インタビュー
「FINAL FANTASY XIV」はどうなるのか? 開発チームの刷新から半年が経った今,これからの展開をプロデューサーとバトルプランナーに聞いてみた
本作は,2010年12月に「期待されている水準に達していない」として開発チームが刷新され,新たな体制で制作が進められている。その結果,アップデートが着々と実施されていくだけでなく,プロデューサーレターによるアップデート予定の公開や,フォーラムの開設など,かなりオープンな運営を行うようになってきたという印象だ。
しかしながら,未だに課金開始の時期や,発売が無期延期となったPlayStation 3版の進捗は見えてこない。
そこで,前回のインタビューから半年が経過したこのタイミングで,再びインタビューを行ってみた。今回は,プロデューサー兼ディレクターの吉田直樹氏,リードバトルプランナーの松井聡彦氏,バトルプランナーの権代光俊氏に「FFXIVのこれまでとこれから」を語ってもらったので,さっそくお伝えしよう。
「FINAL FANTASY XIV」The Lodestone
「FINAL FANTASY XIV」公式サイト
本日はよろしくお願いします。前回のインタビューからおよそ半年が経ちましたが,その間に何度かアップデートが実施されましたよね。今回は,その半年の間に行われたこと,そしてこれからのことをお聞きできればと思います。
吉田直樹氏(以下,吉田氏):
分かりました。
4Gamer:
まず最初にお聞きしたいのが,これまでに行われたUIの改善についてです。UIの修正が行われた結果,私も実際にプレイして遊びやすくなったと感じているのですが,プレイヤーからはどういった意見や感想がありましたか?
吉田氏:
UIと一言でいっても,すごく広いですね……うーん,意見の中で一番興味深かったのが,モンスターのレベル表現だったりとか,アクティブ/非アクティブのアイコン表示をしたときのものですね。
4Gamer:
レベルはともかく,アクティブかどうかはアイコンが表示されるようになって,かなり分かりやすくなりましたよね。その一方で,そこまで表示されたら簡単すぎるだろうという意見もあったようですが。
吉田氏:
最初はたしかにそう言われていましたが,でも落ち着いてくると,やっぱりいいよねという意見も増えてきました。そういうのを見ると,プレイヤーの世代によってゲームに求める情報は変わっていくものだよなと,あらためて思いましたね。
4Gamer:
と言いますと?
吉田氏:
僕ってすごく昔かたぎのゲーマーなんですけど,僕から見ると今のゲームをプレイしている,とくに若い世代って,すごく情報が整理された中で安心して遊んでいる人が多いと思っています。
ですので,安心して遊べるっていうところは1つのポイントだろうと思っています。そのへんは,アイコン表示の話もそうですが,新旧ゲーマーの入り乱れたフォーラムでの発言があるので,すごく興味深く見ていますね。
4Gamer:
なるほど。一見ゲームが簡単になってしまいそうな表示でも,それに安心感を覚える層が,いまは多いと考えているのですね。
吉田氏:
ええ,これからPS3でFFXIVを出すと,また新しい世代のプレイヤー,とくにMMORPGを経験していないプレイヤーが入ってきます。例えば,この半年でやってきたUIの改修というのは,PS3版が始まったときに,当たり前に必要だと思っている表示内容が多いです。
だから,今のプレイヤーの方から見れば,当然反対意見があるのは分かっているのですが,僕としては,最初から情報を出せるものは出します。その中でどうやってプレイするのか,どうやってバトルするのかを考えてくださいという主張で,新しい仕様を入れています。そして,それはこれからもまだまだやろうと思っています。
松井聡彦氏(以下,松井氏):
本当にいっぱいあるよね。
4Gamer:
公開されているプロデューサーレターで,いろいろと表になっているので,こういうのも入るんだと興味深く見ています。
吉田氏:
UIについては,究極をいえばターゲットのカスタマイズまでいかないとダメだと思っています。
4Gamer:
具体的にはどういったものですか?
吉田氏:
以前,ターゲット方式として,サークルの仕組みを入れましたが,サークル自体のくくりを自分でカスタマイズできるようにするべきだろうと思っているんですよ。
例えば,自分好みに「絶対にモンスター以外はターゲットしないサークル」を作れるところまでいくべきですよね。ただコスト面の問題があったり,サーバーの改修を待たないとできなかったりはするので,順を追って,というのが現状ですね。今は本当に最低限のところに,やっと到達できたかなという感じです。
あとサービスイン後には,とにかくレスポンスが悪い,情報が取りたいときに取れない,表示されないといった点に対して多くのご意見をいただきました。今はそのあたりの改修がやっと落ち着いてきたので,今度はターゲット周りや操作系,バトル部分に対するプレイヤーさんからのご意見が多く届くようになりました。
4Gamer:
操作系の改善としては,どういったものに手を付けているんですか?
