インタビュー
「ファイナルファンタジーXIV: 新生エオルゼア」プロデューサー兼ディレクターの吉田直樹氏インタビュー。描くものすべてに意味を持たせ,より分かりやすいMMORPGに
「最高のストーリー」とは自分達へのメッセージ
4Gamer:
新生FFXIVのストーリー展開はどうなるのでしょうか。
吉田氏:
新生FFXIVではストーリーの大きな軸が3つあり,一つはガレマール帝国との戦いです。これは侵略者との戦いになりますので,長く描いていくことになります。
4Gamer:
現行版でも少しありますね。
吉田氏:
ええ,もちろん第七霊災が終わったあとの物語として展開していきます。そしてもう一つは,蛮神/召喚獣とのストーリーです。これまでは神殺しをプレイヤー達が止めていたという構図ですが,ハイデリンを守るために,今度はプレイヤー達が神殺しを実行しなければならないというジレンマを描きます。
そして3軸目は,第七霊災とは果たしてなんだったのか,といったことが分かるストーリーです。
4Gamer:
かなり複雑なイメージですね。
吉田氏:
いまお話した内容は,現行バージョンにもチラチラとは含まれていますが,とにかく今はストーリーが分かりづらいんです。ですので,分かりやすく説明してくれるNPCを用意するといった工夫はきっちりとやっていきます。新生FFXIVにいたる経緯の説明や,あのNPCはどうなったかといった謎の答えは,コンテンツの追加とともに分かるようにしていきますよ。
4Gamer:
プレイヤーは新コンテンツを遊ぶと,それまで謎だったことがだんだんと分かってくると。
吉田氏:
そうなります。今説明したところが次のエクスパンションまでのストーリーイメージですね。あまりダラダラと引っ張らず,いったん区切りを迎えさせて,真相が全部分かるようにします。新規で入られる方は第七霊災という大災厄を知るため,現行の方は霊災の体験者として残った謎を追う……そんな風に思っていただけたら。
4Gamer:
新生になることで,いままで存在が希薄だった十二神にスポットが当たるようなことはありますか。例えばシステムに影響するなど。
直接的にパラメータに影響を及ぼすようになるといったことは考えていません。ですが,ゆくゆくはストーリーを合流させていき,そもそも十二神とはなんだったのかをはっきりとさせるつもりです。当面はあまり気にしなくていいです。今は神様が多すぎなので(笑)。
それよりは現実に戦える相手が必要だと思っていて,それがガレマール帝国というわけです。そして不可思議な存在だけど倒さなければいけなくなるのが召喚獣達というわけです。この二つは割りと分かりやすいものとして描かれていますが,第七霊災にまつわるものは謎が多いです。どれもこれも謎だらけにしてしまうと,歯切れが悪くなってしまうので,メリハリをつけていきます。
4Gamer:
現状は伏線が多いけれど,回収しきれていないといった感じでしょうか。
吉田氏:
僕は伏線だらけというのがあまり好きではないので。
4Gamer:
はっきり言えと。
吉田氏:
ええ,いわゆるスケープゴートにしたいなら,それと分かるようにすべきです。ある程度予測していただくために分かりやすさを維持しつつ,キーワード一つでひっくり返す,というのがストーリーテリングの基本だと思いますから。
4Gamer:
E3のとき,新生FFXIVを作るうえで自身と開発チーム,運営チーム,そしてスクウェア・エニックスが大切にしている3つの柱の一つとして,「最高のストーリー」というのを掲示しましたよね。今おっしゃった,分かりやすいものをキーワード一つでひっくり返す,といったあたりが“最高”の定義なのでしょうか。
吉田氏:
それは何か一つだけを指して言っていることではないですね。「最高のストーリー」のなかには,「手を抜くな」という僕ら自身へ向けたメッセージも込めていますし。当然ながら人によってもののとらえ方は違います。ですから,クエスト一つ,エピソード一つですら決して手を抜かず,僕らとしてのベストを尽くし,それらを提供し続ける。そういう意味になります。
設定ありきはやめ。描くものすべてに意味を持たせ,より分かりやすいMMORPGに
4Gamer:
Gamescomで公開されたイメージイラストには,種族専用装備というものがありました。これはデフォルトの装備ということでしょうか。
吉田氏:
そうですね。ヒューランだったらコレ,ミコッテだったらコレっていうのが現行のFFXIVにはありません。そこをきっちりと作っていきたいと思い,用意しています。
4Gamer:
見た目的にも,より分かりやすくなりますね。
吉田氏:
