レビュー
あり得ないようなレースが手軽に楽しめる
エクストリーム・レーシング ピュア
日本語マニュアル付英語版
» ズーから発売中の「エクストリーム・レーシング ピュア 日本語マニュアル付英語版」は,速さではなく,ジャンプして空中でトリック(カッコいいポーズやアクション)を決め,そのスコアを競うレース(普通のレースモードもあるけど)。誰が採点しているのか分からないが,かなり目のいい人に違いない。なぜなら,ゲームじゃなければあり得ないほどの高さまで飛び上がっていくからだ。うう,高い。そんなピュアを,レースゲームは得意だが高いところは苦手なライターのUHAUHA氏が攻めて攻めて攻めまくる。
爽快なジャンプ,華麗なトリック,痛そうな転倒
オフロードレースゲーム,ピュアがやってきた
2009年6月12日にズーから発売された「エクストリーム・レーシング ピュア 日本語マニュアル付英語版」(以下,ピュア)は,小型の四輪バギー,ATV(All Terrain Vehicle=全地形型車両)を駆り,起伏の激しいコースを飛んだり跳ねたりしながら空中で華麗なトリック(イカしたアクションのこと)を決めようというオフロード・トリック・レーシングゲームだ。
開発は,MotoGPシリーズなどのレースゲームを手がけてきたClimax Racingのメンバーが中心となって設立されたイギリスのデベロッパ,Black Rock Studios。そして,権利元はDisneyのゲーム部門であるDisney Interactive Studiosだ。「あのディズニーがレースゲームを!」とちょっぴり驚いてしまう人もいるだろう。ディズニーのゲームといえば,おなじみのキャラクターが出てくるカジュアルなものをどうしても連想してしまうが,6月に開催されたElectronic Entertainment Expo 2009で評判になったぶっ壊し系レースゲーム「Split/Second」など,コアなゲーマーにもアピールするタイトルの制作にも本気で取り組んでいる。
ちなみにXbox 360版とPLAYSTATION 3版については,ディズニー・インタラクティブ・スタジオから「エクストリーム・レーシング -PURE-」として6月25日に発売されている。ゲームの内容はPC版と変わりないので,コンシューマ版の購入を考えている人にもこの記事は参考になるはず。筆者もなってほしいと思う。
世界を転戦してランキングトップを目指すもよし
オンラインで対人戦を楽しむのものよし
コースとなるのはニューメキシコ,ワイオミング,イタリア,オコティーヨウェルズ,グラームズ,ニュージーランド,タイという世界7つのロケーションで,山岳,海岸,砂漠,雪道など,大自然の中に作られたトリッキーなオフロードコースが用意されている。
ゲームモードとしては,世界中で開催される大会に参加してトップライダー達とテクニックを競う「ワールドツアー」,ワールドツアーでアンロックされたコースでレースを楽しむ「シングルイベント」,ひたすら新たなタイムやスコアを出すことを目指す「トライアルモード」,そして世界中のプレイヤー達と最大16人での対戦ができる「オンラインゲーム」と「LANプレイ」が用意されている。
メインとなるワールドツアーは,10ステージ(大会)のレースに挑んで世界ランキングトップを目指すモードだ。各ステージは四つから五つのイベントレースで構成されており,誰よりも先にゴールすることを目指して競い合う「レース」,短距離の周回コースでレースを行う「スプリント」,トリックを決めてスコアで競う「フリースタイル」という三つのモードが組み合わされている。イベントレースの組み合わせはステージごとに異なるが,挑戦する順番は自由なので,得意なものからチャレンジしていこう。
それぞれのイベントレースでの成績によりポイントが与えられ,既定ポイントに達すると次のステージへ進める。それまでのステージで獲得したポイントによって世界ランキング(ワールドツアーポジション)が決まり,それが上位になるほどライバル達のレベルも上がり,勝つのが難しくなっていく。もちろん,目指すのはランキングのトップだ。
