インタビュー
【PR】「ファンタシースターオンライン2」で“オンラインゲームの未来”を見せたい――プロデューサーの酒井智史氏に,クローズドβテスト以降のプロジェクト構想を聞いてきた
2012年初夏のサービスインを予定している,セガのオンラインRPG「ファンタシースターオンライン2」(以下,「PSO2」)では,2012年4月19日より10日間にわたり,クローズドβテストが実施される。
クローズドβテストの概要は,3月26日に実施された発表会のレポート記事などでお伝えしているが,今回,4GamerではPSO2のプロデューサーであるセガの酒井智史氏にインタビューする機会を得て,より突っ込んだ話を聞くことができた。PlayStation Vita版やスマートフォン版との連携による「境界を超えるRPG」構想や,今後の展望などを聞くことができたので,ぜひ最後まで目を通してほしい。
「ファンタシースターオンライン2」クローズドβテスター応募ページ
「ファンタシースターオンライン2」公式サイト
全般的に高評価だったα2テスト
そのフィードバックをクローズドβテストに反映
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。
まずは,2012年1月から2月にかけて実施された,α2テストの所感を教えてください。
テスターの皆さんに楽しんでいただけた,という手応えがあったと同時に,“3つの革命”にも一定の評価を得られたと捉えています。
4Gamer:
具体的には,どのようなところに手応えを感じましたか?
酒井氏:
何といっても,5万人以上もの方にログインしていただけたのが大きかったですね。
2011年8月に実施したαテストでは,実際にログインしたテスターは,全体の約69%だったんです。α2テストでは,ログイン率が少し下がるだろうと予想していたのですが,数字の上では約73%と,むしろ高くなりました。
4Gamer:
同時接続者数も最大2万3000人と,αテストの4倍近い数字を記録しましたね。
酒井氏:
同時接続者数も,1万人を目標に考えていたんですが,その2倍以上の2万3000人もの方に接続していただけたのは,ある意味うれしい誤算でした。サーバーの物理的な限界に迫る勢いが,ひどいラグの発生を招いてしまったのは申し訳ないのですが,おかげ様で,貴重なデータを集めることができました。
4Gamer:
α2テストでの大きな変更点の一つが,キャラクタークリエイトにおけるキャストのモーフィング対応だったと思います。この反響はいかがでしたか?
酒井氏:
もともと,キャストだけパーツ交換方式にするというのは,キャストのクリエイトの楽しさを別軸で考えたいという,開発チームのこだわりによる部分が大きかったのですが,シリーズに慣れ親しんできた方が疑問に感じるのではないか,とも考えていたところがあったのも事実です。
実際に,αテストでいただいたテスターの皆さんのご意見や,モーフィングに対応しない場合,パーツにもっとバリエーションを用意しないといけないといった課題もあるなど,さまざまな要素を考慮した結果,α2テストでは,キャストのキャラクタークリエイトをモーフィングに対応させることにしました。
α2テスト後のアンケートでは,7割以上の方に5段階評価で4以上をつけていただいたので,ご満足いただける内容になったのではないかと思っています。
4Gamer:
α2テストではユーザーインタフェース(UI)が大幅に改善されましたが,それでもα2テスト後のアンケートでは,改善要望が多いように見受けられました。これはどのように受け止めているのでしょうか?
