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「ボーダーブレイク」10周年&AC版サービス終了直前インタビュー。青木盛治氏&百溪 曜氏と共に“これまでの歩み”を振り返る
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印刷2019/08/31 00:00

インタビュー

「ボーダーブレイク」10周年&AC版サービス終了直前インタビュー。青木盛治氏&百溪 曜氏と共に“これまでの歩み”を振り返る

最新Ver「ボーダーブレイク エックス ゼロ プラス」のメインビジュアル
画像集 No.001のサムネイル画像 / 「ボーダーブレイク」10周年&AC版サービス終了直前インタビュー。青木盛治氏&百溪 曜氏と共に“これまでの歩み”を振り返る
 約10年前,ゲームセンターで稼働を開始した「ボーダーブレイク」(以下,BB)は2019年9月9日に10周年を迎える。そして同時にサービスを終了することが発表されている。セガ・インタラクティブが誇るBBをまったく知らないというアーケードゲーマーはごく少数だろう。多数のプレイヤーを虜にした“ハイスピードロボットチームバトル”は10周年の節目となる日,その歴史に幕を下ろすのだ。
 なお,アーケード版のサービスは終了となるが,PlayStation 4版が2018年8月2日から登場しているので,ファンは新たな戦場で戦うことが可能になっている。

 永らくファンに支持されてきたBBだが,ここで一つの区切りを迎えることになる。そこでアーケード版BBが歩んできた道のりと,これまで支えてきてくれたプレイヤーへの想いを,プロデューサーを務める青木盛治氏,ディレクターの百溪 曜氏に聞くことにした。

「ボーダーブレイク エックス ゼロ プラス」公式サイト



オリジナルのIPで勝負する


4Gamer:
 本日はよろしくお願いします。
 さっそくですが,BBの誕生から振り返ってみたいと思います。ゲームセンターに現れたのは2009年9月9日ですが,どのような経緯で開発が始まったのでしょうか。

青木盛治氏
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青木氏:
 企画の初期段階は,最終的な形とはだいぶ違いましたね。開発チームはガンシューティングの「ゴーストスカッド」や「バーチャコップ」シリーズを担当していたので,「次のガンシューはどんなものにしようか」というところからスタートしたと思います。
 ところが,チームの中で「本当にやりたいこと」を整理していくと,「血なまぐさいことはやりたくない」「みんなで遊べるパーティーゲームがいい」というものでした。それなら,ロボットが戦うシューティングが適しているんじゃないかと。
 そこで,当時スタッフがよく遊んでいた「バトルフィールド」や「カウンターストライク」を参考にして,ガンシューティングからロボットを操るTPSへと舵を切ったんです。

4Gamer:
 その頃,ゲームセンターには「機動戦士ガンダム 戦場の絆」や「機動戦士ガンダムVS.シリーズ」がありました。ただ,日本製のTPSとなると,数は少なかったですよね。

青木氏:
 ええ,そうでした。だから,社内の理解を得るのが大変でした。「TPSって何? RPGのこと?」と言われたことも(笑)。
 当時のセガのゲームとしては画期的でしたし,新鮮すぎて理解されにくく,なかなか苦労した思い出があります。

4Gamer:
 セガのロボゲーと言えば,「電脳戦機バーチャロン」があります。しかし,新しいIPを立ち上げることになったのはどのような理由からですか。

青木氏:
 確かにバーチャロンの人気は高かったですが,その当時でも誕生から10年以上経っていました。それもあって「ここはセガだけのオリジナルIPを生み出そう」という機運が高まっていましたね。

4Gamer:
 「ロボットものは一般受けが悪い」という理由から,新作ゲームの企画が通りにくいという話をよく聞きます。

青木氏:
 正直なところ,それはセガにもありましたね。とくにBBの場合はオリジナルIPでしたから難しかったです。それにロボットものは何をやっても,ガンダムと比較されますし(笑)。

百溪氏:
 ただ,セガの場合はバーチャロンの実績があったおかげで,ゲームセンターには「セガのロボゲー」という認識ができていました。多くの人に触ってもらえる土壌が確立されていたと思うんですよ。だからBBのテーマはゲームセンターのプレイヤーに対して,十分に受け入れられるという自信はありました。

