インタビュー
彼のことは……まあ置いておくとして。5名の執筆陣が自身の作品とシリーズの未来を語る「イース トリビュート」刊行記念座談会レポート(後編)
日本ファルコム×星海社×4Gamer共同企画「ノベライズの“新地平”」の第1弾として,2012年12月14日に星海社FICTIONSより「イース トリビュート」が発売された。同書籍は,日本ファルコムの人気アクションRPG「イース」シリーズ生誕25周年を記念し,5名の執筆陣が新たなアドルの冒険を描いたトリビュート短編集だ。
その5名の著者による座談会レポートの後編では,自分の作品とお互いの作品に対する感想や,ファンとして望む「イース」のあるべき姿などが飛び出した。芝村裕吏氏をして「罪深い男」とまで言わしめた著者は誰か? すでに「イース トリビュート」を読了した人には薄々お分かりかもしれないが,真相は本文で確認してほしい。
(関連記事)
5人の豪華執筆陣が「イース」シリーズへの思い入れを語る。「イース トリビュート」刊行記念座談会レポート(前編)
●「イース トリビュート」座談会メンバー
芝村裕吏氏
→著者コメントは「こちら」 海法紀光氏
→著者コメントは「こちら」 森瀬 繚氏
→著者コメントは「こちら」
小太刀右京氏
→著者コメントは「こちら」 橘ぱん氏
→著者コメントは「こちら」
「イース セルセタの樹海」公式サイト
4Gamer「ノベライズの“新地平”」特設サイト
最前線「ノベライズの“新地平”」特設サイト
誰が何をどんな作風で書くのか?
探り合うところから始まった競作
4Gamer:
それでは,皆さんが「イース トリビュート」で執筆した作品の話に入ろうかと思うのですが。
芝村裕吏氏(以下,芝村氏):
皆さんが書いたのを読んだのですが,橘さんと小太刀君がいて本当によかったと思いました。オレはイースへの愛が強すぎて,歪んでいるんですよ(笑)。この愛を表現するには歪んだものを書かなければならない,そのためには書く前にまず打順や比率を考えようと。
4Gamer:
打順や比率と言いますと?
芝村氏:
全体で,真面目なのと面白いのが3:2の比率なら,たぶん問題ないだろうから,あとはオレと森瀬さんがどうするか。そこで森瀬さんに電話して相談する寸前までいったんですが,きっと森瀬さんはイースが好きすぎて1周回って直球で来るんじゃないかと考え直したんです。
森瀬 繚氏(以下,森瀬氏):
結果はご覧のとおりで(笑)。僕は,最初の打ち合わせで芝村さんが老境のアドルを書くことと,橘さんが1作目のあと(編注:正確には「イースII」のあと)を書くと聞いていたので,自分はコアなイースマニアの迎撃枠をやろうと考えました。
芝村氏:
森瀬さんのネタは,何人が分かるんだよ,と。オレは「イースIII」が好きだからいいんですけど。
でも確かに,「イースIII」をプレイした人なら気になっていた部分ですよね。
森瀬氏:
あれは「ワンダーラーズフロムイース」(編注:「イースIII」の正式名称)以来の「エレナ最強伝説」ネタで,ファルコムもオフィシャルで取り上げるくらいお約束のネタなんですよ。今回は「イース −フェルガナの誓い−」準拠でやってみました。
芝村氏:
いやあ,ゲラゲラ笑わせてもらいました。
それで海法さんは……ねえ(笑)。まさか「戦国ソーサリアン」で来るとは。
海法紀光氏(以下,海法氏):
この面子の中で何を書くべきか,これでも僕なりに悩んだんですよ。
橘ぱん氏(以下,橘氏):
これでもって(笑)。
海法氏:
こだわりなら森瀬さんが強いし,橘さんと小太刀さんが正統派の内容を書けば面白いだろうし。芝村さんは老境のアドルということで,変化球ではあるけれども,まあ普通だなと。じゃあオレは魔球でも投げるしかないよね。
芝村氏:
魔球すぎてビックリしちゃったよ(笑)。
いやあ,でも,掲載順に救われてるね。小太刀君がいてくれて本当によかった。
小太刀氏:
