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新生ソウルキャリバーはここから始まる。「ソウルキャリバーV」,発売前試遊対戦会レポート。「Project Soul」スタッフインタビューも
格闘ゲームなどをテーマとしたユーザー主導イベントをいくつも開催している「Tokyo Game Night!!」と,ソウルキャリバーシリーズの開発チーム「Project Soul」のコラボレーションで行われたこのイベント,試遊対戦会とは銘打つものの,そのほかにも開発者エキシビションマッチやトークセッション,シングルマッチトーナメント大会など盛りだくさんの内容。会場には全国の熱烈なキャリバーファン達が集まり,対戦交流,開発者の組手などで大いに盛り上がっていた。
その様子はニコニコ生放送やUstreamで生中継され,全世界で約12万人が視聴。日本のみならず,海外からも大きく注目されている同作の,期待度の大きさがうかがえる。
「ソウルキャリバーV」公式サイト
開発者エキシビションマッチでは開発チーム「Project Soul」のメンバー同士による,ハイレベルな対戦の模様が披露された。SCVの可能性を感じさせるプレイの連続に,ファン達も興味深く観戦していた。
その後行われた開発者組手では,前出のエキシビションマッチで存分にその腕前を見せつけた開発スタッフ達に,来場者達が挑戦。SCVの魅力を引き出すプレイを見せたプレイヤーには,ディレクターの小田嶋大士氏とキャラクターデザイナーの川野琢嗣氏の両氏の直筆サイン入ったリトグラフがプレゼントされることもあり,多くのプレイヤーが挑んだものの次々と敗退。その無双ぶりは圧巻の一言だった。まあ発売前のゲームなので,当然といえば当然なのだが,それでも双方真剣にプレイしている様子が印象的だった。
なかでも筆者がとくに興味深かったのは効果音にまつわる話。なんでもアニメ的な効果音を好むプレイヤーと映画的な効果音を好むプレイヤーの両方の嗜好を満たすため,本作は「斬撃音の効果音をオプションで変える」という方法で解決したという。そのほか,服の衣擦れの音や,身につけたアクセサリーの音など,かなり細部にまでこだわっているとのこと。いわく「半年くらい遊んだときに気付くぐらいでちょうどいい」そうなので,本作の発売後はそのあたりに注意して聞いてみると良いかもしれない。
大盛況のうちに幕を閉じた今回のイベント。最後には前出の本作プロデューサーである夛湖久治氏とディレクターの小田嶋大士氏に,会場にて話をうかがったインタビューを掲載しよう。軽くコメントをもらうくらいのつもりだったが,両氏の話が予想を超えて面白く,かなりのボリュームになっている。本作のゲームデザインから格闘ゲーム哲学まで,かなり広範な話題となっているので,本作に期待しているファンはぜひご一読を。
「ProjectSoul」夛湖久治氏&小田嶋大士氏インタビュー
シリーズの血を入れ替える,新たなキャラクターと世界観
4Gamer:
本日は,お疲れさまです。発売前のタイトルとしては,異例ともいえる長時間のイベントでしたが,この機会にぜひ本作について詳しくお聞きしたと思いまして,お時間をいただきました。今回の「ソウルキャリバーV」,先ほど遊ばせていただきましたが,これまでのシリーズとはかなり毛色が違うように感じました。まずその狙いからお聞かせください。
そうですね。まず本作はシリーズの「血を入れ替える」ことを念頭に置いて開発しています。そのためにまず,前作から17年間という時間を進めるところから,すべてが始まりました。そこで古いキャラクターと新しいキャラクターが共存する世界を創り上げ,「VI」以降の世界をここからさらに広げていく――本作はその“下ごしらえ”にあたるタイトルでもあるんです。
4Gamer:
なるほど。では注目のキャラクターや,世界観などの部分からお話しいただけますか。今回のイベントでは,とくに新キャラクターのヴィオラが注目を集めているようでしたが。
夛湖氏:
そこに関しては,世界設定した人間である小田嶋に語ってもらうほうがいいでしょう。
小田嶋大士氏(以下,小田嶋氏):
えっ,そうなの?