酒井氏:
たとえば,α2テスト段階のUIは,キーボードとマウスでの操作なら気にならないレベルでも,コントローラでの操作に慣れている方からすると,“手数”が多いことがダメだと評価されたのだと分析しています。
正直,私達としては,これまでのシリーズで使っていたUIに満足していたわけではなく,刷新したいと常々考えていたんです。そのため,新しい挑戦として取り組んでいるのですが,一方では,シリーズ経験者の方への配慮も必要です。
キーアサインの制約などもありますが,UIに関しては,まだまだ改善の余地があると考えていますから,今後も変更を加えていきます。
4Gamer:
そのほか要望として多く挙げられたものに,武器カテゴリやスキルなどをもっと強化してほしい,というものがありました。現状はどのような予定になっているのでしょうか。
酒井氏:
正式サービスで一定のボリュームを確保できるよう,いろいろと準備はしています。フォトンアーツ,スキルについてはクローズドβテストでも追加しますし,サービスイン後には,さらに武器カテゴリーなども加えていき,現状の計画では初代PSOくらいには増える予定です。
ただ,「ファンタシースターユニバース」や「ファンタシースターポータブル2」などで蓄積してきたものにさらに足していくことで実現できた,「ファンタシースターポータブル2 インフィニティ」のようなすごいボリュームを,最初から期待されるのは少し厳しいですね。
「PSO2」では,武器のバランスなどを見直しつつ,バトルシステムも,モデリングもすべてゼロから作っている部分ばかりなんです。また,PCのシェーダや高解像度表示に堪えるクオリティのデータを作るには,PS2やPSP用データの3倍近い手間がかかります。そういう事情もあって,最初から大きなボリュームを提供することは,なかなか難しいんです。
4Gamer:
なるほど。
正式サービス時にどのくらいのボリュームを用意するかは,プレイヤーのコンテンツ消費速度にもよるかと思いますが,α2テストでのレベル上昇などは,どのような印象でしたか?
予想より早いだろうとは考えていましたけど,長時間連続してがっつりとやり込んでくださる方々は,我々が想定した2倍近いスピードでレベルを上げていましたね(笑)。
ただ,短時間で手軽にプレイできるというのが,「PSO2」におけるもともとのコンセプトの一つですから,その部分はあまり気にしていません。
MOという形式もありますし,長時間連続でプレイしていただく一部の方に合わせるのではなく,ほかのオンラインゲームと両立できるくらいのほうが,ボリュームとしてはちょうどいいのではないかと思っています。
10万人規模がプレイできるサーバーを準備
必要スペックはキャラクタークリエイト体験版で確認を
4Gamer:
先ほど,α2テストではサーバーの限界ギリギリまでプレイヤーがログインしたというお話でしたが,10万人規模でクローズドβテストを実施するということは,サーバーの増強もされるんですよね?
酒井氏:
もちろんです。最初からすべてオープンにするのではなく,まずは人数を絞って,徐々に開放していくというように段階を踏む予定ではありますが,正式サービスとほぼ同じ規模のサーバーで行う予定です。
4Gamer:
PCの動作環境も,クローズドβテスト段階で発表されたスペックでほぼ確定になるんですか?
クローズドβテスター募集時に提示した基準動作環境は,α2テストの時とほぼ同じなんですが,実際には必要スペックはもう少し下げられると思います。ここ1〜2年で買ったノートPCでも,ある程度のスペックならば遊べるようにしたいですね。
また,キャラクタークリエイト体験版はほぼチューニングを行った状態で配信していますので,参考にしていただけると思います。
4Gamer:
比較的,カジュアル寄りなところまで落とし込むんですね。やはり,プレイヤー層を確保することを考えると,必要スペックをある程度下げる必要があるんですか?
酒井氏:
実は,今よりも必要スペックを下げた状態でテストしてみたこともあったんですが,それだと,PlayStation 3やXbox 360のゲームと比べてもかなり見劣りするようなグラフィックスになってしまうんですね。さすがにそれではダメだろうということで,現在のグラフィックスクオリティに落ち着いた,という経緯があるんです。
4Gamer:
素人目線ですが,高精細のテクスチャを用意して,オプションでグラフィックスを変更する,という対応はできないのでしょうか?
酒井氏:
確かに,テスターの皆さんからも「グラフィックスをもっと綺麗にしてほしい」というご意見をいただくのですが,グラフィックスにこだわればこだわるほど,開発にも時間と予算がかかってきますし,データ容量の問題も生じてきます。
それによって回収できない開発費がかかったり,サービス時期が遅れては本末転倒ですし,高精細のグラフィックスを満喫できるスペックのPCをお持ちの方も一部に限られますから,クオリティと開発スピードを天秤にかけると,今お見せしているあたりで調整を付けるのが,一番バランスがいいんじゃないかと考えています。
もっとも,サービスインしてからの業績が非常に良好なら,ハイクオリティのグラフィックスを用意しようという話になるかもしれませんから,絶対にないというわけではありません。
4Gamer:
ちなみに,クローズドβテスト時のクライアントはどのくらいの容量になるんでしょうか?
