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レイキャビクの歓喜。DetonatioN FocusMeが「リーグ・オブ・レジェンド」世界大会の予選を突破するまでの7年間
「予選突破しただけで何をそんなに喜んでいるのだ」と思う人もいるかもしれない。しかし,LoLのWorldsという場は全eスポーツシーンの中でも,人口,歴史,構造を考慮すれば最高峰であり,その登頂は困難を極める。事実,日本代表は2014年から今大会以前の挑戦はすべて予選敗北に終わっていた。それだけに,今回DFMの予選突破には日本国内のみならず,海外メディアの注目※も大いに集まったほどだ。
※海外メディアINVENはDFMの予選突破を「歴史を築いた」と報道(外部リンク)した。
今回は,2015年頃から本格的に公式プロリーグLeague of Legends Japan League(以下,LJL)の観戦を始め,eスポーツライターとしてDFMを含む選手たちに取材したり,会場の様子をレポートした筆者の目線から,LoLという世界屈指のeスポーツシーンの現状,そして,その頂に至るまでのゲーマーたちの努力,困難,そして成長について振り返りたい。
そもそも,LoLとはどんなゲームなのか。簡単に説明すると5対5で戦うチームベースの対戦ゲームである。筋肉ムキムキの戦士とか,遠距離から攻撃できる女スナイパーとか,宇宙からやってきたドラゴン(!)とか,性能も役割も全く異なる157体のチャンピオンから,各プレイヤーは1体選び,相手と攻撃を刺しあいながら,隙を見て倒したり,合流してオブジェクトを破壊して有利になっていく。技術,知識,精神,連携,どれが欠けても上達しないし,だからこそ上手くいくと脳が溶けそうになるくらい楽しい。
10周年を迎えたオンラインゲーム「リーグ・オブ・レジェンド」。全世界で1億人が熱狂するその魅力とは?
めでたく10周年を迎えた「リーグ・オブ・レジェンド」。世界でもトップクラスの人気を誇るタイトルだが,日本での知名度はまだまだ途上だ。こで今回は10周年というこの機会にその魅力とゲームシステムを紹介したい。
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そんなLoLというゲームは,前述のとおり世界ですごく遊ばれている対戦ゲームだ。どれぐらい遊ばれているかといえば,2021年のデータによると1か月に平均して約1億1000万人が遊んでいる(外部リンク)。そう,毎月必ず一度は遊ぶアクティブユーザーでカウントして,1億1000万人だ。日本でも大人気の「Apex Legends」は今年4月に1億プレイヤーを記録したが,これは「月々」ではなく「累計」だ。
ゆえにLoLの競技シーンは,世界のeスポーツの中でも随一の完成度を誇る。競技シーンの歴史の長さでいえば格闘ゲームやFPS,RTSには劣るが,LoLは2011年から同ジャンルの「Dota 2」と並び,公式の世界大会「World Championship」を10年連続で開催している。北米,EU,韓国,中国,太平洋地域のメジャーリージョンに加え,東欧,ベトナム,南米,ブラジル,オセアニア,トルコ,そして日本の合計12地域で,継続的なプロリーグが存在しており,世界大会には各リーグでの優勝チームはもちろん,メジャーリージョンの2位,3位が参戦してくる。
世界のうちアフリカと中東以外のほぼ全ての地域で,興行的に成功するぐらい観戦されていて,選手の活躍が確実に保証される(=鍛えられまくる)プロリーグが存在することの意味は大きい。
それで,何が言いたいのか?
