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突然で申し訳ないのだけれど,思い起こせば,2007年9月の東京ゲームショー。マイクロソフトのブースに取材に赴いた筆者に向かって,担当者が「誰も『あつまれ!ピニャータ』を遊ぼうとしてくれないんです!」と嘆いていたのは,筆者にとって,2007年で印象に残った事柄の一つだ。
なんでも,一緒に試遊台を用意した「エイジ オブ エンパイア III:アジアの覇王」は放っておいても人だかりができるのに,そんな彼らに「これも面白いんですよ!」とピニャータ(PC版)を勧めてみても,皆そそくさと立ち去ってしまうというのだ。「凄く良いゲームなのになぁ……」と悔しそうに語る担当者を尻目に,当時,すでにXbox 360版をプレイ済みであった筆者が「さもありなん」と心の中で思っていたのは,その場では決して口に出せなかった,ここだけの秘密である。
というのも,以前は筆者もそんな“食わず嫌い”をしていたプレイヤーの一人であったからだ。もっとも実際に遊んでみて,“これはかなり本格的なシミュレーションゲームだ”とすぐに思い知らされたワケだが……。
本作の開発を手掛けるRare社は,ゲーム業界では老舗といえるメーカー。元は任天堂のセカンドパーティーとして活躍し,スーパーファミコン向けの「スーパードンキーコング」など,数々のヒットタイトルを手掛けた実績を持つ
今回紹介するのは,そんな「あつまれ!ピニャータ」(以下,ピニャータ)のPC版。簡単にピニャータという作品を紹介すると,本作は,いわゆる箱庭系のシミュレーションゲーム。プレイヤーは,“ピニャータ アイランド”という不思議な島を舞台に,与えられた土地(庭)を自分好みに拡張/整備していく。花を植えればそれに釣られて虫が,虫が増えれば,次はそれを餌にしている小動物が……といったように,庭(ガーデン)を整備して環境を整えていけば,さまざまな動物(ピニャータ)たちが訪れてくれるという内容だ。
子供向けのタイトルを装いながらも,そのゲームシステムはかなりしっかりしたもので,海外では「大人が楽しめるゲーム」として各ゲームメディアで絶賛され,またユーザーから(とくにゲーマーから)の評価も非常に高いというのが大きな特徴。昨年発売されたXbox 360版では,初週の売上本数こそ振るわなかったものの,口コミをベースにじわりじわりと売上を伸ばし,今では,米販売実績は40万本,全世界で100万本を超えるセールスを誇るまでのタイトルに成長したという実績を持つ。
少し遊んでみれば分かるのだが,子供向けの外見とは裏腹に,システムとしてはかなり本格的なシミュレーションゲームとなっており,やり応えは十分。詳しくは後述したいと思うが,このゲームの本当の面白さ,奥深さを理解するのは,子供では無理なのではないか? という感さえある。かのビル・ゲイツ氏が,自分の娘がピニャータにハマっている様を見たせいか,「ピニャータは女の子向けのゲーム」という発言をしたようだが,筆者としては「ピニャータは,むしろ大人にお勧めしたいゲーム」だと声を大にして言いたいところ。本作は,非常に奥の深いゲームなのである。
今回の記事では,ピニャータが如何に大人向けのゲームであるか,それが極力お伝えできるように努めたいと考えている。筆者もどちらかといえば,かなりコテコテのシミュレーションゲーマーだといえるが,本作は,そんな筆者が掛け値なしに楽しめる作品だ。ウィル・ライト氏のシムシリーズやシド・マイヤー氏のレイルロードシリーズ,あるいはタイクーンシリーズといった作品に反応してしまう人にこそ,本作をプレイしてほしいのである。
「すべて生き物は,ほかの生き物を殺さないと生きられないという業(カルマ)を背負っている」,といったのは誰だったか
……とはいえ,欧米の子供番組に出てくるような濃いデザインのキャラクター達に,どんなゲームかよく分からないパッケージデザインなどなど,正直なところ“日本受けしにくい”要素が多いことは否めない本作。上記の「なかなか遊んで貰えない」という話もそうなのだが,ピニャータという作品の最大の欠点は,手に取るまでに至らない,取っつきにくい印象に尽きるといっても過言ではないだろう。
日本でも,本作の知名度は決して高くない……どころか,悲しいかな,ほとんど知られていないのが実情だ。知人に聞いてみても,「『どうぶつの森』みたいなゲーム?」「ポケモンみたいなゲームじゃないの?」などなど,なかなかちゃんとした答えが帰って来ないことが多いくらいで,実は当の筆者も,内容をよく知らずにXbox 360版を買ったという経緯もあったりする。
