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12月18日発売,ファン注目の第二次世界大戦ストラテジー「ハーツ オブ アイアンIII【完全日本語版】」のレビューを掲載
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印刷2009/12/17 10:00

レビュー

第二次世界大戦ものストラテジーファンはプレイするしかない

ハーツ オブ アイアンIII【完全日本語版】

Text by 徳岡正肇


 サイバーフロントから明日(12月18日)リリースされる,「ハーツ オブ アイアンIII」(以下HoI3)は,第二次世界大戦を扱った戦略級ストラテジーゲームだ。プレイヤーは国家の指導者となって,1936年から1947年までの世界における自国の采配を一手に任される。

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 ゲームの自由度は前作である「ハーツ オブ アイアンII」(以下HoI2)同様に極めて高く,ウォー・ストラテジーながら,戦争とは無縁の国家経営をすることも可能(戦争をふっかけられる場合この限りではない)だし,逆に積極的には参戦しなかった国家を率いて歴史に介入していくこともできる。
 選択できる国家は「その当時存在した,国家や団体ほぼすべて」。明らかな無理ゲーも楽しめるし,横綱相撲で堂々の勝利を目指すこともできる。
 HoI3は,ゲーム全体としてさまざまな緻密化を行いつつも,より大胆なゲームへと変化している。今回は前作HoI2に比べてどのように変わったかも踏まえつつ,ゲーム全体を見ていくことにしよう。

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ゲームの開始年代は七つから選択できる。基本的には1936年スタートがオススメだが,まずは1939年あたりでユニットの機動に慣れておくのも良い選択だ。もちろん,今回も「あんな国」や「こんな国」でプレイできてしまう。当たり前だが,勝てるかどうかは別問題。歴史には「ゲームバランス」なんかありませんので
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AI委任:困ったらAIに任せてしまおう


ゲームのさまざまな要素を,AIに委任することができる。技術開発などを部分的にコントロールして,平時をプレイしてみるのは良い選択
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 HoI3において最も評価すべきポイントは,この点だろう。
 HoI3ではさまざまなゲーム要素が追加され,HoI2に比べて,細かく考えなくてはならない場面が増えた。しかし,HoI3においてはゲーム要素のほぼあらゆる面をAIに委任してしまうことが可能なので,最初は限られた部分だけをプレイヤーがコントロールし,理解が進むにつれてAIに委任するパートを減らしていくことができる。
 AIは,一部の海戦を除いて「どうしようもなく愚か」という印象はなく,とくに陸戦に関していえばなかなかきっちり戦ってくれる。欧州東部戦線における戦闘を楽しむのであれば,必要十分だ。


検証:本当にゲーム要素は増えたのか?


標準的なプレイ画面。インタフェースはかなり改善されているが,さばくべき情報量もぐっと増加した印象だ
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 HoI3において,ゲームの要素が増えているのは事実だ。しかしながらその追加要素は,ただ単にHoI2という屋台骨に建て増しを行ったのではなく,2002年に発売された「ハーツオブアイアン」(以下,HoI)までも見直したうえでの,ほぼ完全な「改築」がなされている。
 このため,最初はあまりのボリュームにギョッとするが,実はゲームとしての見通しは良くなってさえいる。端的にこれを証明するのがマニュアルで,HoI3のマニュアルは,実はHoI2のものよりも薄い。


 HoI3の根幹を理解するには,三つの要素を把握しておく必要がある――それは,「IC」「指導力」,そして「補給」だ。

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抽象化された工業生産力であるICを分配し,部隊の生産や補充,生活物資の生産などを行う。ここらは前作と同じ。スライダーがちょっと不便なのが残念
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指導力(左上)を配分することで,国家の政治活動の力加減をコントロールできる。「ここは常に軽視しても大丈夫」的な項目がないのが辛い

 ICは国家の工業生産力を示すもので,国内に存在する「工場」(HoI3では用語が変わったが,大筋において工場と考えて構わない)の総計であり,操業されている工場に等しいICが発生する。HoI2とその効果は変わらない。
 このゲームにおけるほぼあらゆる行動にはICが必要となるため,ICは国家の生命線だと言える。一方,工場の操業には資源が必要なため,戦争資源の枯渇はそのまま国家の破綻に直結する。また,ICを発生させるための資源は備蓄可能だが,ICそのものは備蓄できないことにも注意が必要だ。