僕は最初,藤沢周平のパロディで「秘剣半キャラずらし」というのを考えていたんです。ダルク=ファクトの視点で,ひたすら藤沢周平風にアドルの半キャラずらしを考察するという(笑)。
海法氏:
それは読みたかったなあ(笑)。
小太刀氏:
ただ,藤沢周平を知らないイースファンには面白くないだろうと考えて,やめました。
確かに,かなりハードルが高いですね(笑)。
小太刀氏:
真面目な話をすると,僕は最初のイースブームに間に合わなかった世代ですから,一歩引いた視点でアドル・クリスティンを書いてみようと思ったんです。
芝村氏:
ああ,そう言われると直撃世代と,そうでない世代の違いを確かに感じるね。
橘さんの作品は,予備知識がなくともすんなり読めました。イースに詳しくない橘さんのファンでも読めるような。
橘氏:
僕のはただの“イース同人誌”ですから。プレイ後に楽しくなっちゃってコミケに出すような。
芝村氏:
いやいや,愛に溢れていてよかったと思いますよ。
森瀬氏:
ちなみに僕は,芝村さんが老境のアドルを書くと知らなかったら,ピッカード中毒のアドルを書こうと思ってました。
芝村氏:
どっちにしても,選ばれた民にしか分からないネタじゃないですか(笑)。
森瀬氏:
アドルが行く先々でピッカードの肉を求めるのですが,運悪くピッカードがいない地域なんです。そこで外見が似ている別の獣の肉を食べては,「やっぱり違う」というのを繰り返すと。
海法氏:
たまに「そういうのもあるのか!」とかね。
橘氏:
「孤独のグルメ」じゃないんですから(笑)。
方向性も面白さもまったく異なる5作品
それでも主人公のアドル像はブレなかった
4Gamer:
ともあれ,今回収録になった5作品とも,それぞれ作風が違っているということで。
編集する側としては,バランスを取るのが大変でしたけれどね。
芝村氏:
さっきも言ったように,オレはそうなるだろうと思ったので,途中で「真面目に書け」と方向転換させられないよう,最初に書き上げたんです。
平林氏:
芝村さんがおっしゃったように,ストレートが3本,変化球が2本なら大丈夫だと僕も考えていました。参考までにですが,僕の中では芝村さんの作品はストレートです。
芝村氏:
ちゃんとギリギリを狙いましたからね。オレには書きたいものがある,しかし市場が求めるものにも限度があるという,そのギリギリのところを(笑)。
平林氏:
そうやって芝村さんがギリギリに収めてくれた代わりに,海法さんが予想外のところに投げちゃいましたね。
森瀬氏:
野球の試合なのに,テニスコートに向かって投げちゃったみたいな(笑)。
海法氏:
ダメもとで企画を出したら,通っちゃったんですよ。
平林氏:
今回,収録順を時系列で決めたのですが,さあ海法さんのはどこに入れようかと。結局,真ん中に入れたんですが,結果としていい本になったかなと。
海法さんのは,何だかんだ言ってもイース愛に溢れていますから。ちゃんといろんなネタも拾ってますし。あとは二重に予防線を張ってる(笑)。
平林氏:
海法さんの作品は置いておくとして,残りの4本を通して読んだときに,意外とアドル像がブレていないんです。それはすごいなと。
芝村氏:
まあ皆,25年間,イースのファンですからね。
4Gamer:
皆さん,誰の作品が一番面白いと思いましたか? 無論,自分の作品は抜きで。
小太刀氏:
あまり比較ができないんですよね。
芝村氏:
ラインナップを眺めても,比較しようがないんですよ。たとえば海法さんと森瀬さんのどちらの作品が面白いかと聞かれても,そもそもの土俵が違う(笑)。
海法氏:
カルトネタの追求という点では,似てると言えなくもないですけどね。
橘氏:
カルトの方向が全然違うんですよね(笑)。
平林氏:
きっと,PSP以降のイースしか知らない人には,海法さんのはまったく分からないですよ。
4Gamer:
「戦国ソーサリアン」かと思ったら「ロマンシア」も「ザナドゥ」も入ってくるし……。
芝村氏:
小太刀氏:
……実は僕,「ソーサリアン」も「ロマンシア」も知りません。
小太刀氏以外の一同:
来た!
