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インディーズゲームの小部屋:Room#357「This War of Mine」
どうも最近,“壁ドン”の使われ方が間違っているんじゃないかと思えてならない筆者がお届けする「インディーズゲームの小部屋」の第357回は,11 bit studiosの「This War of Mine」を紹介する。本作は,敵軍に占領された都市で,無力な一般市民として過酷な生活を体験するというサバイバルゲームだ。壁ドンってもともとは,隣の部屋の住人がうるさいときに壁を叩いて抗議することだったような……。
ゲームの舞台となるのは,Pogorenという名の架空の都市。この街は敵軍のスナイパーによって監視されており,逃げ出すことはおろか,昼間に出歩くこともままならない。そんな状況下で,プレイヤーはエリート兵となってバッタバッタと敵を倒していく……のではなく,数人の一般市民を操作してサバイバル生活を繰り広げることになる。
ゲームを開始すると,あちこち崩れかかった3階建ての建物を避難所にして,ランダムに選ばれた3人の市民が生活している。彼らはそれぞれ,足が速かったり,料理が得意だったり,力持ちだったりといった特徴を持っており,ゲームを進めると,この避難所で一緒に生活させてほしいと申し出てくるほかの市民も現れる。基本的に人手は多いに越したことはないのだが,食料や物資は常にカツカツの状態なので,どのように対処するかはプレイヤー次第だ。
ゲームには昼と夜の2つの時間帯があり,昼間は避難所で生活必需品を製作したり,食事をしたり,建物の壊れたところを補強したりといったことができる。そして,夜になったら人目を忍んで周辺の建物に侵入し,足りない食料や薬品,その他もろもろの物資などを拾い集めてくるのだ。
本作は全体的に説明が不足しており,ゲーム開始直後に何をすればいいのか分かりにくいが,ひとまず体を休めるためのベッドと,護身用のナイフや鍵開け用のロックピックを作成するための作業台(Metal Workshop)を作っておくといいだろう。
昼間に避難所であれこれと働いていると,時折,誰かが訪ねてくることがあり,アイテムの物々交換を持ちかけてきたり,瓦礫の下敷きになっている人を救出する手助けをしてほしいといった依頼を受けたりする。条件さえ折り合えば,この時に物々交換で足りない物資を補充するのも悪くない手だ。しかし,ほかの市民の手助けを引き受けた場合,出かけて行ったキャラクターは翌日になるまで戻って来ないので注意してほしい。
夜になったら,避難所にいる誰か一人を選んで物資の調達に出かけよう。その際は,足の速いキャラクターや,荷物をたくさん持てるキャラクターを選ぶといいだろう。残りのキャラクターは,寝るか,建物の護衛につくかを選択できる。あまり得策ではないが,物資を探しに行かず,全員寝かせてしまうこともできる。ちょっとした病気や怪我なら,しばらく寝ていれば治るのだが,こちらがほかの建物を物色しているのと同様,夜間にほかの生存者から襲撃を受けることもあるので寝てばかりもいられない。
物資を求めて侵入した建物には,すでに先客がいたり,そこが誰かの家だった場合,住人がいたりする場合もある。中には問答無用で発砲してくる物騒な輩もいるので,人の気配を感じたときは慎重に対処したいところ。人の物を盗んだり,ましてやそのために殺人を犯したりといったことは,あくまで最後の手段……ではあるものの,手に入る食料は少なく,このままでは自分達が餓死してしまうという状況に直面したとき,取るべき手段は限られる。そういえば,あそこの家は老夫婦が2人暮らしをしていたな……。
というわけで,極限状態に置かれた人間の心理をイヤというほど実感させられる本作。筆者もゲーム内のこととはいえ,やむなく他人を襲って物資を奪い取ったこともあるが,盗みや殺人を犯せば,プレイヤーだけでなくゲーム内のキャラクターの心理状態にも悪影響があり,罪悪感に悩まされる彼らの姿を見て,ますます自分の罪深さに胸をえぐられてしまう。
果たして,あの老夫婦はその後,無事に生き残れたのか,自分のしたことは本当に正しかったのか,ほかにやれることはなかったのか。なかなか考えさせられるところが多いゲームなので,興味を持った人はぜひプレイしてみてほしい。そんな本作はSteamにて1980円で発売中だ。うう,胸が痛い……。
■「This War of Mine」公式サイト
http://www.11bitstudios.com/games/16/this-war-of-mine- 関連タイトル:
This War of Mine
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