青木氏:
 その土壌があったがゆえに,最初のうちはバーチャロンのようにコントローラを倒そうとしている人が多かったですね。

百溪氏:
 「これはなんで倒れないんだ?」と言われたり(苦笑)。

4Gamer:
 その気持ちはよく分かります(笑)。

青木氏:
 もちろんそれは事前に想定していたので,設計段階から「コントローラは絶対に動かないように,強く固定してください!」とオーダーを出しておきました(笑)。

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GP制という新たな課金システム


4Gamer:
 コインを入れるとGP(ゲームポイント)に変換される――いわゆる「GP制」を採用したのはBBが最初でした。「100円=1プレイ」ではなく,プレイ時間であるGPをお金で買うというのは画期的なシステムだったと思います。

青木氏:
 主旨としては「100円入れて,やられたらもう終わり」ではなくて,「1回のバトルをしっかり遊んでもらう」という狙いがありました。そこから「時間を買ってもらう」システムが生まれたわけです。

百溪 曜氏
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百溪氏:
 BBは10対10で対戦するゲームなので「毎回,全員揃ってからスタート」というデザインが採用できず,「フリーイン/アウト」にせざるを得なかったんです。GP制を採用したのは,それが大きな理由だったと思います。
 最初は「常に人数が足りないバトルになるんじゃないか……」と,かなり不安に思っていました。実際にやってみたらそんなことはなかったんですけど。

4Gamer:
 今になって思えば,GP制は納得のいくシステムですね。ゲームセンターは「どれくらい場所を専有しているか」に対して,お金をいただいているわけですから。また,GP制には課金への心理的ハードルが若干下がるところもあったと思います。

青木氏:
 結果的にGPを使って武器やパーツを買ったり,カスタマイズしたりする要素もできたので,「うまくハマったな」と思いました。

4Gamer:
 それまでの1プレイ=100円の感覚では,「カスタマイズの時間がある」ということが許されなかったですよね。その時間も筐体を専有しているにもかかわらず,ゲームを遊んでいないわけですから。

青木氏:
 そこは店舗のオペレーターから言われるところですね。「カスタマイズの時間もGPを消費している」ということで,説得の材料になりました。

西村ケンサク氏(パブリシティPR担当):
 当時は「100円で3分遊ぶ」という認識が中心だったなかで,GP制は「ある程度のお金を払って,まとまった時間を遊ぶ」という新しいマネタイズを提案したと思います。ゲームセンターの流れを見ても,その後にGP制を採用したゲームが続いたので,正しいやり方だったのかなと。

4Gamer:
 プレイ時間をGPに変換することで,ゲームコンテンツに応じてGP消費速度の調整もできるので,本当によくできたシステムだと思いました。
 ところで,稼働前にチーム内では「これは人気が出る!」といった手応えがありましたか。

百溪氏:
 開発中に検証のために人を集めていると,「待ってました」とばかりに自主的にみんな来てくれたんですよ。自分達が開発しているタイトルなので,相当遊んでいるし,もう知り尽くしているはずなんですが。今になって思えば,「このゲームにはそれだけの魅力があったんだ」と感じます。

青木氏:
 社内で急に20人集めるのは,結構たいへんなことですよ。それがBBでは苦労しなかったんですから。

百溪氏:
 ただ,社内テストは2回実施したんですが,そこでは賛否両論でした。「操作が難しい」という意見が多かったですね。

青木氏:
 バーチャロンを期待して来てみたところ,「ちょっと違うゲームだな」と思ったのではないでしょうか。それでも,ロボットゲームが好きな人ならちゃんとハマってくれる,という手応えはありました。

西村氏:
 僕はBBを初めて触った瞬間に「イケる!」と思いましたよ。キャラクターやロボットのデザインが受け入れられるかどうかは分からなかったものの,「この手触りはいい」と。
 ただ,1回遊んでもらわないとその面白さは伝わらないので,当時はとにかくゲーム誌の編集者にいち早く遊んでもらって,「味方になってもらおう」と考えました。

4Gamer:
 プレイヤーの反応を最初に見たのはいつでしたか。

青木氏:
 秋葉原のロケテストでしたね。開店前からズラーッと行列ができていたんですよ。

百溪氏:
 設営に行ったメンバーが「朝4時頃にロケテの準備が終わって店舗の外に出たら,もう並んでいる人がいて感動した」と言っていたのを覚えています。

青木氏:
 今のように,ロケテストの告知をしっかりしていない時代でしたから。とくに催しや出演者がいるわけでもなく,ノベルティグッズを用意しているわけでもない。それでも来てくれる人がいる,というのは嬉しかったです。

