レビュー
これが5000円以下の市場に登場した新定番だ
DHARMAPOINT DRTCKB109UP1,DRTCKB91UP2
そんな状況に,DHARMAPOINT(ダーマポイント)が,異色作を投げ込んできた。日本語フルキー配列の「DRTCKB109UP1」と,そこから10キー部を省いた「DRTCKB91UP2」だ。実勢価格は順に3700〜4000円程度,4600〜5000円程度(※いずれも2013年3月18日現在)と安価だが,これらをゲーマーはどう位置づけるべきか。2製品まとめて検証結果をお届けしたい。
メンブレンキースイッチを採用しつつ
主力シリーズ名を採用。その根拠は
だからといって,他社製品の主力製品と同じようにメカニカルキースイッチを採用しているかというと,さすがにこの価格でそれはない。DRTCKB109UP1とDRTCKB91UP2が採用するのは,いずれもメンブレンキースイッチだ。
ではなぜDHARMAPOINTは,エントリー市場向けキーボードと同じキースイッチを採用しつつ主力製品シリーズの名を与えたのか。そのカギとなるのが,プランジャーと呼ばれる部品である。
メカニカルキースイッチが持つ大きなメリットは,バネで軸を支える構造から,押下時にキートップがグラついてしまうことが少なく,多少斜め方向から押し込んだとしても,問題なくスイッチが入ることにある。PCゲームをプレイするときは,一般的な文字入力とまったく異なるキー操作を行うケースが多いが,そういうときでも確実な入力を期待できるというわけだ。
また,丈夫さも特徴となる。たとえば冒頭で紹介したZF Electronics製スイッチを採用するキーボードは,一般にキー1個あたり5000万回の押下に耐えると謳われている。
付け加えると,スイッチの構成部品にゴムを用いる都合上,耐久性はメカニカルキースイッチに及ばない。ざっくり言えば「基板とラバードームのシートがあるだけ」でキースイッチを構成できるので,キー1個につきキースイッチが1個必要なメカニカルと比べて極めてコストが低いのだが,操作性と耐久性の問題から,操作性を重視するゲーマー向けキーボードではメカニカルキースイッチが主流であり続けてきたわけだ。
キートップを取り外したところ。赤いプランジャーが姿を見せる |
プランジャーを取り外すと,メンブレンキースイッチ採用キーボードでお馴染みのラバードームがその下にあると分かる |
これが,プランジャーと呼ばれる部品の効果だ。ハウジングフレームにプランジャーがしっかりと収まっており,キートップはラバーではなく,このプランジャーを押すことになるので,ぐらつきが抑えられ,斜め方向からの入力に強くなっている。
キータイプの感触は間違いなくメンブレンキースイッチのそれで,押し込むとゴムらしく柔らかに沈み込み,底に付いたときの硬さもない。それでいて,メンブレンキースイッチらしくないしっかり感がある。
プランジャーというプラスチック部品が搭載されるためか,打鍵音はやや軽さが強調されるものの,基本的には一般的なメンブレンキースイッチと変わらず,静かな部類だ。このあたりはWebカメラを用いてムービーにしてみたので,興味のある人はチェックしてみてほしい。
なお,メンブレンキースイッチが抱える弱点となる耐久性についてだが,DHARMAPOINTはキーあたり2000万回の打鍵に耐えると謳っている。メカニカルキースイッチと比べるとさすがに控えめな数字だが,相応の耐久性は確保されていると述べていいだろう。
メンブレンキースイッチらしく,押し込むときに軽い抵抗があり,押し込み始めるとスカッと底まで達するというバネ特性になっている。一般的なメンブレンキースイッチと比べるとやや軽めながら,極端に軽いという印象まではない。
ただ,キーストロークは約4mmで,キースイッチが反応するのはその半分の2mmほどとなっており,この点は一般的なメンブレンキースイッチと比べるとかなり浅い。一般的なメンブレンキースイッチに慣れた人だと,底打ちするまで押し込む打鍵スタイルが基本になっているのではないかと思われるが,それと比べると相当に浅めで反応する印象だ。これもプランジャー効果だろうか。
押した感覚はメンブレンキースイッチそのものだが,メカニカルキースイッチと同等の安定感があると述べていいように思う。
下に示したのは「4Gamer Keyboard Checker」(Version 1.0.0)の実行結果だが,DRTCKB109UP1とDRTCKB91UP2ではいずれも,最大30キーの同時押しに対応していた。2モデルともきっちり30キーが上限になっていたので,(組み合わせにもよるが)仕様上の上限が30キーということなのかもしれない。いずれにせよ,両手で押せる上限の10キーを超えても,順番に押していこうが,一気に押し込もうが,ゴーストを疑わせる挙動はない。
要するに,「やや軽めのバネと浅いスイッチで素速く正確に操作ができる」という,メカニカルキースイッチを採用するゲーマー向けキーボードで一般的な特性は,DRTCKB109UP1とDRTCKB91UP2でも確保されているというわけだ。これは大きい。
キーボードとしては極めて標準的なデザイン
重さからくる安定感は抜群。LEDはややうるさい
