レビュー
「バトルフィールド 3」を快適にプレイできるGPU選び(後編)〜細かな謎を解明しつつ,安定した高fps環境を目指す
今回は,前編で残された課題となる「FXAA」(Fast Approximate Anti-Aliasing),そしてグローバルイルミネーション周りをすっきりさせつつ,「『最高』グラフィックス設定にこだわらず,安定した高fpsを維持する前提に立った場合には,どの程度のGPUが必要か」まで考えてみよう。
「バトルフィールド 3」を快適にプレイできるGPU選び(前編)〜新世代グラフィックスを堪能するには何が必要か。GPU全11製品を試す
GV-N56GSO-1GI Ultra Durable VGA PLUS準拠のクロックアップ版GTX 560カード。クーラーはWINDFORCE 2X 実勢価格:1万9000〜2万1000円程度 |
GV-N550OC-1GI クロックアップ仕様となるGTX 550 Tiカード。品質規格Ultra Durable VGA準拠となる 実勢価格:1万1000〜1万4000円程度 |
GV-R685OC-1GD HD 6850搭載のクロックアップモデル。Ultra Durable VGA準拠で派手なWINDFORCE 2Xを採用 実勢価格:1万4000〜1万5000円程度 |
GV-R677SL-1GD ファンレスのHD 6770カード。大型のパッシブクーラーを搭載する。Ultra Durable VGA準拠 実勢価格:1万4000〜1万5000円程度 |
GV-R675OC-1GI クロックアップ仕様のHD 6750カード。Ultra Durable VGAに準拠したカード設計が特徴 実勢価格:1万1500〜1万2500円程度 |
そのほか,テスト環境も表のとおり,変更なしである。「GeForce Driver」では,北米時間11月10日に「Release 285.79 Beta」がリリースされているが,今回は前編とテスト環境を揃えるため,アップデートしていない。
以下,グラフィックスカードは,「GeForce」「Radeon」を省略したGPU名で表記することをお断りしつつ,テストに入っていこう。
FXAAの効果はGeForceとRadeonで変わりなし
むしろFXAAでは極めて高い性能に注目
というわけで,前編で態度を保留したFXAAからだが,まずはその内容について,下記のとおり2つ訂正しなければならない。前編の本文はあえて修正しないでおくので,この点は十分に注意してほしいと思う。
- FXAAはGeForceとRadeonのどちらでも利用できる
- グラフィックス設定「最高」でもFXAAは有効。FXAAと4x MSAAが併用される
そして,FXAAはポストプロセスなので,レンダリング中に処理される旧来的なMSAA(Multi-Sampling Anti-Aliasing)とは併用が可能だ。前段でMSAA,後段でFXAAという流れである。実際,前編のテスト条件として用いたグラフィックス設定「最高」だと,4x MSAA+FXAAが適用されている。前編では「4x MSAAのみ」と説明してしまったので,お詫びして訂正したい。
なお,MSAAとFXAAの設定は,BF3の「ビデオ」設定以下に,それぞれ「アンチエイリアス・ディファード」「アンチエイリアス・ポスト」として用意されている。両設定の選択肢は下記のとおりだ。
- アンチエイリアス・ディファード(MSAA):オフ / 2x MSAA / 4x MSAA
- アンチエイリアス・ポスト(FXAA):オフ / 低 / 中 / 高
ここでは,ゲーム側の「ビデオ」−「映像品質」を「低」としつつ,MSAAとFXAAの設定を変えてみた。グラフィックス品質のプリセットを「低」にしているのは,より画面表示が粗くなるので,アンチエイリアシングの効果が分かりやすくなるだろうという判断によるものだ。シーンは斜めの線が多いところを選んでおり,下に示したサムネイルは,その一部をトリミングしたものになる。
アンチエイリアシングを一切適用していない上段左と見比べてほしいが,まず,4x MSAAのみを適用したものだと,ひさしを支える骨組みのところ,とくに横方向へ伸びる骨組み部分にかなりのジャギーが残っている。一方,画像で縦に伸びる骨組み部分にはアンチエイリアシングが適用され,すらっとした見た目になっているのも分かると思う。
