台湾時間2017年1月10日15:00(日本時間16:00),BenQ ZOWIE(以下,ZOWIE)が,「
ゲーマー向けの机 」を発表した。「
ZONE 」(ゾーン)という製品名が与えられたこの机は,プロゲーマーのあらゆるプレイスタイルに対応する,完全e-Sports仕様という位置づけの製品だ。
ZONE。机である
もちろん,ただの机ではない。
誤解を恐れずに述べるなら,ZONEは,机の形をしたe-Sports向けPCである。机には「
GeForce GTX 1070 」と4コア版Coreプロセッサを搭載するPCを統合し,さらに,2017年1月時点におけるZOWIEディスプレイのフラグシップである「
XL2540 」のカスタマイズ版を,ディスプレイアームに固定しているのだ。
ZOWIE初のゲームPC,と紹介してもいいだろう。
本体を手前側(左)および背面側(右)から見たカット。本体向かって右奥,机からぶら下がるように,いかにもPCでございますといったブロックが見えるが,もちろんこれがPCだ。背面に回ると,カスタム版XL2540(型番:XL2540W)が,標準でディスプレイアームに固定されているのも分かる
机の右手前側にあるボタン類。右下のボタンについては後述する
PCの電源は,机の右手前側にあるボタンで入れることができる。
また,それだけではなく,ここに用意された昇降ボタンを押すことで,机自体の高さも調整可能。つまり,ゲームプレイに適切な机の位置はボタンによる電動昇降で,ディスプレイの上下左右配置はディスプレイアームを使って,それぞれ容易にカスタマイズできるというわけだ。
BenQ ZOWIE「ZONE」の電動昇降機構
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この電動昇降機構により,高さは759.76〜1409.76mmの範囲で調整できるという。
座った状態でも,立った状態でもゲームをプレイできる
ディスプレイアームによる設置自由度は相当に高い。XL2540が採用するTN型液晶パネルの場合,とにかくパネルに正対することが最も重要だが,どんなプレイスタイルであってもパネルを正面から見ることができそうな安心感がある。なお,左の写真に見えるスピーカーセットはデモ用で,これはZONEとは関係ない
ケーブルは机の下側でマネジメントされているため,本体から伸びるケーブルは,電源と有線LANのわずか2本で済むのもポイントである。
本体底面側から見上げたカット。底面側に電源タップを組み込んでいるため,ZONE自体から外部へ延びるケーブルの数は2本で済んでいる。なお,この写真だと昇降する脚の付け根にブロックが見えるが,ここには左右それぞれにモーターを搭載しているという
机自体は木の1枚板で,サイズは1218(W)
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743.84(D)mm。日本の一般的な勉強机と比べるとかなり大きい。企業用の事務机としても大きなほうなので,少なくともマウスパッドを置くスペースがなくなるとか,そういった心配は無用だ。
ちなみに重量はなんと160kgまで耐えられるとのことである。
机の上,向かって左端には,飲み物とモバイル端末のホルダーがある。激しい操作でうっかりペットボトルを倒して大惨事,ということがないようになっているわけだ
机の最奥部,左には2系統のAC電源と4つのUSB 3.0 Type-Aポート,右には2つのUSB 2.0 Type-Aポートと3.5mmミニピンのスピーカー出力端子もある
本体正面向かって左側には,VITALの基本操作系が並んでいる
しかも,話はこれで終わらない。
机側には,ZOWIE製USBサウンドデバイス「
VITAL 」の機能を統合している。本体左手前にはその基本操作系があり,出力先をヘッドフォンとスピーカーで切り換えたり,出力音量を調整したりできる。ここには3極3.5mmミニピン
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2があり,ヘッドフォン出力とマイク入力となっているため,ここにアナログ接続型ヘッドセットを取り付けることも可能だ。
そして,より重要な特徴としては,統合したXL2540とVITALの機能として,PCにプリインストールされている設定用ツールにより,ゲーム中か否かを問わず,オーバーレイ表示したメニューから,いつでもディスプレイおよびサウンド関連の設定を変更できる点が挙げられる。