夛湖氏:
いやいや,お前なんのためにここにいるんだよ(笑)。
小田嶋氏:
うーん,まずヴィオラとツヴァイに関しては,実はIVのときにもやりたかったキャラクターなんですよね。今までとはまったく違う,同時攻撃のようなことができるキャラクターを作りたいという野望があって。それがIVのときには達成できなかったので,SCVではどうしてもやりたい。そういうところからスタートしたキャラクターです。
4Gamer:
それでいうと,前作のアルゴルなどは,比較的近いコンセプトのキャラクターのような気がしますが。
小田嶋氏:
確かにそうなんだけど,あれで目指したものが実現できたのかというと,そうじゃない。あの時点での最善を尽くした結果ではあったけど,SCVではもっと,やりたいことの核心というか,理想を極めたいと思ったんです。
4Gamer:
ということは,この2人は世界観というよりも,ゲームデザイン上の要求から生まれたキャラクター,ということになるのでしょうか。
小田嶋氏:
そうですね。ただツヴァイはSCVの主人公であるパトロクロスにぶつけるための,「もう一人の主人公」でもある。そしてヴィオラは,既存キャラに対する因縁を色々と持っている。生まれた経緯としてはゲームデザイン優先だけど,世界観への落とし込みはしっかりやってます。まだ詳しくお話しできませんが,とても深いところまで伏線や設定を考えているので,SCVやその先のVIでの展開に期待してほしいです。
夛湖氏:
先にも話しましたが,SCVはここから新しい「ソウルキャリバー」を作っていく,というスタート地点なんです。ゲームシステム的な意味合いだけでなく,ここから世界観が広がっていく,という。前作の17年後という設定にしたのは,そういう色々な思いが詰まっているんですよ。
小田嶋氏:
そう。だから最初から決まっていたのは,ソフィーティアだけは「出さない」ということ。彼女はシリーズを象徴するようなキャラクターですが,だからこそ「時代が変わった」ということを明確に示すため,その娘であるピュラに代替わりさせてます。ソフィーティアファンの怒りはごもっともなんだけど,これだけは譲れない。苦情に関しては僕がすべて受け止めますということで,勘弁してください(笑)。
夛湖氏:
俺のところにも,ソフィーティアについての苦情はかなり来てるけどね(笑)。
小田嶋氏:
まあ責任は僕にある,ということで。でもソフィーティアに娘が居るというのは,僕が入社する前からあった設定なんだけどなあ。
4Gamer:
「新しいことをやろう」という強い覚悟があった,ということですね。
小田嶋氏:
もちろんです。覚悟の話をするなら,ゲームデザインについてもかなり思い切ったことをしています。ヴィオラとツヴァイ,恐らくあの2キャラに触ったプレイヤーは,とくに前作の経験がある人ほど「これはハメなんじゃないか?」って印象を受けると思いますね。だから最初僕等は非難されることになると思うんだけど,それはしょうがない。「新しい遊び」を作ろうとしたときに,そこは避けて通れないことだから。
4Gamer:
確かにあの2キャラが動いているところを見ると,今までのソウルキャリバーとはまるで違うな,という印象を受けますね。
小田嶋氏:
キャラクターの話からはちょっと外れるんですが,今作では技のダメージも全体的に上昇させているんです。しかも「クリティカルゲージ」を使った攻撃なら,そこからさらにダメージが伸び,前作比なら1.5倍から2倍くらいになります。そういうところでも,前作からプレイしている人は違いを感じるはずです。
4Gamer:
読み合いの回数自体は減るかもしれないけど,そのぶん爽快になっていると?