なので,とくに断らない限り,両製品共通の仕様だという認識で読み進めてもらえればと思うが,キー配列は標準的ながら,最下段にはゲーマー向けモデルらしい配慮が見られる。[無変換][変換][ひらがな/カタカナ]キーや左右[Alt]キー,[コンテキストメニュー]キー,右[Ctrl]キーのサイズを文字キーと同じ程度にまで小型化し,その分の余裕を[Space]キーの横幅拡張に使っているのだ。
また,最下段に[Windows]キーが2個あると気づいた人もいると思うが,これらはどちらも同じ機能を持っている。ただ,「2個同時に2秒以上長押し」することで,[Windows][コンテキストメニュー]キーの無効/有効を切り替えられるようになっている。
おそらく1個の長押しにしなかったのは,1個だと,「[Ctrl]キーと間違えて押し続けて切り替わってしまう」恐れがあるためだろう。ゲーム中に操作ミスしようのないキー操作をトリガーとすることで,シンプルかつ確実に切り替えられるようになっているのは評価できるところだ。
左[Ctrl]キーが若干窮屈気味 |
写真だとかなり落ち着いて見えるが,実際には,青色LEDは相当に明るい |
また,[Windows][コンテキストメニュー]キーの無効化を行うと,「Num Lock」や「Caps Lock」「Scroll Lock」のLEDインジケータ横に用意された「Win Lock」のLEDインジケータが光るのだが,これらLEDインジケータの青色がかなり眩しいのも気になった。暗い室内だとかなり目立つので,もう少し大人しくてもよかったように思う。
高さを除く実測サイズはDRTCKB109UP1が450(W)×150(D)mm,DRTCKB91UP2が同368(W)×150(D)mm。フルキー仕様のキーボードとして,DRTCKB109UP1はごくごく標準的であり,DRTCKB91UP2はそこからきっちり10キー部の分だけ横幅が短くなっている。ローセンシ設定でマウスを使いたい人に,横幅が370mm程度で済むDRTCKB91UP2のサイズはありがたいだろう。
キートップの高さは,横から見ると湾曲したステップスカルプチャ方式が採用されていることもあって場所によって異なるが,最も高い部分で実測約9mm,逆に最も低い部分で同7mm。最も手前側となる最下段のキートップまでの高さは約29mmと高めになるので,パームレストを自前で用意する必要が生じる人もいるだろう。
そのほかにも,ケーブルの“流し方”を3パターンから選択できるようになっていたり,表面加工がつや消しの梨地でよい手触りになっていたり,キートップの印字が従来のDHARMAPOINT製キーボードから引き続き「日本語配列ながら,かな文字省略」の仕様ですっきりしていたり,単なる黒いキーボードにならないよう,側面に赤いラインが入っていたりと,価格を考えると,細かいところまで本当によく練られている。高級感あふれるとまでは言わないが,価格以上の質感はあると述べて差し支えない。
ケーブルの“流し方”を変えるための溝が用意されている |
本体の厚みを活かし,赤いラインがワンポイントに入る |
欠点がほとんどないゲーマー向けキーボード
これが5000円以下の市場における新定番だ
さらに,多くの読者が人生初のキーボードにおけるスイッチとして付き合うことになるため,使い慣れている可能性が高いメンブレンキースイッチを採用することもあって,メカニカルキースイッチを採用するキーボードのように「素速く入力するためには,底打ちしないよう,軽く打鍵する練習が必要」といったことがなく,それまで使っていたメンブレンキースイッチ採用キーボードから違和感なく移行できるのもメリットとなる。同時に,浅く入力しても反応があるので,メカニカルキーボードに慣れた人でも問題なく利用可能だ。
もはや世界でも一握りとなったETQWプレイヤーとして,筆者は熟練者と述べていい位置にいると自負しているが,メンブレンキースイッチ採用モデルで,さらにうまくプレイできるようになった感覚が得られたのは久しぶりである。
もちろん本文で触れたように,左[Ctrl]キーがやや小さいとか,LEDインジケータがややうるさいなどといった問題はある。また,ここまであえて触れてこなかったが,カスタマイズ可能な追加キーがないという,MMO系ユーザーからすると減点対象となる仕様もあるにはある。ただそれでも,この基本性能と価格を前にすれば些細な問題だ。
筆者は2010年4月14日に掲載したレビュー記事で,Microsoftの「SideWinder X4 Keyboard」を,4桁円台半ばにおける大本命としたが,ついに,その状況が変わるときがきた。現状,同じ価格帯のゲーマー向けキーボードとして,DRTCKB109UP1とDRTCKB91UP2を超える製品はないと言っていいだろう。
どうしてもメカニカルキーボードが欲しい,静電容量式でないとイヤだ,英語配列以外は使えないというのでなければ,10キーの有無,マウス操作用スペースの広さで,DRTCKB109UP1かDRTCKB91UP2のどちらかを選んでおけば間違いない。
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DHARMAPOINTのDRTCKB109UP1製品情報ページ
DHARMAPOINTのDRTCKB91UP2製品情報ページ
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