ただその一方で,一度でも遊んだことのある人にはすこぶる評判が良いというのも,ピニャータという作品を語る上での大きなポイント。以前の記事で触れられている伊集院光氏の話もそうなのだが,遊んでみれば不思議な面白さに取り憑かれ,ついつい時間を忘れて遊びこんでしまう……。ピニャータとは,そんな不思議な魅力を備えた作品なのである。
ということで改めて説明したいが,本作は,与えられた土地(ガーデン)を自分好みに拡張/整備していくという,箱庭系のシミュレーションゲーム。プレイヤーは,荒れ果てた土地に植物を植えたり,あるいは池を作ったりしながら,ガーデンをより良い土地へと作り変えていくわけだが,そのようにガーデンを整備して環境を整えていけば,さまざまな動物(ピニャータ)たちが訪れてくれるというのは,先に説明した通りだ。
本作のゲームシステムの核になっているのは,食べたり食べられたりという「食物連鎖のロジック」。花を植えれば虫が寄ってくるし,虫が増えれば小動物が,そして小動物がいると,今度はそれを捕食する肉食の動物が……といったように,連鎖的に生態系が発展していくという仕組みが,本作の最大のポイントだといえよう。また上手く動物(ピニャータ)たちを呼び寄せても,それで終わりではない。今度は,彼らを満足させ,また繁殖させていかなければならないのだ。
ゲームはリアルタイムに進行していく形式となっており,植物が枯れてしまわないようにジョウロで水をやったり,動物同士がケンカをしないように柵を作ったり,あるいは悪さをする野生の動物を追い払ったりなどなど,見かけのホノボノさと裏腹に,プレイヤーが結構忙しいというのも特徴の一つだろう。
食物連鎖をテーマにしている本作だが,とくに素晴らしい点……,要するに本作が“大人が遊べるゲーム”である所以は,その食物連鎖のロジックが,“ゲームとして”非常によく作り込まれているというところにある。簡単に言えば,ある種のパズルなのだが,例えば,ヘビのようなピニャータ(シロペント)を増やすには,マウシュマローというネズミのようなピニャータが食料として必要になり,そのマウシュマローを呼び寄せるには,その餌となるカブをガーデンに植えなければならない……という風に,目的となるピニャータから順序を遡って,環境を整えていかなければならないのだ。
序盤に登場するような小動物は,そんなに難しい条件ではなく,放っておいても増えたりしていくのだが,上位のピニャータともなると,それこそかなりの戦略を持って望まないと,なかなかガーデンを訪れてはくれない。またガーデンがそのピニャータにとって住みよい環境ではない(自分を餌にするようなピニャータがいるなど)と,せっかく訪れても,あっさりと居なくなって(食べられて)しまったりもする。お気楽な「お庭作成シミュレーション」とは一線を画す難しさが潜む点は,本作の大きな魅力であり,また興味深い側面(子供向けじゃないの? というツッコミとも言う)だといえるだろう。
とはいえ,本作にはゲームーオーバーという概念がないため,基本的には何をやっても自由。生態系のなすがままに放置しておくというのでも,一向に構わない。実際,何も考えずにプレイしていても,ある程度のレベルのピニャータたちは,自然に集まってくるような作り(登場条件)になっており,本作が本来ターゲットにしているであろう子供も楽しめるという,間口の広さも内包されている。
要するに,言ってしまえば,本作には,
- 何も考えずに,気の向くままにガーデンをコーディネートさせる楽しみ
- 目的を持って効率的にガーデンを整備していく面白さ,戦略性
という二つの要素が,自然な形でゲームに盛り込まれているということ。これは考えてみると,なかなか凄いことだ。なぜなら,戦略性の高さと誰でも遊べる簡便さという,ややもすれば相反する二つの要素を両立させている作品は,世界を見渡してもそう多くはないからだ。とくに多くのシミュレーションゲームは,その戦略性の高さ(難しさ)ゆえに,多くのタイトルがマニア向けのゲームとして位置づけられているわけで。ピニャータは,そんなある種のパラドックスを打ち破っている,数少ないゲームの一つ。この点だけ見ても,本作の作り込み具合が伺えるというものなのだ。
プレイヤーのアドバイザー的存在。イベントの報告も彼女がしてくれる
食物の種や肥料,小道具などを売る雑貨屋の女主人。おそらくは,ゲーム中もっともお世話になる人
序盤に植物の種をくれる良い人。植物に関するさまざまな知識を持つが,ちょっと変人
幸福の青い鳥がモチーフなのか,青い装束に羽といういでたち。ピニャータの卵を運んできてくれる人だ
お金に関してユニークなのは,毒キノコや悪者ピニャータのもたらす“毒のお菓子”を売ろうとすると,逆にお金がかかるという部分だろう。要するに,撤去費,手打ちの費用……という訳だが,面倒ならお金で解決ってあたりが,やっぱり大人向け?
