レビュー
高みを目指して昇り続ける姿はまさしく“龍”が如く――「龍が如く5 夢、叶えし者」のレビューを掲載。4人の男と1人の少女の“夢”の行く先とは?
本作は,バイオレンスな極道社会を題材にしているが,その根底にあるのは,多くの人が共感できるであろう“アツい”人間ドラマだ。「5」では,シリーズ史上最大のボリュームとなり,全国5大都市を舞台に,4人の男と1人の少女の“夢”の行く先を描いた壮大なストーリーが展開される。
本稿では,ネタバレ要素を極力避けつつ,大人のエンターテイメントとしても極上に仕上がっている本作の魅力をお伝えしていこう。
「龍が如く5 夢、叶えし者」公式サイト
龍が如くシリーズポータルサイト「龍が如く.com」
舞台は東京/札幌/名古屋/大阪/福岡の5大都市。それぞれの街で紡がれる人間ドラマ
本作では,シリーズファンにはお馴染みとなる東京・神室町はもちろん,「龍が如く2」に登場した大阪・蒼天堀,さらには福岡・永洲街,札幌・月見野,名古屋・錦栄町という3つの歓楽街が加わり,シリーズ最多となる5都市を舞台に物語が展開される。
物語は章仕立てになっており,5人の主人公達それぞれのドラマを順にたどっていくことになる。
桐生一馬は福岡・永洲街,冴島大河は札幌・月見野,澤村 遥と秋山 駿は大阪・蒼天堀,そして新しい主人公の品田辰雄は名古屋・錦栄町というように,主人公達のドラマが描かれる舞台はまったく異なっている。最終的には,それぞれのドラマ,夢,信念が複雑に絡み合い,一つの壮大な物語へと収束していくのである。
桐生一馬 |
福岡・永洲街 |
冴島大河 |
札幌・月見野 |
澤村 遥 |
大阪・蒼天堀 |
秋山 駿 |
東京・神室町 |
品田辰雄 |
名古屋・錦栄町 |
また,メインストーリーとは別に,それぞれの主人公が置かれている境遇にクローズアップした“アナザードラマ”が楽しめるというのも,特筆すべきポイントだ。
たとえば桐生のエピソードなら,タクシードライバーの仕事を通して出会った人々との交流であったり,走り屋集団“デビルキラー”とのレースバトルなど,メインストーリーに引けをとらないほど密度の濃いドラマが描かれている。
また,レースバトルや送迎ミッションをこなしていくと,タクシーを改造できるようになるなど,やり込み要素も備えている。
これが冴島の場合は,猟銃片手に雪山で巨大熊“ヤマオロシ”と死闘を演じているし,遥はアイドル,品田は野球と,はっきり言ってエピソードごとにまったく違うゲームを遊んでいるかのよう。
あくまでサブ要素なので,アナザードラマを進めるかどうかは基本的にプレイヤーの自由だが,できればメインストーリーと並行してじっくり遊んでほしいところ。小さな物語の積み重ねが作品全体の魅力を引き立てるスパイスとなり,「龍が如く5」から得られる体験をより味わい深いものにしてくれるだろう。
毎度,メインストーリー以外の部分でも「ここまで作りこむか!」と驚かされることの多い「龍が如く」シリーズだが,今回のそれはシリーズ史上最大。いよいよもって“総合エンターテイメント”として,他の追従を許さない作品になってきたという印象だ。
ダイナミックさを増した新生ケンカバトル
“ヒートアクション”は戦闘の流れを切らずに発動できるようになり,新たに“絶技”や“クライマックスヒート”が追加されたことで,ケンカバトルの迫力は大きく増した。
遥を除く4人のキャラクターのバトルにおける操作方法自体は共通だが,戦闘スタイルもより個性が増している。オールラウンドに戦える桐生,怪力で人間を棒きれのように振り回す冴島,スピーディかつアクロバティックな秋山,武器の扱いに長けた品田と,それぞれバリエーションの異なる特徴を持っているので,飽きの来ないバトルが楽しめるのだ。
また地味な点ではあるが,シームレスバトルがブラッシュアップされたのも嬉しいところ。
これまでのシリーズでは,街中でギャングやヤクザに絡まれた際,バトル前に会話文章が表示され,ゲームのテンポを乱される感じがあった。「5」ではそれがなくなり,ボイスのみの自然な演出になったことで戦闘への突入がよりスムーズになり,今まで感じていたストレスが大きく軽減されている。
かなりの大人数を相手に立ち回る場面もある。冴島の場合,その怪力を存分に発揮できるだろう | |
街で遭遇する出来事から新たな技を閃く“天啓”も,今作ではドラマ仕立てになっている。また,バトル中に閃く天啓も追加された |
ちなみに当然といえば当然だが,主人公の中で遥だけは,剣呑なオーラで満ち満ちている男衆のように,街中で突然絡まれるようなことはない。
殴り合いではなく“ダンスバトル”でライバル達と競い合うというスタイルで,蒼天堀の各所にいるダンサーにダンスバトルを申し込み“表現力”を磨いていくのだ。基本的にはリズムゲームとなっていて,フレームに流れてくるボタンをタイミングよく押していくというシステムだ。
ただし,バトル中に一定回数発生する“ジャッジ”によってマイナスの判定を受けたダンサーが体力を失ったり,体力を回復したりする。また,ライバルの妨害などさまざまな効果を持った“ダンスヒート”を発動できるというように,ダンスとはいっても,「龍が如く」らしい工夫が随所に見えるものになっている。
