インタビュー
【PR】「二ノ国 白き聖灰の女王」に込められた思い,そしてスタジオジブリから学んだこと。レベルファイブの日野晃博社長と本村 健チーフディレクターに聞く
アクション性と戦略性の両立を目指し
DS版とは異なる戦闘システムを採用
4Gamer:
ちょっと違う話題のことも聞かせてください。
DS版とPS3版の大きな違いとして,戦闘システムが上げられると思うんですが,それぞれ現在の形のものを採用した理由を教えてください。
DS版は,比較的オーソドックスな戦闘にしました。手軽に心地良いテンポで遊べるものでありつつ,タッチペンを使ってイマージェンをマス目状に配置するというところが,二ノ国らしさのキモになっています。あの配置を生かすために,敵の攻撃方法のバリエーションには気を使いましたね。
それに,配置を工夫するという仕組みは,対戦を盛り上げる要素になるだろうという狙いもありました。
4Gamer:
何となく将棋っぽいような感じがありますよね。
本村氏:
ええ。ちょっとシミュレーションっぽい感じで。でも,あまりその味を濃くしてしまうとゲームとしては難しくなってしまうので,ややあっさりした感じに収めています。
4Gamer:
戦闘を楽に進めるには属性的な相性を考慮したほうがいいけれど,さほど属性を気にしなくても何とかなるバランスになっていると感じたんですが,それは難しくしすぎないため,なんですか?
本村氏:
おっしゃるとおりです。遊んでいただく方の中にはさほどゲームに慣れていない女性も多いだろうという予想があったので,毎回戦略を考えなければならないようだと,途中で投げ出されてしまうだろうと。
なので,基本的には「おまかせ」ボタンを押しているだけでも,ある程度は戦えるというバランスにしています。
4Gamer:
ではPS3版で,DS版と大きく異なる戦闘システムを採用した理由を教えてください。
本村氏:
インタフェースの違いもあって,同じものをそのまま持って行くことはできないため,オリジナルのものを考えようというのがスタート地点だったんです。
4Gamer:
最初の時点で違ったわけですね。
本村氏:
ええ。ただ今の形になったのも,改良に改良を加えていった結果です。
PS3版も実は当初はコマンドバトルだったんですが,気持ち良さやテンポの良さが出なかったんです。そうやって悩んでいる時期に,イマージェンを自由自在に動かせたら面白いんじゃないかというアイデアが出て,そちらにシフトしていきました。
ただそこでも,DS版と同じようにゲームが得意な人ばかりが遊ぶわけではないと考えて,アクションが苦手な人でも楽しめるようにしたつもりです。アクションとコマンドのバランスはとても難しくて,本当に何度も作り直しました。
4Gamer:
どうしてもアクションに寄りすぎてしまったり,逆にコマンドに寄りすぎてしまったり……といった感じだったんでしょうか。
本村氏:
ええ。アクション要素が強くなるとアクションが得意な人にはいいんですけど,RPGっぽい戦略性がなくなってくるんです。
そこで,足の速さを変えたり,コマンドをカスタマイズする仕組みを入れたり,チャンスのときとガードすべきときを分かりやすくしたりすることによって,戦略性を出しました。
かといってザコ戦で戦略性を出し過ぎても,ちょっとしんどくなってしまいますから,ザコ戦に関しては出来るだけサクサク進むように調整しています。
4Gamer:
ゲーム全体としてテンポの良さを感じるのは,ザコ戦がサクサク進むからこそなのかなと感じました。
本村氏:
そこはかなり意識しましたね。たぶん同じ時間と同じ見た目でも,イマージェンを自分で動かさない戦闘だと,あのテンポ感は得られなかったと思うんです。自分で動かしている感覚だからこそ,間が持つというか。
先ほどの話になぞらえるなら,これもプレイヤーに“仕事をさせる”という演出なんですよね。
4Gamer:
なるほど。見ているだけだったら,何となく冗長に感じられたかもしれませんが,自分が動かしているとその時間に意味を見いだせます。
ほかにもPS3版では,オリバー,マル,ジャイロといった人間のキャラクターが,戦闘において重要な地位を占めているのも,DS版と違う部分かと思うのですが,こうした仕組みにしたのは何故ですか?
