インタビュー
「FINAL FANTASY XIV」はどうなるのか? 開発チームの刷新から半年が経った今,これからの展開をプロデューサーとバトルプランナーに聞いてみた
まずはバトルの基本骨子を作りあげる
戦闘周りのアップデート予定をお話しいただきましたが,そういった改修によって,そもそも戦闘はどう変わっていくのですか? かなり大規模なことをやっている,というのは分かるのですが,何を目指しているのかお聞きしたいです。
権代氏:
個人的に,いま自分達が直してる部分というのは,スタンダードなMMOのルールを作り直しているのだと思っています。FFXIVの場合,最初に道を間違えたというか……。
吉田氏:
ちょっと気負いすぎたところがあるのかなと。
松井氏:
いろんなことを想定しすぎてるんですよ。すごくたくさんの人でデータを作って,たくさんの要素がこれから追加されるってことを考えすぎた結果,ひとつひとつの要素をケアしきれていないんです。
ですので,どのようなバトルになるんですかって言われたら,最初なのでまずはシンプルで分かりやすいバトルになるのではないでしょうか。
4Gamer:
オートアタックが入るということで,FFXIのような戦闘になるのではないかと思っている人もいるようですが,FFXIとはまた違うんですか?
松井氏:
僕と権代の名前が出ていれば,そういう懸念もあるだろうとは思いますが,FFXIにしたいわけではないです。僕がそういうゲームが好きだという点で,FFXIと共通性が出てくる部分はあるかもしれないですけど,FFXIとは関係なく,まずは「これが普通でしょ」というところを目指していますね。
権代氏:
オートアタックって,ほかのMMORPGを見ていただければ分かりますけど,あって当たり前ですよね。そういう部分はよくも悪くもスタンダードだと思っているので,まずそこに近付けて,その上にさらにFFXIVらしさを乗せてくつもりなんです。
例えば,WoWにしても,まずベースがあったうえでWoWらしいスキルツリーのシステムがありますし,新しく「Rift」が出てきたら,そこにRiftらしさが上乗せされていますよね。
4Gamer:
つまりこれまであったFFXIに近付けるというよりも,MMORPGの骨格の部分をちゃんと作り直しているという段階にあるんですね。
吉田氏:
そうです。僕はMMORPGというのは結局,基本的には2派のスタンダードなタイプしか残っていないと思うんですよ。ひとつはいわゆるハック&スラッシュに近いクリックゲー。Shift押しながらクリック,足を止めてクリック,敵をずっとクリックして,手先のアクションに寄っているタイプ。わかりやすく,連続した爽快感を得やすい。
もうひとつは,いわゆる第一世代,EQで発明された,ヘイトコントロールされたモンスターを,クラウドでさらにコントロールして,各個撃破していくタイプ。
4Gamer:
ああ,たしかにMMORPGの根幹設計としては,その2タイプがスタンダードになっていますね。最近はアクションRPGっぽさを取り入れた結果,ちょっと例外っぽいタイトルもちらほら出てきましたけど。
吉田氏:
FFXIVの場合,そのどちらのタイプかを考えたら,ハック&スラッシュは合わないよなあ,と。FFXIVのグラフィックス水準とモーションフレーム,そしてあの等身で,人間らしくない動きをするFFはちょっと想像がつかない。そう考えると,後者のタイプのスタンダードをまずしっかり作ったうえで,FFXIVらしさを乗せていこうかと思っています。
FFXIでもなく,旧FFXIVでもなく,WoWでもなく,EQでもない。何もかもが斬新なバトルって,言葉では響きがいいかもしれませんが,誰にも理解できない難解なものになって,パーティプレイもおぼつかないものになっちゃうだろうな,と。僕はコツコツタイプのゲームデザイナーであって,天才ではないので無理ですね。
松井氏:
○○ではないもの,という発想でものは作れないんですよね。
吉田氏:
じゃあ“FFXIVらしさ”ってなんだと言われたら,ソロでも,ライトパーティでも,フルパーティでも,クラスでも,平日や週末の違い,コミュニティサイズ,その日のパーティ状況でいろいろコンテンツを選んで遊んでください。ジョブシステムも入れるので,腕の良い仲間と一緒に,ジョブもお楽しみに。というところになるんじゃないでしょうか。
権代氏:
今は詳しいことは言えませんが,ウェポンスキルも位置取りを考えて1人で繋げていく,コンボのようなものを準備しています。こういった,いくつかのものが組み合わさることで,FFXIVらしいバトルを作りあげていこうと考えています。
4Gamer:
プレイ人数の多様性と,クラスやジョブによるキャラクターの育成,役割の幅みたいなものが,FFXIVの魅力になっていきそうですね。
お話を聞いていてふと思ったのですが,MMORPGにおける戦闘の面白さというのは,どういうところにあると思いますか?