かつて桐生を鍛えてくれた古牧宗太郎の孫である「古牧宗介」,その身に“山の神”を宿す不思議な老人「天童」,彼女いない歴35年で自称貴族の末裔「綾小路獅子」,そして実在する有名料理人の川越達也氏をモデルにした「シェフ・タツヤ」といった,個性の濃すぎる新キャラ達が,師匠として登場する。
もちろん,元傭兵「西郷大二郎」や“インナーファイター”の開発者である「ドクター南田」など,過去シリーズに登場した面々も健在だ。
語り尽くせない“遊び”へのこだわり
「龍が如く」シリーズを100%楽しむなら,街中に点在する“プレイスポット”の存在は外せない。施設ではさまざまなミニゲームを楽しむことができ,各都市の特色を生かした“ご当地ミニゲーム”も用意されている。
ちなみに「バーチャファイター2」ではバージョン2.0と2.1が用意され,オンライン/オフライン※での2P対戦にも対応している。また,「太鼓の達人」では,「マッピー音頭」「虹色・夢色・太鼓色」「新世界より」といった曲をプレイでき,2P対戦※も可能だ。
※「太鼓の達人」の2P対戦,「バーチャファイター2」のオンライン対戦をプレイするには,“エクストラコンテンツ”をダウンロードする必要がある(関連記事1/関連記事2)
このほかにも,パチンコ店ではパチンコ/パチスロが楽しめ,カジノではルーレット,カードゲーム,丁半などがプレイできる。雀荘に行けば麻雀,将棋会館に行けば将棋を打てるというように,ゲーム内のさまざまな施設を訪れると,その施設に合ったミニゲームをプレイできるようになっているのだ。
用意されているミニゲームの種類はかなりあり,一つ一つ紹介しているときりがないほどなので,詳細は公式サイトの「こちら」のページで確認してほしい。
全国5大都市が舞台ということで各地の方言が会話に盛り込まれているほか,主観視点が採り入れられたことで,実際に女の子と向き合っているかのような感覚が味わえる。さらに,女の子の話を聞くばかりだったこれまでとは打って変わって,プレイヤーからもさまざまなアクションを起こせるようになっている。
女の子に話題や質問を振ったり,プレゼントを渡したりするのはもちろん,アフターに誘うことに成功すれば,なんと女の子を街のどこへでも連れていけるのだ。どんなデートコースにするか……男の甲斐性が試される瞬間である。
ただ,気の毒なことに彼はエピソード開始早々に網走刑務所へと収監されてしまう。当然,しばらくキャバ遊びどころかシャバに出ることすらできないのだが。
そんな彼が同房の服役囚・日村の思い出話を聞きながら「月見野で遊んだ気になる」という“妄想ゲーム”に興じる一幕があり,いろいろな意味で必見だ。……余談だが,服役囚達が刑務所内でうまい飯の思い出話で勝敗を競うという「極道めし」という漫画がある。さしずめ,冴島達が興じる妄想ゲームは「極道たび」といったところだろうか。
↑妄想 現実↓ |
高みを目指して昇り続ける姿はまさしく“龍”が如く。シリーズ集大成は伊達じゃない
ナンバリングタイトルも5作目となり,「龍が如く」シリーズは,もはや国内では「誰もが知っている」ブランドに成長したと言っても過言ではないだろう。
今回発売された「龍が如く5 夢、叶えし者」は,シリーズ集大成ともいえる内容に仕上がっており,文句なしに面白い。
エピソードを進めず“脇道”だけでも延々と飽きずに遊べるほどのボリュームがあり,「先のストーリーが知りたい。でも,寄り道して遊びたいッ……!」という,ゲーマーにとってこの上なく幸せなジレンマを与えてくれる。毎回,エンターテイメント性のさらなる向上を真剣に考え,進化をし続ける姿勢には感心するばかりだ。
だが「龍が如く」は,ここまでのクオリティに到達しても,まだまだ進化の余地を残している気がするほど,どこまでも底が見えない可能性を秘めている。まさに“龍”と形容するに相応しいタイトルだと筆者は考えている。きっと今後も,筆者を含めた多くのファンは,高みを目指して昇り続ける龍の背中を必死に追いかけることだろう。
……しかしその一方で,ナンバリングタイトルの宿命ともいえるが,5作目ともなると,過去作をプレイしていない人にとっては,理解するのが難しい部分があるのも確か。
とはいえ,「過去作を遊んでいないから」という理由で避けてしまうには,もったいなさすぎるタイトルだ。「龍が如く」シリーズのポータルサイト「龍が如く.com」では,過去作品のストーリーの流れをおさらいできるダイジェストムービーが視聴できる。
全部見ても1時間半程度なので,シリーズの歴史を振り返ってから「5」の世界に入りたいという人は,ぜひ公式サイトにアクセスしてみてほしい。
また,11月1日に「龍が如く1&2 HD EDITION」が発売されたことで,「龍が如く3」「龍が如く4 伝説を継ぐもの」と合わせて,シリーズのナンバリングタイトルすべてがPlayStation 3でプレイできるようになっている。それらをプレイしてから「5」に手を伸ばすというのもいいだろう。
壮大な「龍が如く」サーガに今から追いつこうとするのは大変かもしれないが,きっとそれだけの価値はあるはず。自宅にいながら楽しめる“総合エンターテイメント”で,年末年始を有意義に使い潰そうじゃないか。
「龍が如く5 夢、叶えし者」公式サイト
龍が如くシリーズポータルサイト「龍が如く.com」
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