(このあと,1980年代の初期ファルコムタイトルの話題でひとしきり盛り上がる)
森瀬氏:
イースは,マニュアルがハードカバーだったんですよね。読書狂の少年にとっては大変うれしい驚きでした。
海法氏:
ファルコムさんは昔から,そういうところにこだわってましたよね。
森瀬氏:
「イースI」「イースII」は,“本”をモチーフにしたパッケージですし。
平林氏:
だから「イース トリビュート」の各作品の扉も,本をモチーフにしました。
橘氏の正統派外伝と森瀬氏によるネタの掘り下げ
そして海法氏が見せたのは……?
4Gamer:
それでは,皆さんご自身の作品について,あらためてお話していただけますか。まずは「イース トリビュート」掲載順に,橘さんから。
僕はもう,フィーナがどうなったかずっと気になっていて。そのあと歴代ヒロインの間を渡り歩くアドルは,フィーナへの気持ちをどう整理したんだろうとか,そんなところから話を膨らませていきました。
平林氏:
アドルが,失われた古代王国での冒険を終えて,いったん抜け殻になってしまうという設定なんですよね。そこから,どうやって次の冒険への活力を見出すのか。
橘氏:
まだアドルは16〜17歳と,人間として幼いわけですよね。そんな彼が,63歳まで冒険を続けたのはなぜか。自らもたらした平和の中で,冒険の思い出に浸りながらヒロインと暮らしてもいいのに,なぜそれを捨てて,また旅立つのか。そこで最初の冒険に,何か“誓い”のようなものがあったんじゃないかと考えたわけです。
森瀬氏:
橘さんの視点は,すごくアドルに優しいですね。実のところ僕は,アドルをある種の「異常者」だと捉えているんです。手に入れた武装,ヒロイン,名声を惜しげもなく捨てて,次の冒険に向かうって,普通の人なら考えないじゃないですか。僕の中のアドルは,SAN値ゼロですよ(笑)。
とくに「イース セルセタの樹海」で描かれる過去のシーンのアドルは,そういうイメージが強くなっていますよね。そう考えると,橘さんはアドルに対する愛が溢れているなあ。
海法氏:
シリーズ初期は,アドルもまだSAN値が高いよね?
森瀬氏:
いや,むしろ初期のほうが低くて,シリーズが進むごとに高くなってます。アドルもしがらみを覚えたんだなあって思いますよ(笑)。「セルセタの樹海」をプレイすると分かるんですが,初期のアドルは人の話を聞かない,相手が困っているのに延々と質問する,「入るな」と言われたところに必ず侵入する……。
橘氏:
あとは,せっかく,かくまってもらったのに何度も抜け出したり(笑)。かくまってくれてる人の立場も考えろと。
小太刀氏:
まるでスナフキンのように自由な人ですよね(笑)。
4Gamer:
確かに(笑)。
では話を少し戻して,森瀬さん,ご自身の作品のお話をぜひ。
芝村氏:
アドルについては,今,ほとんど言ったよね(笑)。
森瀬氏:
繰り返しになりますけれど,僕は最初に古参のイースマニアを迎撃しようと考えました。そうなると,やれることはいくつかに絞られます。そこでいい機会なので,「エレナ最強伝説」の辻褄合わせをやろうと。もうこんな機会もないでしょうし。
平林氏:
「イース トリビュート」で,ついにエレナ最強が公式設定となってしまいますが。
森瀬氏:
実は過去にも冗談半分とは言え,「フェルガナの誓い」のメッセージでエレナの強さが示唆されたり,「イース vs. 空の軌跡 オルタナティブ・サーガ」でエレナが白騎士の格好で登場したりするんです。だから今回,僕がこのネタで押しても大丈夫だと考えました。あとは芝村さんと同じく,橘さんと小太刀さんがいれば王道は押さえられるだろう,芝村さんも大丈夫だろう,海法さんは……まあ置いておくとして,僕はマニアックに攻めていこうと。
平林氏:
編集者としては,「フェルガナの誓い」をプレイしていない人には,森瀬さんのネタが分からないんじゃないかという危惧もあったのですが,逆に「プレイしてみたい!」とも思ってもらえるんじゃないかと。「この人,よく調べてるな」と思えるはずです。エレナがバレスタイン城に突入するところも,きちんとイラストになっていますし。
