連載
男色ディーノのゲイムヒヒョー ゼロ:第339回「『異議あり!』が育った」
では,なぜお金が大切なのか,考えたことはある?
答えを言ってしまうと,お金は何にでも交換できるから。食べ物とも交換できるし,サービスとも交換できる。現代人の欲求を満たすためのものは,たいていお金との交換で手に入れられるの。それゆえ,お金は大切なのね。逆に言うと,それだけの価値しかないのよ,お金って。
例えば,何もかも自給自足できる環境であれば,お金なんて必要ないの。だって,お金と交換しなくても欲しいものが手に入るんだもん。でも,多くの人の場合は,お金がないと生きていけないという現実がある。それは,自分の力で生み出せるものには限界があるから。
生きていくのに最低限必要なのは,衣服や食べ物,住居。でも,現代の日本ではそれさえあればいいってわけじゃないでしょ。ありがたいことに,今は生き残る方法を探す時代ではなく,生きていることを前提に,“どう生きるか”を問うことができる時代を過ごせている。で,そんな今の時代を生きていくにはお金が必要な局面が多いわけで。
もうね,正直に言いましょうか。ぶっちゃけ,今回は何が言いたいのか自分でも迷子になってる。本当は“人は何にお金を払っているのか”ってことを問いかけたかったの。で,そのためにまずはお金のあり方を説明しようと思って書き始めたんだけど。見事にこの航海は失敗というか,難破しちゃってるわよね。
このペースで話を進めると,お金は最低限しか必要ない,お金で買えるのはあくまで一次的なモノで,結局のところ“生きる目的”とか“どう生きるか”は自給自足しなきゃいけないってケツ論に達しちゃう。確かにそれもそうなんだけど。これはいわゆるピンチですよ。
言いたいことと,実際に言っていることにムジュンが生まれてる。このままだと文章として成立しない。本業はプロレスラーとはいえ,一応は文章でお金をもらってる以上,文章が成立しないのは有罪。まずい。追い込まれてる。
今回私が言いたいのは,お金が必要ではないとかそういうことではなかったのよ。だって,我々プロレスやゲイムなどのエンターテイメント業界は,本来は人の人生に直接必要でないモノを売ることで成立しているわけだから。つまり,先ほどの表現で言うところの“どう生きるか”っていう部分を担っているのね。
生活必需品ではないうえに,売っているのはモノではなくサービス。なので,我々はお客様に選んでいただくことで,お金を得ているの。お金が必要な世の中だからこそ,我々のような生活に必ずしも必要なものではない業種がヤってイケているという一面があるわけ。
!!
……これだ! この切り口しかない!
ひょっとしたら……これですべてのナゾが……。
続けます。では! 必ずしも必要ではないモノに,どうやったらお金を払ってもらえるか。選択肢はいっぱいあるわ。世の中に楽しいモノはたくさんあふれてる。その中で,自分が従事しているエンターテイメント産業にお金を落としてもらうには,どうすればいいのか。それは「そうそう,これが欲しかったんだ」を提供することなのです!
つ,つながった! ようやく言いたいことがつながった!
そうなのです。“方法”はいろいろあるわよ。今まで体験したことがないような体験を与えるのもいい。逆に,今までヤり続けてきたものを変わらず提供するのでもいい。顧客に合わせるか裏切るかは,エンターテイメントの種類や市場環境によってさまざまな手法があるでしょう。
しかし! 心から喜び,悲しみ,怒り,笑い,悔しがる。そういったものを提供したとき,顧客は「これを体験したかったんだ」と思うことができると,私は考えるわけです。
「大逆転裁判 −成歩堂龍ノ介の冒險−」。「逆転裁判」シリーズの新プロジェクト。今回は,時代が変わって19世紀。あ,安心して。プレイ感覚は間違いなく逆転裁判シリーズのそれだから,シリーズファンなら間違いなく楽しめるわよ。裁判ではなく,推理がメインの章もあるけど。でも,雰囲気はちゃんと逆転裁判だから,そこは問題ない。ちゃんと面白いわよ。しかも,逆転裁判として面白い。これ重要。
本当に申し訳ないんだけど,客観的なゲイムの情報としては以上です。ここからは,ただのファンとしての感想。
と言うのもね,私,逆転裁判ファンでもあり提供する立場の職業人として,制作者に聞きたいことが山ほどあるのよ。今回,時代設定を変えたのはなぜなのか。ストーリーありきの決定なのか,それともシリーズとしての目先を変えるために時代設定から先に入ったのか。推理パートの導入は,シャーロック・ホームズというキャラクターから生まれたものなのか,それとも推理させたいからホームズを登場させたのか。これは今回だけではないんだけど,強烈なのにストーリーの邪魔をしないキャラクターの立たせ方のコツって何なのか,とか。
そして何より,「異議あり!」が育ったと思ったのはいつからなのか。
いや,そうなの。今回プレイしてみてすごく思ったのは,おなじみの「異議あり!」がとても心地良く使われていたってことなのよ。今までも意外な場所で使われていたりしたんだけど,今回の「異議あり!」は,とくに商品としてのブランド力を自覚した使われ方だと感じさせられたのよね。
言うなれば,水戸黄門の印籠。「この紋所が目に入らぬか」的な。遠山の金さんの入れ墨。「この金さんの桜吹雪,散らせるもんなら散らしてみやがれぃ」的な。今回の連載で「何に金を払ってるのか」をテーマに書き始めたのも,まさにこの影響よ。ゲイムで最初にナルホドくんが「異議あり!」って言った瞬間,私,思っちゃったのよ。「そうそう! これが聞きたかったの」って。
語弊はあるかもしれないけど,これを聞けただけでゲイムをプレイした甲斐はあるわよね。で,今回はその「異議あり!」をいつもよりもさらにドラマティックに演出してる。言うなれば,銭が取れる「異議あり!」に育て上げたの。だから,「異議あり!」が育ったと制作者が実感した瞬間は,いったいいつなのか知りたいわけで。
というわけで,大逆転裁判。これには“この飽食の時代に商品としてどうあるべきか”がたくさん詰まってる良い作品だと私は思うわけであります。お金って大切で,人はお金のために時間と労働力を捧げてるんだけども,私に言わせるとみんな勘違いしてて。貯めるために稼ぐんじゃないよ。使うために貯めるんだよ。
で,どうせ使うんだったら,効果的に使いたいじゃない。使ったお金以上に楽しみたいじゃない。だから,私が稼いでいるなけなしのお金は,こういう作品に使いたいな,と心から思うのですよ。まあ,人によって何が楽しいと思うかは違うんで,一概には言えませんがね。
私はオススメしますよ,大逆転裁判。そんなこんなでまた来週。あ,最終的には言いたいことがつながったから,私,無罪ってことでよろしいでしょうか? ……ええ,異議は認めません。
今週のハマりゲイム
(文字通りゲイムスロットにハマっているゲイム)
PlayStation 4:「トロピコ 5」
PlayStation 3:特殊なDVD ※死亡確認→復活予定
PlayStation Vita:「不思議のダンジョン 風来のシレン5 plus フォーチュンタワーと運命のダイス」
PSP:「サモンナイト5」
Wii U:「ゼルダ無双」
Wii:「ドラゴンクエストX 目覚めし五つの種族 オンライン」
ニンテンドー3DS:「大逆転裁判 −成歩堂龍ノ介の冒險−」
Xbox 360:「剣の街の異邦人 〜白の王宮〜」
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大逆転裁判 −成歩堂龍ノ介の冒險−
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