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優れたルールによって許容量の大きいゲームに


4Gamer:
 BBのジャンルはTPSと言えますが,ゲームシステムにおいて参考にしたのは,当時はやっていた「バトルフィールド」だったのでしょうか。

青木氏:
 あの当時,人気があったゲームはひととおり研究しました。「バトルフィールド」のワイワイした感じ,パーティーゲームの感覚は面白かったし,いろいろな役割があって,撃たれても生々しくないところが良かったんですね。

4Gamer:
 例えば「カウンターストライク」を参考していたら,今のBBはなかったと思うんですよ。エイム力の勝負になるゲームですから,すごくスキルが要求される難しいゲームになっただろうと。

青木氏:
 そうですね。難しいゲームになりすぎないように,参考にしたかもしれません。BBの場合,実際にはスキルも重要ですが,そこまで高度なスキルを持っていなくても楽しめるようにしたかったので。

4Gamer:
 自分はおっさんゲーマーなので単純なスキル勝負では難しいですが,セオリーに忠実にプレイすることで何とか戦えています。BBはそのバランスが良かったと思います。

青木氏:
 あまり「ガチ対戦」にしたくなかったというところもありますね。10対10であれば,1人あたりの責任は軽くなりますし,戦い方がバラバラでも成立するというか。

百溪氏:
 ちょうどいいバランスなんですよ。これより多くなると,自分が何をしても勝敗にあまり関係ない感覚になりますし。10人チームで遊ぶBBは,勝敗に絡んだ瞬間に立ち会えることが結構あります。

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4Gamer:
 10年続けることができた最大の理由は何だと思いますか。

百溪氏:
 バトルのルールに尽きると思います。いろいろと参考にしたタイトルはありますけど,結果的にオリジナルのデザインになり,許容量の大きいルールになりました。
 キャプチャー・ザ・フラッグ的なゴールがあり,そこまで到達する目的はあるけど,陣取りもしっかりある。こうしたバトルのルールと,ロボットアクションのスピード感とのバランス,それが組み合わさって,いろいろなものを包括できたことが,長く続けられた要因なのかなと。

4Gamer:
 スタートしたときには,10年近く続けることを想定していますか。

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青木氏:
 全然(笑)。近年のアーケードゲームのプランはだいたい5年を目安にしています。「3年は続けたい,うまくいって5年かな」と考えていました。

百溪氏:
 BBはセガのアーケードゲームとしては,初めて「本気の運営」を実現したタイトルだと思っています。バージョンアップ以外にも,継続的に細かいアップデートを実施して盛り上がりを作るという運営方針は,それまでやっていなかった試みでした。

4Gamer:
 アーケードのオンラインゲームでは,カードの追加などはありましたが,ここまで細かくアップデートされるタイトルはBB以前にはなかったと思います。

西村氏:
 まだ「ゲーム内イベント」という概念が広まっていない時代でしたからね。

青木氏:
 「ここで武器を出して,それから機体を出すから,マップはこれにしよう」ということを,毎週しっかり運営会議をやって進めていました。2週間先の予定まではほぼ確定していて,おおよそ1か月先まで大まかに決めていましたね。今となっては当たり前のことなんでしょうけど。


弱体化しないで済むようなバランス調整を


4Gamer:
 正直に言うと,BBの稼働初期はゲームバランスがかなり悪かったという記憶があります。そこからアップデートを重ねて進化していった印象が強いです。

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百溪氏:
 全体的なバランスが徐々に整ってきたのは確かですね。プレイヤーの皆さんの習熟度や,武器のリリースといった要因でもバランスが左右されていたので,時期によって差があり……だいぶ苦労してきました(苦笑)。

4Gamer:
 最初の頃は重火力兵装が撃ち合いで弱かったり,強襲兵装が空中を飛んで一気に敵ベースまで行けてしまったり……

※稼働当初,強襲兵装は空中でアサルトチャージャーを吹かし,その慣性で長時間飛ぶことが可能だった。

百溪氏:
 強襲兵装が空を飛ぶのは,「AC慣性」と呼ばれていましたね。これはリリース直後の不具合だったんですけど,当時のショックはすごく大きかったです(苦笑)。
 ゲームデザイン的に直さざるを得ないものでしたが,直すということは,利用していた人から気持ちよさを奪うことに変わりないので,だいぶ落ち込みました。