本村氏:
日野からのオーダーです(笑)。
人間同士が一緒に戦っているところを表現して,“仲間感”を出したいということだったんですね。そのために,人間を必ず戦闘に出すことを決めました。
なおかつ,イマージェンもちゃんと使わなければいけないわけで,ここでもやっぱり試行錯誤を繰り返した結果,人間とイマージェンのHPを共通化して,プレイヤーが把握するべき情報を最低限に抑えることにしたんです。
4Gamer:
HPの共通化は,かなり思い切ったアイデアだと感じました。
本村氏:
ゲームに慣れている方ほど,そう感じますよね。最初の段階ではイマージェンにもHPゲージがあったんですが,オリバー,マル,ジャイロがそれぞれイマージェンを出すと,プレイヤーは6キャラ分のHPを把握しなければなりません。そうなると,ちょっと分かりにくいと思うんです。
そこで,イマージェンは自分の心が生み出した存在であるという基本設定に立ち返りました。画面ではルッチが走り回っているんだけれど,実はルッチに乗り移った自分が走り回っているという感覚を再現できればいいかな,と。映画「アバター」を見て,意識した部分もあるんですけど(笑)。
4Gamer:
実際,6キャラ分のHPを管理しなければならないとなると,ちょっと戦略的な色合いが濃すぎるものになったのかもしれません。
そうなると,ゲーマーではない層にも遊んでもらおうというときに,それが障壁になりかねないですよね。
本村氏:
ええ。なので,とりあえず自分さえ見ていればいいというゲームになっていると思います。慣れてきたらマルやジャイロのHPにも気を配って,イマージェンを入れ替えて……という遊び方もできると思いますが,まずはオリバーが死なないように頑張れば,とりあえず何とかなるバランスにしましたから。
やっぱりジブリファンの方であんまりゲームをされない方でも,ジブリっぽいゲームが出たということで手にとってもらえるかもしれないですし,そこで分かりにくいことはしたくないんですよね。レベルファイブの作品は,全体的にそういうコンセプトなんですけど。
非ゲーマー層を視野に入れつつ
昔ながらのRPGのような歯ごたえも
4Gamer:
とはいえ,ゲームになじみのない層だけでなく,ゲームファンも楽しめるようにはなっていますよね。そこのバランスは,どうやって取っていったんでしょうか?
本村氏:
これもひたすら,バランス調整をして,プレイをして,意見を聞いて……みたいなものを繰り返していくしかなかったですね。
ただ,PS3版に関してはちょっと難しめになっているかなとは思います。というのは,RPG本来の面白さを追求したいという思いが,チーム全体にあったからなんです。
僕らが懐古趣味なのかもしれないですが,昔のRPGだと,冒険する場所が変わったら急に敵が強くなって歯が立たないみたいなところがありましたよね。
今回,そういうのを再現しようと狙ってみたら,とくに砂漠に出たあたりで急に難しくなってしまったかな……と。
4Gamer:
ゲームに慣れている者として違和感はありませんでしたが,確かに慣れていない人にとっては厳しいかもしれませんね,あのあたりは。
本村氏:
命からがら砂漠の街に飛び込んで,そこを拠点にレベルを上げ,お金を貯めつついい装備を買って,周囲の敵の強さに追いついていくような喜びを感じてもらいたいんですよ。
実は,もうちょっと難度を低くしようという話もあったんですけど,あえてここで「こういうゲームですよ」ということを,プレイヤーに知ってもらいたかったんですよね。一応,シズクから「新しい土地は危険やで」みたいなフォローはさせたので,きっと分かってもらえるだろう,と。
4Gamer:
かつて多くのRPGでは,新しい土地に行くこと自体,ある種の緊張を伴う行為でしたよね。そういう雰囲気を狙ったということですか?