小田嶋氏:
ちょっと濃い目の味付けにした,というイメージですね。IVみたいな薄口のゲームは長く楽しめるようには作られているんだけど,見ている側には「何が凄いのか」が伝わりづらい。
4Gamer:
ああ,3D格闘ゲームには確かにそういう部分がありますね。
初心者には「これさえ決めれば勝てる!」という明確な分かりやすさが必要なんです。それにこれは,性能や相性で苦しい組み合わせであっても,その不利を跳ね返せるだけの能力を,すべてのキャラクターが持っている,ということでもある。
4Gamer:
うーん,なるほど。でもヴィオラは見た感じ,初心者が使うには難しすぎるような……。
小田嶋氏:
ああ,ヴィオラとツヴァイの2キャラは,そこからは若干離れた難しめのキャラですね。初心者にはやっぱり,パトロクロスなどの,扱いやすい正統派タイプのキャラを使ってほしい。
4Gamer:
ライバルキャラを使うのは,正統派の主人公に慣れてから,と。あえて骨がある作りになっているわけですか。
小田嶋氏:
そう。そういうものも含め,全部が対比でできてるんですよ。白と黒,光と闇みたいなね(笑)。
■生まれ変わったゲームシステム
4Gamer:
ゲームバランスの話もでたので,システム面について聞いておきたいのですが,本作には新システムが多く採用されていますね。その象徴といえるのが,いわゆる必殺技ゲージに相当する「クリティカルゲージ」ですが,それらのシステムはどういう位置づけなのでしょうか。
小田嶋氏:
まず分かりやすいのは「クリティカルエッジ」ですよね。これはクリティカルゲージを1本消費して繰り出せる大技です。
4Gamer:
いわゆる超必殺技的な。
小田嶋氏:
そう。「ガードインパクト」ではじくこともできないので,かなり強力です。
4Gamer:
ガードインパクトは相手の攻撃を跳ね返す,「さばき」系のシステムですね。本作では同じさばき系のシステムに「ジャストガード」がありますが,この違いは?
小田嶋氏:
これがよく聞かれるんだよね(笑)。詳しく説明すると,ガードインパクトは成功したときに,相手に「インパクトやられ」というもの誘発する,というシステムです。例えばB→Bという連係の1発目をガードインパクトした場合,相手の連係を中断させたうえ,やられ状態にすることができる。その硬直に追撃が決められます。
対するジャストガードは,成立時に相手を硬直をさせるのではなく,こちら側のガード硬直が減るという仕組み。だからB→Bの1発目を取っても,相手は2発目を出してくるし,もともとスキの小さい技をジャストガードしたところで反撃は難しい。そのかわり「ブレイブエッジ」(※クリティカルゲージを50%消費して繰り出せる強化技)のような大振りな技をジャストガードすれば,こちらにガード硬直がないぶん,素早く動ける。うまくやればガード不能技が間に合うくらい,大幅な有利をとることができます。
4Gamer:
得られる有利が常に一定なのがガードインパクトで,取った技次第で有利時間が変わるのがジャストガード,ということですか。
小田嶋氏:
そんなとこですね。うまくなればうまくなるほど,この2つの使い分けが重要になってくると思います。細かい部分ですが,ジャストガードも東京ゲームショーで出したプレイアブルバージョンとは違い,リスクを負うようになっていますし。より上級者向けのシステムと考えてもらって良いんじゃないかと。
4Gamer:
リスク,というのは?
小田嶋氏:
開発初期から東京ゲームショーまでのジャストガードは,「相手の攻撃がヒットする直前でGボタンを押す」という,いわゆる“出し得”のシステムだったんですよね。仮に失敗してもガードになりますから。それをこのバージョンでは「Gボタンを押して,すぐに離す」という操作に変更したんです。
4Gamer:
「Gボタン押しっぱなし」ではダメと。ということは,失敗すると相手の攻撃をもらうことになります。なるほど,それはリスクが大きい。
小田嶋氏:
ジャストガードって,もともとは上級者同士の対戦が煮詰まってきたときに,相手の攻めに完全対応するために作られたシステムなんですよ。最初から初心者に使いこなせるようなシステムではありませんから,あえて今回は難度を高くしています。その代わりに,うまくいったときの恩恵は大きい。
4Gamer:
初心者は,まずガードインパクトを使いこなすところから,というわけですか。
小田嶋氏:
ガードインパクトは上・中・下段のすべてが取れてるので,より簡単です。その代わりに,クリティカルゲージを50%消費する。ジャストガードはゲージを消費しないので,そこも違いますね。
4Gamer:
うーん,奥が深いですね。
小田嶋氏:
そのほかにも,今回は技のコマンドは全部簡単にしてあります。なぜかというと,クリティカルゲージの「ゲージ管理」をしなくてはいけないから。
自分と相手のゲージを見くらべながら,「クリティカルエッジ」「ブレイブエッジ」「ガードインパクト」という3つのシステムを使いこなしていかなくちゃならない。人間が「同時に考えられることの量」っていうのは決まっていますから。
4Gamer:
ゲージにまつわる攻防,というと?
