企画記事
KeNNy,uNleashed & fumio×Microsoft。「SideWinder X8はゲームで使えるのか」座談会レポート
理想は「BlueTrack版IE3.0」!?
X8にある,改善すべきポイント
――そろそろ,まとめに入っていきたいと思います。各論を一通り終えたところで,とくによかった点と,とく改善すべき点について,1〜2個ずつあらためて挙げていただけますか。
uNleashed氏:
僕みたいに,マウスをとにかく大きく,激しく動かす人間が,ものすごい速度で扱っても,きちんとついてきてくれる追従性の高さがとくによかった。改善すべきは,「かぶせ持ち」に限定されてしまう形状,それとやっぱり重さですね。
KeNNy氏:
気になったのはやはり重量。あとはホイールのクリック感。サイドボタンが僕には使いづらかったのも残念でした。
fumio氏:
よかったのは,SideWinderシリーズで代々受け継がれる,「かぶせ持ち」時の手のひらに対する安定感と,サイドボタンが僕には押しやすいこと。親指を大きく動かしたりしなくてもサイドボタンを押せるというのはほかのマウスに対する明確なアドバンテージなので,そこは好きです。
悪かったのはやはり重さ。あと,センサーの位置がちょっと後ろ気味に変わったのも残念です。手首から先だけで操作しているので,X5以前のように前寄りのほうが,細かく動かすのは楽でした。
――以上を踏まえての質問ですが,今後,SideWinderシリーズでワイヤレスの後継製品が出るとして,どういう方向に進むべきだと思いますか?
fumio氏:
うーん,とりあえずソールは普通のソールにしてほしいというのと,あとは無理にワイヤレスにしなくてもいいんじゃないかと(笑)
一同:
(笑)
fumio氏:
KeNNy氏:
そうですね。ケーブルの位置は気をつければなんとかなるので,あってもなくてもって感じですね。
uNleashed氏:
僕は(マウスを思い切り,かつ大きく動かした結果)ケーブルでスピーカーを吹っ飛ばしたことがあるくらいなので,ワイヤレスは非常にありがたいですね。要望を述べるなら,とにかく機能をそぎ落として,ハードコアなワイヤレスマウスを一つ,出していただけるととても面白いかなと思います。
KeNNy氏:
マクロ機能とかそういうのをすべてとっ払って,シンプルな機能のみで。
fumio氏:
クイック起動ボタンはいらないし,dpi設定も,ドライバのコンパネから設定できれば十分だから,変更ボタンも必要ないと思いますね。
KeNNy氏:
個人的には,高い(トラッキング解像度)設定すら必要がないと思います。
uNleashed氏:
僕らはベースの解像度がまず低いしね。
島田氏:
……ええと……いろいろありがとうございます。厳しい意見はありがたく受け止めたいと思います。
一つ伺いたいのはレイテンシの件でして,「ほとんど感じられない」ということでしたが,仮にワイヤードタイプと比べて,遅延がまったくないのであれば,ワイヤレスのほうがいい,というお考えですか?
fumio氏:
uNleashed氏:
無線通信の信頼性が非常に高くて,屋外など妙なシチュエーションで使ってもワイヤードと同じようなパフォーマンスを発揮できるなら,確実に無線かなと思います。
KeNNy氏:
例えばLANパーティやオフライン大会などで,同じマウスを同時に使った場合に競合したりしないのか,という不安はありますけど……。
島田氏:
工場出荷時に,ほかのレシーバーとは接続できないような設定になっているので,その点については大丈夫です。
KeNNy氏:
そうですか,そういう心配はまったくないということですね。
島田氏:
はい。
uNleashed氏:
僕達はFPSプレイヤーなので,FPS限定の話になってしまうんですが,流行しているオンライン専用FPSだと,先ほどもちらっと話に出てきたnProtectなど,不正防止ツールと干渉してしまうことがあるんですよ。せっかくの機能でも,使えないことが多いんです。
それに,パッケージタイトルだと,「スクリプト」が用意されていて,マクロに似たものを自分で組めちゃいますね。
fumio氏:
僕は,FPS始めたばかりの知り合いから「マウス買いたいんだけどどれがいい?」って聞かれることがよくあるんですけど,ゲーマー向けのものを勧めると,やっぱりマクロやら何やらと,機能がたくさんついていることになります。でも,買ったあと,そういう機能を使っていて,便利だって話はちょっと聞いたことがないんですよ。あくまで個人的な話,ではあるんですけど。
島田氏:
なるほど……。あと,今回評価用にお使いいただきましたが,今後もご自身でゲームをプレイするとき,X8を使っていただけますか? ぜひ正直に教えてください。
fumio氏:
一応,僕は使う予定です。ただ,ひょっとしたら,いや,ひょっとしなくても,X5に戻すかもしれないですね。
KeNNy氏:
僕は現在,「サドンアタック」という基本無料のオンライン専用FPSをやっているんですけど,これだとポーリングレートが高すぎて,X8を使っていると波打っちゃうことがあるんです。レートをソフトウェア的に変更できたら……。
uNleashed氏:
(かぶせ気味に)125Hzまで落とせたら,ってこと?