それはありますね。そのうえで達成感も味わってほしいですし。
だから,普通にやっていれば新しい土地に初めて踏み入れたときに,そこで売っている一番いい装備品を買える……みたいなことではなく,その土地にちょっと滞在して頑張ってお金を溜めないと,いいものは買えないというバランスにしています。
ただ,達成感のほうを重視しすぎると,ある程度は難しくする必要があって,そうすると投げ出してしまう人もいるので,難しすぎないようにはして……というギリギリのところを狙ったつもりです。
4Gamer:
極端な話,新しい土地で苦労したら前の土地に戻ってレベルを上げて,再チャレンジするというのもRPGではアリですよね。アクションゲームでは,急に難しくなるとどうにもならなかったりしますが。
本村氏:
もしも詰まったら,そうやってくれることを信じて,ちょっと難しくしました。
かといって,ゲームに慣れた人なら,「うわこれ無理!」っていうようなゲームではないはずなんですけど。
4Gamer:
遊びやすいだけでなく,時折ちゃんとゲーム的に苦労をさせてくれて,それを乗り越えたときに味わえる達成感まで含めて,狙い澄ました作品だなぁという気がします。
ところで,二ノ国という作品を語るうえで,魔法指南書「マジックマスター」の存在は無視できません。DS版では実際の書籍が付属する形でしたが,PS3版ではこれをゲーム内に統合したのは何故ですか?
本村氏:
まず,DS版と同じことをやりたくなかったというのは大きいですね。ルーンを描く方法として,PlayStation Moveを使うという案もあったんですが,それはそれでハードルが上がってしまいます。
4Gamer:
全員がPlayStation Moveを持っているわけではないですし。
本村氏:
それで,どうしたものかと考えているタイミングで,SCEさんが当時開発していた「PlayView for Games」のプレゼンをしてくださったんです。それを見て,マジックマスターとの相性がいいのではないかということで,採用を決めました。実物の本ならではの良さはないですが,ゲームの中に入っているのであれば,実物の本では得られない手軽さもあります。
それに,デジタルで本を読むというのは,インタフェースの部分でもちょっとややこしかったりするものですが,SCEさんの協力を得て,ストレス無く読める形にできましたね。
4Gamer:
よく出来ているなぁと思う半面,むしろ据え置き機のほうが実物の本との相性も良いのでは? と思ってしまいました……。
本村氏:
それはあるかもしれませんね(笑)。
でもPS3版では,ページを集めていくというゲームらしい仕様にも繋がりましたし,拡大していくと動いている絵が見えるという面白さにも繋がったので,これはこれでやって良かったと思っています。
4Gamer:
さて,そろそろお時間ということで,最後の質問をさせてください。
二ノ国 白き聖灰の女王という作品を,どんな人に楽しんでほしいと考えていますか?
本村氏:
レベルファイブというか,僕個人の思いとして,まずRPGファンの方に遊んでいただきたいと思っています。僕は30代ですが,ただ昔を懐かしむだけではなく,「RPGってこういうところが面白かったよね」という要素を,凝縮するつもりでスタッフ一同頑張りましたので。
そして,ビジュアルも相当頑張りましたので,ジブリファンの方,こういう世界観が好きな方なら,きっと満足していただけると思います。あと,芦田愛菜ちゃんのファンの方もぜひ(笑)。
4Gamer:
DS版を遊んだことがなくても,楽しめる作品ですよね?
もちろんです! DS版をやったことのある方は,違う部分を見つける楽しみがあると思いますが,やっていなくても二ノ国という作品の世界観を100%楽しんでいただけるように作りましたので,ご安心ください。
そして最後に,「二ノ国 砂漠のオアシスカレー」が本当に美味しいので,こちらもぜひ食べてみてください(笑)。
4Gamer:
カレーは数量限定販売ですから,店頭で見つけたら即確保しておいたほうが良さそうですね。
ということで,本日はありがとうございました。
インタビュー中にも触れているが,二ノ国 白き聖灰の女王という作品は,アニメーションや音楽が豪華なだけでなく,RPGとして非常にオーソドックスで遊びやすい作品に仕上がっている。要所要所にゲーム的な難所も用意されており,それを乗り越えていくときの達成感を味わわせてくれるのも嬉しい。
年末年始のまとまった休みに,じっくりと腰を据えてゲームを遊ぼうと考えている人は,そのプレイ候補の一つとして本作を検討してみてほしい。エンディングまでたどり着いたとき,それまでに費やしてきた時間を大切に思える……そんな作品だ。
3Dでもジブリっぽい。町やフィールドの雰囲気が素晴らしい「二ノ国 白き聖灰の女王」をプレイムービーで紹介してみる
「二ノ国」公式サイト
- 関連タイトル:
二ノ国 白き聖灰の女王
- 関連タイトル:
二ノ国 漆黒の魔導士
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