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[GDC 2014]Ubisoftのオンラインゲーム担当者が分析する「World of Tanks」成功の秘密とは? 「World of Tanks: An Outsider's Analysis」をレポート
グラフックスアーティストからプログラマー,デザイナー,ディレクター,そしてプロデューサーと,その職歴も多岐にわたり,最近では「The Settlers Online」「Anno Online」,そして「Silent Hunter Online」など,基本プレイ無料のオンラインゲームも担当しているという。今回のレクチャーは,近年,講演本数が増えてきた「Free to Play Design & Business Summit」のトラックの一つで,World of Tanksをケーススタディに成功の要因を分析するという内容だった。
戦車の中には,1分間に1発しか弾を撃てないものもあり,全体的にゲームはスローペースで進む。個人的には,1試合はそれほど長くないという印象だが,Weidemann氏は本作を「年寄り向けの『Counter-Strike』だ」と述べている。
プレイヤーは3人までのグループ(小隊)を組めるが,マッチングの際はグループ内の一番高いTier(戦車のランクのようなもの)が基準になるため,場合によっては自分よりも高いTierの敵戦車と戦わなければならないこともある。そこで,お互いをフォローしやすいように,グループの最大数を3人に制限しているのだろうと分析していた。
Weidemann氏は,本作の面白い点として,マルチマッチが可能であることを挙げた。マルチマッチとは,一つの戦いで撃破されたとしても,その終了を待つ必要がなく,すぐにガレージに戻って別の戦車に乗り,新しい戦いに臨めるというシステムのことだ。複数の戦車を保有していることが前提となるが,これによって,テンポよくゲームが楽しめるのだ。
現在,登録アカウント数は7500万と発表されているが,このすべてがアクティブユーザーというわけではない。Weidemann氏は全世界のアクティブユーザー数を680万〜850万人と見積もったうえで,その約25%にあたる170万〜210万人が課金していると想定。それぞれの課金額を35ドルだとすると,月間の売上は5900万〜7300万ドル,年間では7億〜8億7000万ドルとなる試算を示した。
そんなWorld of Tanksの課金アイテムは,言うまでもなく「Gold」。リアルマネーで購入したGoldと引き換えに,保有戦車の台数を増やしたり,戦車兵をトレーニングしたり,砲弾などの消耗品を購入したりできるのだが,Weidemann氏が指摘したのは「Goldで入手可能な戦車は,必ずしも強くない」という点だ。むしろ,同じTierの戦車に比べて,性能は低めに設定されている。つまり,お金を払えば誰しもが強くなれるわけでなく,無課金でも時間さえかければ,まったく問題なく戦えるのだ。
これはすなわち,課金することで時間を購入しているのだと,Weidemann氏は述べた。Tierが高くなればなるほど,砲弾や整備にかかる費用が増えていくが,Goldを購入してプレミアアカウントに移行すれば,獲得できる経験値とクレジットが1.5倍に増えるため,黒字運営が可能になる。コストと時間の兼ね合いを考えると,熱心なプレイヤーになるほど課金したほうが楽になるデザインである,とWeidemann氏はまとめていた。
やや駆け足気味だったが,以上でWeidemann氏の講演は終了した。ゲームの細々とした説明もあったが,個人的には「これが誰も知らなかったWorld of Tanksの成功の秘密だ(バーン!)」みたいな内容を期待していただけに,ちょっと物足りない印象だった。
もっとも,普通に考えてそんなものがあるわけはないのだろうが。オンラインゲームの成功の要因とは,結局のところ,こだわるべきところにこだわったゲームを作り,適切なマネタイズの仕組みでアイテムを提供する,といったあたりに落ち着きそうではある。
むしろ,冒頭にも書いたように,これまでのGDCではあまり見られなかった「他社のゲームを分析する」という点が面白い。ヨソの作品の売上まで分析したうえで,それを大々的に発表するというあたりが,欧米ゲーム業界だなという気がした。もちろん,その分析をもとに自分達の作品にどう活かすのか,といったことは実践されているのだろう。
それはともかく,World of Tanksに続き,「World of Tanks: Xbox 360 Edition」のサービスも開始された。さらに,「World of Warplanes」「World of Tanks Blitz」という新作が控えているWargaming.net。World of Tanksに匹敵するメガヒットを飛ばせるか,今後もその動向に注目していきたい。
「World of Tanks」公式サイト
4Gamer「GDC 2014」特設ページ
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