 指導力は,HoI3で新しく追加された概念である。これは,いってみれば国家の知的な活動能力を数値的に評価したもので,「研究」「諜報」「外交」「将校比率」の4部門に影響を与える――この4部門に対し,国家の“指導力”を分配するのだ。
 配分を一部門に集中させれば,当然その分野における進捗は上昇するが,ほかの分野は弱点として残される。いま何が必要で,将来的に何がどう必要になってくるのか,指導者としての判断が問われるわけだ。

 ちなみに,指導力の分配は「技術」タブで行う。最初は結構探してしまったりするので,あらかじめ知っておくと便利だろう(というか,これって本来は「政治」タブにあるべきなんじゃ……使用頻度からいえば技術かもしれないけど,だったらポップアップとか……まあ,ここらへんはいつものパラドである)。


 補給は,おそらく最も大きな改修が行われた部分だ。

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ユニット個々に対しての補給が管理されるだけでなく,ユニット単位で緊急用の物資も備蓄している。抽象化を捨て,大胆な精密化を行っているわけだ
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補給路を確認することも,当然可能。戦争が進み,部隊が敵国深くに侵攻していくにつれ,補給線管理の重要性は増していく

 HoI3における補給を一言で表せば「すべてはマップ上に実在する」ということだ。部隊への補給は,補給源から部隊の所在地まで実際に運搬されていく。この補給のルートは,なるべくインフラの整った土地を選んで決定される。従って,敵後方のインフラに対する攻撃や,後背地でのパルチザン蜂起は,HoI2とは比較にならないほどの破壊力を発揮するのだ。
 とはいえ,部隊は自分のための一時的な補給物資を持ち運んでおり,包囲即補給切れという事態は発生しない。

 また国家間の貿易も,謎の空間を通って資源がやりとりされるようなことはなく,資源の販売元が販売先に向かって輸送を行う。通商破壊作戦によって敵軍を日干しにするという作戦も,理論上は可能である。

 これら以外にも大きな変化がいくつかあるが,最低限,まずこの三要素を押さえておこう。これらに関する判断は,戦略レベルでの決定に影響を与え得る。


●戦闘:司令部がキーポイント


ベルリンにある総司令部が,麾下の司令部に対してポーランド侵攻を指示。攻撃目標,ワルシャワ。電撃戦を発令。あとは見ているだけで大丈夫
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 ストラテジーゲームの醍醐味の一つが,敵軍との戦闘である。HoI3の戦闘は,とくに陸戦部分において,かなりの完成度を見せている。

 前作に比べ,戦闘にも大きく手が入っている。
 最も特徴的なのは,“司令部”が従来の「部隊の戦闘効率に修正を与える,(なぜか)足の早いユニット」というレベルを大きく超え,指揮下ユニットの活動に大きな影響を与えるようになったことだ。
 プレイヤーは,各司令部に対して攻撃目標を与え,司令部は麾下の部隊を使ってその攻撃目標を攻略すべく機動を行う。司令部の司令部,つまり上級司令部を設置することも可能で,この場合はその上級司令部に対する命令が,それ以下の司令部およびその指揮範囲のユニットに伝達されていく。
 そんなことをしなくたって,これまでどおりすべてのユニットを一つ一つプレイヤーがコントロールすればいいじゃないかと思うかもしれないが,司令部による戦闘修正は非常に大きく,また将軍の効果も司令部を経由しないと発揮されない。

戦闘解決画面は,いつものあっさり画面。プロヴィンスには「幅」があり,このユニットがその幅のうちどれくらいを占めているかが表示されている。
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 また,戦闘に参加できるユニット数に上限ができたことも,重要な変更ポイントだ。
 この上限は,攻撃/防御プロヴィンス(province=州。HoIシリーズのマップの単位)の間の広さによって決定され,これ以上のユニットが一つのプロヴィンスにいたとしても,戦闘には参加できない。これによって,超巨大なユニットタワーが積み上がってにらみ合いを続けるといった状況は意味がなくなったし,AIの改善もあって,そもそもそうした状況が発生しにくくもなっている。