ATVに乗っているキャラクターが派手なアクションを見せるため,レース系ゲームとしては珍しく,プレイヤーキャラクターの選択が可能だ。それぞれに特性や習得しているスペシャルトリック,トリック後のパフォーマンスなどを持っており,登場するのはトッド,ジェイ,タケシ,クレイトン,ローザ,スージーの六人。キャラクターの変更はいつでも可能なので,とっかえひっかえして楽める。ちなみにユキオ・タケシとややこしい名前の日本人は,叫び声も日本語だ。
Todd Andrews |
Rosa Juarez |
Clayton Wade |
Suzi Andrews |
Takeshi Yukio |
Jay Valdes |
オンラインプレイには,サーバーに接続して手軽に対戦を楽しめる「クイックマッチ」,イベントレースタイプやエンジンクラス,コリジョンなど好みのゲームホストを選択して参戦する「カスタムマッチ」,自分でイベントレース設定をしてホストになる「クリエイトマッチ」の三種類が用意されている。手軽に対戦相手を探せて,対人レースも非常に熱いので,ぜひ挑戦しよう。
現実にはできそうもないトリックを決めろ
ATVはアクセルを踏めば進むし,ブレーキを踏めば止まる。コーナーではスティックを前に倒してフロントに体重をかけることで,少しだけクイックに曲がれる。きびきび走る四輪バギーだけに,比較的オーバースピードでコーナーに入っても,ハンドル操作で強引にカーブを曲がり切れるのだ。いいタイムを稼ぐには,ジャンプ後は前後の体重移動でATVと路面の角度を調節し,うまく着地する必要がある。総じて,一般的なドライブ&レースゲームに比べて車両の操作は非常に楽だという印象を受ける。
アドレナリンがほとばしるエキサイティングなゲーム性を生み出しているのが,滑空中に繰り出すさまざまなトリックだ。コース上の起伏を利用してプリロード(伸び上がるように力を入れてジャンプする)を行って空高く舞い上がり,着地までにカッコいいトリックをガンガン決めればいいだけだ。とはいえ,地面につくまでにトリックを終えて着地体勢が取れないと転倒してしまうので,慣れるまでは猛烈に痛そうな転倒シーンを,イヤというほど見ることになるだろう。いてて。
トリックには基本トリック,中級トリック,エキスパートトリック,そしてスペシャルトリックの4レベルがあり,それぞれにトリックキーが割り当てられている。滑空中にハンドルを操作するスティック入力(基本4方向。スペシャルトリックのみ8方向)と一緒に,割り当てられたキーを押すことでトリックが発動される仕組みだ。実際に自分でもできそうだと思えるものから,現実じゃ絶対に無理! というものまで,実に80種類以上のトリックが用意されているというのだから,すべてを使いこなすのは大変だ。
ATVごとぐるぐる回転をする“Twister” |
ATVの上を歩いてサドルの上でバク宙する“ShaddleFlip” |
ATVの最後部に掴まってぶら下がる“Superhero” |
ATVから手を離して空中で自分だけ回転する“RockStar” |
レース開始時は基本トリックのみが使用可能だが,走りながらトリックを繰り返しているとスリルバーが蓄まり,それによって中級トリック,エキスパートトリック,スペシャルトリックと高レベルのトリックが使用可能になっていく。高レベルのトリックを繰り出すほどスリルバーは増えるが,発動から終了までの時間は長くなるので,決めるポイントは限られてくる。また,スリルバーを消費すればブーストも利用できるので,高レベルのトリックを使いたいなら,ジャンプ前にブーストを使って加速し,大きくジャンプするのが基本だ。
トリックのあとに“トゥイーク”(カッコいいポーズ)を決めることがほとんどだが,滞空時間によって,例えば中級トリック→トゥイーク→基本トリック→間に合えばトゥイーク,といった連続技も可能だ。これがバンバン決まるようになってくると自分で鼻息が荒くなってくるのが分かるほどテンションが上がる。
連続でトリックを決めることが猛烈に気持ちよくて,イチかバチかで無理にトリックをつなげようと大転倒,なんてことは頻繁に起こる。だが,やはりトリックを決めたときの爽快感は格別で,ついついやらかしてしまうのだ。この気持ち,プレイしてみればキミも分かるさ! あ,なれなれしかったですか?
