レビュー
前作の不満点を解消し,より遊びやすくなった「NO MORE HEROES 2 DESPERATE STRUGGLE」を,全力でオススメしてみる
前作「NO MORE HEROES」(ノーモア★ヒーローズ)で監督を務めた須田剛一氏が,本作では総監督を務め,開発は須田氏率いるグラスホッパー・マニファクチュアが手がけている。
本記事では,作品の概要を紹介しつつ,序盤のインプレッションをお届けしよう。
「NO MORE HEROES 2 DESPERATE STRUGGLE」公式サイト
前作から3年後のサンタデストロイで
トラヴィスは再びUAAランキングのトップを目指す
前作において主人公のトラヴィス・タッチダウン(殺し屋の青年)は,謎の美女シルヴィア・クリステルの甘い罠に引っかかり,全米殺し屋協会(UAA)のランキング戦(ランキングバトル)に参加。そして幾多の死闘を乗り越えてランキング1位に躍り出た(それでめでたしめでたし……とはならなかったのだが,そのあたりは割愛)。
本作は,それから3年後の物語である。
ある日のこと。相も変わらず冴えない生活を続けていたトラヴィスの前に,かつて倒した男の弟,スケルター・ヘルターが現れたのだ。
トラヴィスが初めてUAAランキング入りを果たしたのは,スケルター・ヘルターの兄,ヘルター・スケルターを倒したときのこと。そのときと同じ場所を,弟は復讐の舞台として選んだのである。
だが,スケルター・ヘルター戦では戦闘中,簡単な操作説明が表示されるほか,このゲームでは基本的に,ボス戦で倒されたとしても,すぐにその場からリトライできる。
たとえボス相手に苦戦することがあっても,何度も挑戦を重ねるうちに,相手の攻撃方法や隙のできるタイミングを覚えられるので,そう構える必要はないだろう。
さて,そんなこんなでスケルター・ヘルターを退けたトラヴィスの元に,UAAのエージェントであるシルヴィアが姿を表し,先ほどの戦いの結果,トラヴィスがUAAランキング51位に認定されたことを伝える。
一度はランキング1位になったはずのトラヴィスだが,シルヴィアからの“ご褒美”のため,再度ランキング戦線に乗り込むことになるのだ。
……と,ここまでは,下心を原動力にトラヴィスが戦いの中へ身を投じるという,前作とまったく同じノリなのだが,この直後に事件が起きる。
前作でトラヴィスの親友として登場した,ビデオショップ店員のビショップ・シダックスが,何者かに殺害されてしまうのだ。
シルヴィアによると,ビショップの殺害にはUAAランキング1位のジャスパー・バット・ジュニアが関わっているという。それを聞いたトラヴィスは,ビショップの仇討ちのためにも,UAAランキングの頂点へ駆け上がる決意を固め,手始めにランキング50位のネイサン・コープランドに挑むことになる。
何者かに命を奪われるビショップ。彼が最後に残した言葉は……? | |
ランキング50位のネイサン・コープランド |
このように,スケルター・ヘルターがトラヴィスに挑んだ動機,トラヴィスが再びUAAランキングバトルに挑む動機,その二つに共通しているのは“復讐”である。
実は前作のラストにも,復讐にまつわるエピソードは登場するのだが,まあそれは置いておくとしても,この重いキーワードがNMH2の物語に厚みをもたらしていることは,プレイを進めるごとに痛感させられる。詳しいことは,今はまだ言えないが(シッシー風)。
前作の不満点をすべて解消
本編のスピード感がさらにアップ
NMH2の基本的な操作方法は前作を踏襲している。Wiiリモコンを上に向けた状態でAボタンを押せば,ビーム・カタナを使った上段への斬り攻撃。下に向けた状態で,下段への斬り攻撃を行える。同様にBボタンでは,上段および下段への打撃攻撃を繰り出せる。
基本的には,Aボタン連打やBボタン連打,さらにはAボタンとBボタンを押し分けて,さまざまなコンボを繰り出しながら,敵にダメージを与えていくことになる。
そして,「トドメスラッシュ」や「ダウン攻撃」,あるいは「掴み&プロレス技」で,フィニッシュするという流れだ。
ここでスロットの絵柄が揃うと,「ダークサイドモード」が発動し,敵の動きが遅くなる「ストロベリー・オン・ザ・ショートケーキ」,前方にフォースの波動を飛ばして攻撃できる「ブルーベリー・チーズ・ブラウニー」,周囲の敵を一掃できる「グーズベリー・シュガー・ドーナッツ」,そして虎に変身して攻撃できる「クランベリー・チョコレート・サンデー」といった“必殺技”のようなものを繰り出せる。