4Gamer:
 まだ手探りの時期でしたから,「そういう仕様なんだ」と思っていた人もいたでしょうね。当時は空を飛びたい人は飛んで,戦いたい人は地上で戦っていました(笑)。

青木氏:
 いまだに「また空を飛びたいんです」と言われるんですよ。「もう最後だし,みんなでフワフワしましょう」と。だから,あれは不具合なんですって(笑)。

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4Gamer:
 BBのバランス調整は,新しく追加された武器と従来のものにあまり差がないことが特徴だと思います。新しい武器を追加したら,使ってもらいたいので強くする傾向があると思うのですが。

百溪氏:
 常に「性能を上げすぎない。ゲームを壊さない」ということを絶対条件として調整していました。強すぎる場合は弱体化をするわけですが,そうするとその武器を使っている人ががっかりしますよね。それはできるだけ避けたかったので。そうならないように,インフレ具合は最小限に抑えていこうと。リリース当初は「産廃」扱いされていたものが,のちに見直されて「実は強くない?」とじわじわ人気が出てきたりしたときは「やった」と思いましたね。

4Gamer:
 武器の情報はネットを鵜呑みにはできないというか,自分で判断しないといけないと思うことが多かった印象があります。

百溪氏:
 まったく見向きもされなかった武器の弱体化を告知した途端,急に使われるようになったこともありました。

4Gamer:
 「弱体化されるくらいだから,本当は強かったに違いない」というわけですね(笑)。

青木氏:
 最初はカタログスペックだけで「使えない」と評価されてしまうことが多かったんです。その後,上手に使いこなしているプレイヤーの動画がアップされると,「実は使えるんじゃないか」に変わっていく。こちらは最初から「使える」と思って出しているのに(笑)。

4Gamer:
 そのほか,バランス面で苦労したところはありましたか。

青木氏:
 「どちらの陣営の勝率が高いか」というマップのバランスは指摘されることが多かったです。理想は50:50,±2%くらいが許容範囲なんですが,極端にどちらかの陣営の勝率が高くなってしまったことがありました。こればかりは,出してみないと分からない部分でしたね。

百溪氏:
 「こっちが少し有利かな」と予想していたのに,実際に出してみたら逆の結果になったマップもあります。調整の経験を重ねるごとにチームの習熟度が高くなったことで,「カタパルトの角度やリスポーンの位置を少し変えると,戦況にどれだけの効果があるのか」が分かってきましたね。
 一番の理想は,プレイヤーの体感と実際のデータが正反対になっていることです。こういう場合は安心できます(笑)。


ユニオンバトルの成功が長期の運営を可能に


4Gamer:
 10年間のサービスを振り返ったときに,印象に残っているポイントを教えてください。

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青木氏:
 PvEで遊ぶ「ユニオンバトル」の成功が大きかったかもしれません。アーケードのオンライン対戦ゲームは,3年を一つの区切りと考えています。BBは4年目に入っても,相変わらず人気はありましたが,当初の計画ならそろそろサービス終了を考えるとなっていてもおかしくない時期だったんです。
 そこで「PvEで新しいお客さんを呼ぼう」と,ユニオンバトルをやってみたわけです。正直なところ,うまくいくかどうか分からず,最初は不安が大きかったです。

4Gamer:
 ユニオンバトルは相当作り込んだコンテンツでしたね。ルールがかなり特殊で,まるごと別のゲームを作るような感覚だったと思います。

青木氏:
 そうですね。BBでは最も時間と手間をかけたコンテンツです。いきなり出しても,ユニオンバトルのルールを分かってもらえないと思ったので,専用武器のサテライトバンカーを直前のバージョン2.7に出して,プレイヤーに使い方を覚えてもらったりしました。

4Gamer:
 「起動すると高火力の光の柱が上がる」という,サテライトバンカーのアイデアはどこから生まれたんでしょうか。なかなか斬新な発想だったと思うのですが。

ユニオンバトルの専用武器・サテライトバンカーは,起動ユニットを確保して発動することで,衛星から極太ビームが照射。広範囲を焼き尽くす
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百溪氏:
 もともとは,当時のプロデューサー(三上岳彦氏)のわがままでした(笑)。それにプランナーが頑張って応えた結果ですね。「ゲーム内のヤマ(盛り上がり)を作りたい」という意図があって,バトル中のイベントやドラマを作れる武器としてサテライトバンカーが生み出されました。