まずは成長の場ですよね。敵を倒すことによって,強くなっていく。それと同時に,強くなったってことを体感できる,成長を確認する場でもあります。MMORPGのバトルは,あまりにもたくさん繰り返すことになるので,ひとつひとつの重みはちょっと考えないといけないのかなと思うんですよ。すべてのバトルで,いろんなことを考えないといけないようなものであるべきではないし,かといってダラーっと続いても面白くない。メリハリというところが一番大事なのかなと思います。
4Gamer:
そうですね,面白さと作業感の差って,どこにあるのだろうと考えてしまいますね。
松井氏:
そこは,はっきりと答えが出せているわけではなくて,自問自答しながら作っていますね,それは面白いのかと。
権代氏:
私は,バトルは自分がうまくできたと思えるように作るのが大事だなと思っています。それが役割をうまく担えたのか,今日のバトルで活躍できたのか,誰かを助けてあげられたのか,1人で遊んでいて死にそうだったのを回避したのか,人によって違うと思いますけど,そういった感覚を得られることが大事かなと。
4Gamer:
バトルの満足感,みたいなものでしょうか。
権代氏:
そうかもしれません。でもそれは松井がいったように,すべての戦闘である必要はないと思います。MMORPGである以上,戦闘回数は大変なことになりますからね。本当に重要な戦闘なんかで,3回チャレンジして倒せた! というような体験をさせてあげられる場を提供するべきだと思っています。
吉田氏:
3人とも共通だなと思うのは,全部が全部,毎回毎回,厳しいバトルを要求するものじゃないってところですね。TRPGからそうだと思いますけど,ゲームのバトルって最後は将棋だと思うんですよ。与えられた情報があって,自分の戦力があって,勝てるかどうかの比較を自分の頭の中で先にしておいて,最善手を考えて実行する。将棋と違うのは,最後に確率という名のダイスを振って,あとは神のみぞ知る。それはMMOという遊びに置き換わっても別に何も変わらないし,今後も不変だろうと思います。
4Gamer:
そうですね。基本的にRPGのバトルの展開は,そういうものだと思います。
吉田氏:
ただMMORPGの場合は,パーティ内のキャラクターを一人で全部操作するわけじゃない,という不確定要素が入ってきますよね。だから,しっかり共通化されたルールがあって,各自自分がやらなければならない役割を把握する。盤面上で自分は飛車なのか角なのかを理解したうえで,最善手をみんなが打った瞬間が気持ちいいというのが,MMORPGのバトルだと思っています。だからこそ,バトルルールはシンプルなほうが共通認識を持ちやすいし,役割はもっと明確化されていたほうがいいんです。
例えば,FFも「ドラゴンクエスト」も,僕自身がプレイをするとき,もっとも気持のよいポイントというのがあります。
4Gamer:
うーん,接戦の末に撃破するとかですか?
それはそれで楽しいですが,僕は一度も攻撃を食らわずに完封したときが一番うれしい。一番最初に行動するのは誰か,それがモンスターの場合「ノーダメージ完封」は難しい。だから行動順を左右するパラメータは,アイテムで底上げしておく。行動順の先制が取れるなら,スリプルやラリホーの出番になる。次に行動の遅いモンスターは,最大ダメージで倒してしまって……,と詰めていきます。だから全部それを事前に考えて,コマンドを打ったあと,見てますよね。そして,全部そのとおりに決まったら1〜2ターンで終わるんですよ。これって,「Wizardry」だってそうだし,すべての根本にある要素かな,と。HP回復の手間もないから,効率もいいし(笑)
4Gamer:
たしかに,すべての戦略がキマって「よし!」という気持ちよさはありますね。
吉田氏:
結局,ヘイトや敵視のあるタイプのMMORPGだって基本は同じなんです。クラウドコントローラーがいて,コントロールして完封していくわけですから。あとは見せ方,役割の持たせ方,成長の仕方,それとメリハリの気持ちよさがあれば,面白いバトルになると思うんですよ。
権代氏:
ちゃんと戦略を練れるバトルにするのが大事なんですよね。
4Gamer:
なるほど。そういった考えのうえで作られるFFXIVのバトルが,どんなものに変わっていくのかを考えると,今後が楽しみになります。
吉田氏:
僕ら自身も楽しみつつ,変えていこうと思います。
課金の開始時期は考えていない
今はとにかくFFXIVを立て直す
今後追加されるもので,バトル以外のものにはどういったものがあるのでしょう? クラフター,ギャザラー周りがどうなるのかという部分も,気になるところなのですが。
吉田氏:
今回はバトル関連を中心にお話しさせていただきましたが,クラフターやギャザラーについても並行して大きな仕組みを作ってます。
松井氏:
まだちょっと言えないですけどね……。まずはバトルを改修しないことには進まないと思うんですよ。バトルが面白くなって,マーケットができれば,クラフターやギャザラーのためにもなります。装備品に凝る必要がなければ,装備は売れませんから。だからまずはバトルに手を入れますが,クラフターやギャザラー周りもちゃんと動いているので,楽しみにしていてください。
4Gamer:
分かりました。今後のアップデート予定の中では,特設ページが開設された「グランドカンパニー」も注目されてますよね。特設ページを読むと,まさにストーリーが動き出すといった雰囲気ですが。
吉田氏:
グランドカンパニーは,FFXIVの世界そのものといっても過言ではないです。リムサ・ロミンサ,グリダニア,ウルダハの3国に,冒険者がどう関わって,それがどう帝国と交わって,メインストーリーがどう補完されていって,さらにそれぞれ3国の思惑や首領達がどう絡んでくるのか。そして,FFシリーズに(名前が)登場しているキャラクター達がどう関わってくるのか。実は1.18にも大きな話が1個入っているので,こちらも楽しみにしていただけると。
4Gamer:
1.18でもう入ってくるんですか。FFといえばあのキャラっていうのは,いくつか思いつきますけど,どうなるんだろう。
吉田氏:
誰でも思いつきそうなやつが,そろそろゲームに登場しますよ。今後のFFXIVの根幹に関わる重要なセリフもありますので,お楽しみに!