小田嶋氏:
例えば相手のゲージが0で,自分のゲージが1本近くあるなら,相手は「リバースインパクト」をできないので,インパクトから大技への連係が確定します。だから相手のゲージが0のときは,ガシガシ狙うべきです。逆に相手のゲージが50%以上あるときは,返されてしまう可能性がある,とかね。
4Gamer:
減らしたコマンドというと,具体的にはどのあたりでしょうか。
小田嶋氏:
同時押しの技が多いですね。A+Kが代表的です。あとは,「特殊構え」中の同時押し技も減らしていますね。構え中の技って,構えるという予備動作が入るからには強い技が出せなといけないんですけど,それって早い技か痛い技,あとは範囲が広い技のどれかなんですよね。
4Gamer:
そうですね。
小田嶋氏:
これまでは構えからの多彩な技を相手を翻弄して,オリジナリティのある攻めを展開してもらう,という遊び方を想定していたんですが,今回はなるべく読み合いを分かりやすく,シンプルにしたいという狙いがあります。さっき言ったような,アクティブな読み合いに頭を使ってほしいわけで。
4Gamer:
攻めれば攻めるほど,ゲージも溜まるわけですし。
小田嶋氏:
ゲージの溜まり方についても,能動的な行動をとると,必ずゲージが増えるようにしています。例えば受け身を取るだけでもゲージが溜まりますし,とにかくアクティブに動いてほしい,というメッセージを込めたつもりです。
夛湖氏:
上級者同士にしか分からないような,水面下の読み合いについては,申し訳ないですが今回は圧縮させてもらった形ですね。ゲージ戦略という,目に見える部分に頭を使ってもらって,攻撃の応酬が激しくなってくれれば,見ていても楽しいと思いますので。
■小田嶋氏の格闘ゲーム哲学
小田嶋氏:
今の水面下の読み合い,という話なんですが,ここには一つ,持論がありまして……この機会に語ってしまっても良いですか?
4Gamer:
それはもちろん。というか,ぜひ聞きたいです。
小田嶋氏:
僕はこれまでの3D格闘ゲームに,とても不満な部分があって。それは下品な言い方をしてしまうと「派手じゃない」というところなんです。
4Gamer:
というと?
小田嶋氏:
以前,「3D格闘は大人向けゲーム」って言われて反論したことがあるんですよ。でも「2D格闘はよく分からなくても見てて面白いけど,3D格闘は分からないと面白くないじゃん」って言われて,確かにそうだなあ,と。
4Gamer:
それはなんとなく分かりますね。それを言った人は,ネガティブな意味で言ったわけではないと思いますけど(笑)。
小田嶋氏:
そうですね。でもその「分かる人には分かる攻防」というのが嫌いなんですよ。3D格闘は見た目がリアルな分,凄いことが起きてもそれを理解できる人は限られている。逆に2D格闘は絵で見せる部分が多いから,見たらすぐに分かる。
プレイヤーの立場からすれば,どっちも面白いからいいんですけど,いざ作り手にまわってみると,それは「見たらすぐに分かる」ほうがいいに決まってるじゃないですか。だから,今作ではその「分かりやすい面白さ」という部分を,強く意識しています。
夛湖氏:
今作でもエフェクトが「キラキラ,ビカビカしすぎ」なんて意見をいただくんですが,それも意味あってのことなんです。システム面の読み合いを,映像で分かりやすく伝えられるように作っているので。
分かりやすさってのはやっぱり大事で,いま何が起っているのかがちゃんと伝われば,プレイヤーは増えていくと思うんです。そうなれば今のプレイヤーも嬉しいでしょうし……。裾野が広がらないと,頂点だって生まれないんですから。
夛湖氏:
これまでのソウルキャリバーのプレイヤーって,先細りのピラミッド形なんですよね。最終的には,それを綺麗な形のピラミッドにしたい。目で見て分かりやすいゲームにすることによって,中間レベルの層を増やしたい。その設計は必要かなと思っています。
4Gamer:
それは格闘ゲーム全体にもいえることですね。中級者層というものが減っているイメージがあります。