酒井氏:
クローズドβテスト時のバージョンは,4GB弱になる予定です。サイズが大きいのでダウンロードにも時間がかかるでしょうから,当選通知メールが来た方は,早めにクライアントをダウンロードしていただけると嬉しいです。
4Gamer:
クローズドβテストは,2012年4月19日から28日までの10日間を予定しているとのことですが,今回はどのようなスケジュールで実施されるのでしょうか。たとえば,期間中のメンテナンスやアップデートなどの予定はありますか?
酒井氏:
今回は,クローズドβテスト開始時点で用意したコンテンツをプレイしていただくという主旨なので,テスト途中でのコンテンツ追加はありません。メンテナンスも予定はなく,何らかの問題が発生した場合に実施する,という形です。
4Gamer:
クローズドβテストのデータは,以後のテストに持ち越しする予定はありますか?
酒井氏:
クローズドβテスト終了後,データはリセットします。その結果を踏まえて,また次のテストを行いますが,順調なら次はオープンβテストとなります。オープンβテストでは,正式サービスにそのままデータを引き継げるようにする予定です。
4Gamer:
今回のクローズドβテストでは,ネットカフェでの展開も行われます。これは,テスター抽選に漏れても,ネットカフェに行けばクローズドβテストに参加できるということですか?
酒井氏:
はい。SEGA IDは個別に取得していただくことになりますが,基本的には,期間中に公認ネットカフェに行けば,誰でもテストに参加できるというものです。
「PSO2」のようなMOタイプのゲームは,1〜2時間で区切りがつけられますから,後日公式サイトで公開する公認ネットカフェを訪れた際には,ぜひプレイしていただきたいですね。当選された方が,自宅のPCで動作しない場合も公認ネットカフェに行けばプレイできますので。
まだ少し先の話ですが,ありがたいことに1000以上のネットカフェ店舗さんから「PSO2」を展開したいというお話をいただいています。我々としても,ネットカフェ展開には力を入れていくつもりですので,ご期待ください。
「マターボード」がキーとなって進行が変化
ストーリークエストをプレイすると“展開が変わる”
4Gamer:
クローズドβテストでは,ストーリークエストが初めて遊べるというのが注目ポイントの一つだと思いますが,どのようなものになるのでしょうか?
酒井氏:
順を追って説明すると,まず,ストーリークエストそのものは1人用になります。
4Gamer:
ということは,ストーリーはソロ専用の独立したモードになるんですか?
酒井氏:
いえ,そうではありません。クエストカウンターのクエストリストの中に,ストーリークエストも登場してきます。ストーリークエストはソロ専用で,多人数では受注できません。
そして,物語を拡張するような要素として用意したのが“マターボード”です。ストーリーは,この両者が密接に絡む形になるんです。
4Gamer:
もう少し具体的に教えてもらえますか?
酒井氏:
ストーリーを進めてマターボードを手に入れると,以降,マターボードには,物語のキーになる情報が書き込まれていくことになります。キーとなるものはアイテムだったり,特定の人物に会ってイベントを見るなど様々です。
そのキーとなる要素を達成すると,次のキーを得るための情報が出てくる,という形でマターボードを埋めていくと,次のストーリークエストが発生するなど,ストーリーに変化が現れます。状況によっては,すでにプレイしたストーリークエストでも,途中で発生するイベントが変わることもあるんです。
また,マターボードに関連したイベントなどはストーリークエストをプレイ中以外にも発生します。
4Gamer:
それは,どういうことですか?
酒井氏:
たとえば,マターボードに「あるアイテムを集める」といった表示が出たとすると,そのアイテムはパーティでほかのプレイヤーとの冒険中にも手に入ることがあるんです。そして,該当アイテムを手に入れたあと,次のキーを捜索していると,ストーリークエストとは関係ないクエストを友達とプレイしている最中に,「あの人と会った」というようなキーになるイベントが発生することもあるんです。
そういった感じで,ゲーム中はずっとストーリーを意識できる形になります。
4Gamer:
ソロでもパーティでも,なにかしらの形でストーリーに絡んだ動きがあるということでしょうか。
酒井氏:
そうですね。内容もSFらしさを感じられるもので,シナリオも楽しめるようにしてありますので,楽しみにしていてください。
4Gamer:
クローズドβテストでも,マターボードの要素を実際にプレイできるんですよね?