KeNNy氏:
そうですね,125Hzまで落とさないと照準が正常に動かなかったりするので,そのあたり,アップデートで対応してくれれば使いたいですね。
uNleashed氏:
fumio氏:
要は,IE3.0そのままに,このセンサーとワイヤレス周りを載せればいいってこと?
uNleashed氏:
それでも確かに悪くないね。重さがちょっと心配ではあるけど。
KeNNy氏:
そういうのはおもしろそうですね。
uNleashed氏:
即買いですね。確実に。
KeNNy氏:
それは結構気になります。単にワイヤレスですよって出されても,多くのゲーマーは,僕らと同じように「うーん無線かあ」というところで止まってしまうと思うんです。実績のあるマウスと形が同じなら,(その問題をクリアして)興味を引けますよ。
uNleashed氏:
センサーは確実にいいしね。飛ばないし。まあ,(そういう発言をしているのは,IE3.0でなければダメだなんていう)変な人ですから(笑)
島田氏:
一週間以上も使い込んで,真剣にレビューしたいただいた結果が強く伝わってきて,本当に感謝しています。
興味深かったのは,お三方のインプレッションに,共通した部分と,異なる部分があったことで,すべてのユーザーが気に入るものを作るというのは,やはり大変難しいですね。
本日いただいた意見はマーケティングにとっても参考になりますし,大変ありがたいものでした。本当にどうもありがとうございました。
fumio氏が対談を振り返る
それぞれ,マウスに対する主張を普段から持っていて,思いの丈をメーカーへ直接ぶつけようと意気込んでいたこともあってか,対談が終わった頃には疲れを感じたほどだったが,両氏は貴重な体験ができたと満足げに語っていた。筆者も同意見だ。
ところで,対談の最後に,4Gamerの担当編集から「X8は誰に向くと思うか?」という質問があった。これに対してKeNNy氏は「机の上が狭かったりする人,ケーブルが邪魔で悩んでいたりする人」,uNleashed氏は「第一印象でしっくりくるだろう,『かぶせ持ち』派のプレイヤー」と挙げていた――筆者のインプレッションはレビュー記事を参考にしてほしい――が,そんな対談から筆者が強く感じたのは,完全に万人向けのマウスを作ることがいかに難しいかだった。
世界中のゲーマー,1000人に調査を行ったデータを基に,その“最大公約数”を取って開発されたというX8だが,3名の評価が分かれる部分があったどころか,誰からも支持を得られない部分すらあったわけで,多くのユーザーに受け入れられるというのは,そうとう大変な話なのだろう。
Sidewinderシリーズのコンセプトとして,ごく少数のプロゲーマーでも圧倒的多数のカジュアルゲーマーでもなく、積極的かつ真剣にゲームをプレイする「シリアスゲーマー」と呼ばれる層を意識しているというのがある。そのため,“ごく少数”側に(全員が全員,100%ではないにせよ)属する我々3名が志向している方向とはいくらかズレた部分はあったのかもしれない。しかし,それを差し引いても,個人個人の好みに大きく依るのが,マウスというデバイスなのだということを,あらためて認識させられた。
今回,このような機会を与えてくれたマイクロソフトはもちろんだが,ほかのデバイスメーカーの人達にも,こういったユーザーによる不満の声にくじけず(?),今後もよりよい製品を出せるよう,継続した研究開発をお願いしたいと思う。
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SideWinder
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