夛湖氏:
いたずらにシステムが増大し過ぎて,「難解なもの」を作ってしまったと反省する部分もあります。そういった意味では,整理が大きく必要だったのかなと。SCVの次にはVIも作りたいしVIIも作りたい。そのこれからの長いスパンの中で,今回はどの層を育てるべきか,という戦略を考える必要があるんです。
小田嶋氏:
急にプレイヤーがどっと増えるというのはなかなか難しいですし,そういう長い目で見ていないとね。人口が少ない中でゲームを続けるのって,すごく辛いことですしね。でもプレイ人口が増えれば「鉄拳」シリーズみたいに盛り上がっていきますし,「ストリートファイター」シリーズにおけるウメハラさんのような,スタープレイヤーも生まれてくるかもしれない。
だから今回は,まず人を増やすのが第一目標です。今までと違うゲームになってしまったことに対する罪悪感みたいなものは,僕は一切持っていないです。
4Gamer:
いや,とてもよく分かるお話しだと思います。技の数が少なくなったことで「やれることが少なくなるんじゃないか」と不安に思ってるプレイヤーも多いと思うんですが,今の覚悟を聞けば,納得してもらえる部分も多いんじゃないでしょうか。
小田嶋氏:
技の数にこだわる必要は,僕は全然ないと思っています。例えば「ストリートファイターII」だって,技の数でいえばすごく少ない。「バーチャファイター」だって一番盛り上がっていた“2”の頃は,あまり多くなかったですよね。
4Gamer:
結局は「使える技」がいくつあるのか,だと思います。
小田嶋氏:
技数を増やせばキャラクターに個性がでるかというと,そんなことは全然なくて。逆に個性を潰してしまうことだってあります。それには開発側の問題もあって,違う技をいくつもつくるって難しいんですよ。企画の段階で「あのキャラのあの技がかっこいい」とか「この映画のあの動きが格好いい」とか言ってるうちはまだいいんですが,いざそれを作ってみると,どこかで見たような技になってしまう。それでその技が強かったら,今度はその技が主力技になってしまって,ほかのキャラクターの真似をし始める。
4Gamer:
それは気をつけていても,起ってしまうものなんですか?
小田嶋氏:
そうです。だから技数を安易に増やすのは危険なんです。これは作り手側のエゴかもしれないけど,新しくキャラを作るからには,僕は違うことをやりたい。だから違う遊び方のキャラを必死に考えるんだけど,そういう技が一つあるだけで意味がなくなってしまう。最終的に似通ってしまうのだとしても,プライドとしてそれには異を唱えたい。
4Gamer:
キャラごとのコンセプトを明確にするということですね。
小田嶋氏:
そうです。今回のSCVで「登場しない」キャラというのは,キャラコンセプトが不明瞭というのが理由なんです。もちろん,それだけの理由じゃないんですけどね。
たとえば,アイヴィーというキャラクターは,コンセプトだけでなく,デザインからして勝ち組なんですよ。あのタイプのキャラクターで,彼女を超えるようなものを今から作るのは不可能です。だからもし僕が決めていいというのなら,彼女は今後ずっと登場し続けると思います。
夛湖氏:
キャラクターの外見だけでなく「誰に向けて作ったキャラクターなのか」という基準もあります。ソウルキャリバーシリーズは一時期韓国での人気が高かったので,韓国のプレイヤー向けのキャラクターを意識的に作ったことがありました。とにかく理由は個別にあって,もちろん「本当は出したいんだけど,ギリギリ落選」というキャラも居ます。そういうキャラに関しては,VI以降ででもまた出せたらいいなと思っています。
小田嶋氏:
それでもソフィーティアは出ないですけどね。
夛湖氏:
なにもここで言わなくても(笑)。でも何にせよ,彼の設計にすべて一貫した理由があるからここまでこれた,というのは確かです。実のことをいうと僕はこれまで,ソウルキャリバーシリーズと深い関わりがあったわけではなかった。でも本作の企画を一目見ただけで,これはいけると思ったんです。この一本筋の通った設計と,それからプレイヤーの皆さんからの続編を望む声があれば何とかなる。そう思ってプロデューサーを買ってでた。そういう経緯なんですよ。