 ちなみに前作に比較してパルチザンの発生頻度は猛烈に高くなっており,補給線の価値を考えるとその効果も絶大だ。占領地には,着実に治安維持部隊を置いておかなければならないだろう。


●生産:「師団」をより細かくカスタマイズ


生産管理画面。デフォルト設定の歩兵師団は,歩兵旅団2個と対戦車旅団1個で師団が形成される
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 何年も続く戦争をプレイする以上,部隊を新設することもあれば,新開発された戦車や航空機を投入することも必要だ。これらは「生産」によって行う。

 HoI3でも,前作と同様に師団単位でユニットを生産するが,その師団の構成を自由にカスタマイズできるようになった。HoI2では師団に旅団を付属させることで,そういったカスタマイズを行っていたが,HoI3では,生産時点で詳細なカスタムが可能だ。
 具体的には,一つ師団は最大四つの旅団で編成される。これらの旅団をどのような構成にするかが,プレイヤーに委ねられているのである。

 例えば,ドイツ軍の歩兵師団には,3個歩兵旅団が含まれるが,ここに対空砲や対戦車砲を1個旅団加えたり,あるいは軽装甲の戦闘車両を1個加えたりなどが可能だし,思い切って歩兵を2個旅団に減らしてしまうこともできる。
 もちろん,絶対に部隊をカスタマイズする必要があるわけではなく,「可能である」という範囲に留まる。デフォルトで「歩兵師団」「自動車化師団」といったテンプレートが用意されているので,それをクリックするだけで4個旅団の組み合わせが自動的に決定されるのだ。
 また,自分でカスタマイズした生産パターンをテンプレートとして記憶させることもできるので,いちいち旅団の組み合わせを指定し直すような必要もない。

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これをカスタマイズして,このように歩兵旅団3個に砲兵旅団1個という形で生産することも可能だ
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もちろん,このようなユニークな師団を作ることもできる。こういったパターンは,テンプレートとして保存可能だ。騎兵師団などを作りたい(作らねばならない)ときには,とても重宝する

 ちなみに,軍隊の機動をAIに委任していると,各部隊の上級司令部から「命令を実行するために必要となるユニットの数」が要求書として提出されるようになる。はっきりいって,それら全部を満たすような生産はゲーム中最大の国アメリカですら不可能ではないかと思われるので,どの要求をどこまで飲むかがプレイヤーの采配に委ねられる――つまり,ベストを尽くそうとも,戦争に負けようものなら,後世の歴史資料において「最高司令官は前線からの切実な要求を無視し,非現実的な生産指示を繰り返した」とか罵倒されること請け合いということだ。なんとも切ない。


●技術:「俺戦車」を設計可能


 実際の歴史においても,戦争中の技術研究の速度には目をみはるものがあった。技術開発で他国に遅れをとれば,それはそのまま戦闘力の差として露呈するからだ。

技術は小項目レベルで研究していく。戦車の場合,エンジンや主砲を研究するだけでは,戦車の信頼性(=耐久力)に問題が出てくるのが分かる。その結果として,「あんなの」とか,「こんなの」とかができちゃうわけですよ。実名は挙げませんが
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 海戦であればレーダー,陸戦であれば無線機など,「人を殺す能力を持たないもの」が実は重要で,戦争そのものの帰趨に影響を与えかねない。例えば,HoI3では資源として「原油」と「燃料」があり,原油はそのままでは軍事利用できない。このため「原油を燃料に精製する技術」を軽視していると,恐ろしいことが起こりかねないので,ビギナーはとくに意識しておこう。

石油精製技術を軽視すると,真綿で首をしめられるような惨劇が待っている。もっとも,重視してもダメなとき(またはダメな国)は,ダメだが
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 HoI3における技術開発は,部分的にHoIに先祖返りしている。HoI2では複数の細かな研究をワンセットで研究するほかなかったが,HoI3ではそれらを単品ごとに研究可能だ。
 非常にひらたくいえば,「我が軍の戦車には,もっと対人火力が必要だ」と思ったら車載機関銃を改良するように指示を出せばいいし,「歩兵にもっと対戦車火力を」と思ったら携行対戦車火器を研究すればいい。これによって,ユニットの特性そのものを細かくコントロールできるようになったのだ。
 一方,産業分野の研究をなおざりにできないのは昔のままで,ここで手を抜くと恐ろしいことになるというのは変わらない。軍事ドクトリンの研究が重要だというのも同様だ。