酒井氏:
もちろんです。ただ,クローズドβテストで公開するのはストーリーの序盤だけで,残りは段階的に公開していくことになります。
4Gamer:
ちなみに,ストーリークエストのボリュームは,現時点でどのくらいあるのでしょうか。
酒井氏:
メインストーリーの台本は,分厚いのが3冊くらいありますし,ほかにも「クライアントオーダー」などがありますから,全体としてのボリュームは,かなりのものだと思います。
そのクライアントオーダーとは,個別に用意されたキャラクターごとの依頼をこなすミッションのようなものです。こちらは依頼を受けて,クエストをプレイする中で条件を達成していく形になります。マターボードの条件になるクライアントオーダーなどもありますので,そちらも楽しみにしていてください。
台本といえば,「PSO2」ではNPCのボイスを20人以上の声優が演じていますよね。全員,ストーリーに関連したキャラクターなんですか?
酒井氏:
そうですね。旬の人をチョイスしたので,スケジュールを押さえるのは苦労しました(笑)。
4Gamer:
緒方恵美さんの演じるシオンが重要な役どころになるそうですが。
酒井氏:
ストーリーのキーとなるキャラクターなんですが,話していることが断片的なので,最初は何を言っているのか分からないくらい,非常に難しい設定になっています。最初に緒方さんに説明したときも,「分からない」と言われたくらいですから(笑)。
4Gamer:
あらためてお聞きしますが,「PSO2」ではどのような物語が展開される予定なのでしょうか。
酒井氏:
「PSO2」では,プレイヤー達がいろいろな星を渡り歩く展開となるのですが,それぞれの星にはさまざまな種族がいて,文化も異なります。サービスイン後は,そうした異種族や異文化との出会いを,ドラマチックに描いていく予定です。
4Gamer:
これまでのシリーズに登場したエネミーなどの要素が,「PSO2」に登場する可能性はあるんでしょうか?
酒井氏:
「PSO2」では,シリーズを知っている方もそうでない方も,新しい世界として遊んでいただけるものを目指していますから,今のところは考えていません。
ただ,「PSO2」はオンラインゲームですから,それを生かして,サービスイン後にアップデートでボリュームを増やしていくことができます。「PSO」とは同じ宇宙空間という設定ですから,いつか過去の惑星などが出てくる可能性がないとも言い切れません。全部が全部というわけにはいきませんが,人気の高かった要素に関しては,前向きに考えたいと思います。
4Gamer:
ということは,過去シリーズに登場したキャラクターに出会える可能性も……?
酒井氏:
仮に検討するにしても,サービスイン後の話になるとは思いますが,星々を巡っていく中では,そういうこともあるかもしれません。たとえば,どこかの星にエミリアがいたりしたら面白いかもしれませんね(笑)。
4Gamer:
そのほかにも,発表会で公開されたムービーには,フレンドになったプレイヤーのキャラクターをアシストキャラクターとして呼び出せる機能がありましたよね。あれは,基本的に「ファンタシースターポータブル」シリーズのパートナーカードのようなものと考えていいんですか?
酒井氏:
そうですね。フレンドパートナーとして使ってもらうときは,オートワードの設定も反映されるようになっています。
あと,発表会では公開しなかったんですが,「FUN」というゲーム内ポイントがあります。これは,ほかの人のキャラをパートナーで使ったり,自分のキャラクターをフレンドパートナーとして別のプレイヤーに使ってもらったり,あるいは「グッジョブ」というコマンドをプレイヤー同士が送り合ったりすることで,貯めることができます。
「FUN」では専用のスクラッチを引くことができるので,プレイヤーの間で自然に「FUN」を貯めよう,という意識が生まれて,コミュニケーションがより活発になる,という効果があるんです。
「フレンドパートナーシステム」も「グッジョブ」も,対象のプレイヤーがログインしていなくても使うことができる機能なので,ログインしていなくてもコミュニケーションが生まれて,またログインしたくなるという,コミュニケーションを活性化する意味合いも含まれています。
4Gamer:
いわば時間差のコミュニケーションといったところでしょうか。どういう風に使われるのか,今から気になります。
そのほか,クローズドβテストでは,有料アイテムの模擬販売のようなことも実施されるんですよね?
