インタビュー
PS Vita「真・三國無双 NEXT」は,“次世代の無双”としてシリーズ化を目指す。プロデューサー/ディレクターインタビュー
最初から全機能を盛り込んだ結果,ローンチタイトルとしては破格のボリュームに
4Gamer:
それでは,これまでに出てきた情報で気になっていたのですが,「エディットモード」で作れるオリジナル武将について教えてください。
まず,エディットモードで作ったオリジナル武将は,争覇モードと共闘モードで利用でき,最大100体まで登録できます。
4Gamer:
100体もあれば十分……というか使い切れないくらいですね(笑)。エディットできるバリエーションはどのくらいありますか。
庄氏:
まず男女の性別があって,変更可能部位が5か所あります。それぞれの部位で28パーツ×6色ずつを用意していますから,単純計算でいくと組み合わせはおよそ2676億通りになります。顔もエディットできるので,これを含めるとさらに凄い数になりますね。
4Gamer:
そこまであれば,多少の好みは寄るかもしれませんが,プレイヤー同士でまったく同じ外見の武将が,ということはほとんどなさそうですね。
小笠原氏:
はい。今回,「争覇モード」で,3G回線やWi-Fi機能を介してほかのプレイヤーとランキングを競うこともできますから,エディットモードはマストな機能です。ぜひ自分ならではの武将を作って,ほかの人のゲームの世界に入っていってほしいですね。
庄氏:
実は先ほど挙げた部位のパーツの中には,最初は選択できないものもあるんです。そうしたパーツはゲームをやり込んで条件を満たしたり,あるいは捕縛したキャラを味方にしたりすることで入手できます。
4Gamer:
新しく入手したパーツと,それまで使っていたパーツを取り替えることはできますか?
庄氏:
もちろんできます。エディットモードで,いつでも編集できますし,登録した100体から入れ替えることもできます。
4Gamer:
なるほど,100体のオリジナル武将を作るんじゃなくて,オリジナル武将100体分の見た目を用意するわけですね。そう言えばパーツが違うと,例えば武将のパラメータも変わってくるといったことはあるんですか?
庄氏:
いえ,パーツは見た目だけです。「政策」や「配下」といったパラメータについては,外見とは別途カスタマイズできるようになっています。
4Gamer:
分かりました。外見だけではなく,本当に好きなように作れるわけですね。ちなみに,3G回線/Wi-Fi機能を使うのは,争覇モードのランキングにまつわるプレイヤーの状況のやり取りだけに?
「演義モード」でも,一部お楽しみいただける機能があります。3G回線/Wi-Fi機能をONにしていると,戦闘中でもほかのプレイヤーの活躍に応じてお得な効果が得られたり,ストーリーとストーリーの間にほかのプレイヤーのデータが一騎討ちの相手として登場するんですよ。そのほか「遊戯モード」のランキング登録でも使っていますし,基本的に通信機能はゲーム全体で使っています。
小笠原氏:
ただしリアルタイムのマルチプレイは,アドホック通信のみです。いずれは,PS3をお持ちの方なら,アドホックパーティを利用して,離れたプレイヤー同士でお楽しみいただけるようになると思います。
4Gamer:
実は「真・三國無双 NEXT」では3G回線をどう活かすのか,非常に興味がありました。通信速度の点から対戦やマルチプレイには直接使えないでしょうし。
小笠原氏:
おっしゃるとおりで,PS Vitaで3G回線を使おうと思うと,どうしても“遅い帯域”に合わせなければなりません。それに完全にネットに繋ぎっぱなしという状態にも適していません。そこで逐次的にデータを送って非同期でもあたかも一緒に遊んでいる感覚を演出する,いわゆるソーシャルゲーム的なところを盛り込みたいと考えました。
今後はLTEなどのモバイル向けの大容量通信が普及していくでしょうが,有線ネットワーク並みに対戦などを楽しむためには,もう少し時間がかかるでしょうね。
4Gamer:
なるほど。ちなみに,DLCによる追加データなどの配信は行われるんですか?
