テストレポート
「Haswell Refresh」の「Core i7-4790」を動かしてみた。体感速度はHaswellと変わらず,消費電力はやや増加
販売開始時点で明らかになっている情報をまとめると,デスクトップPC向けにはCore i7・i5・i3およびPentium,Celeron,そして1ソケット版Xeonがあり,低消費電力版となる「S」「T」モデルも用意される一方,倍率ロックフリー版となる「K」モデルは今のところ用意されない。そして,動作クロックは置き換え対象となるHaswellよりもざっくり100MHz高い,といったところだ。つまり,非常に地味なアップデートということになるが,性能や消費電力に何らかの違いは生じているのだろうか。4Gamerでは,販売開始時点の最上位モデルとなる「Core i7-4790」(以下,i7-4790)を,発売直前のタイミングで独自に入手できたため,取り急ぎ,時間の許す限り実施したテスト結果をまとめてみたいと思う。
i7-4770K比では「Kなしで+100MHz」となるi7-4790
i7-4770Kと比べた場合,i7-4790では,CPUの定格クロック,そして自動クロックアップ機能「Intel Turbo Boost Technology」による最大クロックがいずれも100MHz引き上げられ,定格3.6GHz,最大4.0GHzとなっている。そして,統合されるグラフィックス機能「Intel HD Graphics 4600」の最大クロックは逆に50MHz引き下げられているものの,それ以外のスペックはまったく同じである。
そうなると当然,「本当にただCPUクロックが引き上げられただけなのか」という疑問は出てくると思う。そこで今回は,表2に示したテスト環境で,i7-4770Kと,その性能を比較してみることにした。
なお,テストにあたってはGPUボトルネックを排除すべく,今回は「GeForce GTX 780 Ti」リファレンスカードを組み合わせている。
テスト方法は4Gamerのベンチマークレギュレーション15.1準拠。ただし,冒頭でも軽く触れたように,筆者がi7-4790を入手できたのは発売の直前で,すべてのテストを行うことはできなかった。そこで今回は,「3DMark」(Version 1.2.362)と,比較的描画負荷が低く,CPU性能の違いが出やすいと思われる「BioShock Infinite」と「ファイナルファンタジーXIV: 新生エオルゼア ベンチマーク キャラクター編」(以下,新生FFXIVベンチ キャラ編)のみを行っている。BioShock Infiniteでは「High」プリセット,新生FFXIVベンチ キャラ編では「標準品質(デスクトップPC)」でテストを実施する。
もちろん,製品版でこの問題は修正されているはずだが,以上の理由により,「最後に確認しよう」と思っていたBIOSバージョンはチェックできていない。また,当初は「i7-4790の動作クロックをi7-4770K相当に落とした状態」などでもテストを予定していたが,同様の理由からそれも行えていない。
基板上で他の部分から独立させ,アナログ段のノイズを抑えようとしているサウンド技術たるSupremeFXが,2014年仕様へと進化 |
1000BASE-T LANコネクタには,落雷&静電気対策が施されている。ちなみにコントローラはCPU使用率の低さに定評あるIntel製 |
2本の赤いPCI Express x16スロットは,2-way SLI&CrossFireに対応 |
チップセットのヒートシンクにはLEDが埋め込まれ,通電時に光る |
ゲームにおけるi7-4770Kとの性能差はほとんどない
消費電力はクロック分だけ順当に増加
テスト結果を見ていこう。グラフ1は3DMarkの総合スコアをまとめたものだが,「Fire Strike」では,より動作クロックの低いi7-4770Kがわずかながらi7-4790を上回る結果になった。ただ,「Extreme」プリセットでは立ち位置が逆になっているので,総合スコアはほぼ互角と述べて差し支えないだろう。
続いてグラフ2は,3DMarkの総合スコアから,Bullet PhysicsベースのCPUベンチマークとなる「Physics test」のテスト結果を抜き出したものだが,ここでの結果も総合スコアを反映したものとなっている。
実際のゲームタイトルから,BioShock Infiniteのテスト結果がグラフ3,新生FFXIVベンチ キャラ編のテスト結果がグラフ4となる。すべてのテスト条件でi7-4790がi7-4770Kを上回るスコアを示しているものの,その差は最大でも1%(未満)。これを体感できる人はいないと述べていい。
消費電力はどうだろうか。ログの取得が可能なワットチェッカー「Watts up? PRO」を利用して,システム全体での消費電力を比較してみよう。
テストにあたっては,OSの起動後30分放置した時点を「アイドル時」,3DMarkのPhysics testを30分間連続実行し,その間に最も高い消費電力値が記録された時点は「3DMark時」,そして,システムに100%の負荷をかけ続けるストレスツール「OCCT」(Version 4.4.0)の30分間連続実行を行い,やはり最も高い消費電力値の記録された時点をと「OCCT時」とする。
その結果がグラフ5だ。アイドル時は65Wで揃っているのが分かるが,アイドル時の動作クロックはi7-4790,i7-4770Kとも800MHzまで下がっていたので,これは妥当な結果といえる。
一方,3DMark時とOCCT時はi7-4790が8〜9W程度高いスコアを示した。動作クロックが定格,最大ともに100MHz高い以上,こちらも妥当な結果に落ち着いたといえそうである。
なお,3DMark時とOCCT時の温度が90℃超えというのはなかなかインパクトがあるが,これは,i7-4790およびi7-4770Kのリファレンスクーラーがいずれも小型だからだろう。高負荷な環境下でも問題のない温度で使いたい場合は,サードパーティ製のCPUクーラーを用意したほうがいいと思われる。
Haswell Refreshは「新味を出すための製品更新」以上でも以下でもない
Haswell Refreshは,市場において新味を出すのが目的の,「新製品とするための新製品」であり,そこに技術的な新しさはない。そのため,エンドユーザーからすれば,旧Haswellでも今回のHaswell Refreshでも,好きなほう(≒同じようなスペックなら価格の安いほう)を選べばいいということになるはずだ。
マザーボードメーカー筋の話によると,Intelは遠くない将来に,「K」付きのHaswell Refreshとなる「Devil's Canyon」(デヴィルズキャニオン)を投入する計画があるという。「Intelの目新しいCPU」としては,ひとまず,それを待つことになるのではなかろうか。
IntelのCPU情報一覧ページ(英語)
ASUSのMAXIMUS VII HERO製品情報ページ
- 関連タイトル:
Core i7・i5・i3-4000番台(Haswell)
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