酒井氏:
はい。「PSO2」の有料ゲーム内通貨は「アークスキャッシュ」(AC)というのですが,ある程度まとまった額をテスターの皆さんにお渡しして,システムが正常に動作するかのチェックを行います。金額などはほとんどが10ACとかで,仮のものになりますね。
有料アイテムには武器は含まれず,コスチュームやマイルームなどを予定。ゲーム内通貨でコスチュームなどの取引も可能に
4Gamer:
有料アイテムの話が出たので,現在予定している「PSO2」のビジネスモデルについて,いくつか質問させてください。有料のアイテムやサービスは,どのようなものを予定しているのでしょうか。
酒井氏:
発表会でもお話したとおり,「PSO2」のゲームの面白さの根幹に関わる要素でお金をいただくようなことはしません。有料ミッションなどもありませんし,特に武器については有料で販売することも,スクラッチの商品とすることもありません。
基本的には,一部の消費アイテム,時間短縮のためのブースト系アイテム,アバター系のコスチュームなどですね。あとは,プレイを快適にする一部のシステムも対象になります。
4Gamer:
それぞれ,具体的には,どのようなものがありますか?
酒井氏:
消費系アイテムで分かりやすいところだと,一度戦闘不能になってもその場で復活できる「スケープドール」は有料アイテムになります。ただ,自分以外を復活させる「ムーンアトマイザー」はゲーム内通貨のメセタで買えますから,パーティを組んでプレイしていれば,十分代用は利くはずです。α2テストでやっていたように,これらのアイテムを使わずにキャンプシップに戻って,もう一度挑戦することも可能ですし。
また,ブースト系アイテムは,経験値やドロップ率アップといった,プレイする時間をあまり取れない方の手助けとなるものですね。あとは,エステなどは基本的に有料になります。
4Gamer:
そういえば,キャラクターのコスチュームは,取引も可能なんですよね?
ええ。キャラクターのコスチュームについては,「アークススクラッチ」というガチャのような形式での販売を予定しています。
ガチャ的な要素はスクラッチしかありませんが,そのような仕組みを取り入れる以上,有料アイテムが重複した場合などを考慮しないといけません。ですから,スクラッチで入手した有料アイテムのほとんどは,メセタで取引できるようにします。
またスクラッチは,価格で2種類に分けて,高いものでは衣装のみ,安いものは衣装や髪型,消費アイテムなどが出るような形にします。
ただ,クローズドβテストでは,仮の商品ラインナップになっており,価格設定も仮の状態となっています。
4Gamer:
システム系では,どのようなものが有料になるのでしょう?
酒井氏:
追加の倉庫やマイルーム,マイショップの開設が該当します。これらは基本的に30日単位のレンタルという形になります。追加キャラクター1体の作成権,所持品の最大数の拡張,スキルツリーを追加して別の成長を楽しめる拡張などは,買い切りタイプになっています。
また,レンタル系のものやトレード機能はまとめて「プレミアムセット」という形での販売をします。金額的にもこれまでの月額と同じような感覚で使っていただけると思うので,こちらを利用するのがお得ですね。
システム系のアイテムはこれまで月額だった部分をより細分化して,自分の使える範囲で楽しんでいただくためのシステムになっていると思っていただければいいと思います。
より深くゲームを楽しんでいただくためには,システム系の有料アイテムを購入していただくと良いと思います。また無料でも初代PSOの部分に近い,冒険を楽しむ部分は,ストーリーを含め,ほとんど楽しんでいただけるようになっています。
4Gamer:
ちなみに,キャラクタースロットはいくつ用意されるんですか?
酒井氏:
基本は,1アカウントにつき1キャラクターです。追加の場合は「キャラクター1体の新規作成権」をACで購入していただくことになります。1アカウントにつき,12体までキャラクターを作成可能です。
また,プレミアムセットなどのシステムレンタルの部分は,1アカウントで1つご購入いただければすべてのキャラクターで使用できるようになります。逆にキャラクターに紐づいている所持品の拡張などは,キャラごとに購入していただくことになります。
4Gamer:
CBTの段階では少し気の早い質問かもしれませんけれども,サーバーの構成はどうなるんですか?