権代氏:
大きいのはマウス/キーボード操作の改善ですね。そもそもFFXIVは,PCとPS3でのサービスを考えて,コントローラ「でも」遊べるように作られていなければならなかったのですが,実際にはコントローラを優先したデザインになってしまっています。敵をターゲットするときに“決定ボタン”を2回押すという操作があって,それがなぜかマウスでも2回押さなきゃいけないのは,やっぱり変ですよね……。
4Gamer:
たしかに,あれはマウスでプレイしたい人からは,かなり不評ですからね。仕方なくコントローラを使ってプレイしている人もいるぐらいです。
権代氏:
そこは本当に申し訳ないと思っており,今はそういうところを順序立てて,皆川(※)に直してもらってます。バトルをこう直していくので,UIもこういう感じでお願いしますというのを,こちらからオーダーする形で進めています。
※皆川裕史氏,リードUIアーティスト兼リードWebコンテンツアーティストを担当
4Gamer:
PCでサービスする以上は,マウス/キーボードとコントローラの操作系の分離は絶対に必要ですよね。「ファイナルファンタジーXI」(以下,FFXI)の場合は,PS2版が先にあってその後PC版が出たじゃないですか。FFXIVは,展開がそれとは逆になっているので,操作の違和感が顕著になっていると思うんですよ。どうしてPCのゲームなのにこんな操作なんだ,と。
吉田氏:
ええ,そこは次の大きな命題ですし,取り掛かり始めている部分です。
4Gamer:
あとは,これまで行われた大きな変更というと,パーティの人数変更もありましたよね。
吉田氏:
8人のフルパーティと4人のライトパーティですね。
4Gamer:
あれで戦闘のバランスがわりと変わったのではと思いますが,それについてのプレイヤーからの反応はどうでしたか?
松井氏:
一番ダイレクトに出てきた反応は,ビヘストの最大人数も8人になってしまったので,リンクシェルの人数が十数人でしたという人達が,今までのように一緒に遊べなくなってしまったということですね。そこは本当に申し訳なく思います。
ただ,この変更によって,いろいろなコンテンツのバランス調整がやりやすくなり,理不尽なバトルを作らないで済むので,そういうところはプラスになっているのではないかなあと。
4Gamer:
15人パーティともなれば,調整するにしても幅が広すぎますよね。
そうですね。15人でも手ごたえがあって,しかも2〜3人でも遊べるように調整できるものでしょうか?
吉田氏:
できないですよね。アーマリーでクラスの制限がないのに,ソロから15人までの人数で遊べる仕様だと,バランサーの観点で見て完全にお手上げになるなと。
4Gamer:
ちなみに,15人から4人/8人への変更というのは,どういった理由でその人数にしたんですか?
吉田氏:
4と8って数字は,僕ら3人でかなり議論を重ねて決めた数字なんですけど,コミュニティサイズを考えたらこのぐらいの人数だろうと。これは昔からですけど,MMORPGでパーティを組むコストって,すごく大きいじゃないですか。
4Gamer:
時間的な余裕が必要になりますし,そもそも募集のために呼びかけること自体が面倒みたいな感覚はありますよね。
吉田氏:
ええ,それで今のMMORPGプレイヤーって,あまり他人を無理に誘わなくてもパーティが組めるように,リアルフレンドなんかと遊ぶようになってきてると思うんです。つまり,プレイしてるコミュニティのサイズが小さくなっている。
4Gamer:
リアルフレンドとまでいかなくても,ネット上で仲のいい人と一緒にゲームを始めて,その小さなコミュニティのまま遊び続ける人は多い気がします。
吉田氏:
そうなりますよね。だからもっと気軽にパーティを組んで,ガチガチの役割分担をしなくても遊べるコンテンツを用意する一方で,今週末は,一番難度の高いコンテンツをこの組み合わせでがっちり攻略するんだというコンテンツも用意したいんです。ゲーム以外にもエンターテインメントが多く,忙しい現世代のプレイヤーは,週末と平日だと全然プレイスタイルが違うはずです。
じゃあ,それを入れていくにあたって,15人でどうやってバランスを取っていこうかと思ったとき,これは無理だろうなと判断しました。
4Gamer:
15人という枠で遊んでいる人から反対意見が出るのは分かっていても,今後のためにもやらざるを得なかったと。
吉田氏:
ええ,ビヘストの人数が減ったっていうのと,リンクシェルが8人以上いるのに1つのパーティになれないっていうのは,副作用として絶対出ることなので,そこは本当にごめんなさい。
ただ,この変更の評価については,まだ保留ということにしてください。これは,今後バトルの改修をしていくうえで,最初に必要なものだったことは間違いないので,良し悪しの答えは今後分かるはずです。
4Gamer:
たしかに,これでもっとバトルが面白くなれば,最終的には良かったという評価になると思います。
評価が分かれる変更という意味では,モンスターのサイズやエフェクトのアップデートもありましたよね。「先に手を入れるべき部分があるのではないか」という声もちらほらありましたけど……。
吉田氏:
あれは僕も「でかくすりゃ良いってもんじゃねえよ!」って反応がくるだろうなあ,と思いながらやったんですよ(笑)。プレイしていただいている方にとっては,ただ大きくなっただけですからね。
ですが,これはUIと同じで,新しく入ってくる人達にとって,普通にこうあるべきものだろうと考えたんです。やっぱりモンスターには迫力があってほしいじゃないですか。
4Gamer:
小さいとちょっと弱そうですしね。
吉田氏:
弱いものいじめをしてるような気分になっちゃいますよね。先にほかのところを直してほしいという意見は分かるのですが,単純に今できることを先にやったんです。スケール変更自体はすぐにできますから。もちろん,それでモンスター周りの調整を終わらせるつもりはありません。
以前,背丈の半分ほどだったドードー(左)が,現在(右)は同じくらい大きさに | |
カッパーゴブランも大きくなって……ちょっと(?)不気味さが増したような |
エフェクトもやや派手なものに変更された |
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