レースゲームビギナーでも十分に楽しめる
個性的でアドレナリン噴出のゲーム
ピュアの醍醐味がトリックにあることは間違いないが,闇雲にトリックを決めたり,どのレースイベントでも同じように走っていたのでは勝てない。
ほとんどのコースには分岐ルートが用意されていて,例えば起伏が緩くて走りやすいルート,ジャンプがメインのルート,タイトなコーナーの続くルートなど,どのルートを走るかによって難度が変わってくる。自分がトップを走っていたのに別のルートを通ったライバルに抜かれたなら,そちらのルートを走ってみるといいだろう。また,ジャンプを使ってショートカットできるところがいくつかあるので,これを利用しない手はない。
フィニッシュラインをトップで通過することを目的とした「レース」では,大きくジャンプしたり,高レベルのトリックを決めて速度を落とすより,できるだけ路面にタイヤが接している時間を長く取りたい。もちろん,ブーストも使いたいのでトリックも必要だが,高レベルのトリックを連発していると簡単に最後尾に落ちてしまうのだ。
短距離の周回コースをグルグルと回る「スプリント」では,コース上にあるジャンプスポットは多くて三か所程度。しかもすぐにコーナーが来てしまうので,ブーストはあまり活用できない。できるだけ速度を落とさずにコーナーを抜けていけるかがキモ。ときにライバル車のインに飛び込んでタイヤを当てながら抜いていくなど,強引さも必要だ。
雰囲気がガラリと変わるのが,トリックを決めまくってスコアを稼ぐ「フリースタイル」。コース上に現れるガソリン,スペシャルトリック,スリルバーフル,スコア倍増という四つのアイコンを拾いながら,できるだけ多くのトリックを決めてスコアを稼ごう。
アイコンが現れる位置は固定されているが,種類はランダムにセットされる。ライバル車もアイコンを拾うため,直前で先に取られてしまうと妙にムカつく。ガソリンがなくなるまでレースを続けられるので,定期的にガソリン補給アイコンを拾いながら,スコアの高いハイレベルのスキルを使いまくればたくさんのスコアを獲得できるはずだ。アイコンによってブーストが使いまくれるし,スペシャルトリックが出しまくれることもあり,個人的に非常に気に入っているモードだ。
ちなみにトリックは連続して決めたほうが高スコアになり,また同じトリックを使うよりも異なるものを使ったほうがスコアが高い。また,スコアが加算されるまでにはちょっと時間があり,加算される前に転倒してしまうと,それまで稼いだスコアがどれだけ多くてもすべて消えてしまうから,このときばかりは悔しくて涙目になれるだろう。
また,パーツを組み合わせて作り上げるオリジナルATVのカスタマイズも勝敗を大きく左右する重要な要素になる。本作では,実在するメーカーのATV用パーツが実に6万5000種類も用意され,それを組み合わせてオリジナルのATVが作れるので,それぞれのレースモードに合わせたATVを用意できる。筆者のようなパーツマニアには嬉しい話だ。もちろん,最初からすべてのパーツが使用できるわけがなく,ワールドツアーを進めていくことでアンロックされていくってのはお約束。
パーツはフレーム,スイングアーム,スプロケット,ブレーキ,バンパーなど24項目に分かれており,パーツの組み合わせによって,Max Speed,Acceleration,Handling,Boost,Tricksの各パラメータが変化する。スピード重視にするのか,バランス良く配分するのか,トリック重視にするのかなど,好きなようにATVの特性を決められるのだ。パーツによってはアップグレードも可能で,さらに特性を強化できたりする。
なお,挙動の特性やスペックを変えたATVは,最大10台までガレージに保管しておけるので,レースモードに絞った専用ATVを用意したり,ベースとなるATVを用意してステージによってエンジンを交換してレースに挑んだりなど,好きずきだ。試行錯誤して扱いやすいATVを組み立て,世界ランキングのトップを目指してほしい。
最初にプレイした瞬間からアドレナリン全開で楽しめるピュア。とんでもないトリックもあったりしてバカゲーな部分もあるが,くだらなさではなくエキサイティングな方向に力が入っているので,笑って楽しめる。
収録されている楽曲は格好いいものばかりで熱くなってくるし,そんなBGMを聞きながらジャンプしてトリックを決めていけばテンションも高まってくる。ほかのゲームでは得られない爽快感や豪快さがあるせいか,ついつい何度もプレイしてしまう筆者だ。
初心者から上級者まで年齢,性別問わず,誰でもピュア(純粋)に楽しめるので多くの人に遊んでほしい一本だ。
- 関連タイトル:
エクストリーム・レーシング ピュア 日本語マニュアル付英語版
- 関連タイトル:
エクストリーム・レーシング -PURE-
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