現状は記号性が足りていないので,そこは明確にします。あと,自分のキャラクターが街にいるNPCよりもみすぼらしいのが耐えられない(苦笑)。
「ウィザードリィ」の頃ならまあ分かるんですが。流れ者の冒険者は馬小屋に泊まれってところから始まるので。
4Gamer:
ええ,なんかパンツ一丁で放り出されたような記憶が。
吉田氏:
それって,さすがにいまの世代にはきついですよね。テンションがあがらないですよ。これは設定に重きを置き過ぎたゆえだと思っていますので,きっちりと解消します。そういう小さなレベルからしっかりと作っていくという,意志の現れだと思ってください。
4Gamer:
MMORPGは長く遊ぶものなので,小さなこだわりみたいなものが,ゆくゆくは大きな差となって見えてきますからね。
吉田氏:
はい,そこは絶対そうだと思います。例えば100ある設定のうち,少なくとも30-40くらいは実在したり,キャラとして登場してくれないとリアリティがない。現行のFFXIVは設定で場所に名前がついていたり,ギルドリーヴのテキストのなかに地名があったりしても,「それはどこにあるの?」という状態です。とにかくすべてが設定ありきで,時間的制約からそれを実際のゲームに反映できていなかった。結果的にプレイヤーに何かを伝えようという意志が見えづらいことになってしまいました。
4Gamer:
手をさしのべられているイメージはないですね。
吉田氏:
今回,訓練所やチョコボファームのスクリーンショットを公開しました。新生FFXIVでの訓練所は,グリダニアを出てすぐのところにあります。当然ここではNPCが訓練をしており,なかにはクエストを持ったキャラクターもいます。
4Gamer:
そこでグリダニアと訓練所を行き来するようなクエストが発生するわけですね。
吉田氏:
ええ,そして少しレベルが上がると,今度はグリダニアではなくて訓練所を拠点としてゲームを進められるようになり,そのまま自然と次の拠点に移っていく,といったイメージです。
4Gamer:
ゲームに慣れるまでは,導かれるままに進めていけばよさそうです。
吉田氏:
そういう風に設計しています。で,エーテライトがチョコボファームのところにありますが,あそこがレベル10くらいになると拠点になります。いままでは設定だけだったものに意味を持たせ,機能を用意するというわけです。
4Gamer:
ということは,チョコボファームで困っている人がいるんですね,チョコボに関連して。
吉田氏:
きっとそうでしょう。そしてなぜあそこにモーグリのバルーンがあるのか,といった具合に話がひろがっていきます。
4Gamer:
描かれているものすべてに意味があるわけですね。
吉田氏:
さっきの例でいう100ある設定すべてにではないにせよ,現実感はしっかり持たせるため,できる限りそうしています。拠点に名前をつけてスクリーンショットを公開しているのにも意味があります。
4Gamer:
もう一度スクリーンショットを見直しておくと,いろいろと想像がふくらみそうですね。
努力が報われるMMORPGを目指して
4Gamer:
前回の合同インタビューで,まったくの初心者が始めた場合,どれくらいの時間で一通りのシステムが理解できるかという質問に対して,パーティを組んでダンジョンに行ってみるというあたりで,30時間ぐらいと答えていらっしゃいました。30時間が長いか短いかは置いておくとして,これは日数にしてどれくらいを想定していますか。
吉田氏:
約2週間,つまり1日2時間のプレイです。
4Gamer:
2時間に何か根拠はありますか。例えば2時間で一つ区切りをつけられるといったような。
吉田氏:
平日に家に帰ってきて,食事をとったりシャワーをあびたりすると,だいたい21時くらいになると思います。普通の生活を考えると多くの人が24時までにはプレイを止めると思うので,平均すると2時間くらいかなと。そのなかで約15分に1回くらい小さな波がくるように設計しています。それもあって,ゲーム中にやることを表示する「お勧めリスト」は,10個に設定したんです。
4Gamer:
お勧めリストの数にはそんな意味があったんですね。では,例えばですが,やり過ぎを抑えるようなシステムを考えていますか。
吉田氏:
「30時間やらないと大変だぞ」みたいにシステム的にあおるようなことは決してしませんし,「今日はここまで」ということも想定していません。どちらかというと,さまざまなコンテンツをやってもらいたいので,いろいろやるとリワードが得やすいような仕組みにしています。
4Gamer:
強制的に複数コンテンツをやらされるというわけではないですよね?