つまり,LoLで勝つことはめちゃくちゃ難しいのだ。
LoLのプロリーグは10年の歴史を持ち,ゲーム自体も12年ほどサービスが行われている。しかし,サービス開始当初,日本にサーバはなかった。それでも一定数のプレイヤーが北米サーバで,回線上の遅延(ラグ)にやきもきしながらプレイしていた。当然,日本語の翻訳などもなく,全文英語で書かれたアイテムやチャンピオンの説明に四苦八苦したものだ。僕は2013年に初めてLoLをプレイしたが,「Black Cleaver」というアイテムの効果説明欄にビッシリと並んだ英語を見て,泡を吹いて倒れるかと思った。
そんな状況の中,2014年の冬,日本にLoLのプロリーグができると聞いた時は誰もが耳を疑った。もちろん当時はeスポーツなんて概念も今ほど広がってはいなかったし,プロゲーマーといえばFPSか格闘ゲームがほとんどだった。そもそも当時日本にはLoLのサーバすらなかったのだ。気が早いにも程がある。しかしLoLが好きで,LoLが強い俺も好き,みたいな血気盛んな若者が揃いも揃って,プロチームを作って挑んでしまった。その中のチームの一つが,DetonatioN FocusMeである。
そうして始まったプロリーグだが,DFMはなんとか勝ち進み,LJL初年度の国内優勝を果たす。そして初の公式世界大会,IWCI 2015に挑み……
負けた。
完膚なきまでに叩きのめされた。
結果はラテンアメリカと並んで最下位。辛うじてもぎ取った1勝もそのラテンアメリカ相手で,他の試合は散々なもの。帰国当初のCeros選手は「現実に打ちのめされた」と述懐している。DFMはそこから練習を重ね,翌2015年もDFMは何とか国内で優勝し,IWCT 2015に挑むものの,やはり惨敗。前回と比べれば好成績を収めたものの,予選敗退という結果は変わらなかった。
LoLの春期世界予選「2015 IWCI」を終えたDetonatioN FMに聞く,世界と戦うためのタクティクス。新体制で挑む来シーズンの狙いとは
2015年4月21日から25日にかけ,トルコのイスタンブールにて「League of Legends」の公式大会「2015 IWCI」が開催された。日本代表のDetonatioN FocusMeの戦績は1勝5敗と振わなかったが,世界を舞台に戦ったことは,彼らの大きな糧となったことだろう。帰国後のチームメンバーに海外大会の印象を聞いてみた。
この結果に対して,当時の日本のLoLコミュニティにおける多く(自分を含めて)は,落胆さえしていなかったと思う。「当たり前だ,自分たちのサーバすら持ってない日本人がLoLで勝てるわけがない」と。
酷い話だが,当時多くの日本のLoLプレイヤーは挑む前から打ちのめされていたのだと思う。だから「落胆」より「嘲笑」の声がずっと多かった。だがそんな国内でさえアウェイな状態でも,Yutapon,Ceros,Kazuを中心とするDFMメンバーたちは,そこから今に続く長い道のりを歩み始めていた。
そして迎えた2016年のLJL。この年には大きな期待が集まっていた。なんと念願かなって日本国内でLoLのサービスが始まったのだから! 当然,日本中でLoLに注目が集まっていたし,新たにLoLを始めた初心者も日本中に増えていた。もちろんLJLへの注目も高まり,常勝チームと噂のDFMにも期待が寄せられる。
しかも当時のDFMはメンバーを大きく見直し,YutaponとCerosを残して,日本最強レベルの実力を持つHikari,さらに韓国から2人助っ人を連れ「いよいよ最強のメンバーだ。これなら世界予選突破も待ったなしだろう」と,誰もがそう思っていた。
負けた。
世界で負けたのではない。
日本ですら優勝できなかった。
当時LJLにはDFMに並ぶ強豪として,Rampage(RPG)というチームが存在した。毎年決勝戦ではDFMとRampageはいい試合を見せていたが,かつてないほど強いメンバーを揃え,負けるはずがないと誰もが確信していたこの年,DFMはRampageに敗れ,世界どころか日本から一歩も出られなかった。
いくら世界で負けてもDFMが国内で負けることは……さすがにないだろうと誰もが思っていたが,この結果は「世界はまだしも,国内で負けるはずがない」と慢心を修正する良い機会とさえ考えるファンもいた。
そして迎えた2017年の決勝戦。この年の会場には幕張メッセが選ばれ,これまで以上の注目を集める中,DFMはJunglerポジションに,新たにStealという韓国のプロ経験もあるプレイヤーを迎え入れた。敗北を味わい,更に戦力を補強し,いよいよもって世界で活躍する。少なくとも僕はそう信じていた。
負けた。
一度ならず二度までも。
日本で負けた。