とくに,クランベリー・チョコレート・サンデーは,初代および4代目タイガーマスクのテーマ曲「おまえは虎になれ」を,比喩ではなく真の意味で体現した必殺技と言っても過言ではないだろう。
例えば前作では,ランキングバトルに挑むには,かなりの額の“諸経費”を振り込む必要があり,これを稼ぐべく,「バイトミッション」や「殺しのミッション」をこなす必要があった。
そのため,ストーリーの本編を進めるには,バイトミッションや殺しのミッションに,それなりの時間を費やす必要があったのである。
しかし,本作ではそういった苦労をすることなく,その気になれば本編のストーリーだけを進めていくことが可能だ(そりゃまあ,前作では諸経費が……っていうネタバレはやめときます)。これによって,ゲーム進行のテンポが,相当速くなっている。
前作のバイトミッションにあたる,「ジョブミッション」も用意されている。ただ,前作とは異なり,そのほとんどは見た目やサウンド,各種判定の厳しさまで含め,懐かしの8bitゲームのようなミニゲームだ。
害虫駆除やパイプラインを繋ぐものなど,そのバリエーションはアクションゲームからパズルゲームまで多岐にわたる。そしてどれもが,なんとなく懐かしく,それでいて適度に難しく,ついつい時間を忘れて没頭してしまうようなものばかりとなっている。
ジョブミッションを選択するときには,カートリッジ(……何の?)に「フーッ」と息を吹きかけ,「ガチャッ」と本体(……何の?)に差し込むSEまで用意されているなど,やたらと細かい部分へのこだわりも必見だ。
ここで,ランキングバトルに諸経費が必要ないならば,何のためにジョブミッションをこなすのか? と,疑問に思う人もいるかもしれない。
ジョブミッションは“お仕事”なので,成果に応じた報酬を得られるのだが,その使い道は“新たな武器の購入”か“トラヴィスの強化”,ついでに“トラヴィスのファッション”の三つである。
ゲーム内の「エアポート51」というショップでは,トラヴィスが身につけられる衣類などを購入でき,見た目を変えて気分を変えるといった楽しみ方ができる。
また,前作でもおなじみだった「ナオミ研究所」では強力な武器を購入できるし,「ライアンジム」ではライアン山崎(ケビンではない)の指導のもと,トラヴィスの体力や攻撃力を強化できる(8bitテイストあふれるミニゲームが待っている)。
つまり,ランキングバトルで苦戦した,あるいは苦戦しそうだと判断したときには,ジョブミッションでお金を稼ぎ,武器なりトラヴィスなりを強化すれば,攻略しやすくなるというわけだ。
ちなみに前作では,サンタデストロイ内を徒歩かバイク「シュペルタイガー」で移動する必要があり,移動にもそれなりの時間を要していた。だが,本作ではそこも改善されており,メニューから移動先を選ぶだけになっている。
サンタデストロイ内を無目的にうろうろしてみたり,シュペルタイガーで歩行者に突っ込んで驚かしてみたり……といった楽しみこそなくなってしまったが,このこともまた,ゲーム進行のテンポの改善に寄与しているのは確かだ。
前作の要素をばっさり削ってしまうのには,さぞかし勇気がいることと思うが,それによって前作よりも確実に遊びやすくなっている以上,その判断はまさに“英断”と言って良いだろう。
……と,ここまで読むと,NMH2というゲームはひたすらランキングバトルに挑み,メインストーリーをサクサク進めていくだけの作品に思えるかもしれないが,そういうわけではない。
前述のとおりジョブミッションは,本来の目的を忘れて没頭できるミニゲームに仕上がっているし,それ以外にも,遊びの要素は用意されている。
例えば,トラヴィスが自宅として利用している「モーテル“ノーモアヒーローズ”」では,トラヴィスが大好きなアニメを原作にしたシューティングゲーム「ビザールジェリー5」をプレイ可能だ(クリアすると,アニメ版「ビザールジェリー5」のオープニングを視聴できるようになる)。
さらに,飼い猫である「JEANE」をダイエットさせるためのメニューも,ミニゲームになっている。ダイエットに成功すると,何やらいいことがあるようだ。
バックドロップに込められた
プロレス技への思いを勝手に解釈
このように,本作は前作のキャラクターや世界観,基本的なシステムは踏襲しつつ,より遊びやすい作品に仕上げられている。だが,やはり無視できないのは,プロレス技の位置付けだ。