4Gamer:
誰が出てきて,どのように展開していくのか楽しみです。開発のほう頑張ってください(笑)。
吉田氏:
頑張ります(笑)。なんにしても,まずは根本からなんですよ。全部なんでもやると,それこそ何にもリリースできなくなってしまうので。計画はしていても,僕のスケジュール表にまだのせられていないので,お答えできない要素もまだまだあるんです。もちろん,皆さんがご想像していただいている要素は,ちゃんと検討,仕様化を進めています。
4Gamer:
そうですね,以前発表されたコテージや船,プロデューサーレターに入ったチョコボとか,気になる点はいくらでもありますよ。
吉田氏:
今,FFXIVは大きな佳境に入り始めたところで,夏の暑さが終わるころまで,規模の大きなパッチが続くことになります。以降,想定どおりに進んでいけば,もっと先のお話もしますので,そのときをもう少々お待ち下さい。
4Gamer:
では,そのあたりは一端置いておくとして……最後に,サービス面として課金開始はいつごろを予定しているのかについて,お聞かせください。
吉田氏:
課金に関しては,時期をまったく決めておりません。
4Gamer:
それも意外ですね。ビジネス的にいつまでに,みたいなものはあるのでは?
ビジネスの観点で言えば,今すぐにでも課金させていただきたいのは正直なところです。ただし,まずは僕らが最低限の自信,最低限の状態で,「これでプレイしていただけますか?」と言えるところまで持っていかないと,やはり課金どころじゃないと思っています。バトルの改修を進めて,評判を見て,あとはゲームの導入部分もてこ入れして,新しく入ってくるプレイヤーさんも楽しめるようにする。そこまで果たせたあとで初めて課金について考えるので,時期で決めてはいないです。
4Gamer:
とにかく今はゲームをよくすることだけを考えていると。では,PS3版の進捗はどうでしょう?
吉田氏:
順調に進んではいますよ。いつ発売とはまだ言えませんが。
4Gamer:
なんにせよ,PC版が形になってから,ということになるのでしょうね。
吉田氏:
そうですね。僕は,どっちつかずが一番だめだと思っている人間なので,まずはPC版のFFXIVを立て直したうえで,同時にPS3版での完成度を徹底的に上げようと思っています。非常に難しいことにチャレンジしていますが,FFXIVはある意味,一度プレイヤーの皆さんを裏切る形になってしまったので,もう二度と同じことはできない。そう思って,チーム一丸となって進めていますので,ぜひ期待してお待ちいただけたらと思います。
権代氏:
今後の動きとしては,パッチ1.18,パッチ1.19,その後という形で,分割してのリリースになってしまうんですけど,こちらとしてはどうしても一度に出すことはできないので,「1.18でこれだけなのかよ」という判断もなるべくしないでもらいたいなあと。僕らがいう言葉ではないですけど,思ったよりは順調に進んでいるので,もう少々お待ち下さい。
4Gamer:
分かりました。本日はありがとうございました。
開発チームの刷新後,吉田氏に最初のインタビューを行ってから半年が経過した。前回のインタビューでは,まずは基本部分をしっかり作っていくと吉田氏は話していたが,今回のインタビューを聞く限り,その成果がようやく見えてきたようだ。
今回インタビューを行った3人からは,「FFXIVを作り直してみせる」という強い意志と熱意を感じられた。ローンチ時点の本作をプレイして,本音をいってしまえば期待外れだったという印象を受けた人も少なくはないと思うが,実際に話を聞いた筆者としては,本当に立て直してくれるのではないかと期待したくなる。
今後の展開としては,まずはパッチ1.18を皮切りにバトルの改修が始まり,MMORPGの骨子を完成させたあと,FFXIVならではの面白さというものが追加されていくはずだ。プロデューサーレターを見ていると,あれはどうなるんだ,これはいつ実装されるんだなどと興味が尽きないが,ともかく次のアップデートを楽しみに待ちたい。
「FINAL FANTASY XIV」The Lodestone
「FINAL FANTASY XIV」公式サイト
(2011年5月27日収録――)
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