青木氏:
 最初のアイデアは「巨大な敵の内部に乗り込んで,コアを破壊する」だったと思います。そのために,どうやったら乗り込めるのかを考えた結果,「サテライトバンカーを当ててダウンさせよう」と。

百溪氏:
 サブマシンガンでチマチマ撃っていたら巨大な敵がダウンした,というのではつまらないでしょう。最初はワイヤーを使って,本体につかまって乗り込むという案もありましたね。

4Gamer:
 ワイヤーのアイデアは面白いですね。実装されなかったのが惜しい気がします。
 自分は「大攻防戦」が印象深いです。この話を最初に聞いたときは,勝敗のバランスを調整できるかどうかに疑問がありました。「一方が攻めて,一方が守る」というコンセプトは,陣営間のバランスが取れないとゲームにならないので,よく調整されていることに感心しました。

大攻防戦は1つだけのコアを巡り,攻撃陣営と防衛陣営に分かれて戦うコンテンツだ。前者はコアを破壊すれば勝利,後者は制限時間までにコアを守りきれば勝利となる
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百溪氏:
 「大攻防戦」では,ちょっとだけ防衛側を有利にしているんですよ。攻撃のほうが面白いので,「攻撃側が頑張り続けたら勝てる」展開になるようにバランスを取りました。攻撃側が余裕で突破できると,一方的になったり,談合のような戦いの流れになったりする恐れがあるので。
 攻撃側と防御側の勝率で言えば,4.5:5.5から4:6までの範囲に収まるようにしていました。

青木氏が扮するBBのマスコットキャラクター,それが牛マンだ! 牛の角,牛柄の服,赤いマフラーが特徴
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西村氏:
 BBがここまで続いたのは,ゲームそのものに魅力があることに加えて,場のコミュニティ作りがうまくいったことも大きいですね。ちょうどSNSが普及してきた時期と重なっていて,「アイツが遊んでるから,オレもやめられない」という人が多かったと思います。
 メーカーとしては「牛マン」のキャラクターを生かして,コミュニティの活性化に力を入れてきました。ゲームセンターのゲームならではの盛り上がりだったと思います。

青木氏:
 「BBを通じて知り合いが増えた」という報告はたくさんいただきましたね。各地のイベントにも多くの人が足を運んでくれました。

4Gamer:
 プレイヤーの交流は,やはりSNSを介した形が多いのでしょうか。

百溪氏:
 主にTwitterですね。1バトル終わったら,その場でスマホに気持ちをぶつけるような方をよく見ます(笑)。

青木氏:
 Twitterに加えて,ニコニコ動画では上手なプレイ動画がよくアップされていました。BBの立ち上がりとSNSの台頭とタイミングが合ったのは,運が良かったと思います。

4Gamer:
 アーケードゲームの録画機器が置かれるようになったのも,そのあたりの時期でしたね。

青木氏:
 最初は店舗側のサービスとして始まったはずです。動画を自分で楽しむだけならいいですが,ネットにアップできる環境になってきたので,セガとしても規約を作らなくてはマズイということになりました。当初は「動画をアップしてもいいか」と,プレイヤーからよく問い合わせが来ていました。

西村氏:
 それが今では,どうしたら動画をアップしてもらえるかを考える時代になっています。この10年間で時代もずいぶん変わりました。

4Gamer:
 自分は新マップの紹介動画をよく見ていました。朝イチでゲーセンに行って,撮っていた人がいましたね。

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百溪氏:
 毎月のランキングを決めてプレイヤーの動画を紹介している人や,カスタマイズのデータを自動計算してくれるツールを公開している人もいましたね。とにかく,「すごいな」と(笑)。

4Gamer:
 マップに索敵センサーを設置すると,どの範囲がカバーできるかが分かるツールもありました。支援兵装を使っていたときに重宝した記憶があります。そんなところにも,プレイヤーの愛が垣間見えますね。


幸せな幕引きを迎えるアーケード版BB


4Gamer:
 アーケード版のサービス終了について,公式サイトにプロデューサーレターが掲載されていますが,やはり「ハード面の劣化」が最大の要因ということでしょうか。

青木氏:
 筐体や交換部材はもちろん,ICカードもすでに国内で製造できるところがありません。そこが許せば,お客様がいる限りずっと置いていただいて良かったかもしれないです。しかし,実際にはプレイヤーにも店舗にもご迷惑をおかけするでしょうし,きれいなときに終わるのがいいだろうと判断しました。