自分好みに自由にガーデンをいじれるというのは,本作の趣旨であり,また大きな魅力の一つだろう。ガーデンを飾るオブジェクトは,花や木,野菜といった植物のほかに,噴水,彫刻,石畳など,さまざまなものが用意されており,作ったガーデンを写真に撮って遊んだりもできる。
また花や木といった植物がピニャータたちを呼び寄せるように,オブジェクトの多くがなんらかのイベントのトリガーになっているのも大きな特徴。いろいろとガーデンを弄っているだけで,さまざまイベントが発生し,常にプレイヤーを飽きさせない作りになっているのは,老舗Rare社の実力を感じさせる部分だといえるだろう。
ほかにも,気に入ったピニャータには,名前を付けたり,首輪などのアクセサリを装着させたり,ピニャータ1匹にとことんこだわるという遊び方も可能。さらには,特別な食べ物を食べさせて,突然変異や新種のピニャータを作り出すという要素もある。
……とまぁ,やれることの多さが魅力ではあるのだが,何をするにも先立つもの……つまりは,お金(チョココイン)が必要になってくるのも,大人向け(?)な本作の世知辛い側面だ。よってゲームの序盤から中盤にかけては,おもに資金を稼いでいくことが当面の目標になる。ガーデニングのゲームということで,目的がないスローライフ的なゲームだと思われがちな本作だが,このあたりも含めて,案外ゲーム的な要素は色濃い。
お金の稼ぎ方は,ある意味,非常に簡単。ガーデンにあるものをとにかく売り払っていけばよい。お店で作物の種を買ってガーデンに植え,トウモロコシやカブを育てて収穫してもいいし,ガーデンに住み着いたピニャータを売ることもできる。バリバリの経営シムのように破産したりということはないのだが,せかせかと作物を育てたり,ピニャータを繁殖させながらお金を貯めていくというのは,ゲーム的ではあるが非常に楽しい部分だろう。ちょっとした一次産業シミュレーションといってもいいかもしれない。作物は,与える肥料によって収穫時の大きさが変わる,密生させるとそれぞれの成長が鈍る(ちゃんと育てるには適度なスペースが必要)など,細かく作り込まれている点もユニークだ。
せっかく住み着いてくれたピニャータたちを売り払ってしまうのは,ちょっとだけ心が痛むが,それはそれ。下位のピニャータは,放っておいても寄りついて来きてくれるので,どんどんと換金してしまうというのも,序盤の戦略としてはありかもしれない。売られたピニャータがどこへ連れていかれるのかは知らないが,子供向けの世界観を貫いている本作だ。きっと,そう酷いことにはなっておるまい。……多分。
PC版の特徴は,簡単にまとめると以下の二つ。ゲームの内容自体は,Xbox 360版とまったく一緒。インタフェースと,PCに合わせた仕様周りの変更が主な違いだ。
- マウスとキーボードに対応したPCならではの操作性
- より高解像度で楽しめるグラフィックス
注目したいのは,やはりマウスとキーボードによる操作が可能になっているという点。Xbox 360版の操作性が悪いというわけではないが,どちらかといえば,コントローラ操作には不向きなジャンルだといえた本作。ショートカットキーやマウスでの視点移動など,PCゲーム準拠の操作性は,慣れうんぬんを除いても,やはり便利というか,本作に向いていると言えるだろう。グラフィックスも,「草」「毛並み」「水」「影」などのディテールを設定することができ,自分のPCのスペックに合わせて,ゲームを楽しめるようになっている。すべてを最高設定にするとなると,ミドルエンド以上のグラフィックスカードが欲しくなる雰囲気だが,特別ハイスペックなPCが必要だという印象はない。
さて,つらつらとピニャータという作品の魅力について書いてみた訳だが,やはりどうしても拭いきれないのは,本作が見た目で損をしている作品だということだろう。近年発売されたタイトルの中でも,本作は,もっとも理解されづらい作品といってもいいかもしれない。