思想やドクトリンの研究が大切というのも前作,前々作を引き継いでいる。兵器のスペックの差が戦力の差ではないのだ
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 面白いのは,ただ研究をしているだけでは,研究が遅くなることがあることだ。実際に研究の成果を生産したり,実戦投入したりしてみないと,机上の空論でとどまってしまうのである。
 同様に,ただただメカニズムだけを研究しても,理論面での研究が遅れていると手が止まってしまう。このあたりは,あまりにゲーム的な一点突破を防止するルールともいえるが,それが一定のリアリティを提供しているのは素晴らしいと思う。


●外交:世界を三つの軸に分割


 そもそも戦争とは,政治解決におけるエクストリームな手段の一つに過ぎない。外交は,HoI3においても非常に大きな位置を占める。
 HoI3において,世界は「連合」「枢軸」「共産」の三つの陣営に分割される。この点は,HoI2から基本的に変更はない。

外交は「三角形のセンターに戻ろうとしていく国」を,自国陣営に引っ張っていくという形で表現される。これだけでもうミニゲームのレベル。もっとも,プレイヤーが個々の戦線においてミクロなマネジメントをする量は減っているので,煩雑さはあまり感じない
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 一方,これまで「軍事同盟=一蓮托生」という図式でしかありえなかった外交システムは,「陣営に所属はするが軍事同盟までは組まない」という選択が可能になっている。
 世界の外交は3陣営を頂点とした三角形で構築され,その頂点に位置する国(例えば枢軸の頂点はドイツ)以外は,その政治的なスタンスに対応したポジションに配置される。
 各国の外交的ポジションは,「頂点にある国家がどのように運営されているか」「その国家との地理的距離」などをふまえて三角形の上を移動し,これによってその国がどの陣営に属するかが決まる。当然だが複数の陣営に同時に所属することはできないので,こうした外交上の綱引きによって,戦火を交えなくとも他陣営の勢力削減を図ることが可能だ。


●政治:イベントは自分で起こす


 戦争,しかも世界大戦級の総力戦とは,国家が行う最も巨大な事業ともいえる。このため,国内の体制は戦争の進行に大きな影響を与える。

 政治において最も大きな変化は,「法」の存在だろう。これは「ヨーロッパ・ユニバーサリスIII イン・ノミネ」で登場したアイデアをHoI3に持ち込んだもので,国内の政治体制をどうするかという重大な決定事項を筆頭に,ICの有効活用や,徴兵可能人口の決定などを法として制定するわけだ。
 基本的にHoI3は戦争ストラテジーなので,より多くのICやより多くの人口を活用できたほうが有利なのだが,そういった「戦争遂行に都合のよい」法律は,全体主義的な独裁国家でもなければ,なかなか採択できないようになっている。

法律の制定によって,戦争遂行がぐっと有利になるときが多い。場合によっては,参戦するために国内世論をコントロールしなくてはならないことも
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 そこに影響を与えるのが「政党」である。法律によっては,与党政権が特定の政党であることが制定のための必要条件になっているので,可能であればより戦争に向いた国内体制を構築していくべきだ。そして,プレイヤーが思い描く戦争遂行に対して障害になりそうな連中を,必要に応じて排除したくなったりするのもまた人情というものだ。

 ちなみに,敵対的な諜報活動によって,与党政府が攻撃されることもある。これに対し,自国を盛り立てる諜報活動として,「党大会」に代表されるようなものを開いて与党支持率を高めることも重要だ。
 一方,諜報活動の規模は,指導力の配分によって決まる。つまり,敵国のプロパガンダ攻勢に対応するためには,技術研究や外交交渉,あるいは士官の育成に配分できるリソースを削る必要があるということになる。実に地道なボディブローの打ち合いが,HoI3には実装されているのである。