■格闘ゲームを遊びつづける,ということ
4Gamer:
今日はお疲れのところ,時間を取っていただきありがとうございました。でも良いんですか? 発売前にここまで濃い話を書いてしまって。
夛湖氏:
いやいや,発売後はもっと濃い話ができますから。だってまだ各キャラクターの攻略にすら触れてませんからね。全体のシステム像の話しかしてませんし。
小田嶋氏:
そんなこといったら,僕は全部喋っちゃいますよ(笑)。
夛湖氏:
いや,そのために君がいるんだから,それでいいんだけど。でも今日はこれぐらいで抑えたほうがいいんじゃないかな(笑)。
4Gamer:
最後に一つだけ質問なんですが,今日の取材中,プレイヤーから「オンラインモードを充実させてほしい」という声を何度か聞きました。それについてはいかがですか?
夛湖氏:
そこに関してはまだ詳しいことを言えないんですが,期待してもらって良いと思います。少なくとも前回以上のものはお約束できるかと。
4Gamer:
分かりました。今後の発表に期待させていただきます。では本作を楽しみにしているプレイヤー達に,一言メッセージをお願いいたします。
夛湖氏:
IVのあと「ソウルキャリバーの火」は一瞬消えかけました。結果的には,4年近く経ってようやく今回SCVを出せるという状況になったんですが,それはひとえに,プレイヤーの皆さんが背中を押してくれたからです。おかげ様で我々はここまで来ることができました。今言えることは「ぜひ触ってみてください」ということだけです。楽しく遊べるゲームを作ったつもりなので。
小田嶋氏:
僕は常々「対戦格闘ゲームを遊びつづけるって難しい」って思ってるんです。対戦だから,もちろん相手を倒したい。けちょんけちょんにしてやりたいんだけど,それって少なくとも相手がいないことには成立しないわけで。
対戦なんだから,もちろんルールの範囲で何をしたっていいんだけど,今回のイベントに来てくれた上級者にこそ,最低限相手のことを考えることをしてほしいと思っています。それで対戦相手が育ったりだとか,コミュニティが拡大したりとかに繋がっていくと思うので。
4Gamer:
はい,すごく楽しませていただきました。発売が近づきましたら,またぜひインタビューさせていただきたいです。
夛湖氏:
もういくらでも来てください。小田嶋が全部説明しますので。
小田嶋氏:
え,僕なの?
夛湖氏:
さっき全部のキャラに個性があるって言ったよね? それを説明しないと!
小田嶋氏:
いやいや,それは全体の話ですから。調整が全部そうとは言ってないですよ?
4Gamer:
(笑)。次の機会を楽しみにさせていただきます。本日はありがとうございました。
今回の試遊会に寄せ「本作はまだまだ開発中のタイトル。プレイヤー達の声を聞きながら,一緒により良い作品を作っていきたい」と語った夛湖氏。そこには「Project Soul」のスタッフ達が,本作にかける意気込みのほどを見ることができる。プレイヤーにとっても,開発中のタイトルにこれだけ長い時間触れる機会というのはそうそうないはずで,その想いを開発陣にぶつける場としては,これ以上ない機会となったはずだ。
また記事中では触れられなかったが,ソウルキャリバーシリーズの魅力といえば,ガチな対戦だけに止まらない。先日発表されたばかりのキャラクタークリエイションなど,多彩なシングルプレイ要素も欠かせない要素だろう。こちらについても今後,様々な情報が発表されていくはずだ。
プレイヤーからのフィードバックを受け,よりブラッシュアップされて発売されるだろう本作,今後の動向にもぜひ期待しておこう。
「ソウルキャリバーV」公式サイト
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