巷を見渡すと,本作を形容する言葉に「可愛いピニャータたちと……」「自分だけのガーデンを……」といったフレーズが多いワケだが,そういったファミリー向けの雰囲気こそが,奥に潜む「ゲームとしての核」の部分を逆に覆い隠してしまっているように思えて,残念でならない。
確かにそういった“まったり遊ぶ楽しみ方”も,本作はフォローしているだろう。しかし筆者としては,生態系シミュレーション,あるいは一次産業経営シミュレーションの秀作として,本作を捉えておきたい。本文中で何度も触れたように,本作は,むしろ「ゲーム的なロジック」に多くの労力が割かれた作品だと思うのだ。
純然たるシミュレータに近かった「シムアース」や「シムアント」といった作品とは同じ土俵で語れないかもしれないが,本作は,そういったライフゲームのDNAを間違いなく受け継いでいる作品。ファミリー向けという見た目に惑わされず,その本質/内面は,多くの人に触れてみてほしいと思う。
1月18日〜2月8日の間に行われた「ピニャータ特別プレゼント」。たくさんのご応募ありがとうございました。5匹のレアピニャータの中から最も投票数が多かったピニャータを選んだ人に,抽選で「Microsoft SideWinder Mouse」が当たるという内容でしたが,本日(2月8日),一番投票が多かったピニャータを発表致します。結果は……
でした。というわけで,エレファニラを選んでくれた読者の中から,抽選で5名様に「Microsoft SideWinder Mouse」をプレゼントいたします。なお当選者の発表は,商品の発送をもってかえさせていただきます。
ちなみにMicrosoft SideWinder Mouseとは,ゲーマー向けに開発されたハイエンド志向のゲーミング マウス。計10個のボタンに,さまざまな機能を割り当てられるカスタマイズ性の高さなど,まさにゲーマーに向けたゲーマーのための機能が盛りだくさんの製品です。
なし
採掘場でヘルパーを雇う
卵が掘れるまで待つ
ペットショップでニワトリを買う
ニワトリを卵に導いてふ化させる
なし
※1匹しか登場しません。
なし
シロペントの卵がかえるとき(バウンドが大きくなったとき)に叩く
⇒ツインガースナップに変化
ツインガースナップの卵がふ化する時に叩く
⇒フォーヘッズに変化
ラッカトードを1匹食べる
ベラドンナの実を2個食べる
どくキノコを1個食べる
家がある
ガーデンの50%以上が池
クレソンが14本ある
or スイレンが14本ある
or アシが14本ある
ガーデンの60%以上が池
スイレンを10本食べる
クレソンを10本食べる
アシのフラワーヘッドを10個食べる
キャンディリーのなかよしマスターアワードを獲得
キャンディリーが1羽いる
ゴクラクチョウカを4本食べる
家がある
ブルーベリー,グーズベリー,トウモロコシ,モンキーナッツが合計16個ガーデンにある
ブラックベリーを4個食べる
トウモロコシを4個食べる
グースベリーを4個食べる
モンキーナッツを4つ食べる
バナナを2個食べる
ドングリを2個食べる
トウガラシを2個食べる
カボチャを2個食べる
バレエシューズをはいている
家がある
ドーナツの住人が5頭いる
ズンバックの住人が5頭いる
ガーデンに4万チョココインの価値がある
ドーナツを2頭食べる
ズンバッグを2頭食べる
ガーデンに5万チョココインの価値がある
王冠をかぶっている
ガーデンに6万チョココインの価値がある
4500チョココインの価値があるピニャータを食べる(イーグレア/エレファニラ/ガラグーグー/チューニコーンのいずれか)
家がある
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