重要だ。まあね。これが言うほど簡単じゃない。
NISSAN GT-Rだろうが,華麗なるスーパーカーだろうが思う存分ボコボコに。ここまで大小さまざまなダメージが反映されるドライブゲームはなかった |
修理すればダメージは完璧に直るが,リペアマーカーがないと修理代もバカにならない。多くのリペアマーカーを入手しておけば気兼ねなくぶっつけられる |
豊富なアシスト機能を使えば
誰でもプロストリートレーサーになれる
ショップが用意した同一車種,同一スペックの車を使用するワンメイクレースもある。試されるのは腕前だけだ。ちなみにこのレース,車の修理代などを払う必要がなく,とにかく勝てばいい。序盤の資金稼ぎで何度もお世話になることだろう |
シミュレーター寄りの挙動を好む人は不満に感じる部分もあると思うが,市販車をあれこれいじって,ありえない速度でサーキットやストリートを走り抜ける爽快感がニード・フォー・スピードのウリであり,うまい人は抜群にうまい走りができ,この手のゲームに不慣れな人も楽しめるという適度な難度で,これはこれで正解だと思う。というわけで,アナログスティック付きのゲームパッドでも十分プレイ可能。
最近の傾向ではあるが,どちらかといえばビギナーでも楽しんでもらえるように作られており,ブレーキとライン取りをアシストする「ペーパードライバー」,きついコーナーでアシストする「バトルドライバー」,アシストなしの「プロフェッショナル」から運転補助機能を選択できる。ほかにも走行ラインとコーナーの進入速度を示す「ベストラインインジケータ」表示や,アンチロックブレーキ,トラクションコントロール,電子制御コントロールのオン/オフが可能と,多くの運転補助機能で腕の差を埋められるように配慮されているので,三輪車でもまっすぐ走れないという運転音痴のキミも安心だ。
ライバルの真うしろを走ると空気抵抗が減り速度が上がるドラフティング(スリップストリーム)を多用しよう。とくに高速時の効果が素晴らしい |
ニトロ(N2O)は加速時やコーナーの立ち上がり,追い越しなどに利用しよう。車がジャンプして速度が落ちたワタナベを,ニトロで加速して軽やかにパス |
ドラッグモードではレース前にタイヤを空転させてグリップ力を高めるバーンアウトを行う。パワーバンドを維持するようにアクセルをコントロールすべし |
というわけで,完全にレースモード重視になった本作,プロストリートだが,今回はイベント制を採用したことにより,若干ゲーム自体が単調な流れになってしまった印象がある。とくに序盤は得られる賞金も少なく,何度か同じレースを繰り返すことになる。しかし,賞金もそこそこ良くなる中盤あたりから,どのレースモードでもアドレナリンが吹き出すような熱い走りを楽しめるし,ライバルも速くなってくるのでやりごたえが出てくる。あとは一気に「リョウ・ワタナベ」を倒すまでよ。はっはっは。
世界中の有名車を好き勝手にチューンナップしたり,ボコボコにして走り回れるニード・フォー・スピードシリーズの良い伝統は踏襲されており,スカッとかっ飛ばしたい人にはストレス解消になるだろう。腕次第では逆にストレスが溜まる結果になるかもしれないが,最近,めっきり元気のないドライブゲームにおいて,単純に走っていて面白いと思えるゲームが登場したことは歓迎できる。ドライブゲーム好きの人でなくても楽しめると思うので,ぜひ,ショウダウンキングを目指して挑戦してほしい。
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