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「45nmに自信あり」。AMD,Shanghaiこと新世代Opteronを発表。2009年第1四半期登場のDenebは「Phenom II」に
また同時に,本製品をベースとするデスクトップPC向けCPUで,開発コードネーム「Deneb」(デネブ)と呼ばれてきた次世代クアッドコア製品の名称が「Phenom II」に決まり,2009年第1四半期に市場投入予定となったことも明らかになっている。
サーバー&ワークステーション向けということで,さすがに4Gamer読者の“守備範囲外”となるQuad-Core Opteron。しかしAMDが「Athlon 64」世代以降,「Opteronを先行させ,そのマイクロアーキテクチャを基に,デスクトップPCやノートPC向けCPUをリリースしていく」戦略を採用している以上,2009年のDeneb=Phenom IIを占ううえで,新製品はたいへん重要な存在だ。
というわけで本稿では,新世代Quad-Core Opteronを概観しつつ,来たるべき次世代Phenomの姿を予想してみることにしよう。なお,「Quad-Core Opteron」という名称は,「Barcelona」(バルセロナ)という開発コードネームで呼ばれていた前世代の製品から変わっていないため,以下便宜的に,前者(=Shanghai)を「45nm Quad-Core Opteron」,後者(=Barcelona)を「65nm Quad-Core Opteron」と表記する。
AMD初の45nmプロセス採用CPUとなる
45nm Quad-Core Opteron
CPUソケットは従来同様,1207ピンの「Socket F」。BIOSのアップデートこそ必要になるものの,従来のOpteron用システムと互換性がある「Drop-in Compatible」(ドロップイン・コンパチブル)仕様となっており,CPUの交換だけで既存のシステムをアップグレードできる。
CPUソケットに変更がないことからも想像できるとおり,従来製品と比べて劇的な変化はない新製品。ただしよく見ると,
- CPU内蔵のメモリコントローラが,従来製品だと1-way(※4Gamer的にはway=ソケット数という理解でかまわない)の製品を除きDDR2-667サポートだったのが,45nm Quad-Core OpteronではDDR2-800へと向上
- IPC(Instructions Per Clock,クロック当たりの性能)引き上げ
- L1/L2/L3という3階層のキャッシュ容量はそのままに,L3キャッシュ容量を従来の2MBから6MBへと増強し,高負荷時の性能を引き上げ
- プロセッサ間やプロセッサとI/O間の通信に利用される高速シリアルインタフェースが,Phenomと同じ「HyperTransport 3.0」にバージョンアップし,帯域幅はHyperTransport 2.0の片方向最大11.2GB/sから同17.6GB/sへと向上
と,性能を左右するスペックは確実に引き上げられており,65nm Quad-Core Opteron比で,新製品のパフォーマンスは同じ動作クロックなら約20%,同じ消費電力なら35%高まっているという。
発表時のラインナップは下記のとおりで,2-wayの「2000」シリーズ5製品,最大8-way対応の「8000」シリーズ4製品の出荷がすでに始まっている。シングルソケットの1-way製品も準備中とのことだが,今回の発表には含まれていない。
■45nm Quad-Core Opteron発表時点のラインナップ
●2000シリーズ- Quad-Core Opteron 2384/2.7GHz
(ACP 75W,1000個時ロット価格989ドル) - Quad-Core Opteron 2382/2.6GHz
(ACP 75W,1000個時ロット価格873ドル) - Quad-Core Opteron 2380/2.5GHz
(ACP 75W,1000個時ロット価格698ドル) - Quad-Core Opteron 2378/2.4GHz
(ACP 75W,1000個時ロット価格523ドル) - Quad-Core Opteron 2376/2.3GHz
(ACP 75W,1000個時ロット価格377ドル)
●8000シリーズ
- Quad-Core Opteron 8384/2.7GHz
(ACP 75W,1000個時ロット価格2149ドル) - Quad-Core Opteron 8382/2.6GHz
(ACP 75W,1000個時ロット価格1865ドル) - Quad-Core Opteron 8380/2.5GHz
(ACP 75W,1000個時ロット価格1514ドル) - Quad-Core Opteron 8378/2.4GHz
(ACP 75W,1000個時ロット価格1165ドル)