そして,下段右,4x MSAAとFXAAの併用時,つまり「最高」プリセットだと,MSAAとFXAAのいいところ取りがなされている。MSAAで得られるシャープさを残しつつ,MSAAでは対応できないジャギーに対処できているわけだ。
要するに,「高」以下のプリセットでは,画面がボケて歪みがちになることを覚悟のうえでFXAAが優先されているということにもなるが,そうまでしてBF3でFXAAが優先されているのはなぜか。その答えは,FXAAが持つ,負荷の低さにあると思われる。
グラフ1は,「ビデオ」−「映像品質」をひとまず「最高」(4x MSAA+FXAA「高」)としたうえで,それをベースにFXAAのみを無効にした状態と,逆にMSAAのみを無効にした状態,そして両アンチエイリアシング技法を無効化した状態の4パターンで,GPUごとの平均フレームレートを追ったものになる。
シーンは前編でテストした3シークエンス中で最も負荷の高かった「THUNDER RUN」。解像度は1600×900ドットに固定してあるが,もうこれは一目瞭然。GPUを問わず,FXAAを「高」設定にしたときのフレームレートは,アンチエイリアシング無効時から1〜3fps程度しか落ち込んでいない。MSAAとの負荷の違いは明らかだ。
また,(先ほどそう推測はしたが)GeForceとRadeonで,FXAAの有効化による“インパクト”に差がないのも注目すべきだろう。おそらくFXAA有効時は同じコードをシェーダに流し込んでいるのだと思われるが,ポストプロセス性能でGeForceとRadeonにそう大きな違いはないので,なるほどという結果である。
ともあれ,フレームレートががっくりと落ち込むMSAAに比べると,FXAAは桁違いに性能の高いアンチエイリアシング技法だ。なので,「ひとまず『最高』プリセットを選んだところ,フレームレートがややキツいかも」と思った場合は,「アンチエイリアス・ディファード」設定を変更するだけで,見違えるようにフレームレートを引き上げられることを憶えておくといいだろう。
なお,「アンチエイリアス・ディファード」を「高」にしてもFXAAによるフレームレート低下はせいぜい3fpsなので,3fpsが“致命傷”になるほど低い性能のGPUを使っているのでなければ,「アンチエイリアス・ディファード」は,見た目の好みだけで選んでしまって問題ない。
グローバルイルミネーション効果で
GeForceとRadeonの違いはない
続いて,注目されているグローバルイルミネーションについて見てみよう。BF3ではCUDAに最適化されているというグローバルイルミネーションのミドルウェア「Enlighten」が用いられており,グラフィックスの質向上に大きく寄与している。
そのため,グローバルイルミネーションの効果にGeForceとRadeonで違いが出るのでは,あるいは,同じGPUファミリーでも上位モデルと下位モデルで違いが生じるのではと想像していたのだが,結論からいうと,違いはさっぱり分からなかった。下に示したのは,GTX 570とHD 6750を用い,グローバルイルミネーションの違いが生じそうなシーンでスクリーンショットを比較したものだが,違いのないことが分かってもらえると思う。
そういった可能性の証左となりそうなのが,下に挙げる2つの事実だ。
- 前編で紹介した組み込みのパフォーマンスメータから確認する限り,GeForceとRadeonとで,CPU負荷の大きな違いは確認できない
- 今回用いている4コアCPU「Core i5-2500K/3.3GHz」で,動かすコアの数を減らしていっても,Radeon搭載環境でフレームレートが極端に落ちたりはしない
まず1.。今回は,前編である程度似たスコアに落ち着いたGTX 560 TiとHD 6970を用い,前編と同じテスト条件でTHUNDER RUNシークエンスのテストを実行。そこで,パフォーマンスメーターを確認してみたが,両者でCPU負荷推移に大きな違いはなかった。
次に2.だが,BF3がシングルコアCPUをサポートしておらず,1コア設定では起動不能になるため,BIOSから4〜2コアを切り替えながら1.と同じ条件でテストしてみた結果がグラフ2である。ご覧のとおり,CPUコア数の違いによるフレームレートの変化は生じていない。
