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オーバークロック耐性と省電力が力強くアピールされた,Phenom IIローンチイベント
今回は,新世代クアッドコアCPU,「Phenom II」発売記念ということもあり,会場には大勢のPCユーザーが“集結”。とくに,日本AMDの“兄貴&“紳士”,土居憲太郎,森本竜英両氏が登壇したセッション,「AMDプラットフォーム・ロードマップアップデートおよびデモ」では,来場者が道路にまで溢れ,一種異様ともいえるほどの熱気に包まれていた。本セッションの内容を中心に,イベントをレポートしてみよう。
なお,イベントではロジクールが新型のゲーマー向け周辺機器,「G13 Advanced Gameboard」を紹介しており,その模様は10日の記事でお伝えしている。興味のある人は併せてチェックしてほしい。
ライブならではのハプニングもありつつ
オーバークロック耐性と省電力が強くアピール
Phenom II――正確には「Phenom II X4 940 Black Edition/3.0GHz」(以下,Phenom II X4 940)――の実力については4Gamerでもレビュー記事でお伝えしている。また,製品概要も2009年1月8日のニュース記事でお伝えしており,セッションの内容も多くが後者とオーバーラップしていたが,いくつか新情報もあった。
例えば新しい省電力機能,「Cool’n’Quiet 3.0」。AMD社内では「Phenom Classic」と呼ばれることがあるという第1世代Phenomと比べて,Phenom IIではPステート(≒動作ステート)の数が増えており,P3ステート動作時の動作クロックは800MHzまで下がるが,そのときのTDP(Thermal Design Power,熱設計消費電力)は49Wになると明らかになっている。
というわけで,会場ではPhenom II X4 940と,「Phenom X4 9950 Black Edition/2.6GHz」(以下,Phenom X4 9950)の消費電力をワットチェッカーで計測するというデモが行われたのだが,なぜか後者のスコアが低く表示されるというハプニングが発生。土居氏が「今のはなかったことに(笑)」とフォロー(?)し,会場が笑いに包まれるという一幕もあった。
もう一つ,Phenom IIのパフォーマンスで強調されたのがオーバークロック耐性の高さである。こちらもデモが行われ,「AMD OverDrive」(以降,AOD)を使って(CPUの動作電圧を決定する情報である)VIDを0.1V高めただけで,用意されたPhenom II X4 940搭載の空冷システムが,あっさりと3.8GHzで動作する様子が示されている。
さて,土居氏は最後に恒例の「ロードマップ」も披露。イベントで示されたロードマップは2008年の時点でAMDが公開したものと変わっていなかったが,45nmプロセスで製造される新製品としては,L3キャッシュを省略したクアッドコア製品「Propus」(開発コードネーム)や,3コア版の「Phenom II X3」が用意されるとのことだ。
森本氏は本邦初公開のOpenCLデモを披露
「TotalMedia Theatre」に関する新情報も
- Avivo Video Converterの使い方
〜本アプリケーションのUIにはクセがあるため,「動かない」という問い合わせが多いのだそうだ - (GPUを用いた汎用コンピューティングのためのAPIである)OpenCLベースの流体デモ
を実演。本邦初公開となる後者は,現状ではCPUのみの対応となるが,「OpenCLは,コンピュートデバイスが何であっても関係なく動作する」と,森本氏は強調していた。
問い合わせが多いというAvivo Video Converterの使い方を,森本氏がステップバイステップで説明。パフォーマンスをアピールしつつ,「無料なのでぜひ使ってほしい」と呼びかける |
OpenCLベースで各種シミュレーションを行えるソフトウェア。ビーカー状の物体を木の板で上下2分割し,上に水,下にニトロを置き,ニトロを爆発させる……というデモが行われた |
また,「従来は,『動作する』というレベルだったが(笑),UIが一新されて使いやすくなっている」(森本氏)という,AMDオリジナルのメディアビューワ「AMD Fusion Media Explorer 2.0」が,2009年春に日本語版で登場すると予告されている。
AMD Fusion Media Explorerの新バージョン2.0もデモが行われた。「UIが一新され使いやすくなっている」(森本氏) |
AMD Fusion Media Explorerから,写真を表示させるデモの様子。バイクに乗っているのは森本氏自身だそうだ |
なお,ArcSoftの日本法人であるアークソフトの堀 肇氏に,セッション終了後に話を聞いたところ,OpenCLのSDKがリリースされれば,SimHDはすぐにでもOpenCLへ対応させる予定があるとのこと。また,2009年中には,「HD解像度へアップスケールしたビデオを,トランスコードして『HDビデオ』として保存するソフトウェア」を,何らかの形でリリースできる見通しであると,今後の展開を明らかにしていた。まだ最終決定ではないが,TMPGEncなど,既存のトランスコードソフトに対応したプラグインの形で提供されることになるようだ。
熱気に包まれたAMDイベント
Phenom IIへの期待度は高い
2008年,ATI Radeonを大きく飛躍させたAMDだが,同社の将来を占ううえで,やはりCPUは欠かせない。久しぶりに競合と戦える製品が登場し,ロードマップもかなりの具体性を帯びるあたりからしても,今年のAMDには明るい話題が多そうだ。
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Phenom II
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