写真右下がオーバーレイ表示の有効/無効切り替え用。この並びだと電源ボタンを“誤爆”しないか不安になるかもしれないが,ゲーム用PCとして,ZONEのPC部はスリープに入らない初期設定になっているため,電源ボタンにちょっと触れていきなりスリープに入るといった心配は無用だ
先ほど後述するとした,本体右手前,電源ボタンの下にあるボタンを押すと,このオーバーレイメニューを表示でき,ディスプレイ設定およびサウンド入出力設定をカスタマイズ可能になるのだ。
BenQ ZOWIEのディスプレイを使っている人には,「S.Switch」的な操作をソフトウェア的に行えると紹介したほうが分かりやすいかもしれない。ただ,S.Switchと異なるのは,設定値の入力にキーボードも利用できるところで,たとえば自宅で設定を追い込んだら,その設定値をメモしておけば,あとは大会の会場でキーボードから直接入力するといったことも行える。
輝度やコントラストだけでなく,BenQ ZOWIEのディスプレイでお馴染み,暗いところを明るくする機能「Black eQualizer」や,各種パネルサイズや解像度をエミュレーションする「Display Mode」も,全部オーバーレイ表示メニューから設定できる。設定値を調整するための追加ガジェットは,表示位置を変更することも可能だ
サウンド関連の設定もここから行える
ZOWIEの創業者で,現在はBenQ ZOWIEの開発部門を率いるTang氏。「ZONEのアイデアは,旧ZOWIE時代からあったが,単独では(開発コストやディスプレイとのソフトウェア連携という面で)実現しえなかった」と,BenQの一部門になったメリットを挙げていた
発表会で登壇したZOWIEの
Vincent Tang (ヴィンセント・タン)氏は,「大会でプロゲーマーは一般に,ディスプレイの高さや輝度などの設定に20分程度要することになるが,ZONEであれば5分で済む」と述べ,ZONEが,その名のとおり,ゲームのための環境・領域(=ゾーン)を簡単に構築するためのものであると強調した。
また,ZOWIEの追求する価値は「Stable」(安定性)と「Comfortable」(快適性),「Easy to Use」(取っかかりのよさ),そして「Convenient」(ゲーム中の使い勝手)にあるとした氏は,「ZOWIEは,『最速のディスプレイ』とか『最高のセンサー』なんてことは絶対に謳わない。製品の見た目もクールではないが,そんなものはどうでもいい」と言い切る。
氏によると,ドライバ不要で安定して動作し,ぱっと使って違和感がなく,ゲームで使い込んでいけることが重要であって,それはこれまでのディスプレイやマウスなどだけではなく,今回のZONEにおいても核心的価値になっているとのことだ。
ZOWIEの追求する価値として明らかになった4要素
発表会場となったのは,台北松山空港に近いところにあるホテル,Grand Victoriaである
ちなみにこのZONEだが,当面は,e-Sports大会の主催者や,インターネットカフェを対象とする,いわゆるBtoBでの展開になるとのことで,そのため,単価は明らかになっていない。
エンドユーザーが直接購入することはできないが,その理由としてZOWIEは,そもそも重量が75kgあり,一般家庭に置くには重すぎることと,昇降機構に万が一のトラブルがあったとき,やはり重さが原因で,簡単に送り返してもらったりできないことを挙げていた。
ZOWIEとしては,「ネットカフェの環境と同じ『ゾーン』を大会の会場でも構築できる」メリットを武器に,e-Sports大会におけるリファレンス機材の座を狙っていくようだ。
日本においてはディスプレイ以外でそれほどの存在感を示せていないZOWIEだが,e-Sportsの世界における標準を狙うべく,着々と歩みを進めていることがよく分かる発表だったとまとめることができるだろう。国内でも,ゲームに強いインターネットカフェが採用する可能性はあるので,導入となった暁には,一度試してみることを勧めたい。
余談として書いておくと,ZONEの展示機には,未発表のキーボードが置いてあった(左)。詳細未公開ながら,かなり軽いメカニカルキースイッチを採用していたのが印象的。ZOWIEによると,ほぼ完成しているそうなので,今後の正式発表に期待したい。右はZONEを紹介するムービーにちらっと出てきた未発表ヘッドセット。こちらも開発中だそうだ