酒井氏:
一般的なオンラインゲームのワールドにあたる「シップ」という概念があって,各プレイヤーはいずれかのシップに所属する形になります。シップ間の移動についてはサービスイン時にはできませんが,将来的にシップ間のキャラクター移動ができるサービスも検討しています。複雑な手続きがなくても気軽にシップを移動できる感じにしたいと考えています。
“オンラインゲームの未来”を見据えたPC版と
スマートフォン版/PS Vita版の連携は?
4Gamer:
発表会では,“第4の革命”として,スマートフォンでも「PSO2」を展開することが明らかにされました。
スマートフォン版は,PC版やPlayStation Vita版とはゲームとしては基本的に別物で,サブデバイス的な機能を持たせてPC版と連携を取るものだと考えていいのでしょうか?
そうですね。スマートフォン版は完全に別のゲームで,ソーシャルゲームの進化版的な「PSO2」だと考えていただいてかまいません。フリック操作で,数分単位で遊べるものを考えています。手軽なRPGとして遊んでいただけるものになります。
また,「ファンタシースターユニバース」における「PSU Mobile」のように,簡単なコミュニケーションや,ゲーム内データのチェックができる機能も持たせます。
4Gamer:
たとえば,スマートフォン版でクエストをクリアすると,PC版のキャラクターが成長したりするんですか?
酒井氏:
どこまでできるか,まだ具体的にはお話できないのですが,そういう要素を入れます。一般的にモバイル用のゲームはレベルアップが早いですから,必ずしもPC版と同じ比率で成長できるような形にはならないと思いますが。
4Gamer:
スマートフォン版をプレイすると,PC版で使えるアイテムがもらえる,といった要素はありますか?
酒井氏:
単なる連動,というレベルではなく,基本的には,スマートフォン版で入手した武器などのアイテムが,PC版でも使えるような形も考えています。
4Gamer:
スマートフォン版のサービスは,やはりソーシャルゲームユーザーをPC版に誘導することを考えてのものですか?
もちろん,視野には入れています。
普段はソーシャルゲームでしか遊ばないような方々に,いきなり「PSO2」のような本格的なオンラインゲームを遊んでいただくのは難しいでしょう。ですから,まずはスマートフォン版で「PSO2」の世界観を知っていただきたいんです。
それで気に入っていただけたなら,ゆくゆくはフラグシップとなるPC版の「PSO2」を体験していただいて,「こんな世界もあるんだ」と感じていただけるように持っていきたいですね。
4Gamer:
ソーシャルゲームやスマートフォンアプリだけしか遊ばないような人達に,「ゲームはもっとすごくて面白いものだ」と知ってもらいたいと。
酒井氏:
ですから,PC版とスマートフォン版がまったくの別物では,意味がありません。スマートフォン版で遊んだデータがPC版にも生きてきて,無駄にならないという相互の連携が重要なんです。
4Gamer:
確かにそれなら,モチベーションにもつながりそうです。
ちなみに,「PSO2」におけるプラットフォーム間の連携は,いつごろから考えていたんですか?
酒井氏:
「PSO2」の詳細を発表した2011年7月の時点で,すでに考えはありました。そのタイミングではPlayStation Vitaのスペックがまだ明確ではなかったので,Vita版については,「こういうことができたら面白い」くらいの感じでしたけど。
4Gamer:
というと,最初はPC版とスマートフォン版を連携させるという構想がメインだったんですか。
酒井氏:
ええ。そのあと,PlayStation Vitaのスペックが判明したので,検証してみたところ,PS Vitaでも「PSO2」は十分実現可能だということが分かったので,挑戦してみようと。
ただ,PS Vitaで「PSO2」というオンラインゲームを作るにはかなりの時間がかかりますし,PS Vita用の独立したタイトルにするという選択肢もあったので,どうするかという面では,かなり頭を悩ませました。
ファンタシースターシリーズとして考えれば,「ポータブル3」のような形では面白くない,というのが一番の理由なんですよ。
4Gamer:
面白くない,というのは?