吉田氏:
もちろんです。例えば,同じコンテンツには参加し続けられるけれど,リワードのロール権利は週に3回までとかで,別のコンテンツに参加すると回復する,そんな感じの制限ですね。
4Gamer:
コンテンツを巡るとプレイヤー的にも“おいしい”わけですか。
吉田氏:
本当は現行のバージョンでもそうしたかったのですが,いかんせんコンテンツの量が足りなくて……。ゲームの根本修正と同時にコンテンツを実装するという綱渡り作業のうえに,新生FFXIVの制作もあり,理想を追うにはコンテンツが絶対的に足りないと判断して,結果的に確率ドロップに頼らざるを得ませんでした。ここは本当に悩んだのですが。
4Gamer:
新生FFXIVのリワードはあまり偶然に左右されなさそうですね。
吉田氏:
コンテンツ報酬はPTに向けて2,3個はドロップしますので,週3回のロール権でいずれ確実に手に入ります。もちろんトークンも用意してありますし,やったことが報われるようにしています。だからこそ,いろいろなコンテンツを体験してほしいですね。そしてそれを2つ3つ楽しむと2時間が経っているみたいな。「じゃあ,ほかのコンテンツはまた明日ね!」と,コミュニティでどのコンテンツを遊ぶか話し合って回ってもらってもいいですし,ソロプレイがメインの人は,お勧めリストを見ながら遊ぶ。そんな風に考えています。
4Gamer:
レベルアップも戦闘ではなく,コンテンツのリワードが主になるというお話でしたので,よくある無駄な戦いをしなくてすみそうです。
吉田氏:
その仕様は結構悩んでいるポイントではあります。というのも,日本では戦闘を繰り返してレベルを上げるという文化が定着していますから。なんの説明もなしに,「モンスターを倒せばレベルが上がるんだよね」と戦闘に明け暮れられてしまうと,「なんだこのゲームは,レベルアップしないじゃないか」となってしまいそうで。
4Gamer:
確かにその危険性はありそうですね。
吉田氏:
ですので,そうならないようにゲームの序盤は今でも試行錯誤しながら導線を用意していますし,モンスターを倒すこと自体をコンテンツにできないかと考えていたり。PR活動でもそういったことはアピールしていこうと思っています。
4Gamer:
それでは最後に,読者へのメッセージをお願いします。
吉田氏:
現行のバージョンをプレイしてくれている方達はやきもき,プレイをやめてしまった人達は半信半疑というのが,現状,新生FFXIVについての本当のところだと思います。これから精力的にスクリーンショットや映像,そして情報を公開していきますが,最終的には実際に遊んでもらって判断していただければと思います。前代未聞の取り組みに参加しているというのも含めて,楽しんでいただければと。
4Gamer:
ありがとうございました。
何度も言及しているように,新生FFXIVは過去に例を見ない形でスタートする。そのため,新たな要素への期待もあるだろうが,不安に思っている人も多いだろう。吉田氏もそれは理解しており,インタビュー中も現行版プレイヤーへの気遣いがうかがえた。もちろん新規で始める人,とくにMMORPGに初めて触れる人達のこともしっかり考えており,とにかく分かりやすくすることを意識していることはインタビューで述べられた通りだ。
実際にやってみなければ分からないと言ってしまえばそれまでだが,プロデューサー兼ディレクターとして,ゲームを細部まで完璧に把握し,現行バージョンの欠点を公の場でしっかりと認める,そんな吉田氏であれば,うまくやってくれるはずと期待を抱かずにはいられない。
ドイツでの話とはいえ,実機の映像が公開されるなど,新生FFXIVの開発は着実に進んでいる。また,日本のファン向けには,「FINAL FANTASY展」のステージイベントで,新たな情報が公開されることになるだろう。実際にプレイできるようになるまでには,もう少し時間がかかりそうだが,随時公開されるという新情報を追いつつ,その時が来るのを待とう。
「FINAL FANTASY XIV」公式サイト
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