森瀬氏:
あのイラストを見たとき,「これで勝った!」と思いましたよ(笑)。
4Gamer:
それでは,次は海法さんなんですが……。
平林氏:
少し解説を加えておくと,海法さんの作品は,ラテン語の文献を訳したものという体裁になっています。そもそも「イース トリビュート」自体,メタ的な企画なんですが,海法さんの作品はさらにメタ的になっていて,そのうえで解説も付いているという,何重にも入れ子になっている内容なんです。
森瀬氏:
僕が解説を書いたんですが,ずっと「めんどくせーよ,海法」とチャットで当人を相手にブツブツ文句をつけながら作業しました(笑)。
芝村氏:
あの解説を読むと,海法さんがどれだけ罪深い男なのか,どれだけ人の迷惑を顧みない男なのかと思いますよね(笑)。
海法氏:
同じアドルなのに,オレのアドル像と君のアドル像はちょっと違う。僕はそういう話が大好きなんですよ。あとは,この設定なら「戦国ソーサリアン」もネタにできる(笑)。
平林氏:
今だから明かしますが,海法さんの企画書には,ファルコムさんから「弊社のタイトルを熱心に遊んでくださる古参のファンの方からの反応が,とても楽しみです」というコメントをいただいていました。
海法氏:
そういうのは,執筆に入る前に教えてくださいよ!
平林氏:
いや,余計な情報を与えると,創作意欲を削いでしまうかもしれないと思って。
芝村氏:
その文面は「お前,分かってるんだろうな」という意味にも取れますよね(笑)。
海法氏:
ともあれ,1980年代のファルコムタイトル──「ドラゴンスレイヤー」「ザナドゥ」「ロマンシア」「ソーサリアン」から,「ロードモナーク」あたりまでのネタを入れて,メタっぽい話にしようと。ただ,それだけではネタが分からない人も出てくるでしょうから,語り口を面白くして「これ,何が書いてあるのかよく分からないけど楽しい」と思ってもらえるものを目指しました。これだけホラを吹いておけば,今後のシリーズの構想と被ることもないでしょうし(笑)。
非イース世代に向けた小太刀氏と
イースのお約束にこだわった芝村氏
4Gamer:
それでは小太刀さんはどうでしょう?
平林氏:
本の構成としては,森瀬さん,海法さんとマニアックなネタが続いたところで,また正統派が出てくるという,いい流れですよね。
小太刀氏:
僕はイースブームに乗れなかった世代ということもあって,自分から見たイースを反映したかったんです。そしてもう一つ,イースがまだシリーズとして続いていることを知らない人もいると思います。それらを踏まえて,主人公は伝聞形式でアドルを語るんだけれども,実はあまり詳しいところまでは知らないという設定にして,読んだ人がもう一度イースを再認識できるようにと考えました。
平林氏:
お話の中では,アドルは43歳。いくつもの冒険を終えて,その冒険記を残した伝説の存在ではあるけれども,まだ現役の冒険家なんですよね。
小太刀氏:
ええ。最初のイースから25年,ちょうどアドルも冒険家として25周年を迎えたあたりをイメージしました。
あとは,僕が少年時代にイースに抱いていた“大人っぽい”ファンタジーへのオマージュとして,わざと描写を泥臭くしたり,地味な描写を続けたりということをやっています。今,見ると「大人?」と首を傾げたくなるかもしれませんが,当時のファンタジーってそうだったんですよ。
海法氏:
ああ,1980年代はファンタジーと言えば,ドラゴンがいて,+2ショートソードがあって……という,共通言語的なイメージがありましたね。今,ファンタジーと言っても,いろんなイメージがあるけど。
森瀬氏:
コミックが週刊少年ジャンプとかのメジャー誌じゃなくて,ちょっとマニアックなマイナー月刊誌に連載される感じですよね(笑)。
4Gamer:
最後に芝村さん,ご自身の作品についてお願いします。
平林氏:
最後を締める原稿が,一番最初に上がったという。
芝村氏:
そこは今までお話してきたとおり,いろいろな戦略があって(笑)。それ以外では,絶対ゲームにできないことをやってやろう,企画会議には上がるんだけれども最終的に実現しないギリギリのところを狙おうと考えました。それで,63歳のアドルなんです。きっとすべての企画屋が考えてはみるけど,絶対ゲームにはならない。
平林氏:
ファルコムさんでも,毎回,案としては出るけど採用されないと聞いています。
芝村氏:
そしてもう一つが,どこを見てもイースだと分かるものを目指しました。どこからがイースなんだろうと考えると,これも話してきたとおり,イースのお約束を守らなければなりません。
「食事のシーンは淡白に」とか,「珍しい踊りを見られるなら剣くらい」とアドルが剣を捨てたら,船長が申し訳なさそうに「いいんですか? 伝説の剣だったんでしょう?」と言うところをきちんと書きましょう,とかね(笑)。
(一同,笑)
海法氏:
冒険ごとに,それまでの経験値を捨てたりね(笑)。
芝村氏:
そういうプレイヤーのツッコミを全部拾ったうえで,「そうそう,これがイースだよね」と言ってもらわないと。お約束を全部上げてから話を構成していったので,本当にパズルみたいでしたよ。最後に残った3項目くらいは「どう入れようか?」って(笑)。最後は,やっぱりヒロインを置いていくアドルに対して読者に「残酷だよな」と思ってもらわないといけないし,アドル自身もヘコまないといけないし,しかも63歳だし……。63歳の別離って,もう今生の別れじゃないですか。
(一同,笑)
芝村氏:
だから最後はいくつかアイデアを作ってみて,自分の中でオーディションしましたよ。まあ今回は,どうやってイースらしさを出すか,頑張りましたね。
平林氏:
年老いたアドルが,あそこまで描かれたことは今までないですよね。芝村さんは初めて老人のアドルを書いた人ですよ。
芝村氏:
うわ,全然うれしくねえ(笑)。
25周年を超えてこれからも続いていく「イース」には
より若い世代へのアピールも必要
4Gamer:
今回,イラストを田上俊介さんが描いてくださいました。
平林氏:
デビュー以来十数年,こんなに速いペースでカラーイラストを仕上げたことはないとおっしゃってましたよ。
森瀬氏:
あのスケジュールでよく仕上げていただけましたよね。本当にありがたいです。
芝村氏:
橘さんの話のイラストを見ると,のびのびと描いてあって「これがイースだ」という感じなんですけど,海法さんのところは「登れないはずの壁を登るのがプロ」って感じになってますよね(笑)。
海法氏:
「イラスト,どうします?」と聞かれて,思わず「どうしましょうか?」って聞き返しちゃいましたよ(笑)。
平林氏:
「何も考えてなかった」と言ってましたよね。
芝村氏:
何も考えていないからこそ,できる芸なんだろうな。他人を思いやる心があれば,あんな話は書けないでしょう(笑)。
平林氏:
そう,ぱんさんと小太刀さんの話は,イラストを入れられる場所がたくさんあったんです。芝村さんも結構あったし,森瀬さんは,エレナ突入のところでほぼ決まっていました。だけど海法さんだけは,もうイメージイラストで行くしかないと。
芝村氏:
それにしても,この本の企画を全部通してくださったファルコムさんは本当に心が広い。頭が上がりません。海法さんのは,笑ってくれるか怒られるかのどっちかだったからいいんだけど,逆に小太刀君の企画が大変そうだと思っていたんですよ。企画がうますぎて,「これ,今度のゲーム本編でやる設定だから」みたいなことになるんじゃないかと。
小太刀氏:
なので,僕は版権に引っかからないよう,最初に「秘剣半キャラずらし」を考えたんです。
芝村氏:
ただ,皆で変化球を投げたのでは,それはそれで企画として破綻する。そういう意味では,小太刀君がやったことは,この5人のうち,誰かがやらなきゃいけなかったんです。まあ,それは若いヤツの役目だよねってことで,まず小太刀君が切り込んでいって,次に橘さんに穴を広げてもらって,そのあとオレ達がゆっくり行くと。
橘氏:
酷い(笑)。
4Gamer:
それでは,イース30周年に向けて,何か思うところはありますか?