酒井氏:
私達にとっては,「オンラインゲームの未来を皆さんにお見せする」ということが大事なんです。
たとえば,「ポータブル3」という形でインフラストラクチャに対応させたゲームを作ったとしても,それは私達が今までやってきたことと変わりがありません。海外のオンラインゲーム,あるいはソーシャルゲームではおよそ実現できなさそうなことでも,「セガならできる」こととしてお見せしたかったんです。ファンタシースターがずっと続けてきた「挑戦」というスピリットを受け継ぐ「ファンタシースターオンライン2」と言うタイトルだからこそやるべきことだと思うんです。
もっとも,私達には過去に同じようなチャレンジをして失敗したという前例もありますから,不安に思われる皆さんの気持ちも理解できますし,自分たちとしても同じ轍を踏まないよう,慎重に進めていくつもりです。それでも,「こういうスタイルはどうですか」「これからのオンラインゲームは,こういうものじゃないでしょうか」という提案ができる,夢のある内容にしたかったんです。
あくまでもフラグシップであるPC版ありきの「PSO2」
PS Vita版でできないことがあってもPC版に影響はなし
4Gamer:
PS Vita版についての話も聞かせてください。発表会では,「PSO2」はあくまでもPC版がメインプラットフォームで,PS Vita版のことを考慮して制限するようなことは行わないという話でしたよね。
ええ。「PSO2」をこういうゲームにしたいと考えるうえでは,すべてPC版をベースに考えています。
そもそもシェーダを再現しても,PCの最高画質とはテクスチャー品質もモデルも変わってしまうので,PC版が最もきれいに見える,ということは変わりありません。
今は,PC版に追いつくべく,PS Vita版を必死に作っている状況ですが,PS Vita版があるからといって,PC版の機能を制限するようなことは,一切ありません。
PC版とPS Vita版のキャラクターデータの連動は必須条件ですが,PC版とPS Vita版の同期プレイに関しても,「快適にプレイできるのであれば」という前提条件を満たせるなら実現したい,という意味なんです。PS Vitaでは実現できない部分が出てきたとしたら, PS Vita版の側で許容する方向で進めています。
ただし,PS Vita版でも同じことができることを理想としていますので,それに向かって進んでいるのが現状です。
4Gamer:
PC版をPS Vitaに移植するという作業は,どのくらい手間がかかるものなんですか? 先日公開された情報では,グラフィックスの進捗は10%程度とのことでしたが。
グラフィックスに関しては,まだシェーダすらかけていないというレベルなんです。
ゲーム自体は,3か月くらいでPS Vitaでも動くようになりましたから,かなり早いとは思います。ただ快適に動かすには,まだまだ調整が必要ですね。目下の問題は,やはりメモリです。PCと比べると使える容量がかなり少ないですから。
4Gamer:
PS Vita版は,オフラインでも遊べたりするんですか?
酒井氏:
いえ,PS Vita版もオンライン専用です。クライアント側にデータを持たせてオフラインで遊べるようにしてしまうと,どうしてもチートの問題は避けられませんから。
もし,オフラインでも遊びたいというリクエストが多いようなら,オフライン用の別タイトルをリリースする方向で考えると思います。
4Gamer:
ネットワークは3G回線ではなく,Wi-Fiが基本になるとのことですが。
酒井氏:
そうですね。3G回線でもテストをしてみたんですが,一人プレイなら何とかなりそうなものの,パーティプレイは厳しい,という結論でした。PS Vita版で3G回線のネットワークをどう使うかは,まだまだ検討中のレベルですね。
4Gamer:
スケジュールとしては,スマートフォン版が2012年冬,PS Vita版が2013年春という予定で進行しているんですよね。
酒井氏:
はい。それぞれ,サービス開始前には別途テストサーバーを用意して,連携部分などのテストを実施する予定なので,その際はぜひご協力をお願いします。
「ファンタシースター」ブランドを一元化し
分散ではなく融合することで未来を目指す
4Gamer:
少し抽象的な質問になってしまいますが,「PSO2」の「ファンタシースター」らしい部分,あるいは,開発チームとして意図的に絶対に変えてはいけない部分はどこだと考えていますか?
酒井氏:
開発上で一貫しているのは,「コミュニケーションの楽しさがあって,アクションがあって,アイテムを集めるゲーム」であるという部分です。発表会でもお話しましたが,「PSO2」では,その一番面白い部分でお金をいただくことはしません。
「境界を超えるRPG」という取り組みには,反対の意見もあると思うのですが,ファンタシースターブランドとして今後の展開を考えていくと,これまでのようにプラットフォームで別々のゲームを作っていくのに比べて,その方がよりユーザーには優しく,ブランドやコミュニティを最大化でき,未来を感じられると考えています。
4Gamer:
それは,プラットフォームで分断されることで,ユーザーコミュニティが小さくなってしまうということでしょうか?