対戦相手のRampageは,新たにTopレーナーEviを獲得していた。EviはLJLにおいて若く,そして何より,とんでもない努力家だった。2014年からプロとしてのキャリアをスタートさせているものの,Salvage Javelin,7th heavenと渡り歩いたチームでは結果が出せなかった。それでもひたむきに練習を続け,ブログや配信では積極的にノウハウを共有するなど,誰もが憧れるようなカリスマ的プレイヤーとなっていた。元々TussleとDaraという韓国人プレイヤーが続投していた上に,Eviを得たRampageは盤石の布陣だった。
対してDFMは確かにメンバーこそ強力だったが,初期メンバーのCerosとYutaponを除いては入れ替わりが激しく,そのためか連携面で後れを取っていた。特にJunglerというポジションには韓国人を採用していたものの,元々「助っ人外国人」的にやってくる彼らとチームとがうまく馴染めなかったのか,ほとんどは入って半年で辞めてしまっていた。Stealは強力だが加入してまだ半年だったのだ。
だが続く2018年,Stealは残った。チームに残り,共に努力することを選んだ。さらに2017年,DFMは元RPGのEviを獲得し,2018年のLJL Summerシーズンで優勝。その後,元RPGのGaengを獲得して,ついに,Evi,Steal,Ceros,Yutapon,Gaengの体制を確立した。この5人は3年後の現在もDFMの中心的なメンバー※となる。
「リーグ・オブ・レジェンド」の国内リーグ「LJL 2018 Summer」決勝戦レポート。DetonatioN FocusMeが2年5ヶ月ぶりの悲願の優勝を果たす
2018年9月15日,「リーグ・オブ・レジェンド」の国内リーグ「LJL 2018 Summer」決勝戦が行われた。戦ったのはDetonatioN FocusMeとUnsold Stuff Gamingの2チーム。本稿ではその模様をお届けしよう。
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※DFMを長年支えた韓国人選手のviviD(Supportポジション)は,兵役の兼ね合いでDFMから離れることとなったが,「日本代表DFM」の功労者であることに疑いの余地はない。特に2018年の優勝時,Cerosが涙ながらにその貢献を称えるインタビューはコミュニティでも伝説的だ
国内最強のメンバーを揃え,国内では無敗の強さを見せるようになったDFM。2018年も,2019年も,DFMは国内優勝を果たし,今度こそ世界で結果を出せるのではないかと期待された。確かに以前と比べてEU3位のSplyceに勝利するなど,間違いなく実力は向上しており,プレイインノックアウトへの進出を果たしたものの,それでもあと一歩,予選突破には至らなかった。
「リーグ・オブ・レジェンド」の国内リーグ「LJL 2018 Summer」決勝戦レポート。DetonatioN FocusMeが2年5ヶ月ぶりの悲願の優勝を果たす
2018年9月15日,「リーグ・オブ・レジェンド」の国内リーグ「LJL 2018 Summer」決勝戦が行われた。戦ったのはDetonatioN FocusMeとUnsold Stuff Gamingの2チーム。本稿ではその模様をお届けしよう。
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“忘れてきたものを取り戻す”「リーグ・オブ・レジェンド」世界大会Worlds 2018,日本代表DFMのC9戦,進出を決めたKBMとのタイブレーク戦レポート
2018年10月3日,「リーグ・オブ・レジェンド」の世界大会Worlds 2018にて,日本代表のDetonatioN FocusMeが,プレイインノックアウトへの進出を決めた。一瞬の攻防から敗北が決まってしまったC9戦,そして後がない状況から見事勝利を手にしたタイブレークの詳報をお伝えしよう。
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- 編集部:御月亜希
これには2つの理由がある。1つ,DFMは間違いなく強くなっていたが,DFMのライバルチームもまた当然強くなっていた。中韓米欧のメインリージョンはもちろん,その一歩うしろを行くトルコ,ロシア,南米など通称ワイルドカード・リージョンもまた,DFMのように国内のプロリーグで鍛えられ,DFMが強くなれば,彼らも同等かそれ以上強くなっていた。
もう1つ,世界大会のトーナメント方式が大きく変更されたことも逆風となる。もともと世界大会は「ワイルドカード地域限定の世界大会=IWCI」を開催し,その上位2チームが世界大会=World Championship(Worlds)へ挑むシステムだった。しかし,興行的な事情もあってかワイルドカード限定大会は廃止され,2017年からメインリージョンの3位以下を含む「予選(Play-In)」が代わりに開催されることになる。つまり,2017年から,DFMが予選突破するにはワイルドカード地域どころかメインリージョンのチームと戦わざるを得なくなった。