海法氏:
イース30周年記念タイトルはどんなだろう?
平林氏:
5年あれば,それまでに2タイトルくらい出ていてもおかしくないですよね。
芝村氏:
「イースSEVEN」あたりから,オレの中では懐かしさ補正を超えて,面白い新作ゲームになってるんですよ。アクションゲームとして,きちんと作りこまれているし。そういう意味では,あまり心配はしてないかな。
平林氏:
仮に,30周年で「イース トリビュート」のような企画があったとして,また何か書きたいですか?
芝村氏:
橘さんの話は,続きが読みたいと思いましたよ。
橘氏:
どうですかね……もう,ダルク=ファクトの話とか,コミックなどでもいろいろ書かれちゃってますからね。
海法氏:
じゃあ僕は「イースXIV」のレビューを書きましょう。今回,過去の話を書いたから,今度は未来の話を。
芝村氏:
ああ,架空タイトルのレビューね。またファルコムさんから「分かってるだろうな」とか釘を刺されそうなネタを(笑)。
森瀬氏:
「XIV」だと,比較的現実味が出てしまうから……。
小太刀氏:
「イース999(スリーナイン)」でいいじゃないですか。
平林氏:
そんなにアドルは冒険してないでしょう?
森瀬氏:
冒険記は100余冊ですけど,冒険自体はもっとしてるかもしれませんよ。書かなかっただけで。
海法氏:
じゃあ,アドル三世が世間に登場してファンの間で物議を醸す,とかは?
相棒は,13代目ドギ。
(一同,笑)
芝村氏:
これはもう,酔っ払いの会話だよなあ(笑)。
橘氏:
1作目より若いアドルを描くのもいいかもしれませんよ。
森瀬氏:
確かに,アドルが10歳で冒険していないとは限りませんね。
橘氏:
アドルが初めて村の外に出る話とか。
海法氏:
アドルちゃん3歳のときのしゃれこうべの話とか。
橘氏:
それ,全然違いますから(笑)。
芝村氏:
本当に海法さんは,怒られそうなネタばかり思いつくよなあ(笑)。
小太刀氏:
今回できなかったことで言えば,「イースV」以降のネタを掘り下げたいですよね。21世紀になって紡がれたイースを,もっと振り返ってもいいんじゃないかと思うんです。
平林氏:
確かに今回は,どちらかと言えばオールドファンに向けた内容になっていますね。でも実際は,20代のイースファンもいます。これから5年の間には,さらに下の世代が増えるでしょうから,そういう人に向けて球を投げるのもいいかもしれません。
森瀬氏:
これは僕の推測なんですが,イースファンだという人達の三分の一くらいは,「イースI」「イースII」しかやってないんじゃないかと思います。そういう意味では,25周年のオールドファン向け企画は間違ってない。でも30周年は,もっと若い世代にも目を向けられる状況にしていきたいですね。
4Gamer:
おお,何か綺麗に未来への展望で話がまとまりましたね。それでは皆さん,本日は長時間ありがとうございました。
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5人の豪華執筆陣が「イース」シリーズへの思い入れを語る。「イース トリビュート」刊行記念座談会レポート(前編)
『イース トリビュート』 原案:日本ファルコム 著者:芝村裕吏,海法紀光,森瀬 繚,小太刀右京,橘ぱん イラストレーター:田上俊介 出版社/レーベル:星海社/星海社FICTIONS 価格:1103円(税込) ISBN:978-4061388482 →この書籍をAmazon.co.jpで購入する |
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- 編集部:ginger
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