小笠原氏:
はい。コスチュームの違う武将カードや「無双スナップ」用の素材/テンプレートの配信などを予定しています。
4Gamer:
DLCの武将カードのコスチュームは,例えばPS3版「真・三國無双 6」と同様のものも?
庄氏:
ええ,1月に学園風コスチュームの武将カードを配信します。
小笠原氏:
そういった情報は,PS Vitaの「LiveArea」機能を使ってお知らせしていきます。「今週は強い武器を集めやすい」というようなゲーム内キャンペーンの告知も行っていきます。
4Gamer:
プレイ前にそういった情報が目に入るのは嬉しいですね。ところで,ほかのローンチタイトルと比べて,DLCはそれほど大きなものは用意していないんですね。
庄氏:
本作の場合は,DLCによる機能拡張をあまり行わなくても,入れられる機能は最初から全部詰め込めたと思っています。
小笠原氏:
実はローンチタイトルとしては,かなりボリュームが多めなんです。キャラクター数しかり,ゲームの機能しかり,PS Vitaらしい遊びの部分しかりという。普通,ローンチではここまでやらないところまで詰め込んでしまったので,開発終盤はかなり大変なことになってしまいました(笑)。
4Gamer:
先ほどの話ではないですが,ボリュームが多くなったことが,開発の苦労だったんですね(笑)。
小笠原氏:
そうかもしれません(笑)。「真・三國無双 NEXT」は今回のローンチタイトルの中では,高めの価格になっていますが,あとから機能拡張しなくてもいいことを考えると,かなりお買い得だと思います。
“NEXT”には,意欲的なチャレンジができる“次世代の無双”という意味を込めた
4Gamer:
それでは今後,コーエーテクモゲームスとしてPS Vitaというハードに,どのように取り組んでいくのか教えてください。
コーエーテクモゲームスとしてよりも,今のトレンドから見た必然的な話になってしまいますが,これまでコンシューマゲームというと,パッケージによる販売が主流でした。しかし今ではゲーム機がネットワークに繋がり,ソーシャルゲームが台頭し,そしてデバイスがフィーチャーフォンからスマートフォンに切り替わりつつあります。
そう考えると,PS Vitaは表示性能やゲーム機としてのスペック以外に,今の潮流に適した機能を備えているハードと言えます。ゲームをパッケージで買うという行為自体が劇的に変化するとは思わないのですが,一度買ったパッケージを楽しみ尽くしていただいて終わりではなく,より長く遊んでいただけるよう継続してサービスを提供する方向へシフトしていくことになるのではないでしょうか。
4Gamer:
今後,コーエーテクモゲームスがリリースするPS Vita向けタイトルでも,DLCによる追加データや機能拡張の配信は強化されていく,ということですか?
小笠原氏:
ええ。「真・三國無双 NEXT」は全部詰め込みましたが,例えば最初の購入のハードルを下げるためにパッケージを最低限のボリュームにして,価格もそれに見合ったものに設定し,それを遊んで楽しいと感じていただいた方に向けて,より多彩なサービスを提供していくというようなスタイルに,自然となっていくのではないでしょうか。
PS Vitaは,そういう流れを分かりやすく,しかも手軽に機能拡張できるハードとして拡充していくでしょう。したがって,ゲームタイトルもそれに合わせて進化させていくべきだと思います。
4Gamer:
なるほど。それでは入力デバイス面ではどうでしょう? 背面タッチパッドなどには,まだまだ可能性がありそうですが。
小笠原氏:
お話してきたとおり,今回,背面タッチパッドの扱いは非常に悩んだところです。「真・三國無双 NEXT」では「気持ちいい」という部分は実現できたんですが,うまく使えているかというところまで踏み込むと,まだ課題が残っていると思います。
正直,すごく難しいのですが,背面タッチパッドはうまい使いどころが考えられれば,それだけで新しいシリーズが一つ生まれるくらいの発明だと捉えています。
確かに,なかなか「これは!」という使い方を思いつかないんですよ。非常にチャレンジしがいのある課題です。
4Gamer:
背面タッチパッドで,どんな新しいゲームが誕生するのか,今後が楽しみですね。ところで,今回“NEXT”という単語をゲームの名称に入れたのはなぜでしょう。もちろん,次世代機という意味はあると思うのですが……。
小笠原氏:
ええ,まずストレートに“次世代”を意識しました。無双シリーズは,据置き機向けとしてスタートして,今後も正統な進化は据置き機で図られていくことでしょう。しかし携帯機,かつ高性能なPS Vitaの登場によって,無双シリーズにも従来とは異なる進化の可能性が提示されました。その新しい進化の第一歩目として,“次世代の一騎当千ゲーム”という意味を込めたんです。
4Gamer:
「真・三國無双」シリーズの新たな1作目というわけですか。
小笠原氏:
ええ,ぜひそうなってほしいですね。無双シリーズも今やナンバリングとしては6作目になりますから,「変えないでほしい」と,「新しい要素がほしい」という双方のご意見をいただきます。そういう意味では据置き機と携帯機という区分だけでなく,従来のファンに向けたシリーズ(据え置き機)と,革新性を求めてチャレンジしていくシリーズ(携帯機)という分け方も可能です。
「真・三國無双 NEXT」は後者の第一歩目として,新しい要素を定着させ,さらに新しいチャレンジに向かうという役割を担っています。“NEXT”という言葉どおり,次へ次へとチャレンジしていけるシリーズに育てていきたいです。
4Gamer:
では最後に,真・三國無双 NEXTに期待している人に向けて,メッセージをお願いします。
庄氏:
従来の無双の爽快感を生かした形で,入力や通信といったPS Vitaの機能を駆使して,各モードの遊び方や戦闘のアクションを作り込みました。これまでの無双シリーズを遊んでくださった方にもプレイしてほしいですし,PS Vitaの機能をフル活用して楽しみたいという方にはすごくオススメなゲームになっています。
小笠原氏:
最初の話に戻ってしまうのですが,PS Vitaを手にして「真・三國無双 NEXT」をプレイすると,本当に「おおっ」と驚いていただける仕上がりになっています。
それはPS Vitaというハードが優れているということもありますが,ソフトの方でその高い性能を,十分に引き出すことができたからだと自負しています。ぜひ実際に手に取って,プレイしていただきたいです。
「真・三國無双 NEXT」の購入を迷われている方は,12月17日から体験版の配信も開始しますので,ぜひダウンロードしていただけると幸いです。本作にはタッチ操作や通信機能などの新しい試みを詰め込みましたから,それがどのように受け入れられるのか,非常にリアクションが楽しみです。ともあれ,まずはPS Vitaを買っていただいてからですね(笑)。
4Gamer:
本日は,ありがとうございました。
記事の冒頭でも書いたとおり,もはや無双シリーズは日本のゲームにおける定番タイトルとなっており,4Gamer読者のような人達ならその名を知らないことはないだろう。
しかしそれがゆえに,何かしら斬新なアイデアを組み込もうとすると「これは無双ではない」と言われてしまう──熱心なファンはもちろん,コーエーテクモゲームス社内からそういった声が挙がることも少なくないという──のである。そこには新要素で冒険を試みた結果,せっかく築き上げたシリーズの名声を失墜させてしまうよりは……という意味もあるのかもしれない。
そうした状況の中で,PS Vitaという新しいプラットフォームを得た無双シリーズは,“次世代の無双”として「真・三國無双 NEXT」を生み出した。新しい操作と通信機能によるソーシャルゲーム的なプレイヤー同士の繋がりを持ち,それでいて無双シリーズとしての魅力は損なわず,据置き機向けと遜色ないクオリティを実現したという本作。ぜひPS Vita実機で数々のチャレンジの成果を確認してほしい。
「真・三國無双 NEXT」公式サイト
4Gamer「PS Vita」特設サイト
「真・三國無双 NEXT」を2時間じっくりプレイ。プレイレポートはこちら
- 関連タイトル:
真・三國無双 NEXT
- この記事のURL:
キーワード
(C)2011 コーエーテクモゲームス All rights reserved.