4Gamer:
 ここ2年近く,大きなアップデートがほとんどないですよね。ゲームセンターの多くのプレイヤーが,サービス終了を予感していたと思います。
 そうなると大抵の場合,人が離れていくと思うのですが,BBは今でも対戦が成り立つプレイヤーが集まります。これはとても珍しい例だと思います。

青木氏:
 PS4版と入れ替わる形で,もう少し早く終わらせるという話もありました。しかしアップデートが無くなっても,思っていたほど人が減らないし,サテライトの数も減っていない。幸い売上も立っていましたので,じりじり続けていたら「ここまで来たら10周年だ」というところまで来ることができました。

4Gamer:
 プレイヤーとしては残念であると同時に,とても幸せな形の幕引きであるとも思います。

青木氏:
 アーケードゲームはいつか必ず終了するものですが,BBというゲームが「まったく遊べなくなる」という状況は避けたかったんです。そこで,2015年にはPS4で動くBBを社長に見てもらった記憶があります。まだPS4版のチームを立ち上げる前の話です。

PS4版のメインビジュアル
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4Gamer:
 「企画の前に現物を見せよう」というのは,いかにもゲームメーカーらしいエピソードですね(笑)。

青木氏:
 その頃から「いつかはゲームセンターからBBが無くなってしまう」という危機感を持っていました。だから,なんとかしてどこかに残さなくては……と。
 幸い,PS4版は順調に推移していますので,当分はここに注力しようと思います。

西村氏:
 アーケード版は9月9日深夜(9月10日未明)にサービスを終えますが,今ちょうどBBのプレイヤー情報が記されたメタルプレートを発行する,「ボーダーレコード」という企画を行っています。サービス終了まで遊んでもらって,ボーダーレコードに刻まれる最高の記録を残してもらえればと思います。

4Gamer:
 ボーダーレコードはあまり前例がない企画ですが,長く遊んできたプレイヤーにとっては最高のプレゼントだと思います。


青木氏:
 これが今もゲームセンターで遊んでいるプレイヤーの大きなモチベーションになっているようですね,思えば初期から遊んでくれたプレイヤーは,BBと一緒に10年分の歳をとっているわけですか……。

百溪氏:
 カード作成日がサービス開始以前という人も結構おられます。ロケテストから遊んでくれている人は,この10年で就職したり,進学したりしているわけで,BBが生活の一部になっていたかもしれませんね。

4Gamer:
 自分もしっかり10年間,楽しませてもらいました。それでは最後にプレイヤーへのメッセージをお願いします。

百溪氏:
 プレイヤーの皆さんには本当に感謝しかないです。遊んでいただいた思い出が,皆さんにとってより良いものであれば,私達は幸せです。これからBBを思い出したときは,PS4版を遊んでいただければありがたいです。

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青木氏:
 プロデューサーレターの繰り返しになりますが,僕を含むBBの開発スタッフの多くが,当時はまだ幼かったというか,経験が足りていませんでした。プレイヤーの方からの指摘が僕らの経験とスキルになり,次の展開としてPS4版へとにつながっていきました。皆さんに助けられてきた10年間だったと,本当に感謝しています。
 その恩返しではないですが,今はPS4版をより面白いものにしようと努力しています。皆さんの楽しい思い出になるコンテンツを提供していくことが僕達の使命だと思うので,これからも頑張ってやっていきます。

4Gamer:
 本日はありがとうございました。



 インタビューを終えてあらためて思うのは,BBがこれまで歩んできた道のりの長さである。近年のアーケードゲームで,10年もサービスを継続し,最後までプレイヤーのテンションが保たれていたというのは驚くべきことである。それだけBBを愛するプレイヤーが多かったということだろう。

 BBが長く続いた要因には,インパクトよりバランスを重視した細やかな調整が挙げられると思う。どんなゲームでも長く続けるとプレイヤーの要求が厳しくなり,少しでも不満があれば爆発し,それによって急速に人気を失っていくケースが見られる。
 しかし,10年間を走り切った。それは開発チームとプレイヤーが徐々に積み上げ,ゲームのクオリティを築いてきた結果だと思う。

 この10年間の積み重ねは,BBをプレイした多くのプレイヤーにとって,忘れがたい思い出になっただろう。それは筆者も同様だ。そんなゲームと出会えたことに,今は感謝をささげたい。

「ボーダーブレイク」公式サイト

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