「これが理由」と断言できる要因までは見つけられていないものの,Enlightenの存在が,GeForceとRadeonで見栄えやフレームレートの違いを生じさせている可能性は,少なくとも現時点では排除してよいのではなかろうか。
※2011年11月14日追記
NVIDIAから「EnlightenはCUDAアクセラレーションに対応しているが,BF3で実装されているEnlightenはCUDA対応前のバージョンである。そのため,『GeForceとRadeonでグローバルイルミネーションの効果を比較したときに違いが出ない』というテスト結果は正しい」というコメントが取れたので,報告しておきたい。
ただ,少々余談気味に続けておくと,CPUコアの変更は,確かにフレームレートへの影響はないものの,実際のゲームプレイだと結構な違いを体感できた。たとえば,マウスを大きく振って視点を変えたり,走ったりといった,画面に大きな動きがあるとき,2コア動作にまで落とした状態では,ガクッと一時停止するような挙動を示すことがあったのである。4コア設定時だとそういった挙動を感じなかったので,CPUのコア数は,フレームレートとは別のところで体感性能を左右するようだ。
「ビデオ」設定「中」なら
多くのカードで最低60fpsを確保
今回試した「ビデオ」設定は「中」。下に示したとおり,影,LoD(Level of Detail)には大きな違いが生じるものの,ゲーム世界全体の破綻にまでは至っていない,ギリギリのレベルを保てているというのが,「中」設定を選んだ理由である。
街中のシーンより。「最高」と「中」では影の表現が大きく異なり,とくに壁やオブジェクトに落ちる影のリアリティで違いが顕著だが,カメラに近いオブジェクトのテクスチャ品質は変わらない | |
こちらは前編でも用いたTHUNDER RUN。FXAA処理の違いや,近景と遠景の間,“中景”部分のディテールにもけっこうな違いはあるが,「中」でも大きな破綻があるわけではない |
フレームレートの計測に用いたシークエンスはやはりTHUNDER RUN。テスト方法はもちろん前編と同じで,グラフのバーは,GPUごとに最低フレームレートと平均フレームレートを重ねて示すことにした。
その結果はグラフ3,4のとおり。最小フレームレートに注目すると,GeForceはGTX 560以上,RadeonはHD 6950以上で,1920×1080ドット設定時の最低フレームレートが60fpsを超えており,安定して60fps以上のフレームレートを維持できると期待できることが分かる。テスト結果から推測するに,平均70fps弱出ていれば,最低60fpsをクリアできそうな印象だ。
また,上位陣は順当にスコアを伸ばしており,120Hz駆動対応のディスプレイを持っている場合,恩恵を受けられることも見て取れよう。
やや気になったのは,1600×900ドットでGeForceの上位モデルにおけるフレームレートのブレが大きくなった点だ。ビデオ設定を「中」くらいにした場合,負荷がやや軽すぎることになって,ブレが大きく出てしまうのかもしれない。
そのブレを除くと,前編で示した「最高」設定時と比べて,スコアの大まかな傾向が変わっていないことも分かるだろう。「ビデオ設定」を「中」にするとRadeonのスコアがより伸びるとかそういったこともなく,フレームレートのスケールが変わるだけという印象である。
グラフィックスカード&設定の選び甲斐があるBF3
これから買うならGTX 560 or HD 6950以上で
というわけで,前後編の2回にわたってBF3とGPUの関係を調べてみた。今回は,BF3に向けてグラフィックスカードを買い換える前提で,現行世代のGPU――もっともHD 6770とHD 6750はATI Radeon HD 5700シリーズのリネームだが――をピックアップしたが,実際には,グラフィックス設定さえ適切に落とせば,プレイアブルなフレームレートを確保することはそれほど難しくない。たとえば,筆者個人はGTX 280やHD 4850搭載環境でBF3をプレイしているが,FXAAもちゃんと有効にしつつ,プレイアブルなフレームレートを確保できている。
「フルHDとなる1920×1080ドットでのゲームプレイを前提に検討する場合,GeForceならGTX 560以上,RadeonならHD 6950以上を搭載した製品がお勧め」というのが本稿の結論だ。
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