確かに自分たちは成長している。しかし敵はもっと強くなっているし,新たに強豪地域とも戦わなければいけない。さらに2020年では決勝でV3 Esports相手に敗退し,国内優勝を逃す。DFMが強くなるたびに,世界の強豪から国内のライバルまで,皆一様に成長し続けているのだ。予選突破への道のりは決して平易なものではないことをDFMは痛感しただろう。
2021年,このままでは無理だと悟ったのか,DFMは大きな決断を下す。それはLJLで頭角を現しつつあったMidレーナー,Ariaの採用だった。
LoLにおいて,Midはとりわけゲームへの影響度が高いため,一般的にエースポジションとみなされる。そしてDFMのMidレーナーといえば,Cerosだった。DFM創立と共に7年間,チームのエースを務め,様々な奇策で観客を沸かせ,さらに何度もTV出演をするなど,DFMだけでなくLJLをも代表するプレイヤーであるだけに,Aria採用のニュースは衝撃を持って受け止められた(Cerosはサブ選手兼コーチの立場となった)。
AriaはCerosからの大きな期待に応えるかのように,極めて攻撃的なプレイスタイルでDFMの火力を底上げ。2021年春の大会では世界でも優勝候補とされる韓国DWG KIAを相手に,あと一歩まで追い詰めた。2021年夏には国内戦の序盤こそ調子を落としていたが,最終的には決勝戦を3-0という大差で勝利を飾り,DFMは国内優勝と共に世界出場への切符を手にした。
そして迎えたWorldsの舞台。春夏を含めてDFMにとって世界大会は10回目の挑戦だ。
この時点でのDFMは,間違いなくLJL7年の歴史で最強と言える状態だった。長年チームを支えてきたEvi,Steal,Yutapon,Gaengに新戦力Ariaを加え,国内では敵なしの結果を見せた以上,ファンの期待は最高潮だったと言える。だが言い換えれば,そこまで仕上がってなお負けてしまった場合,本当に日本代表が世界で活躍することは金輪際ないかもしれない,そんな不安も抱えた挑戦でもある。
そのような期待と不安入り交じるWorldsの予選(Play-In)。例年通り,予選はA,Bのグループに分けられ,各グループ5チームの総当り戦,1位と2位は本戦出場で,同順の場合はタイブレークとして追加試合という決まりだ。そしてDFMが配属されたのはGroup Bだった。
Group Aも強敵ぞろいとはいえ,Group Bは厳しいグループだ。世界優勝経験のある台湾地域の強豪Beyond Gaming(以下,BYG),ワイルドカード地域で何度も予選を突破したトルコのGalatasaray Esports(以下,GSE)※,同じくワイルドカード地域の強豪ながらDFMを何度も倒したロシアのUnicorns of Love(以下,UoL),そして何より北米の猛者を揃えておきながら,今年はEU最強のMidレーナー・Perkzを約11億円(外部リンク)で採用したCloud 9が待ち構えている。客観的に見れば,DFMは最も低い下馬評になるだろう。
※サッカーチームで知られるガラタサライSKのeスポーツ部門
果たしてDFMはどこまで暴れられるのか。10月5日,DFMが迎えた初戦はUoL。Group Aの中ではまだ勝ち目の見える相手とはいえ,2019年春の世界大会ではほぼ同じメンバーを相手に敗北した,苦い記憶がある。それでもDFMはStealがピックしたアサシン,タロンのプレッシャーから有利を重ね,そのまま奇術師ルブランと二丁拳銃のミス・フォーチュンの火力により圧倒。19-7の大差で勝利した。
だが同日,グループ最強と噂されるCloud 9との試合では,苦しい展開を強いられる。GaengとStealの強気な仕掛けは,Cloud 9エースのPerkzに見事かわされ,その間にEviが守るトップレーンは大きな不利を作られてしまう。最終的には4-13と,新生Cloud 9の圧倒的実力を思い知らされることになった。
もはや狙うは2位,他のどのチームにも負けられないプレッシャーの中,迎えた2日目,10月6日。ワイルドカード最強であり,前日に2連勝したトルコ代表,GSを相手に,ボットレーンを守るYutaponとGaengは,それぞれアフェリオスとスレッシュを選択。この組み合わせはYutaponとGaengが国内で何度も使い,序盤から制覇していったコンビだ。Eviのスマートな援護もあり2人は着々と有利を作り,17-2という圧勝と呼べるほどの勝ちっぷりを見せる。
ロシアはともかく,あの「ガラタサライ」を冠するトルコを相手に,DFMがこれほどの勝利を収めたのは,日本のファンは無論のこと,世界でも驚きをもって迎えられた。「もしかしたら,今年は“ある”のか?」本気でそう思わせた瞬間だった。