本作では,トラヴィスの自宅にある棚に,時折プロレス雑誌「週刊バックドロップ」が追加される。これを読むことで,新たなプロレス技を習得できるのだが,その多くはバックドロップ系の技となっている。
バックドロップ(日本名:岩石落とし)とは,相手の背後から脇の下に頭を差し入れて胴体を両腕で抱え込み,背後に投げる大技だ。日本では,“鉄人”ルー・テーズが力道山を沈めた技としても有名である。
また,使い手によってさまざまなバリエーションが存在し,NMH2の序盤でもトラヴィスは,「へそで投げるバックドロップ」や「捻り式バックドロップ」を習得,および使用できる。
基本的に単純な技であるため,実際のプロレスでは,繋ぎ技として使用されることも多いが,相手を後頭部から地面に叩きつけるという危険な技であるのも確か。頭部と頸部に大きなダメージを与えることが可能で,使い手によっては一撃必殺のフィニッシュホールドにもなりうるのだ。
ある意味において,プロレス技における基本中の基本でありながら,フィニッシュホールドでもあるバックドロップ。それが,NMH2では大きくフィーチャーされているのは,ともすれば相手を文字通り真っ逆さまに落としあう競技になりがちな現代のプロレスに対する,アンチテーゼとでも言うべきメッセージが込められているからなのかもしれない……。
という余談はさておき,本作におけるプロレス技も,前作におけるそれと同様,攻略するために必ず使わなければならないものではない。
ただ,ボタンの連打に終始してしまいがちなゲームプレイにおいて,ある種のアクセントになっているし,何よりその都度爽快感を得られるという意味は大きい。
そしてそのためには,Wiiリモコンとヌンチャクの加速度センサーを利用した操作が重要であると感じられる。プロレス技は,相手が立った状態で気絶したタイミングなどに,Bボタンで掴んでから,画面に表示される矢印の方向に,Wiiリモコンとヌンチャクを振ることで繰り出せるの。前作でもそうだったように,矢印に合わせて手を振る方向が,プロレス技をかけるときの腕の回し方に準じており,理にかなっているのだ。
本作はクラシックコントローラProでの操作にも対応しているが,やはりプロレス技を繰り出すときには,LRスティックによる入力より,Wiiリモコンとヌンチャクを握った両手を勢いよく振るほうが,“プロレス技を出している”感覚を味わえるだろう。
確かに指先だけでの操作に比べると,やや疲れる気もする。しかし,だからこそ綺麗に技が決まったときの喜びが,大きなものになるのである。
空白の3年間を描いた映像作品を含む
限定版「HOPPER'S Edition」も予約受付中
先にも書いたとおり,前作でやや残念だったポイントが解消されているだけでなく,本編の進行がスムーズで,ストーリーにも厚みが出ている本作。ロード時間も短く,プレイを妨げることはない。
そして,本編の途中では前作に敵として登場したシノブ・ジェイコブス,そしてトラヴィスの双子の兄であるヘンリー・クールダウンを,プレイヤーキャラクターとして使用できるステージがあるなど,随所にプレイヤーを飽きさせない工夫が盛り込まれている。
ここでは詳しく言及しないが,ランカー戦も一筋縄ではいかないものばかりで,意表を突かれることが一度や二度ではない。
一見すると荒唐無稽にもほどがある要素の数々が,すべてきれいにまとめられているのも,NMH2の良さである。クリアまでに数十時間を要する“大作”に比べ,比較的短時間で終えられる作品ではあるが,それでもクリア時の満足度は非常に高いのは,一つ一つが丁寧に作り込まれているからこそだろう。
そんなこんなで,Wiiを持っていて,アクションゲームが好きな人には,自信を持って本作をオススメしたい。たとえ前作を遊んだことがなくても,一度遊び始めたらグイグイと物語に引きつけられることだろう。
発売まで少し時間はあるが,予約などをしつつ,楽しみに待っていてほしい。
ちなみに筆者は,前作と本作の間を描いた映像作品「NO MORE HEROES 1.5」が含まれているほか,ミニサントラCDや設定資料集などもセットになった,限定コレクターズBOX「HOPPER'S Edition」(関連記事)を予約済みだ。
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