なお,AMDは9製品のリリースに合わせて,ACP 55Wの低消費電力版とACP 105Wのハイパフォーマンス版45nm Quad-Core Opteronを,2009年第1四半期にリリースする予定とアナウンスしている。
45nmプロセス技術に
並々ならぬ自信を見せるAMD
マーケティング部長や代表取締役副社長などを歴任し,「日本AMDの顔」としてお馴染みの新社長,吉沢俊介氏 |
65nm Quad-Core Opteronのリリース時にも来日したJohn Fruehe氏(Director of Business Development, Server and Workstation group, AMD) |
説明会では冒頭,日本AMDの吉沢俊介代表取締役社長が登壇したのだが,氏は挨拶の中で「45nmプロセスでは素晴らしいトランジスタができた。来年には新プロセス技術を使った新しい製品を次々とリリースしていけるだろう」と予告。さらに,AMD本社でサーバー&ワークステーション部門のディレクターを務めるJohn Fruehe(ジョン・フリー)氏は,45nmプロセスの歩留まりが現時点で十分に高いレベルにあるとしたうえで,「45nmプロセスには自信がある」と明言する。
45nm Quad-Core Opteronで重要なのは,「液浸リソグラフィ」(Immersion Lithography)という技術を用いて製造される点だ。
液浸リソグラフィというのは,シリコンウェハを超純水に浸した状態で露光させようという技術で,AMDと共同でプロセス技術を開発しているIBMが量産化に向けたテストを行っていたものだ。もちろん,AMDとしては今回が初採用となる。液浸リソグラフィによるLSIの量産自体はAMDが初ではないものの,PC用プロセッサのように,数が必要なLSIの製造で利用されるのは初めてといっていいだろう。
65nm Quad-Core Opteron(とPhenom)の立ち上げにAMDが失敗したことは,記憶している読者も多いことだろう。その反省からか,Fruehe氏は「今回の新製品では慎重に事を運んでおり,AMDが『スケジュールどおり,きっちりと製品を出せる』ことを証明する」と,力強く語っていた。
ちなみにこの液浸リソグラフィだが,「45nmプロセスでは必須」というわけではなく,実際,Intelは現行世代のプロセッサの製造に採用していない。ではなぜAMDは採用したのかというと,「32nmプロセス世代では必要になるので,早い時期に立ち上げることが(※編柱:スムースなプロセス移行を実現するのに)重要」(Fruehe氏)だからだそうだ。
Denebでも有効か?
消費電力を低減する「Smart Fetch」
エコが声高に叫ばれる昨今のPC/IT業界にあって,消費電力の低減は重要なテーマだ。そして,45nm Quad-Core Opteronでは,新たな省電力機能として,「Smart Fetch」技術が導入されている。
Phenom IIに同じ機能が実装されれば,アイドル時の消費電力低減に効果を発揮してくれるはずだ。
なお,事前説明会では実際のところ,サーバー仮想化に関連した新技術やマイグレーションといった分野の説明に多くの時間が割かれたが,少なくとも現時点において,これらはエンドユーザーや,ゲームプレイにはほとんど――まったく,とすらいえるかもしれない――関係ないので,スライドと簡単な紹介文のみ下に示しておく。興味のある人は目を通してほしい。
Phenom IIは意外と早く登場する?
スタート時の動作クロックに期待
Phenom IIのスケジュールについては,一時期,もっと遅れるという情報も流れた。しかし,説明会会場で話を聞いたところ,日本AMDの土居憲太郎氏は,早ければ2008年内にも,何かしらの動きを見せられるという見通しを示しており,現時点において45nmプロセスは相当順調なようである。
なお,Phenom IIは当面,AMD 790FX/GXチップセットおよびATI Radeon HD 4000シリーズとの組み合わせが想定されており,これらは「Dragon」プラットフォームとして訴求されるという。
残るポイントは,Phenom IIの動作クロックだろう。今回の事前説明会における自信あふれる発言の数々と,45nm Quad-Core Opteronの通常モデルがACP 75Wの枠内に収まった点を踏まえるに,Phenom IIの動作クロックはかなり高くなってもおかしくない。以下,筆者の推測に過ぎないことをお断りしつつ書き進めると,ACP 75W=TDP 95Wと仮定したとき,TDP 95Wで2.7GHzなら,TDP 130〜140Wで3.2GHz動作の製品が出てくる可能性は,ゼロではない。
クロック当たりの性能で従来比20%の向上を実現したうえで,現行のPhenomを大きく上回る製品が投入できれば,Phenom IIは面白い存在になってくる。そう遠くない将来になされる見込みの発表を待ちたい。
- 関連タイトル:
Phenom II
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