●マップ:爆発的に増えたプロヴィンス


 さて,最後になるが,とりあえずマップにも言及しておこう。HoI3は文字どおり世界全体を戦場とするため,南北の極地を除くと地球のすべてがゲームマップ上に存在する。

マップはとにかく広大になった。最大限に拡大した画面は,よほどの小国をプレイしているのでもない限り,ゲーム中にはまず見る必要がない。マウスホイールで拡大/縮小をシームレスに行うことができる
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 すでに述べたとおり,マップはプロヴィンスと呼ばれる区切りで分割され,このプロヴィンスの数は前作HoI2で2500程度だったのが,HoI3では14000前後に増えた。14000プロヴィンスもあるのだから,さすがに実際の地図そのままだろうと思いきや,「ゲームをうまく動かすため」の改変が割となされていたりもする。地図を改変することにはさまざまな意見があるだろうが,14000プロヴィンスをゲーム的に面白くなるように調整した製作者の執念には,敬意を表したい。

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万人に遊べる代物ではないが
ストラテジーゲーマーならプレイすべき作品


 これ以外にも増えた/変わった要素を列挙すると,掲載中の記事の倍以上になるくらいに続くのだが,とりあえず筆者がプレイして感じた重要なポイントを列記してみた。
 あえて言及してこなかったが,インタフェースは――基本的には――快適だ。ゲームの性質上,ダイアログの小窓がバシバシ開きまくってワケが分からなくなりがちだが,これらは早々に「何を表示するか」を決めてしまうとだいぶ楽になる。第一線級の(それこそ「シビライゼーションIV」のような)インタフェースと比べると苦しいが,確実に進歩はしているといえる。
 オペレーションはフルマウスだが,適度にキーボードショートカットが残されているのも,大変に好ましい。

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HoI3の密かな楽しみの一つ,各国の政治体制の観察。この時期のソビエトには,いまだトロッキストが多い。けしからんですなあ。実にけしからん
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諜報タブで他国の情報を探ることが可能だが,自国内に対するプロパガンダもできる。国によっては,これがとても大事なことがあるので要注意

 HoI3は,とにかく膨大なゲームである。ゲーム要素はとてもよく整理されているが,ある行動を実現するために必要となる前提が割と多いため,そのあたりの関係性が把握できるまでは「なんでこれができないんだ!」的な状況に悩まされることも少なくはないだろう。
 筆者としても,さすがにこの作品を「誰でも気軽に楽しくプレイできる作品」とは言えない。ゲームの全貌を習得するまでには,それなりの覚悟は必要だし,経験だけでなんとかしようとするよりはネット上の情報を集めていったほうが早いというシーンもあるだろう。ゲームだけを遊んでいてなんとかなる作品であるとは,若干,言い難い。
 それでも,HoI3は遊ぶための労力を支払うに値する作品だ。ゲームとして,それこそ師団の編成にまで拘れる作品だが,最も中心となる視線は「国家と国家が戦う」という状況の再現に集約されており,それはまた「人間と人間の集団が戦う」ことでもある。

1936年における日本の政治体制。トップが「大本営」なのは致し方ないところか
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 慣れるまでのさまざまな問題については,ウィンドウモードでのプレイがかなり容易になっているという点で,だいぶ解消される。ネットの集合知を参照しながらプレイできるのはなかなかに快適だ。
 もちろん,それを含めて相当のPCスペックが問われる。Core i7クラスがあれば安心だが,とりあえずPentium 4〜Dあたりでのプレイは,たとえ最低スペックに達していたとしても,お勧めはできない。

 繰り返しになるが,かように要求の多いゲームではあるものの,ストラテジーファンであれば,HoI3は一度はプレイすべき作品だ。Paradox Interactiveの作品が好きだという人は当然として,なるべく多くのストラテジーゲーマーに遊んでほしいタイトルである。

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1936年の日本の外交的な立場。枢軸に非常に近いが,国家の規模にしては割と半端な立ち位置でもある。いろいろな可能性を試してみたい
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ダイアログのポップアップはオプションからフィルタリングできる。もっとも,実際にポップアップした窓を左クリックし,抑制するかどうか決めていったほうが現実的
ユニットの検索や指定などは,右上のパネルから行える。EU3で採用されたパネルだが,それなりに便利だ。陸戦が広範囲で発生し始めると,だんだんわけが分からなくはなるが……
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