そして3日目,10月7日は台湾,BYGとの戦い。今度はStealがリリア,Ariaがアカリと,それぞれ得意とするチャンピオンを使い,序盤から大きなプレッシャーを作り出す。BYGのエースプレイヤー,神童と謳われるDoggoの粘りも凄まじかったものの,StealとAriaの侵攻は一切止まらず,21-4で勝利。ついに予選突破に王手をかける。
ただこの時点でも油断が許されない緊張は続いた。まず1位は無敗のCloud 9でほとんど確定と見られており,残る予選突破枠は1つだけ。しかもその枠は,ノックアウト・ステージと呼ばれる2位〜4位のトーナメントで勝ち残らなければいけない。そこまでもつれ込んだら,序盤では良かった調子がどうなるかもわからなかった。
しかし,ここで一つ,DFMにとって非常に大きな幸運が舞い降りる。
それは最終日(10月8日)にして最後の試合,Cloud 9 vs UoLのことだった。この時点で北米Cloud 9は3勝0敗にてグループトップ,一方UoLは0勝3敗としてグループ最下位。UoLはマイナー地域において日本よりも一つ格上だったにもかかわらず,かつてのDFMのように世界の壁にぶつかっていた。このままUoLはCloud 9によって引導を渡されてしまう,誰もがそう思っていた。
この試合,Cloud 9は二丁拳銃のミス・フォーチュンを選択。これまでの試合で最も結果を残した,今季最強のチャンピオンだ。これに対し,UoLはここまでほとんど使われなかったセナを選択。「最強」を相手に「最弱」は奇策で挑戦する。試合は五分五分だったが,最終的にUoLは,セナを中心とする戦術により押し勝ったのだ。UoLは誰もが予想したCloud 9の勝利を阻止し,初めて黒星をつける。
7年をかけて,ようやく手が届くというところまで来た,予選突破のチャンス。日本中のファンが固唾をのんで見守る中,ずっとDFMのプレイヤーとして戦い続けたYutaponの精神状態はいかほどであったか……恐らく筆舌に尽くしがたい状態だっただろう。
試合は一進一退だった。特にGaengの使うレオナが次々にチャンスを作っていくものの,Cloud 9のJungler,Blaberが使う狂戦士オラフも容赦なくキルを奪っていく。11億円のエース,Perkzはもちろん,他のメンバーも共に長らく戦い続け,深い絆で結ばれた強敵ばかり。初日の敗北した試合に比べれば,DFMは格段に改善できていたものの,Cloud 9の心臓にはまだ遠く届かなかった。
そこでDFMは大きな賭けに出る。マップ下中央に現れる重要オブジェクト,ドラゴンをあえて放置し,敵地深くまで攻め入った。まさに乾坤一擲の大勝負。Cloud 9はドラゴンの前で構築した陣形を崩し,自陣へ進むDFMを逆に包囲しようと試みる。だがDFMは一瞬の隙をついて反攻,後方はAriaのオリアナが分断することで,大きな有利を掴み,そのまま北米の雄,Cloud 9を相手に勝利を掴んだ。
私事で恐縮だが,予選突破を果たした瞬間,全身のすべてが震えた。もはや喜びでさえない,未だかつてなかった感情の渦だった。その渦に心が洗われたかのような瞬間だった。
7年。サッカーやチェスと比べれば,赤ん坊にも等しい歴史かもしれない。格闘ゲームやFPSでももっと長い。それでも,長い,あまりに長い7年だった。
世界でもっとも親しまれ,かつ熱狂を浴びるeスポーツの一つであるLoL。その世界へ,自分たちでサーバさえ持ち得なかった頃からプロリーグを築き,いかに嘲笑を浴び,敗北を重ねても,その度に挑戦を続けたDFM,そしてRampageやV3 Esportsといった日本チームたち。
長年エースとしてチームを代表し,Ariaが加入したことで後援に徹したCerosは,初の予選突破をこう回想する。
「予選突破は嬉しいですが,実は全く驚いてはいません。わたしはこのチームが予選を突破できるだけの実力があると知っていましたから。大切なことはその実力をどう発揮するか,それこそが一番の課題でした」(海外メディアINVENより。外部リンク)
月に1億人がプレイする,世界でもっとも熱く,楽しく,美しくプレイされるゲーム「LoL」。長い時間をかけて築いてきたDFMの強固な信頼関係があったからこそ,世界の舞台で日本代表の輝かしい姿が刻まれたのだろう。
「World Championship 2021」のグループステージは10月11日から行われている。掲載時点でDay2まで終了。DFMは史上最強と名高いFakerを擁するT1,アメリカの強豪100 Thievesと対戦し,2敗と苦戦している。
Day3は2021年10月14日2:00から2018年のプレイインノックアウトで立ちはだかった,中国の強豪Edward Gamingとの試合が行われる。果てしなく高いメジャーの壁にどう挑むのか。DFMの戦いに注目だ。
Mildom「World Championship 2021」配信チャンネル
Twitch「World Championship 2021」配信チャンネル
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