ええ。たとえば,PCのプレイヤーだけ,PS Vitaのプレイヤーだけ,スマートフォンのプレイヤーだけで遊びたいと思っていらっしゃる方がいるかもしれません。そういった同一タイトル内での分散がファンタシースターシリーズでもありましたが,これは,2重3重に同じようなタイトルでお金をいただくことになったり,クオリティコントロールがしきれずにブランドの質を落としてしまったり,ユーザーの分散を招くだけで,決していいことではないように感じていました。
これからのオンラインゲームというものを考えていく上では,これまで分かれていたユーザー同士が融合することで生まれるもののほうが未来を感じられるんじゃないかという点と,分散しかけてしまった「ファンタシースター」というブランド,コミュニティを一元化しようという意図で,プラットフォーム間の連携を企画したんです。
「ゲームソフト無料,基本プレイ無料,有料アイテムあり」と言うビジネスモデルを取ったことも,いかに多くのユーザーに遊んでいただくか,そしてそのビジネルモデルのイメージやパッケージという形に慣れたユーザーの皆さんの意識を変えていきたい,と考えてのことです。
4Gamer:
なるほど。
酒井氏:
当然このビジネスモデルに反対の意見もいただくと想定していますし,大変なことも多いですが,無料で遊べるゲームが当たり前の存在になりつつある今,これまでのビジネスモデルではやっていけなくなりつつあります。
そんな中で,オンラインゲームの楽しさをより多くの方に伝えていくためにはどうしたらよいのか。そして,これまでの「アイテム課金」とは違うアプローチで,ゲーム性の楽しさを維持した状態で利益をあげることが可能なのか。そういったチャレンジをして,結果を見せないことには,オンラインゲームやゲーム業界の今後は必ずしも明るいものにはならないと思うんです。
私たちが本気で作っている,ファンタシースターシリーズがこのビジネスモデルを行うからこそ,変わってくる価値というのがあるはずです。だからこそ,このビジネスモデルでないといけないんです。
私たちが目指しているのは,ソーシャルゲームの「アイテム課金」とは違うものです。言葉のイメージだけで捉えられるのは本当に悲しく思います。マイナスに捉えている方にこそ,ぜひプレイしていただいて,私たちの挑戦を見ていただければと思います。
4Gamer:
ファンタシースターチームらしいチャレンジの姿勢が見えて,今後が非常に楽しみです。それでは最後に,「PSO2」のクローズドβテストに向けた意気込みをお願いします。
酒井氏:
これまでのαテスト/α2テストに参加していただいた方だけでなく,PCオンラインゲームに関心がある方,これまでオンラインゲームはやったことがないという方,そういったすべてのプレイヤーをつなげるような内容にしていこうと考えています。
このクローズドβテストで,PSO2とはどういうゲームなのかが,かなりハッキリ見えてきますので,ぜひ参加して,内容を確認してください。
クローズドβテストのあとも,引き続き皆さんのご意見・ご要望を反映させていただいて,プレイヤーの皆さんと“一緒に育てていく”という気持ちで,「PSO2」を創りあげていきたいと考えていますので,ぜひよろしくお願いします。
4Gamer:
ありがとうございました。
長年のファンならご存じだと思うが,ファンタシースターシリーズは,家庭用ゲーム機初の本格的オンラインゲームに挑戦した「ファンタシースターオンライン」や,PSPのインフラストラクチャモードに対応した「ファンタシースターポータブル」シリーズなど,他社に先駆けて“オンライン”の可能性に挑戦してきたタイトルだ。
シリーズ最新作となる「PSO2」も,“オンラインゲームの未来”を見据えて,ゲーム業界初といえる新たな挑戦を実現させようと取り組んでいる。
このインタビューからも,酒井氏が率いるファンタシースターチームのチャレンジしている様子が,読み取れたのではないだろうか。
記事の冒頭でも記したとおり,現在,PSO2ではクローズドβテスターを募集中である。このインタビューを読んで興味を持った人は,ぜひ応募してほしい。
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